「近々、ブラザー・バルトロマイを別物の身体に入れ替えようと思う」

 それは気持ちの良い天気のまま過ぎていくはずだった、とある日の午後。
 我らが上司、フランチェスコ・ディ・メディチ枢機卿が突然そんなことを言い出した。
 彼のそばで書類整理をしていたあたしはというと、「へ?」となんとも間の抜けた声が出てしまった。 枢機卿に対していささか無礼な気もするがそれほどまでに衝撃的な内容だったのだ。
 ”バルトロマイを別物の身体に入れ替える――…”、猊下のあの顔で一発ギャグは有り得ないのできっとそういう計画が実行されようとしているのだろう。

 しかし、なんてこった…ドゥオがドゥオじゃなくなるなんて。
 あまりにも衝撃的過ぎたので、猊下へ返すあたしの声は少し震えていたと思う。

「い、入れ替えるって…何にですか?」

 っていうか、そんなホイホイ入れ替えられるものなんですかHCシリーズって。
 もしかして動物になっちゃうんですか。
 今流行りのアルパカに入れ替えるとか言われたらどうすればいいんだろう…だめだ、笑いすぎて確実に仕事にならない。 もふもふした異端審問官だなんて畏怖の対象どころか和みまくりだよイメチェンにもほどがある。 でもそれも悪くない…とか考えてるあたしも相当アレでした。 疲れてるのか?

「アルパカですか?! あ、でも、猫でも犬でも捨てがたいんですけど」
「そうではない。 以前から研究を進めてきた、女の身体にだ。
 男よりは女のほうが色々と都合が良いことがあるからな。 面倒な諸侯をたぶらかすにはちょうどいい」

 え、えー…ドゥオ、女の子になっちゃうんですか。
 ものすごく美人になるとは思うけど、あの顔が好みタイプだったのになぁ……などなど、ものすごく何か言いたそうな顔をするあたしに猊下はくっと喉奥を鳴らして、目を通していた書類を放るように机に広げた。 (あれ、猊下もしかして仕事に飽きたんですか)

「設計図をみたが、お前よりいい体をしていたな」
(猊下ァァ! それ、セクハラですけどォォ!)
「だが男だろうが女だろうが、見た目が変わるだけで何も変わることはないだろうな――しょせん、くだらぬ好奇心か」

 ぎしりと椅子を揺らしてもたれる猊下は独り言のようにそう呟くと、本当に、退屈そうに息を吐いた。
 …え、やっぱりこれ本当なの?
 エイプリルフールとかじゃなくてドゥオが本当にアルパカ…じゃなくてドゥ男からドゥ子になっちゃうフラグなんですか。 ドゥ子とか! 若干、舌を噛みそう!

「まあ、女性のドゥオでも心強いには変わりないですけど…。
 でもきっとすごく美人でしょうね。 そんな人に迫られたら性別関係なしであたしも骨抜きにされそうです」

 女性になったことでより妖しい雰囲気とか醸し出すに違いない。
 諸侯をたぶらかす目的も兼ねてなんだから、ほんとにナイスバディで、腰も細くて胸とかおっきいんだろうなぁ……わー、パウラと並ぶと迫力がありそう。 なんか、それはそれで楽しみかもしれない。 そんな人に迫られたらあたしだって新しい世界の扉を開いちゃいそうな…いやいやいやいやいや、ちょっと待って。 開いちゃったらまずくないだろうか。 そこは閉じておくべきなのでは。

 いくらHCシリーズの彼らが好みの顔をしてるからってあたしってば…!と。
 微妙なところで葛藤しているあたしの横顔を眺めていた猊下が、なにやら納得したように頷いて。

「それは面白そうだな」
「はい?」
「冗談のつもりで言ってみただけだが、女になったバルトロマイに乱されるお前を見る、というのも悪くはない。 この案件は前向きに検討しよう」
「ええええぇぇぇ猊下! 今のは冗談だったんですか!
 猊下でも冗談言えたんですか…じゃなくて、それはちょっと待ってください! 嫌な予感がするのでそれだけは……アーッ! 女体化計画の書類に判子押さないでくださいぃぃ!!」

 嘘が本当になってしまったお話でした

あとがき
エイプリルのお話をー…と思って出来上がったらエイプリル関係なかった。
トレスやドゥオ女体化とかありえないけど面白そうな気がする。
特に周囲の反応が。アベルとか目玉飛び出すだろうな。笑。
「ええぇぇ、どなたですかこのキレイなおねえさんは…え゛、うそ、トレスくんんんんんんん!!!??(目玉ドーンッ!)」みたいな。

猊下が冗談を言うはずがないんだぜ…。
と思いながらも、猊下もそんなときがあるよ!とごまかしてみる。
うちの夢主は猊下と肉体関係があった設定なのですが。
オチ的にはどっちにしてもヒロインがたいへんなことに…猊下とドゥオ(女)の3P…(笑)
2011.04.02アップ
2014.8.4修正再アップ