第78夜 -4-






 透明の雫がぽたりと頬に落ちた。
 それは空からだ。 つられるように視線を向けると、雫は一つ、二つと降り注ぐ量を増し、鈍色に染まる分厚い雲はその身が届く範囲の全域に雨をもたらした。

 ザァァァァ―――…。

 雨は、激しさを増すばかり。
 幼子のように泣き出した天を見上げる男はしばしその場を動かなかったが、周囲の人間は本格的に降り出した雨を嫌がるように駆けて去って行くのを見、やがて、ゆっくりと歩き始めた。
 その歩みは至極緩慢なものだ。 壁伝いに歩を進め、水音をたてて去って行く船乗りたちの存在を目にも止めぬまま―――誰にも気配を悟らせぬまま―――銀色の髪をじっとりと濡らし、彷徨える幽鬼のごとく裏路地へと消えていく。

「…っ」

 裏の世界とも囁かれる範囲に踏み入ったその時、影はぐらりとよろめいた。
 俯いた左頬を押さえていた掌は赤く染まり、おびただしい出血を示している。 血の気を失った白い唇からはぁとこぼれ落ちる吐息は妖しさを帯びて、濡れた首筋に張り付く銀の髪と相まってより妖艶さを醸し出した。

「…、おやおや…」

 不意に零れた呟きの後、呼気をもらす唇が閉ざされる。
 俯いていた顔を上げて血塗れた美貌を雨に晒し、数多の女性が彼の虜になるであろう声を白い喉奥からゆるりと紡ぎ出して彼は、問う。


「貴女に会うのは―――少し、お久しぶりですね」


 地面を激しく打ち付ける、雨音の中にもその声艶は損なわれず。
 神秘性を帯びた薄いアメジストの瞳の視線は路地の奥へと注がれる。 人気のない民家の壁が行く手を阻むように狭めた細い路は表と違い活気もなく、人気もなく、薄暗く物寂しいその路には生き物の影すらも見当たらないのに、旧友に出会ったような気さくさを持って男は見据えていた。

 その視線に応えるように―――見据えた先に歪みが生じた。
 無機物しか存在しない空間が、ぐにゃりと抉れる。
 強引に引き千切るようにぎちぎちと音をたてて大きくなり、ぽっかりと生まれた暗闇の奥からゆらりと浮かび上がるその影は、鮮やかな緋色の衣を躍らせて出現し。


「にゃはははは★ なんとまあ、随分やられちゃったわね〜」


 この上なく愉快だといわんばかりに笑った。
 物寂しい場に不似合いなまで明るいその声は、天気雨の太陽に似た陽気さがある。

 現れた影は―――女だった。
 彼女の生まれ故郷を想像させるシルターンの赤衣を優雅に纏い、ほっそりとした指先には酒が入る徳利(とっくり)の赤紐がしかと握られている。 丸い眼鏡の奥の瞳は恍惚としたとろみを帯びて、薄紅に染まる頬は見据える男とはまた違った妖艶さを醸し、こめかみに垂れる長い髪を揺らして彼女はふわりと地面に降り立った。

 揺れた髪の隙間から、彼女が人間ではないことを示す黄金色の角が鮮やかに映る。
 全身を雨に打たれ神々しい黄金の輝きは雨霧に曇り鈍色に変化してしまったが、女は濡れることを特別に気にしていないようだ。
 逆に、降り注ぐそれが酔いに火照る体に心地良いらしい。
 丸い眼鏡の奥に在る瞳が、左頬をえぐられ血に染まる男の顔を見て目と唇を笑みに歪めた。

「いくら悪魔でもォ、そこまでやられたらある程度痛覚は感じるんじゃないかしらァ?」
「…貴女から来るとは珍しい。 貴女は、私のする事に介入をしないはずでは?」
「にゃはは★ もちろ〜ん。 今更あなたを止めようだなんて思ってもないしィ…」

 からかうような声音を不快に感じたか。
 風のない静かな水面を思わせる紫瞳に冷ややかさが混じるも、女は特に気にしていない。
 にゃはは〜と陽気に笑い仄かな薔薇色に染まる顔は毒気を抜くには充分で、男は――レイムは、溜息を吐いて瞼を伏せた。

「せっかくなので、一つお聞きします――――<アレ>は、何ですか」
「アレ?」
「今の<彼女>の魂…<>の中に在る、異質な存在です。
 私の知る限り<彼女>から<>への介入はあってもあのような…異質者の気配は今までありませんでしたが?」


 ――――から、禍々しい気配が視(み)えた――――。


 <アレ>は、バノッサを「自分の物」だと言っていた。
 彼に手を出された事が気に食わなかったのか。 冷めた眼差しの中に確かな悪意と不快さを浮かべ、レイムを敵と見なし攻撃してきた――その威力は、抗いようもなく強大。
 消滅を避けるだけでも精一杯で、半身をごっそり抉られたまま逃れるしかなかった。 今でこそ顔の半分まで自己再生が出来たもののそれでも治癒が間に合わず、貴重な血識を含んだ血液が雨と共に流れ出ていくばかりだ。

「貴女の占いは、あの存在に触れなかった」
「んー、そう言われてもね〜。 <アレ>は最近になって生まれてきたようなモノだしー…」

 曖昧な返事に、美しい相貌が不審に歪む。
 レイムの自身からぶわりと噴き上だす負の瘴気が濡れた銀色を躍らせ、占師を見る瞳に冷ややかな殺意を滲ませると、女は制止するように細腕の握った徳利を振るった。

「契約違反ではないわよォ?
 【 あなたの存在を黙認黙秘し、あなたが知りたがっていた<彼女>の魂の転生先を占う 】その変わりに、あなたは【 あたしが何をしていても、何処にいても手を出さない 】――それこそクレスメントの末裔にちょぉーっと手を貸したりとかしてもね」

 陶酔していた瞳に賢者と同じ知性の光を浮かべ、占師は口角を持ち上げた。
 薄紅に染まった笑みは色香を帯びて美しい。 それはレイムが<森>で目覚めた数十年前から変わらぬものの一つだ。
 占師は、悪魔王と恐れられるレイムに怯むことなく堂々として、対峙する。

「それともやっぱりあたしあたしを殺す?
 でも、あたしとやりあうのもあなたの本意じゃないでしょう? 一時期リィンバウムで有名になった悪魔王メルギトスだもの。 ここにいる理由が友好的な理由じゃないなんて誰にでも分かること…そうなれば<彼女>や召喚兵器どころじゃなくなって、色んな邪魔が入るでしょうねぇ〜」

「そのとおりですよ。
 それに、<>が死ねばあなたにもう一度占ってもらわなければいけませんし」

 転生先を占うなど並の占者では不可能だ。 人間にも、巫女や天使にも不可能だろう。
 しかし女にはそれが可能だった――黄金色の角が指し示すとおり彼女は潜在能力の高い龍人族で、その中でも高位の存在である龍神だ。
 能力の高さも深い知識も認めるが、正体は不明。 レイムも彼女が何のために動き、何を目的としているのか分からない。 レイムがこの占師を殺さず放置しているのも、正体が不明という点が気になったからだ。 藪(やぶ)をつついて蛇を出すようなマネをしても何の得もない。

 出会ってから数十年経った今でも、正体不明の占い師。
 だが、利用する価値は充分ある。
 自分の邪魔さえしなければ彼女が何をしていようと構わない。

「ご贔屓どうも〜★ とびっきりの美酒をお待ちしてるわぁ〜」
「ええ、これからもよろしく頼みますよ」

 そこでふと、女―――メイメイは思い立ったように天を見上げた。
 重圧的な厚みを伴った曇天の雨はまだ降り止まず、彼らの頬を打ち付ける。
 眼鏡を曇らせるにも関わらず空を見上げている彼女の姿に、わずかに眉をひそめれば。


「―――あたしの考えでは、<アレ>は副産物のようだと思うわねぇ」


 泣き止まぬ空を見上げたままの唇から、言葉が紡がれる。

「副産物、ですか」
「ええ――四つの異界とリィンバウムを巡る輪廻の輪。 転生。
 そもそも転生っていうのは、遥か昔、世界の意志たる存在であるエルゴが自分たちと同等の強い輝きを持つ魂を生み出すために作られたモノよ。 今までもそれなりに育った者もいれば途中で途絶えた者もいたり、輝きが曇る者もいたり……ようは、同等の存在を作るためとはいえ、気が遠くなるほど時間がかかるうえ不安定な仕組みのコトね」


 この世に存在するあらゆるものの始まりである―――集合意識体、エルゴ。


 それは、最初は唯の一つの名前だった。
 人間のように姓名をつけるのであれば<リィンバウムのエルゴ>と呼ばれる。
 全ての始まりであったエルゴは自らの意識をいくつかに分け、<ロレイラルのエルゴ><サプレスのエルゴ><メイトルパのエルゴ><シルターンのエルゴ>と、各世界の名前の由来となるエルゴを生み出した。

 エルゴは世界で、世界はエルゴそのものだ。
 集合意識体であるそれぞれのエルゴからさらに分かれた意識が形を成し、世界が生まれた。
 やがて多くの生命が誕生し、次々と生まれる生命が途絶えてしまわぬよう、いつかは自分たちと同等の存在として至れるよう、さらに意識を分かつと四つの世界の繋ぐ<転生の輪>を作り上げた。
 ―――そうして世界と生命と、転生の仕組みは誕生した。

「あたしたちにとって<死>は全ての終わり。
 けれどエルゴにとって<死>は全ての始まり…そりゃそうよ、魂の輝きが増す為の大事な工程ですものねぇ」
「そして<彼女>は、エルゴが望む意味の<転生>の唯一の成功例……」
「その通り。 元々から強い輝きを持っていた<彼女>は全ての界を巡りながら転生を繰り返し、遥か昔から今の時代まで磨かれて磨かれて今に至り。
 磨かれきった魂は<>という名前を持った存在を見ての通り、それはそれはとてつもない魔力と輝きを備えた魂の器に宿ったわ」

 メイメイはじっとレイムを見つめる。
 レイムが<>につきまとうのはその魂が目的だと聞いた。
 その魂を喰うつもりか何をするつもりなのかは知らないが、この男は<の魂>に執着していることは確かだ―――いや、<の中に眠る魂>に執着している。と言った方がいいのか。

「けれど強すぎる故の、副産物」
「…」
「<アレ>は<>の力が”意志”を持ったものだとあたしは推測するわ。
 自我を持ち、器を手に入れて<>に成り代わろうとしている……確かに<アレ>も、<>や<彼女>の一部なんだろうけれど、でも”力”は”力”であって、エルゴに作られた”生命”ではないの。 それに―――」
「―――<>がいてこそ、その身に宿る魔力は制御されている…」
「そうね。 今は<>のほうが負けているけれど、身体と魂の所有権は<>のものよ。
  ”力”が”生命”になれるわけがない……なのに自我を持ってしまった故に、”力”が”生命”に成ろうとしている」

 力が上回れば、<>という存在はあっけなく掻き消えるだけだ。
 そうなれば”力”は自分の意志で自由に動けるようになるだろうが、それは一時の物に過ぎない。

 <>という存在は、<>のための魂であり、<>のための器だ。

 <>が<副産物>の力に呑まれた場合。
 <>の身体は破壊され<>の魂は消滅する――自由を得たはずの、<副産物>も消える。 魔力も消える。 存在が消失する―――それは、連なり続けた魂そのものの消滅を指す。

 レイムにとっても見過ごせる話ではない。


「<>が屈してしまえば、”魂”は死ぬ。
 今まではそれが始まりの<死>であったけれど、今度はそうはいかない。
 <彼女>は転生することなく全てを終える――――永(なが)い旅に、幕を下ろす」


 物語を語り終えたかのようにメイメイが唇を閉ざせば、その場に沈黙が落ちた。
 激しさが衰えぬ雨が彼らを打ちつける音は変わらず、絶え間なく流れ落ちる雫を構うことなく、レイムは唇を閉ざしたままだ。
 立ち込める雨霧は彼の存在を儚くさせるも、薄色の紫瞳は虚空を見つめて何かを思案しているよう。


 しばらくして――ふと、その薄い唇が微笑に変化した。


「まったく…どこまでも面倒なお人ですね」


 ぐっしょりと濡れた前髪を掻き上げて、呆れるように肩を竦めた。
 遥か昔から、そして今も一つの魂を追い続けている男の微笑は柔らかいものだったが、そこに何の感情が込められているのかは分からない。 判断が出来ない。
 悪魔の<心>の中など、メイメイは考えた事もないから。

「魂の消滅も、器の破壊もさせる訳にはいきません…どんな技術や魔力を持ってしても、あれほどの力を体内に秘めておける器は作れませんからね」
「にゃははは★ 特別仕様だものねー」
「そういうことです―――大変、参考になりました」

 密かなる協力者に温和な微笑を向けて、レイムはゆらりと歩を進めた。
 まだ完全に治癒が出来ていないらしい。 ふらつく足取りのまま水道橋へと進むレイムの、流れるように揺れる銀色の髪をぼんやりと眺めながら”キレイよねぇ”と手を振って見送った。

 美しい銀が、雨霧の中に掻き消えたことを視認して。
 メイメイは酔いに赤らんだ頬のまま、小さな呟きを落とす。



「―――やっぱり、考え付かないわよねぇ…」



 徳利を傾けて、液体が揺れる振動を掌に感じて溜息を吐く。
 残念。 もう残りが少ない。

「それとも、到達できるわけがないっていう固定観念?
 …それも仕方がないか。 あたしも確証しているわけでもないし」

 エルゴは、無限の力を持つ集合意識体だ。
 目に視えずとも、<意志>は空にも風にも、大地にも海にもエルゴの意志は宿っている。
 だから誰もエルゴの存在を疑わず、常識としてその存在を認知している。
 その存在を、至高の存在だと認知している。
 レイム・メルギトスでさえも、エルゴを忌々しく思っていてもその存在を認めている。

 それは、彼らがエルゴの意志から生まれたからだ。

 ”界の意志”が分かれて生まれた、<世界>…故にエルゴは全ての命の父であり母。
 ”界の意志”が分かれて生まれた、<生命>…故にエルゴは全ての命の元素であり故郷。

 だからこそ、転生の仕組みがあったとしても。
 エルゴから生まれた自分たちが、エルゴと同等に成れるはずがないと思っている。

 至竜のようにその高みに近づくことが出来ても、<同等>に成れるはずがないのだと。





 決シテ、<等シク同ジ>ニナレルハズガナイ、のだと。





「うーん、まさに夢物語…ナイナイ、有り得ないわよねぇ」

 雨に打たれながら否定するように首を振る様は、どこか異様なものに映るだろう。
 しかしそれを気にも留めず、メイメイはゆっくりと空を仰ぐ。 雲はまだ分厚く、勢いは激しくなるばかりだ。

(でも――もし)

 聡いメルギトスでさえも考え付かない、この空想…いやこれはもう、妄想とも言ってもいい。
 静かなる龍神や大天使、エルゴの王でさえエルゴと<同等>ではないのだ。 こんな酔狂なこと、酔いに酔って酔いまくって前後左右の判断がつかなくなった酔っ払いにしか思いつかない妄想だ。
 そんなことを言えてしまうほどまでに、エルゴは雲の上の存在である。


 しかし、にはあらゆる疑問と要素が揃っていた。


 ―――どうして。
 召喚獣たちが<彼女>を求めるのか。 惹かれるのか。 欲するのか。
 ―――どうして。
 誓約された召喚獣たちの誓約そのものを解き、術者の意志に関係なく<彼女>の力のみで送還できたのか。
 ―――どうして。
 本来ならば魔王に取りこまれ死にいくはずだった男が、その場にいなかった<彼女>の力によって救われたのか。
 ―――どうして。
 誓約者の中に宿るサプレスのエルゴが彼女に反応したのか。

 考えてしまえば<彼女>の存在そのものへの疑問は尽きない。
 けれどそれは――エルゴに、とても似ているのだ。

(この世界に、彼女の”意志”が散らばっている…)

 転生を繰り返した結果、<彼女の意志>が各界に散らばっている可能性が高い。
 魔王の事件とサプレスのエルゴが反応した事への説明は、それで片付く。
 <彼女の意志>が魔王に呑まれるはずだった男を助け、ネスティを失ったの感情に<彼女の意志>が呼応して誓約者にまで届いてしまったと考えたなら、有り得ない話ではない。
 さらに、召喚獣がに特別な何かを――郷愁や本能的な食欲など――を抱くのも、の強い魂の輝きや、父であり母であり、元素であり故郷であるエルゴと同じ存在のモノを感じ取ったからではないか。

 もし、メイメイの妄想がその通りであるなら、は唯一、<界の意志>に一番近い存在だ。
 仮にが<エルゴ>に成る可能性があったとしても、今はまだ、成ってはいないだろう。 その証拠に、己の力に振り回されたり、自我を持った<副産物>に呑まれそうではないか。

「昔会った時はそんなことこれっぽっちも思わなかったのに…なにか癪だわぁ〜」

 初めて会った時は、王と一緒に彼女がいた。
 王と笑い合いながら、王の良き友としてその時代を精一杯生きていた。

 その後も何度か、転生した彼女に出会ったことがある。
 元始の魂と容姿の密着が強いせいか今のとまるで変わらぬ外見だったから、メイメイはいつの時代にもすぐに見つけられた。 彼女は転生をして記憶を失ったままで、メイメイの事を知らない人間として笑っていたが(その度に、ガラにもなく切ない気持ちも感じてしまったけれど)。

 メイメイが知らない場所で、<彼女>は永い時間を生きて何度転生を繰り返しただろう。

(それこそ―――エルゴと同じ物に成れるという可能性を孕むほどまでに)

 それにはどれほどの時間と転生回数を費やすのか。
 長く、永く生きてきたメイメイですら考えただけで目眩が起こる。
 転生とは全ての界を巡り続ける。 その過程で、<彼女>の魂は天使にも悪魔にもなっただろうし、龍神や鬼神、竜や獣人、機械、人間…多くの種として生きただろう。
 元々が特別な要素を兼ね備えた魂であったし、異常とも言えるハイペースで転生が繰り返されたとなれば、がエルゴに成れるというこの考え方は妄想という言葉だけで切り捨てられない。

 だがそうなると―――もう一つの事実が、浮かび上がる。
 もとより、魂が何故、繰り返し転生させられるのか。
 それは先ほど告げたとおり、世界の意志たる存在であるエルゴが望んだからだ。


 <自分たちと同等の強い輝きを持つ魂>を生み出すために。

 輪廻転生のシステムは作られた。

 転生とは、魂が死んで巡るものだ。



 ――――――、<死んで>。



「―――、酷い話」

 転生を繰り返す――――ならば<彼女>は何度<死>んだのだろう。
 メイメイですら考えられない転生回数は、<彼女>の<死んだ>回数を表している。
 殺されたか。 自ら命を絶ったか。 事故で死んだか。 老衰か。 どんな理由にせよ、死んで死んで死んで死んで死んで、また死んで、そんなこと気持ちいいはずがない。
 転生したという自覚は持たないものだが、記憶が覚えていなくとも魂に蓄積されるのだ。 記憶を失っているからこそ幸いだが、記憶が戻るようなことがあれば発狂して彼女はまた死んでしまうかもしれない。 なんてひどいはなしだ。 エルゴを恨みたくなる。



 ザァァァァ―――…。

 雨が強くなる。
 仰いだ顔も、身動き一つしない身体も全てずぶ濡れで、酔いの火照りはとうに冷め切っていた。 徳利の紐を握る指の力はかじかんで感覚もなく、ただ、降り注ぐ空を虚ろに見つめ続ける。



「本当にひどい話。

 ―――でも、また会えて嬉しいって思うあたしはもっと酷いわね」



 自嘲的に唇を歪めて呟く占師の、遥か頭上。


 打ちつける雨を物ともしない白翼が、鈍色の空を駆け抜けた。













NEXT

78話の4。
次こそ終了です!


↓独り言。

サモンナイトの世界観自体がはっきりと記されていないので、私なりに解釈してみました。
エルゴとか転生の仕組みとか、色々なサイトさんの考え方を読んで色々と考えてみた結果なのですが、どうにもいまいち上手くまとまっていないような…リンカールートとかサモ4とかまともにクリアできていないので穴だらけです。ご容赦を!
エルゴの転生とか本当穴ボコですよ。リィンバウム解説書とか出ればいいのにな…!

さんの正体も、エルゴ一歩手前の存在だったと思っていただければ。(一言で終わった!)
連載を始めた当初はこんな設定ではなかったのですが、いつの間にか最強?設定に。(実は好きみたいです主人公最強設定(笑))それにこうして書き直しを続けていくうちに3、4とシリーズが出たり色んなキャラクターが出てサモンナイトへの物の見方も変わったりして、大分考え方も変わりました。
ドラマCDでご先祖の登場で召喚兵器そのもののイメージ変わったし。(アルミネェェ…!/号泣)

メイメイとレイムの関係なのですが、これは以前から「この人たちは絡まないんだろうか…」と思っていたのでこの話で本格的に書いてみました。
いや、不思議な存在であるメイメイさんをレイムが放っておいたのも不思議だなーと。
たぶん、メイメイは完璧なサポート役として位置づけされていたと思うので、物語の都合上、出会うこともなかったのでしょうね。当サイトではひっそり知り合い設定で参ります。(オレ設定行った!)
メイメイの正体についてもサモ4のセイロンでちょろっと語られただけでしたし、彼女とエルゴの王の関係も明らかにされていないので、そのあたりは曖昧にとどめました。(いざ分かった時テンパりますよ!/お前ェェ…!)でも王とはお知り合い的な感じだったなぁ…うーん。謎です。


これは秋乃の妄想100%ギッシリな展開や設定ということをご了承ください。
後々にまた色々と明らかにされていくと思いますし…その時はその時で!ポジティブ…!
まだ明らかにしていない部分もありますが、そちらはまた追々ということで…。

ここまで読んで頂き、誠にありがとうございました。
さぁ今度こそ仕上げにかかりますぞ…!!(本当はもっと短かったのにな…)


2008.2.3