愉快な喜劇を見ているように弧を描く三日月が、白く輝いている。
小さく吹く風が心地よい夜闇の色に決して交わらぬその光は、世界が眠るさまを淡く彩った。
月光に照らされ、浮かび上がるのは小さな町。
宿場町の一角に灯るわずかな灯りを残して、他の家々は今日も眠りに落ちている。 酒場からこぼれる耳慣れた喧騒を子守唄に、再び迎えるであろう明日に向けて意識を手放し、人は夢に落ちていくだろう。
しかし――<彼女>は、眠らない。
耳元で唸る風の声が、乱暴に鼓膜を叩いた。
世界は薄暗闇に閉ざされているが、<彼女>の見ている景色は目まぐるしく変化して、風を切って疾走(はし)ることで景色が洪水のように流れて過ぎていく。
小さな足裏が屋根瓦を強く踏みしめると、軽い音をたてて高く空へと舞い上がった。
<彼女>が軽やかに飛ぶたびに首に巻いたマフラーがふわりと踊り、夜の世界を駆け抜ける<彼女>に置いてかれまいと後を追ってたなびくさまは羽根のある鳥のよう。
灯りを消して眠る民家の屋根から屋根へ、<彼女>は高く飛んでいく。
その間、<彼女>の走りには不思議と足音はなかった。
だから、<彼女>が通ったことに誰も気付かない。
松明(たいまつ)を片手に巡回する警備兵の頭上を飛び越えても、ちょっとした突風が吹いたのだと勘違いをして彼らはまるで気付きもしない。 夜闇に紛れて疾走する<影>のような<彼女>の存在は誰の目にも留まらぬ。
――だが、それでいい。
<彼女>は<影>。
<影>となるために育てられ、生きてきた。 しかし。
(…あれだ!)
<影>と呼ぶには不似合いな光を宿した双眸は、楽しげに爛と輝いた。
その前方には、いまだ灯りの残るひとつの民家。
何の変哲もない建物の軒先にぶら下がる文字プレートに<彼女>はほくそ笑むように唇を歪め、音もなくその屋根に降り立つ。 すぐさま這い蹲るようにして屋根に耳をそばだて、微かに聞こえる話し声に全神経を集中した。
低く唸るような男の声と、興奮したように声を弾ませる二組の男の声が聴こえる。
「―――ふむ、これが<ミレイアの花の乙女>の絵か…」
「どこからどう見ても本物だぜ?
これは間違いなく、金の派閥のファミィ・マーンがかつてのトライドラの領主リゴールから交友の証として贈られたブツでさぁ。 絵の修繕のためブロンクス家が一時預かってたって話、俺が一番に聞きつけたんだぜ!」
「ギムレあんちゃんかっこいいー!」
「いやいや素晴らしい働きだ…ギムレくん、バレンくん。 ただのチンピラかと思ったが君たちはなかなか見所がある。 駐在軍人に多少の無理を言って釈放させただけの価値はあったな」
聞きこえてきた名前に、<彼女>は屋根に這いつくばったまま「うへぇっ」と顔を歪めた。
だが彼らはそんな<彼女>にもちろん気付くことはなく、働きを褒められた事でより声を弾ませる。
「あんたには助けてもらった恩があるからな、これくらいはお安い御用よ。
この間は妙なガキ共のせいで散々な目にあったがこれで溜飲も下がったってもんだ。 そろそろ別の町でまたひと稼ぎしねえとな……唯一の心残りは竜の子供を捕まえられなかったことだが、今のあの宿はやたら召喚獣が多いし……」
「あいつらなんか強そうだしね」
「オメーが腑抜けなのが悪いんだよ! もっと強ぇやつと誓約しろよ!」
「そりゃ無理だよあんちゃん〜」
まるで漫才のような会話だ。
”こういう奴ってほんとこりないなぁ…”と<彼女>は呆れながら、すっくと立ち上がる。 懐から取り出した手帳を素早くめくり、事前に仕入れた情報との誤差がないかをチェック。
(えーと、”ミレイアの花の乙女”…よしよし、情報通りだ)
手帳を閉じてから目を伏せ、ふーっと、ひとつ深呼吸。
はやるように落ち着かない心を鎮めてみせようとするも、呼吸を終えて次に目を開いた<彼女>の表情は満面の笑み―――それは、悪戯を思いついた子供の表情にとてもよく似ていた。
そして<彼女>は躊躇なく、再び空を高く飛ぶ。
笑むように弧を描く月を視界に映したのは一瞬で。
鳶色の髪を風に揺らし、重力に従って落下する<彼女>が目指すもの。
それは屋内へと直結する天窓―――次の瞬間、ガシャァァァンッとけたたましく鳴り響く騒音は、窓を蹴破って降り立った<彼女>を歓迎する音楽となって世界に響き渡る。
「うぉ?! だ、誰だテメエ!」
「あ、なんか見たことあるコイツ…あの宿の…!!」
「――コイツ、だって? 誰に向かって物言ってるのよ」
狼狽に投げられる言葉たちを、<彼女>は不敵に笑むことで一蹴した。
夜闇に溶けきれない鮮やかな橙色のマフラーを躍らせながら腕を掲げたあと、振り下ろすようにして突き出した手の中には”あかなべ”と彫られた一つの印籠。
漆塗りのそれを目にしてギムレたちは目を見開いたが、次には「……なんだそれ」と首をひねる。 当然だ。 自分もこれを人前で出すのは初めてなのだ。
あとは友人から教わった文言を唱えてこそ、これは真の力を発揮する。
「者共控えおろう! ”あかなべ”印の入ったのこの印籠が目に入らぬか!
人様の物を盗んで喜ぶ悪党共は、せくしぃくのいち・アカネ様が成敗してくれるぅぅぅ!!」
―――ちょっ、待っ、せくしぃって何よ。
呆気にとられ、そんなささいな疑問すら口に出せぬ彼らを置き去りに、”決めゼリフ、キマッたぁああぁぁぁ!!”と大はしゃぎのアカネは興奮のままサモナイト石を掲げた。
闇に鮮やかな緋色の光が、場に満ちる。
鬼妖界の赤光をまとう、爆風と爆音に飲み込まれて――――彼らの意識は途絶えた。
道が悪いのかガタガタと揺れる馬車の居心地は、決して良い物でもなかった。
しかしそれは今だけのものであって馬車の外装や内装は上等だ。
二頭の黒馬に引かれ力強く回る四輪。 クッション製のあるソファが悪路の影響を殺してくれるし、滑らかな肌触りのカーテンは聖王国領のサイジェントから直輸入したキルカの織物製なので、山岳地帯に位置する地域独特の暑い日差しをやわらかに受け止めて寒気をうまく遮断する―――うん、実に良い馬車だ。
堅く平たい座り心地に慣れているグラッドの尻が妙なむずがゆさを覚えなければこの乗り心地を堪能できただろうに。
(俺がトレイユまで乗ってきた馬車と、比べる以前の問題だな…)
それもそのはず、この馬車にはトレイユにとって重要な人物が乗っているのだ。
その人物はグラッドと向かい合うようにして座し、作成されたばかりの書類を前に顔をしかめている。 やや年配ながら端整な面立ちのそれは彼の娘とよく似通っており、”リシェルも将来はこんな感じに町を統治することになるのか…”と兄貴分として少し心配になった。
年頃の娘があんな顔で唸るようになったら嫁の貰い手がなくなってしまう。
「―――それで、グラッド。 肝心の絵はどうなった……?」
全体が軋むような音の中、震えた声で紡がれた問いには絶望めいた響きがあった。
それにあっさりと答えることもはばかられるほど、いま、ここには重々しい空気に満ちている。 しかし答えない訳にもいかず、グラッドは思わず背筋を正した。
「ええっと、その、<ミレイアの花の乙女>は…なんとか無事に、奪還できたのですが」
「……」
「あー、ですが、…召喚術の爆風に多少焼かれたこともあり、絵の、状態は…その」
「…………」
―――最悪、です。
意を決して答えきったグラッドに、先ほどよりもズシリと重さを増した沈黙が刺さる。
重い。 空気が、この上なく重過ぎる。
(……帰りたい……帰って、あいつらが作った飯が食いたい……)
グラッドには逃げ場がない。 心境的にも状況的にも、だ。
他の都市への視察に出向いていたテイラー・ブロンクスを迎えに行くという任務に選ばれた瞬間から、こうなることは決まっていた。 領地で起こった事件を統治者に報告することも駐在軍人の勤め―――逃げ場など、最初から用意されていなかったのだ。
グラッドは表面が焼かれて無残な有様の絵を抱え、腹をくくって視察先へおもむいた。
馬車という狭い空間の中でテイラーと向かい合い、テイラーへありのままに報告をする……それだけが彼に許され、それ以外は認められない。 こういうとき公務員(?)は辛い。
「目撃者情報や近隣住民の話では、せくしぃくのいちと名乗るシルターンのシノビの高笑いが聞こえたとかなんとかで……」
”せくしぃくのいち”のところで、テイラーの目がぎらりと輝いた。
「……っく、ぅう…ぅうおおおぉぉぉまたかぁぁぁぁ!! またシノビの仕業なのかぁぁぁぁ!!
壷、絵画、サモナイト石、数々の奪われた芸術品…それを取り返してくれるのは一向に構わんが何故よりにもよって最悪の状態にして返すのだぁぁぁ! 壊れては意味がないだろう!
芸術は爆発だとでも言いたいのか! そうなのかグラッド! 芸術は爆発か?!」
「(テイラーさんが壊れた…) い、いえ、自分は、違うと思いますが…」
「ぐぬぬぬ議長に何と申し開きをすれば良いのだ…しかも今回の絵は議長が大切にされている品物だ、修繕や修復はできる限りするつもりではあるが……このような事が続いてばかりでは、今度は私たちが議長に爆発させられるぞ…」
(ちょっ、それ俺も?!)
「それで、そのシノビは捕まえたのか!?」
こめかみに浮かぶ青筋に、テイラーの怒りが頂点に達していること知る。
しかし一介の軍人である自分がどうやって彼の怒りを納めることができるのであろうか。 今のグラッドができることといえば、先ほども言ったように<ありのままを報告>のみだ。
「いえ、自分たちが現場に着いた頃にはすでに姿はありませんでした。
ギムレとバレン兄弟と、奴らを釈放させた者はシノビ――アカネが捕まえていたようなので問題はなかったんですが…」
「………その兄弟にも何度か悩まされてきたが、今はシノビのほうが厄介だ。
近隣住民の住宅破損や公共の器物損害などこれらの修理費用は馬鹿にならん。 一刻も早くどうにか対処せねば………確か、そのシノビはお前達の知り合いだったな?」
「はい。 宿客ではないようですが、<忘れじの面影亭>でよく食事しているところを見かけます。 私も何度か話を聞こうと詰め寄るのですが、相手の逃げ足も速く…」
「……っく、さすがはシノビといったところか。 まずは捕獲せねばどうしようもないな…直接私が話をしに行く、このまま<忘れじの面影亭>に向かうぞグラッド!」
「っは! 了解です!」
外はこんなに天気がいいというのに、<忘れじの面影亭>にはテイラーの雷が降るようだ。
”アカネも暴走しなきゃいい奴なんだがなぁ”と頭痛がするようにこめかみを押さえるグラッドが、行き先を報告するため御者台に顔を出したとき――薄紅色の花びらがふわりと目の前を横切り、吸い込まれるように空へと舞い上がった。
「おっ、アルサックの花か。 今年も見事だなー」
山岳地帯といえど気候は良好な土地だ。
連なるようにしてできた花の樹木の列に感嘆の声をあげて見入っていれば、「グラッドさん」と御者が促すように声をあげた。
「どうした?」
「あそこに旅人がいますが…」
鞭を振るう御者の視線を追うようにして、グラッドも目を向ける。
馬車が通るであろう道の先に一組の男女がいた。
女のほうは岩に腰掛け、男は地面に膝をついて女の足に包帯をまいているのが見える。 この付近にいるということはトレイユに向かう途中で足でもくじいてしまったのだろうか。
「女性のほうは怪我をしているらしいな…テイラーさん、どうしますか?」
「構わん、どうせ行き先は同じだ。 乗せてやれ」
「っは!」
テイラーの言葉に了承を得て、グラッドは馬車を彼らのそばに止めさせた。
停止する馬車に手当てをしていた男が立ち上がり、馬車を降りるグラッドへと歩み寄ると軽く頭を下げた。
「通り道に座り込んで申し訳ありません。 すぐに退きますのでどうかご容赦いただきたい」
「ああ、構わない。 そんなつもりじゃないんだ。 そちらの女性が怪我をしているようだったので、もしよければ一緒に乗らないかと」
グラッドの申し出に男は「おや」と顔を上げて、穏やかな相貌があらわになる。
「それは助かりますが…ですが見たところ高貴な方の車のようで。 構わないのですか?」
「主人には了解を得ている。 行き先はトレイユだが大丈夫か?」
端整な顔立ちの男だった。
見た目はかなり若く見える。 だが動作や佇まいは若い男のそれではない。
温和な雰囲気と細い糸目は優男風だが、黒紐の眼帯に右目を覆われて妙な物々しさもある。
「ええ、ちょうど目的地なので助かります。 途中まで馬車で着ていたのですが、足場が悪くなったため降ろしてもらったのです。 私も妻も多少は旅慣れてはいますが、妻は山を歩くことがないので挫いてしまいって…」
信頼しても良いかどうか、グラッドを見極めているのだろうか。
眼帯で覆われていない細い目を開け、グラッドを映す目に浮かぶ光は修練された武芸者の目だ。 こうして並んで歩くだけで一般人とは違う足運び、彼自身に隙がないのが分かる。
男は真っ直ぐに落ちた漆黒の髪を結わえることなくそのままに、濃緑色のシルターンの着物を優雅に着こなしていた。 動きづらいであろう装いに旅の疲れを微塵にも感じさせないところから相当旅慣れているようだ。
荷物は軽装。 武器は今のところ見当たらないが、荷物の中にあるのだろうか?
「それは災難だったなぁ。 山は天候が変わりやすいし、町から離れているぶん<はぐれ>や盗賊も出やすいから……っと、すまない。 俺はトレイユの駐在軍人のグラッドだ。
よろしくな」
「私はシオンと申します。 こちらこそ、ご厚意に感謝いたします」
シオンは緩やかに微笑んだ後、不思議そうにシオンとグラッドを見比べている女の前へと膝をついた。
彼自身に医療の心得でもあるのか入念に具合を確認し、「立てますか?」と優しく促す。
「うん、大丈夫。 シオンさんの薬塗ってもらったし、ちょっと挫いただけだから」
「捻挫を侮ってはいけませんよ。 酷くなるとしばらく歩けなくなるんですから」
「ふふ…はい、分かってますよ」
なんとも夫婦らしい、和む会話だ。
支えられて立ち上がった女の目が、(ああいうのいいなぁ)と二人を眺めていたグラッドに向けられる――まずい、初対面の女性に間抜け面をさらしてしまった――内心で焦るグラッドに、女は気さくに笑って「ありがとうございます」と丁寧に頭を下げた。
彼女もシルターンの者だろうか。 淡い若草色の生地に白い大輪を咲かせた着物がよく似合っている。
「馬車に乗せていただけるんですね、本当に助かります」
「グラッドさん、こちらは妻のと申します。 短い間ですがどうぞよろしくお願いします」
「あ、いや、困ったときはお互い様というか…ははっ、ようこそトレイユへ。 歓迎しますよ」
互いに握手を交わして、共に馬車へと乗り込む。
シルターンの着物を見てテイラーは一瞬顔をしかめたが(ここ最近、シルターンの人間のせいでろくな目に合ってないもんなテイラーさん…)、シオンの礼儀正しさに好印象を抱き、また彼ら夫婦の旅の話にすっかり機嫌を良くしたのか、夕暮れ前にトレイユに到着する頃にはずいぶんと打ち解けていた。
「はっはっは、貴方の話は面白いなシオン殿!
立場上、簡単に旅は出来ないが全てを放り出して旅に出たくなるな!」
「楽しんで頂けたなら恐縮です」
「話の続きをもっと聞かせて欲しいが…うむ、まだ仕事が残っていてな。 また落ち着いてから酒でも飲み交わしたいものだ。 しばらくはこの町にいるのだろうか?」
「ええ、弟子がこちらの町の宿でお世話になっていると聞いてますので、まずはその宿へご挨拶に伺おうと思っています。 <忘れじの面影亭>という宿はご存知でしょうか?」
「なに、<忘れじの面影亭>だと―――」
思ってもいなかった名前にテイラーが目を見開いた、その瞬間。
「テイラーさん! アイツが動いたそうです!」
血相を変えたグラッドが、馬車の扉を開けて顔を出した。
アイツ?と首を傾げただったが、「いやまぁ色々とあって…」とグラッドは言葉を濁し、すぐにテイラーに向き直る。
「つい先ほど自警団に連絡が入りました! 今度は商人に秘密裏に運び出されそうになった召喚獣たちを一斉に逃がしたらしいのですが、大型から小型まで数が多く町は大騒ぎで…」
「何だと?! 被害や怪我人はどうなっている!」
「拿捕された商人一団をのぞいては今のところ怪我人はいませんが、召喚獣たちも興奮状態らしく、このままでは時間の問題です」
「っくぅぅ…あの馬鹿娘めが…やることがどんどん過激になってきているな…。
もういい、私が行く! お前達は住民の避難と召喚獣の捕獲か、もしくは追い出すか大人しくさせるかなりどうにかしろ!」
「テイラーさん、一体何が起こったんですか?」
テイラーの憤りぶりに目を丸くさせたが、忙しなく周囲を見回している。
女性を不安にさせるのはテイラーの本意ではない。
なんとか気を沈め、ゴホンと咳払いをすることで怒りを無理やり追い出し、「恥ずかしい話ではあるが…」と疲れたように息を吐いた。 すでに疲労困憊だ。
「”せくしぃくのいち”と名乗るシルターンのシノビに少々手を焼かされていてな…だがさん、ご安心ください。 我らの自警団が今日中にでも決着をつけてみせますので」
「………”せくしぃくのいち”……」
思わぬところにが反応した。
さっと血の気の引いた顔で反すうするようにその名を呟くと、彼女はちらりと、隣に座るシオンを見上げる。
「し、シオンさん…」
「分かっていますさん―――、テイラーさん」
それは静かな声だった。
今まで聞いたシオンの声の中で、最も静かな音の声。
それが彼の本質のものであると気付いたとしても誰が指摘できようか。 あまりにも抑揚がなく、感情が失せ、逆に、怒りのようにも思えるそれは何なのだと――誰が、問うことが出来るだろうか。
彼の妻以外はにはおそらく無理だ。
グラッドもテイラーも、あまりにも静かなそれに一瞬、息をすることを忘れてしまう。
「そのシノビの捕獲、私が責任持ってお引き受けいたします」
春の夜は、今宵も更けようとしていた。