皆さん


意識がなくなるほどのヤケ酒は、あんまりするもんじゃないです









 眩しい光が瞼に触れて、空にさえずる鳥の声が耳に届く。
 今日という一日はいつもと同じように、あたしの意識が浮上することから始まった。

「……ん…、ぃた…」

 けれど、今日というこの日は一体どうしたことか。
 目覚めたばかりの体は痛みを訴えて、全身に巡るのは軽い疲労を伴う倦怠感。
 起き上がるのも億劫になるほどのそれに負けじと両手をついてよろよろと体を起こそうとすると、手のひらに、温かい感触が伝わって、寝ぼけた頭に奇妙な違和感。
 ――あれ、なにこれ…?
 心地好い温もりに内心、首を傾げつつ。
 眠気に負けっぱなしで閉じてなかなか開かない目のまま、うつ伏せになっていた身体を起こす。 すると、肩に掛かっていた薄いブランケットが衣擦れの音をたててあたしの肩から落ちていった。

「……ええと、今何時……、ッアイタタタタ」

 目覚めたばかりの身体と同じで頭が鐘を叩くような痛みを訴える。
 二日酔いにがんがんと響く頭痛にこめかみを押さえながら、寝ぼけ眼で時計を探す。 しかしあたしの手はいつもの位置にあるはずの時計を触ることなく空ぶって、何を掴まないまま終わってしまった。

 …おかしいなぁ。 と、それを考えて記憶を探って、納得する。
 あぁそうか、昨日サイジェントに遊びにきたんだっけ?
 ならあたしの時計なんかあるはずない。 だってここはゼラムじゃないんだし。 南スラムのフラットに泊まったのならこのまま二度寝してもリプレが起こしてくれるかな…。

「うー、さむっ…」

 剥き出しの肩にひやりとした空気が染み込んで全身がぶるりと震えた。
 ゼラムより少し遅れた冬をむかえたサイジェントの朝は寒い。 頭痛もするし体はだるいし、起こされるまではもう一回寝ていようと、肩から落ちたブランケットをかぶってもう一度横になろうとして―――ガバッ!と体を跳ね起こした。
 ようやく目覚めて回り始めた頭が、今の自分の姿に絶句する。

 裸、だった。
 しかもパジャマも着ていなければ、下着すら身に着けていない。
 さらには、裸で、ベッド―――ではなく、いつもと違う場所であたしは眠っていた。


「…ん…」


 あたしの下に、男が、いる。
 顔見知りの男。 しかも、あたしにとっては天敵とも呼べる位置にいる男。
 いつも険のある表情が今は見たこともないくらい穏やかで、朝日が差し込んで彼の白髪をきれいに照らしている。 こんな寝顔をする男だったのか、とちょっとだけ見惚れそうになってそんな自分の頬を無言でベシッと自分で引っ叩いた。

 違う。 違うんだ、見惚れている場合じゃなくて。
 何故、お互いに裸なのか! 何故よりにもよってこの男の上で寝ていたのか! とか、声を大にしてそんなツッコミをするべきなんだわ。
 でも脳をフル回転させたまましばらく考えても、「どうしてこうなった…」という苦悩するだけ。
 ツッコミどころじゃないのだ。 考えれば考えるほど、昨日の夜にナニがあったのかそれだけが気になって気になって気になって仕方がない…もうひたすら、何故何故何故何でどうしてこんなところであたし寝てるわけっていうか、もしかしてもしかしてもしかしてやっちゃった? ヤッちゃったんかァアアアァあたしィィィ!!


(……………これは夢だ)


 人間とは、 全力否定したくなる状況の中でポジティブに考え出したら全力でポジティブになれる生き物なのです。
 またの名を現実逃避といいますが、所詮はそんな、自分に都合のいい生き物なのです。

 手のひらに、どくどくと力強く響く鼓動が伝わっても。
 眠りを誘うほど、じんわりと心地好い温かさが体に染み込んできてもポジティブに、これは夢ね★と現実をへし折ってやりますとも。


 レッツ ポジティブ シンキング。


 はい、これ夢決定。


 アハハハそうかぁ夢ならさっさと覚めなくちゃね〜――次の瞬間、あたしはバチーン!と自分の両頬を叩いた。
 景気良く高らかに鳴った音で下にいる彼が顔を歪めてうるさそうに呻いたが、あたしの知ったことではない―――そう、これは夢これは夢これは夢……痛む頬が、「これは現実だ!」と叫んでいるのは完全無視の方向で。

(よしよし、これで夢は覚めるはず…)

 期待に胸をふくらませて、あたしはそぉっと目を開く。
 なのに―――なんてこと。 状況は何も変わっちゃいなかった。
 夢から覚めないだなんてなんてことなの。 どれだけ深い眠りなのあたし。 死んだように眠ってるってどんなに疲れているの。 お疲れ様あたし。

「………ウソでしょ……」

 もうヤダ。 なんでこんなコトになってんの。
 若干涙目になりながら唾をごくりと息を飲み下しつつ、これをやったらいよいよ言い逃れなんてできないぞと囁く己の心をねじ伏せ、意を決してそぉっ…と――彼の頬の部分を突く。

 指先に伝わったのは、確かに人のぬくもりだった。
 少々痩せているけれども、頬骨を覆う肉の生々しい感触にますます(ンギャァアァァこれは夢これは夢これは夢これはドリーム!!)と大声で叫びたい衝動が勢いを増したがどうしようもなかった。 本物の人肌だった。

(で、でででも夢でしかないんじゃないかだってありえないこんな状況ありない……!!)


 あたしは裸でいて。

 よりにもよって。
 この男の身体の上で、一晩過ごしたかもしれないなんて―――ンギャアァァアァカミサマァァァァ嘘だと言ってェェェェェ!!


(おおおおおオチツケ、アタシ…!)

 現実逃避にも限界がきて、ついに現実を受け入れるしかなかった。
 パニックを起こしそうになるのをどうにか堪え、相手を起こさぬように微動だにせず、視線だけをあちこちにめぐらせる。

 お世辞にも綺麗とは言いがたい薄汚れた壁が目についた。
 朝日が差し込んでも薄暗い部屋は狭く、細々としたものが散らかっている。
 ベッドは見当たらず、テーブルの上の燭台に立てられているロウソクは既に、小さな塊となって朽ちていた。 その塊の隣に、いくつもの空の酒瓶が。(あぁイヤだ、あれが原因だなんて考えたくもない)

 あたしたちがいるのはベッドじゃなくて、少しボロボロになっている小さなソファーだ。
 ソファーで眠っているだけならどんなに良かったことか。
 けれどあたしは確かに、しなだれかかるように男の上で眠っていた。
 顔を見れば睨み合うまで互いの相性が悪い男を寝床にしていたのだ――本格的に状況を理解し始めた頭で、冷や汗が、顔にどっと噴き出す。
 なんていうかもう今なら滝のように零れ落ちて、あまりの水分量に体中の水分がなくなってしまうんじゃないかと思うほど。

(ど、どうしてここにいるのかも心当たりがまっったくないんだけど…でも、でも、もしかしたら、もしかしたら全裸だけですんでるという可能性は…)

 最後のボーダーラインさえ越えていなければ救いはある。
 確認するのも怖かったが、あたしはおそるおそる、ブランケットに覆われていた自分の身体を見下ろす――。

(う、ウソでしょ…)

 やたら生々しい噛み痕や鬱血痕にくらりと眩暈が。
 全然覚えてないのにぃぃぃ! とやっぱり心の中で叫んぶあたしとは対照的に彼は熟睡しているのか、混乱に口から泡を吹いてしまいかねないあたしの状況にまるで気づいていない。
 再び、深く寝息をたてている白髪の男を見下ろす。
 陽に触れたことがないのではないかと思わせるほどの白い肌で整えられた、精悍な顔立ち。 呼吸のため薄く開いた唇は妙に艶やかに見えて、あれが自分の肌に触れたのかと思わず俯いた。

 彼の名は、バノッサ。
 顔を合わせれば互いに毒づき、睨み合うまで相性が悪い男。
 そんな彼と共に、今、こうして裸で一緒に寝ているっていうことは……やっぱり……酔いにまかせてオッケーしちゃったのかしら……。


(―――ん? 裸?)


 もっととんでもない状況に気がついてしまった気がする。
 今のあたしは、バノッサの体の上で寝転んだ状態だ……それを理解すれば、あたしの身体に触れているのは当然、彼の素肌。 彼の体。 彼の足、彼の―――。



 ……▼※◆%*×ーーーーーーー!!!(言葉にならない叫び)



 あああああああもういやだもういやだ早く服を着たい帰りたい。
 でも動くと確実に起こす。 今はぐっすり寝息たてて寝てるけど、動くと起きる。 絶対起きる!! っていうか…腰が痛いって、どんだけ…!? 無理さすなよ!

「…ぐー…」
「……なんでのん気に寝てられるわけ?」

 目つき悪くて凶悪面だが、眠っているときはほんとに綺麗な顔立ちだ。
 互いに睨み合ってばかりだったから、彼のこんな部分をまじまじと見る機会なんてなかった。 おもわず、少しだけ怒りを忘れて凝視してしまう。

(…きれいな顔…)

 本当は、この男のことは嫌いじゃない。
 けれどそれでもいがみ合ってしまうのは、向こうが突っかかってくるからだ。
 変に言いかがりをつけられなければあたしだって少しは素直に…なれたかもしれないのだ。 カノンに会うついでに顔を合わせるのが今のところ唯一の接点だけど、そんな唯一の機会でさえバノッサはあたしの顔を見ると、苛立ったみたいに舌を打つ。

(嫌われてるのは分かってるけど…)

 でも、あんな露骨に表現されるとあたしだって悲しいし、何故だか無性に腹が立つ。
 一度くらいは歓迎してくれたっていいんじゃないかと思うのはあたしの勝手なのか。

 「なんだかなぁ」とため息を吐きつつ、もう一度、彼の頬をそっと撫でた。
 変に脂がのってない、きれいな肌。
 目にかかっている白髪を掻き上げてやると、さらりと指をすり抜けて落ちていった。 髪が額に掛かる感触が眠れる彼の意識をくすぐったのか、白い睫毛が一度震えると、その瞼はゆっくりとひらかれて。

(あ)

 しまった、と思った。
 何やってるんだあたしは。 そう呪っても、もう遅い。



 赤い瞳が、彼の身体の上に乗っかっているあたしを、射る。



「―――」
「ぅ、あ……(なんていえばいいのこの状況! ヘルプミー!)」

 バノッサがぼんやりと、完全硬直しているあたしを見つめる。
 ―――ふと、彼の手が、頬を撫でていたあたしの指をするりと絡めとった。
 それは、ごく自然に。 そうすることが日課だったみたいに。 指が絡まりあい、大きな手のひらと合わさる感触にあたしの顔はますます赤くなって、息が詰まった。

 同時に昨夜の出来事がフラッシュバック。
 よりにもよって、今思い出すんかいというツッコミも無意味だ。
 他人の手によって覚えてしまった体の熱が胸の奥からじんと広がっていく。 そこに。

「…、よォ」

 寝起きで擦れた低い、声。
 それに思わず身を竦ませると、バノッサは仰向けのまま、にぃっと笑って、絡めとったあたしの指を自分の口元に運び逃げようとする指先に口づける。

「な」

 反射的に手を引っ込めようと力をこめてもビクともしない。
 そんな抵抗を素知らぬ顔で無視をして、今度は吸うように音を立てて指先に口づけた。 ちゅ…、と響くその音に体中の熱が一気に顔に集中して。

 あたしの羞恥も、大爆発。

「な、なななななっ」
「なんだァ? ツレねえな、おい…昨日はあんなに」
ギャーーーーー! やめてやめて! あたし全然覚えてないから!

 ”全然”覚えてないというのは、嘘。
 身体は熱と悦びをすっかり覚えてしまっていて、触れられた指先が熱くて、熱くて、痺れるように熱くて仕方がない。
 だけども全てが限界だった。
 今度こそ本気の力でガバァッと身を起こし、ブランケットを手繰り寄せてそのままバノッサとソファから飛び降りると、部屋の隅まで逃げるように移動する。

 視界の隅に映る窓の向こうは、確かに知っている景色だった。
 ここは間違えようもなく、北スラムにあるバノッサの家だ。
 自分がどうしてここにいるのかも分からなくて、ただただ、頭からかぶったブランケットの中で思い出そうとしていれば、バノッサは逃げるあたしに目もくれず、欠伸を噛み殺しながら身なりを整えていく。

(ほんと、もう、勘弁して…!)

 バノッサのベルトの音に死にたくなる。
 もう恥ずかしくて恥ずかしくてしょうがなくて、涙が浮かんだ。
 それを知られることが嫌で思わず、責めるような口調で抗議してしまう。

「し、信じらんない…! 酔わせてこんなことするなんて…!」
「はァ? 馬鹿か手前は」

 鼻で笑われて、今度は怒りが胸に沸いた。
 バノッサは部屋の隅でうずくまって睨みつけるあたしを、さらに嘲笑して。

「酒持っておしかけてきて、泣きながら抱けと迫ってきたのは手前だろうが」

 ―――思わず絶句。

「女が抱けと迫ってくるのを放っておくなんざ、男の恥だろ」

 …それはいわゆる据え膳デスカー?、と酔った自分の行動に卒倒しそうだった。

 何で酒持っておしかけたんだあたし。
 あぁそうだ、ものすごい嫌な事があってそれでセシルのところでお酒をがぶがぶと飲んで残りを、なんでかバノッサ宅で飲もうとして―――それってあたしが悪いんじゃないのさ! こんな男の前でなんて無防備なことを…! 君は馬鹿か…!(思わずネス口調)

 ブランケットを肩に羽織ったまま壁に手をついて猿がよくやる反省ポーズをとり、その状態でブツブツとうわ言のように自らの軽率さを呪っていたので、バノッサが足音なく距離を詰めてきたことに気づけなかった。
 彼はそっと忍び寄り、後ろからあたしの顔の両脇にバン!と手をついてあたしの逃げ道を塞いでしまう。 大きな音に驚きすぎて、ひっと息が詰まった。

「え…」
「ホントに何も覚えてねえんだな」

 振り返れば、赤い瞳が射るようにあたしの瞳を見下ろしていた。
 その瞳に愉快そうな色が浮かぶのは、彼自身が、この状況を心から楽しんでいる証拠。
 バノッサは背を向けたまま硬直してしまっているあたしに頬を寄せ、耳の後ろに吐息を吹きかけるように告げる。

「俺の名を呼んでは喘いでたぜぇ? 何度も何度も」
「う、ウソ…! そんなの…っ」
「ついでにこのまま俺のモノになれ―――、

 ついでって何よ。 冗談じゃない。
 そう叫ぶ前に顎を掴まれそのままバノッサに向き合わされると、重なる肉厚な感触に全身が痺れた。

 全ての抗議を却下して、噛み付くようなその口づけ。
 突然のそれに、ゴン、と後頭部を壁にぶつける音と衝撃があたしを襲う。 けれど、どっちかというと口づけられた衝撃のほうがずっと大きい。
 慌ててバノッサの白髪を掴んで抵抗するけれど、唇を割られ、無理矢理絡め取ってくる舌は何をするにも許してくれない。 逃げようとするあたしを追いかけて追いつめて熱を引き出さんとしてくる。

「っ、ん、…ンーッ…!」

 熱。
 息苦しさ。
 眩暈。
 それらはやがて、快楽に。

 あぁ、これは、これは、昨日と同じ―――。


「〜〜〜っぷはっ、ァ…!」

 ようやく解放されたあたしは、その場にずるりと座り込んでしまった。
 根底から味わうような口づけに思考は見事に吹っ飛んで、放心状態になる。
 なのに、嫌だと思わない自分がいることのほうが衝撃で、どうして、こんな展開になるのよ――そんな文句が、口から出た。

「バノ、ッサ」
「立てよ」

 動けない。
 そんな意思表示で首を振るあたしに、バノッサはあたしのつむじを覗き込むように屈み込んだと思うと、ブランケットごとあたしを抱え上げ、立ち上がると軽い足取りでソファーに………ええええ!? 何でこんな展開!? もうワンラウンド!?


「あの一回なんかで終わらせてたまるかよ」

「あ、ああああんたはあたしなんかのどこを気に入ったのですかコノヤロウ…!」


 言葉がおかしいのは気にしない。
 あたしのセリフに構わず、ソファーに落とされて身体がワンバウンド。
 すぐにバノッサがあたしの上に乗り込んできて、ブランケットに包まれたあたしからそれを剥ぐ。 露になる肌を手で覆い隠してもすぐに外されて、噛み付くように肌を滑る唇に喉の奥から悲鳴が出た。


「ひ、やぁっ」

「どこが気に入ったかと、いえばだな」

「な、何―――っ、」


 唇と共に身体を這い回る手に、思考が完全に塗りつぶされた。
 自分がおかしくなりそうな感覚が奥底からじわじわと這い登り、それから逃れようと身を捩るたびにぎしぎしと音をたてるソファーがとても厭らしいもののように思えた。 でも、自分はもっと厭らしい女だったと頭の片隅で思い出す。 取り戻しつつある記憶を振り払うようにバノッサの背中に爪をたてると「煽るな」と低い声に笑われた。

「…ま、何でもいいだろ」
「でも、あたしのこと…嫌いだって」
「誰がいつ、んなこと言ったんだよ。 …まあ、常々面倒くせェ女だと思ってたが」

 嫌いじゃないって、そんなのウソ。
 いつだってあたしの顔を見ると、嫌そうな顔してた。
 今だって面倒くさいとか言われた…なのに、キスをしてくる仕草が優しいとか、何それ。 意味が分からないんだけど。

(駄目。 ほんとに、ダメだから)

 バノッサの触れたところが溶けてしまいそうなほど熱をあげていく。
 重なる肌も心地よくて、大きな手のひらに肌を撫でられるのも心地よくて、口から出る言葉とは裏腹に完全に受け入れ態勢になっていることは相当まずい状況だと頭の奥が警鐘を鳴らしている。
 訳も分からずすがるようにぎゅうっとバノッサの頭を抱きしめればふたたび昨夜の記憶が鮮明に甦って―――あぁ、確かにあたし、迫ったわ……と、自分のしでかしたことに目の前が真っ暗になった。

 記憶の中のあたし。
 大泣きしながら”抱かなかったらあたしが抱いてやるわよーー!”とか叫んでいる―――女って、なりふり構わなくなってしまったら終わりだぁ…と理解した。

「〜〜ううぅ、最低っ、あたしのバカ…!」
「本当にバカな女だな手前は」
「う、…」
「……まぁ、どこを気に入ったかと強いて言うなら…」

 顔を真っ赤にしてバノッサを見上げるあたしを、赤い瞳がじっと見つめたあと。
 バノッサは首筋の肌に唇を落とし、噛みつくように吸い上げて痕を残した。 びく、とあたしの震える肩を両手で押さえつけながらそれを何度か繰り返し赤い痕が点々と残るそれを見てやがて満足したのか顔を離すと、彼は、素っ気無く。

 でも、熱と情欲をこめた低い、あの声で。




「―――全部、だ」




 そのまま、第2ラウンド開始。





Good Morning? Good Morning!

あとがき
2004.12.4アップ。
2006.8.18加筆修正。