あれは昔のことだ。


 ギィンッ! と銀の刃がぶつかる度に、耳障りで、背筋がぞっとする・・そんな音が鼓膜を叩く。
 剣を抜き、交えている間は一時の気の緩みも許されない。さもなくば、次に見るのは敵の姿ではなく、永遠に続くただの暗闇だ。
 だから、相手の視線を。 自分へと襲い掛かってくる刃の先を見極めて迎え撃ち、それを弾いて、今度は己が反撃をする。 大きく一歩踏み出して、同時に剣を振りかぶりブゥンと重い音をたてて風ごと切り裂く。 

 くぐもった悲鳴が、鼓膜を叩いて脳に伝わる・・それでもまだ、振るうことをやめない。
 相手の血液に白刃が赤に濡れて、白の鎧も赤に染められて、返り血を浴びながらも相手が平伏し、自分が最後まで立っていられるようになるまで、繰り返す。

 そうして、”戦闘不能”と判断をしたそのときにようやく、戦いは終わる。


 あとには、血に汚れた自分が残る。
 そんな自分の姿を見て、自由に憧れていた・・自分を親友と呼んでくれた彼は”お前、そのカッコあんまり似合わねえよ”と、からかうように笑って言っていた。



 それはもう、随分昔のことだった。







第69夜 -1-







「はぁっ!」

 振り下ろすと同時に発せられた声に我に返り、シャムロックはわずかに膝を落として後退した。
 同時にシャムロックの柔らかな茶の髪先が落ちて行くのが視界の隅に映る―――わずかに切り落とされたのは自分の髪だ。 反応が遅れていたら目がやられていたかもしれない。
 しかし相手は避けられてしまうことを予想していたようだ。 振り切った剣をそのまま眼前で構え、シャムロックの剣を一度弾くとすぐに猛攻をしかけ、反撃する隙を与えぬまま攻め込んでくる。
 彼が剣を振りかぶるたびに、漆黒色の鎧にも鮮やかな、紫がかった長い赤髪がシャムロックの視界で舞う。

(強い・・!)

 相手の剣技に呻くしかなかった。
 大柄な体格でも素早く、小回りが利く。 目で動きを追いながら神経を研ぎ澄ませ、襲い来る刃を受け止めて弾くことで精一杯だ。

 受ける刃は、酷く重い。 彼はただ重い一撃を繰り返し放つ。
 ―――ルヴァイドは確実に自分より上の技量を持つ騎士だ、それを認めざるを得なかった。

(これが、デグレアの騎士の力―――!)

 一度呻いて白刃を弾き返すのと同時にシャムロックは大きく後退し、愛剣を構えて再び相手を見据えた。
 五分という、短い時間を切り結んだだけだというのに汗はこめかみを伝い、呼吸は荒く繰り返される。 相手も同じ状態ではあるが、体力は互角でも技量は確実に相手が一回り上だ。

(だが・・負けるわけにはいかない・・!)

 キッと睨むようにルヴァイドを見れば、ルヴァイドの背後で控えている金の髪の青年と、ロレイラルの機械兵士が自分達の決闘を見守っている姿が自然と、視界に映った。 そんな彼らの背後には、黒の鎧に身を包んだ数多くのデグレア兵が、不気味なまでの静寂を保ちながら佇んでいる。

(例え腕を切り落とされようとも、今、負けるわけにはいかない・・!)

 諦めるな。
 諦めてしまえば、全て終わりだ。
 ルヴァイドが約束を守る保証が、どこにもなくとも。



 でも それでも



 仲間の命、失うわけにはいかない



 多くの命を、散らせるわけにはいかない



 生きる望みがあるのなら



 それを得る事を、諦めてはいけない



 荒く繰り返される、己の呼吸。
 体が酸素を求めている。 体内を巡る血が沸騰しそうなほどまでに沸き立って、ドクドクと体内を流れていくことが。 鼓動が鳴り響いていることがよくわかる。

 目を伏せて、息を吸って次に、呼吸を止めた。
 そうすればシャムロックの全てが静寂に包まれて、けれど吐き出したその瞬間に再び騒ぎ出す。

 体内に、音が満ちる。

(・・・似合わなくても、いいんです・・フォルテ様)

 次いで、腹の底から声を張り上げ、ルヴァイドに切りかかるシャムロックは胸中に呟いた。
 ギィンッ! と銀の刃がぶつかる度に、耳障りで、けれど背筋がぞっとする・・初めて人を切ったときはとても怖くて、肉を断つ感触に嫌悪していて、血の匂いに何度も吐きそうになって―――けれど今では、聞き慣れて、嗅ぎ慣れた。
 それらを堪えようと思ったのは、騎士になりたいと望んだからだ。


(似合わなくても、いいんです)


 大地を蹴って、大絶壁から轟く獣のような唸り声を思わせる風を切り裂くように、シャムロックは振りかぶる。
 瞳は黒の鎧の騎士を見据えて、獣のごとく雄雄しく声を張り上げながら、切りかかる。



(良いのです―――それで私が、誰かを守ることが出来るのなら)



 それで、誰かが幸いになれるのなら















「シャムロック様・・・」

 名を呟くと同時に、アルバートはぎりっ・・と唇を噛み締めた。
 唇から血が滲み口内に錆びた鉄の味が広がっていく・・けれどそれでも、彼は噛み締める事をやめなかった。 やめられなかった。
 砦の屋上からも見える決闘に、ただ、見守る事しかできないことが悔しくて。

「アルバート様、私はもう、見ていられませんっ」
「・・それは、わかっている・・」
「シャムロック様は死ぬつもりでおられます、私達のために・・・アルバート様!」

 シャムロックを慕っていた兵士の一人が、苦痛に顔を歪めて訴える。
 彼の気持ちは痛いほどわかる・・自分も、剣を持って彼を救い、そしてあの軍を迎え撃ちたい。 捕虜になっても生き残ることが出来るかもわからない・・ならば、敬愛する騎士と共に戦って死にたい。

 死ぬのは恐ろしい・・けれどこれは、あんまりではないか。

(―――っ申し訳ありません、シャムロック様)

 アルバートは、剣の柄を握り、それを引き抜いた。
 漆黒色の鞘から晒されるのは曇り一つない白刃だ。 しかしそれは、これから血に汚れるだろう。
 血で赤く汚れ、切った人間の脂で汚れ、やがては黒く汚れ、最後には折れる・・・けれどそれも、承知だ。

「命令違反覚悟で向かう者がいるなら、私について来い!」

 剣を真っ直ぐに掲げてそう告げれば、わぁっ! と歓声が沸いた。
 もはや、彼一人に全てを任せるわけには行かない。 いや、彼を見守る自分達が耐えられない。
 死ぬことは恐ろしい。 けれど、それでも行かなければ。

 兵士達の瞳に戦の光りが灯ったそのとき。


「うわぁー、人間ってほんと、見てて飽きないなーぁ!」


 ・・・その場に似つかわしくない声が、志気高ぶるその場を静寂に沈めた。
 少女の声? とアルバートが声が発せられたと思われる方向へ振り向けば、砦の外壁の凹凸部分には、小柄な少女がちょこんと座り込んでいた。 見慣れぬ顔だった。

「・・君は・・」
「あんまりにも暇だから遊びに来て見ればぁルヴァイドちゃんだけ楽しんでてさー、ずるいよねぇー?」

 頬杖をついて、少女は唇を尖らせて。 けれど次には、にんまりと笑みを広げて。


「だからぁ、アタシも混ぜてくれる?」


 その言葉を合図にするかのように       悲鳴が、砦内部に木霊した。
 悲痛で、恐怖に満ちて、助けてくれと懇願している・・悲鳴が、悲鳴だけが、砦に満ちていく。 その場にいた全員は何が起こったのか理解できていない。 だが屋上唯一の出入り口からのっそりと現れた”それ”に、彼らの体は凍りついた。

 ”それ”が現れた瞬間に、血の匂いが一帯に溢れ、彼らを恐怖に縛り付けた。
 口まわりはすでに血と唾液に濡れて、その凶悪な牙が覗く口には身動き一つしない男の体が人形のように咥えられて、アルバートたちを視界に認めると投げ捨てて・・低く唸る。 金の瞳は狂気に染まり、飢えているのかと思わせる、獰猛さだけが満ちていた。

 ”それ”は、獣だった。
 リィンバウムでは見られぬ獣・・メイトルパの魔獣と呼ばれる獣だ。

「お前、召喚師か!」

 全てを理解したアルバートは、少女へと剣を振りかぶる。
 副官、副隊長の任を任された者の剣技は素人では何が起きたのか分からぬほどの早業・・それは少女の身体を切り裂いた―――かのように、思われた。

「・・ねぇ、終わりなのォ?」

 少女が、嘲笑うかのように笑みを深めた。
 アルバートの剣はいつの間にか立ちはだかっていた人型の魔獣の爪によって遮られていた・・間近にある魔獣の顔は、かろうじて人としての顔の形をとどめているだけで、人間には遠い。 瞳には狂気を秘めて、飢えたように唸り声をあげてアルバートを押し返す   あまりにも力強いそれに、人間が敵うはずがなく。

「ぐ・・ああっ!」

 肩口に、鋭い牙が突き刺さる。
 その牙に繋がる顎に力がこもると理解して、腕が食い千切られる寸前、魔獣の腹に剣を突き立てた。 その瞬間に雄叫びに似た悲鳴が魔獣の口から迸り、アルバートを救おうと一人の兵士がその魔獣の目に、槍をつきたてる。

 悲鳴はさらに、空に響く。

「グルアアアアアアアアアアアアアア!」
「アルバート様! 逃げてください! シャムロック様にこの事を」

 兵士の言葉が、そこでぶつりと途切れた。
 目の痛みに悶える魔獣が振りかぶった太い腕に払われて、地面に叩き潰されたのだ。 悲鳴が零れることはなく、 何かが潰れたような音を最期に、彼はそのまま永遠の闇に眠り落ちる。

「・・くっ・・!」
「キャハハハハハハ! ほらほら、早く逃げないと食べられちゃうよォ〜?」

 血まみれの肩を抑えながら、襲い来る獣を片手で握った剣を振るって黙らせて、アルバートは屋上から内部への扉をくぐり、転びそうになりながらも階段を駆け下りる。
 砦の内部も悲惨な有様だ。 獣は生きている人間を追うことに夢中になって、貪っている。 とても見ていられるものではない・・思わず目を背けかけて視界に入ったものは、数日前に共に酒を飲んでバカ話をした仲間が皆、みんな血に汚れて地面に伏せている。 きっともう、動かない。


 ―――なんで、こんな、ことに。


 襲いくる獣を、渾身の力を込めて切り伏せた。
 怒りが胸の中で蠢き、悲しみに視界が滲む・・同時に多量の出血によって眩暈が起こることから、自分はもう長くないだろうと悟る。

「キャハハハハ! みんな、みーんな、食べられちゃえー!」

 恐ろしいほどまでに無邪気な笑い声が、鼓膜に残ってびくりと震えた。
 だがアルバートは恐怖に屈しそうになる体を叱りつけ、砦の裏口へ向かう。 厨房の裏口・・そこにも血まみれで倒れている兵士が数人。 酒瓶を持って倒れていることから、奇襲に対応できないまま死んでいったということになる―――。

 そこで、ガクリと膝をついた。
 全ての力が抜けていった・・絶望だけが、アルバートの全てを支配する。


 自分はもう、だめだ。


 手に力が、入らない。 剣を握っている感覚さえも、もはやない。
 己の最期に思い浮かぶのは家族や恋人の顔ではなく―――何故か、外で自分達のために命を賭けて戦っている、白い騎士の後姿だった。

(・・シャムロック様)

 自分はもう、だめだ。
 けれど外にいる彼は、生き残る事ができるかもしれない。

(シャムロック様・・!)

 本当は怖くてたまらない。
 けれど彼を生かさなければ。 この状況を知らせなければ。

 その意思だけでアルバートは渾身の力で裏口の扉を蹴破った。















(―――何だ?)

 冬季の冷気を帯びた風に、緑混じりの、鈍くくすんだ金髪がさらわれた。
 砂色の外套
(マント)もぶわりと大きく揺れて、フォルテはを肩に担ぎなおしたあとで、炎の煙によって曇天と化した空を淡い緑の瞳に映した―――嫌な予感が、胸の内に溢れる。

(悲鳴・・?)

 比較的緩やかな崖を下っている途中だったので、風の悪戯かもしれない。
 けれどこの、息苦しさは何だ? ・・シャムロックとルヴァイドの二人を視界に入れても、どちらも互角に戦っているばかりだ。
 今のところはまだ互角   早く、彼らの元に辿り着かねば。

 担がれたままのは、ぴくりともしない。
 ただ穏やかに、ゆっくりと呼吸している・・彼女の華奢な、柔らかな体に響く鼓動がフォルテに伝わる。 それにぎゅっと唇を引き締めて、自分が下ってきた道を仰ぎ見て―――誰も追ってきていないことを確認すると再び、緩やかな崖を滑り降りていく。
 転倒しないように、集中する・・一度でも転倒すれば、は大怪我を負うだろう。

(このまま降りればどうにか砦近くに辿り着けるな・・)

 幸い、ローウェン砦一帯を見渡せる場所にフォルテ達はいた。
 多少の時間をかけて回り込めば、イオス達がいる場所にも、ルヴァイド達が戦っている場所にも、ローウェン砦付近の場所にも降りる事が出来るのだった。
 そこでフォルテが選んだ先は、ローウェン砦付近である。

(何が起こるかわからねえからな・・・砦の兵士の状況を見ておかねぇと)

 ルヴァイドたちが、強行突破してきた場合のことを考えておかねばならない。
 の身を案じるなら彼らは躊躇するはずだが―――だが、もしも、砦を陥落させることを優先してくるならば迎え撃って、を裏から逃がさなくては。

(ごめんな、

 傷をつけぬと、約束をした。
 だから、ルヴァイド達の手に渡らぬようにすることも考えておく。 決して、彼らの手に渡る事がないように。 勝手かもしれないがマグナとトリス達ならきっとやってくれるだろう―――。

「・・・・?」

 砂埃をたてながらようやく、平らな地面に降り立ってフォルテは息を潜めた。
 ―――悲鳴だ。 そして、風に乗って濃密な血の匂いが鼻につく・・・それは何故か、砦が佇む方角から。

 視界を砦へと認めたとき、裏口と思われる扉から一人の青年がまろぶように姿を見せた。
 肩口を抑えたままだ・・抑えたそれは血に溢れ、彼の顔色はずいぶんと血の気を失ってしまっていることに、フォルテははっと息を呑む―――あれはもう、確実に死に近づいている人間だ。

 扉を抜け出て、そこで地面に足をつけて青年は地面にどさりと倒れ込んだ。 それでもなお起き上がろうと腕を伸ばすが、体が震えるだけで起き上がることはなかった。

「おい! しっかりしろ!」

 フォルテの声に、青年はびくりと体を震わせてフォルテを見た。
 顔色だけでなく唇も血の気を失い、それでもどうにか生を繋ごうと深く、ゆっくりと呼吸を繰り返して。 その瞳はどこか鬼気迫るものがある・・・だが、駆け寄ったフォルテの姿にその瞳をふっと緩ませて、口元に笑みを浮かべた―――フォルテは彼を知っていて、彼もフォルテを知っていた。

「・・フォルテ、様・・」
「アルバート! おい、何があった!?」
「・・シャムロック様を・・」

 息も絶え絶えに言葉を繋げようとする彼の隣にを横たわらせて、アルバートの衣服を裂いて傷の深さを診る―――助からないとはわかっていてもそれでもやらずにはいられなかった―――アルバートの肩は、深くえぐられ、見るに耐え難いものだった。

「アルバート・・!」
「シャム・・ロ・・様を、助けてくだ・・・・フォルテ様っ!」

 今にも途切れそうだった声が、張り詰めたようにフォルテの名を叫んだ。
 同時に悪寒がぞっと背筋を駆け抜けた・・反射的に抜き身の剣を握り締めて掲げれば、リィンバウムでは見られぬ姿の獣が白刃に喰らいつき、刃をへし折ろうと唸り声を上げて大地を踏ん張っている。 力強いそれにフォルテは押されながらも踏みとどまる。

「何だよ、こいつっ!?」
「デグレアの召喚師の・・魔獣・・っぐ・・他にも、多く・・みんな・・こいつらに」
「喋るなアルバートっ! ・・・・クソッ!」

 一度毒づいて魔獣の口から刃を引き離し、その眉間に大剣の刃を力の限りに突きたてた。
急所の一つを貫かれ、魔獣の短い悲鳴がフォルテの鼓膜を叩くと同時にその巨体は崩れ落ち、荒野に近い痩せたその地面に血の泉を作り上げる―――それに一息をつく間もなく、アルバートが現れた扉から魔獣が再び姿を現し、牙を剥く。

「おいおい、今度は2匹かよ・・」
「・・フォル・・テ、様」
「大丈夫だアルバート。 こいつらを倒したら一緒に、シャムロックのとこまで行くぞ!」

 吼えて、剣を振りかぶるフォルテに魔獣が素早く身を退いてそれを交わす。 フォルテは大剣を握る手をあっさりと持ち替えてもう一匹の攻撃をどうにか防ぎ、剣に喰らいつく獣に腰から引き抜いた短剣を突き刺そうと振りかぶる―――が、それに気付いた魔獣はやはりあっさりと、身を退いてもう一匹の魔獣とフォルテ達を睨みすえた・・人間よりも余計な感情がないぶん、本能が訴える警告は人より遥かに優れている。

「おいどうした、こっちは時間がねーんだからよ・・・・?」

 フォルテの眉が不審そうに歪められた・・魔獣の様子に、違和感を覚えたからだ。
 魔獣は、フォルテを見ていなかった。 現れた当初は、フォルテが邪魔者だと察して襲いかかってきていたというのに・・今では、フォルテを見ていない。

(何だ―――?)









 今日は久しぶりに腹が満たされるほど、人間を喰らった。
 逃げ出そうとした獲物を追いかけていけば、人間がそれを邪魔をした。
 あの人間は一番に殺そう。 そうすれば残り二人も(一人は死にかけているようだが、気にしない)ゆっくりと味わえる。

 特に、死にかけた人間の横に倒れている、小さい人間が美味そうだ。
 あれは女だ。 女の肉は柔らかく、美味い・・・この間も召喚主に言われて人間の女を食ったが、あの女が放つ匂いは今まで喰らってきたどの女より、どの人間よりも香ばしい。

 あの匂いに、満たされていたはずの腹は空腹を訴えてきた。
 あれだけ喰らったはずなのに、本能はあの女に引き寄せられる・・全てが、あの女に向けられて、捕らえられて離せない。


(美味ソウナ、匂イガスル)


(アレハ、極上ノ餌ダ)


(アレヲ喰ライタイ)


(喰ライタイ。 骨マデ、全テ、喰ライタイ)



 獣は、飢えた瞳をぎらりと輝かせ、二匹同時に大地を蹴った。













 襲い来るそれに、フォルテは剣を構えてそれを迎え撃つ。
 一匹がアルバート達に牙を剥く・・動けないアルバート達に目標を変えたのか!と毒づきたくなる気持ちを押しとどめてそれを大剣で薙ぎ払う―――が、獣はそれをひらりと交わし―――。

「く!?」

 アルバートを越えて、に襲いかかる。
 牙を剥き、唾液を零しながら眠る彼女に迫り行く   だがそれを瞬時に理解したフォルテは、通り過ぎるその獣の腹に短剣を突き刺し、渾身の力を込めて横腹を引き裂いてやった。
 ギャウンッと犬のような悲鳴を上げてそれは地面をのたうちまわる。 それに一瞬、気を抜きかければ目の前を黒い影が横切っていった・・・・もう一匹いた!

「やめろ―――!」

 獣がに牙を剥く。
 フォルテは剣を捨て腕を伸ばし、獣の前にその逞しい腕を差し出した。
 突如横から差し出してきたその腕を魔獣は喰らいついた―――激痛が、フォルテの体を苛む。

「ぐぁ・・っ!」

 血管から溢れ出るのは、血だ。
 獣の牙が自らの腕に喰らいついている・・魔獣は喰らいついた相手を間違えたと理解すると、飢えた瞳に怒りを灯らせ、ぎらりとフォルテを睨みつける。 フォルテもその瞳を睨み返し、にやりと笑みを浮かべた・・それは凄絶な笑みだった。

「傷、つけねえって・・約束、したから・・っなぁ!」

 最後の言葉と同時に魔獣の腹を渾身の力で蹴り上げれば、彼のつま先は深く魔獣の腹をえぐる。
 悲鳴を上げてそれはフォルテから素早く身を翻し後退し、再び大地を蹴った―――狙うのは、やはりだった。

(まだ狙うのかよ!?)

 片腕は血にまみれ、まだ体勢を立て直していないフォルテの胸中に恐怖が沸き立った―――そのとき、の瞳がゆっくりと開かれる。

「・・?」

 状況を理解していないまま身を起こすは、迫り来る魔獣に目を見開いたまま身を強張らせた。
 しかし迫り来るその獣の瞳を見ただけで、一つだけ理解したようだ―――自分はこの獣に喰われる。

!!」

 フォルテの叫びも虚しく、獣がその牙を肉に尽き立てた。
 悲鳴はなかった。 赤い血は荒野に似た地面に飛び散り、鉄錆びた匂いを辺りに撒き散らしながら、どくどくと勢いをつけて液体は噴出し滴れ落ちる・・・フォルテはそれに、呆然とした。



 ―――を庇うように身を挺して立ったアルバートの肩が、獣に喰いつかれていた。



「あ・・アル・・」
「・・・・・」

 震えたフォルテの声に反応することなく、アルバートの瞳はすでに虚空を見つめていた。
 獣はなおもアルバートの肩に喰らいつき、その血をすする―――しかしアルバートはまだ生きている神経の反射でびくりと痙攣し、痛みも何の感情も表情に浮かべることなく、ただそこに立ち尽くしていた。

 やがてだらりと、その体は犬に咥えられた人形のように崩れ落ちる。
 ・・・・・アルバートは喰らいつかれた衝撃ですでに、事切れていた。

「・・き・・」

 フォルテの淡い翡翠の瞳から、理性の灯火が掻き消えた。

「―――貴様あああああああああああああ!!!」

 アルバートを吐き捨てるように首を振った獣を見据え、血に濡れた腕で短剣を握り締め駆け出して、その獣の眉間に、渾身の力と憎しみを込めてそれを尽き立て、抉った。
 硬いものが刃先にぶつかるが、それを貫く勢いでさらに深く抉る―――悲鳴はなかった。 ただビクビクと痙攣し、そのままだらりと崩れ落ち、舌をだらしなく垂らしたまま絶命する。

「はぁっ、はぁっ、はぁっ・・・!」

 怒りが、憎しみが、沸き立つ。
 ぐるぐると巡り、蠢き、フォルテの思考を奪っていく―――血の匂いがなお、彼に我を忘れさせる。

(デグレア・・!)

 デグレアの召喚師。
 許さない許さない許さない、決して。 殺してやる。 アルバートを殺しやがって。 あいつは俺にとってもシャムロックにとっても友達で大切でいい奴で優しい男で―――!

「・・・フォルテ」

 の声に、怒りが頂点に達した。
 限界だ。 何でもいい。 この感情をぶつける場所が必要だ。 ぶつける場所はすぐ近くにある。 それはデグレアと親しい―――振り返り、フォルテはを睨みつけ―――そして、硬直した。


 は、泣いていた。


 体を震わせて、限界まで目を見開きながらも、呆然としているフォルテを見上げて。


 脅えて、血の匂いに色を失い、表情を引きつらせて、泣いて、いた。


「・・―――あ・・」

 嗚咽は、ない。
 彼女は俯いて、ただ時折引きつったような声をもらし、肩をしゃくりあげ・・・・そしてのろのろと顔を上げて、力の入らぬ体をずるり、ずるりと引きずり―――アルバートの身体を、震えたその腕で、抱いた。

「―――・・ぅ・・」

 そこでようやく、嗚咽が零れて、訳のわからない言葉を洩らして、は泣いた。
 ぼろぼろと涙を頬に伝わらせて、助けてくれた血まみれの男を抱いて、泣いた。 言葉にならぬその声は、フォルテの怒りに冷水を浴びさせるほどのものだった。

 ・・怒りが、冷めていく。

「・ぅぅ、ひ、っく・・・う・っ」
「・・っ、

 引きつった嗚咽に、フォルテは華奢な彼女の体を抱きしめた。
 は何が起こったのかわかっていない。 だが、自分を助けようとしてくれた男が死んだということだけは、確かに彼女に伝わっていた―――だから、混乱と、恐怖と、悲しみに、理解できない・・言葉にならぬ声が溢れる。

「ごめん、、―――ごめんな。 ごめん・・・・すまねえ、ごめん」
「・・・フォル、テぇ・・」
「こいつは、俺が見つけたときにはもう助からなかった・・・肩を喰われてしまっていたから、遅かれ早かれ、死ぬ運命だった・・―――どうせ死ぬならと、こいつは、お前を守って死んだんだ」
「・・死・・・・」

 フォルテの言葉に、はアルバートの、虚空を見つめている瞳を、震える指先で閉じさせる。
 ―――人というものは不思議なものだ。 目を伏せてやっただけで、こんなにも安らかな眠りに落ちた表情に変わってしまう。 今にも起き上がって、アルバートが微笑んでくれそうだ。

 
俺は、最低だ


 最低で、最低で    恥ずかしくてたまらない、誰かに殴り飛ばして欲しい


 勝手にをここまで連れてきて、にまた、怒りをぶつけて楽になろうとして・・最低だ


 そんなことをしている場合ではないのに。




         シャム・・ロ・・様を、助けてくだ・・”





 一度を強く抱きしめてから、フォルテは彼女を無理矢理立たせた。
 よろりとふらつくその体を支え、自分の血まみれの手とは逆の、まだどうにか無事な腕に繋がる手で、自分よりも小さいその手を握り締め、引く。
 引かれて初めて、はフォルテの腕に気がついた。

「フォルテ、腕・・!」
「行くぞ、
「でも、腕が、腕が・・!」
「何も心配すんな・・俺はお前をさらった誘拐犯だぜ?」

 横たえられたアルバートをちらりと目にやって、フォルテはに小さく笑った。
 フォルテの言葉にははっと息を呑んで・・けれど、目元をぐしぐしと拭って、ふらふらとしたその足取りを、いつもの調子に戻した。

もう、最低
・・?」
「何であたしってばこんな目にあるわけ? ロッカと喧嘩するわリューグと喧嘩するわフォルテに拉致られるわ変態に迫られるわで・・あたしって、今年は厄年なのよきっと。 リィンバウムに着たその年で厄年。 絶対そうよ。 カイナに厄払いしてもらったほうがいい、絶対いいわ。 帰ったらそうしてもらおう。 だからフォルテ、あたしをちゃんと無事に帰してよ」
「・・了解」
「そのときは、あんたも一緒に帰るのよ」
「・・そりゃ無理かもな。 お前も、マグナたちも俺を許せねえだろ?」

 零れ落ちたものは、彼らの心だった。
 引きとめる全員の手を振り払い、を無理矢理こんなところまで連れてきた・・もう、無理だ。

「許せるわけないでしょ、馬鹿フォルテ」
「・・・・・」
「・・でも、気持ちはすごくわかるのよ、あたし」

 は、弱々しく微笑んだ。
 繋いだ手は、血の気が抜けて冷たくなっていくフォルテの手に、優しい温もりを伝えてくる。

「あたしもイオスを助けようとして、皆の手を振り払ったの。 そうしなければ二度と帰ってこないかもしれないって思ってたから」

 フォルテははっと、を見つめた。
 そうだ、彼女は、今の自分と全く同じで―――。

「ねえフォルテ・・・・・・諦めないで」

 は、微笑む。

「みんな、わかってるかもしれない。 みんな、何かを失ったことがあるかもしれないから。 だから、取り戻そうとすることを諦めないで―――あたし達を、諦めないで」
「・・・・」
「あたしも向かい合ったときは怖くてたまらなかった。 足は震えて、膝もガクガクで・・でも傍にいてくれた人がいたから、あたしは向き合えた・・と思う」

 ・・・目頭が、熱くなった。
 自分が恥ずかしくて情けなくて、たまらなくて。

「ごめん、
「一緒に謝ろうフォルテ。 シャムロックを助けて、無事に戻って謝ろう」
「ごめん。 すまねえ、・・」
「謝って、正座させられて、しこたま説教されて・・・それでまた、一緒にいよう」

「・・っ、ごめん、ごめんな、―――本当、ごめんな」

 手を引きながら、歩きながら溢れ出るのは、全てに対しての謝罪だった。
 マグナ達にも、にも、アルバート達に対しての、謝罪の念だけだった。




 帰ったら、リューグに一発ぶん殴ってもらおうと思う。




「一緒にいよう、フォルテ―――あたし、もう誰もなくしたくないよ」






 帰ったら、彼女にたくさん謝ろうと思う。






 無傷の腕でぐいと目元を拭えば、手を離されたが、ぎゅっとフォルテのマントを掴んだ。

「どうした? ・・・」

 振り向くと同時に、を背に庇いフォルテはザッ! と剣を構えた。
 シャムロックたちがいる場所に行こうと移動をしていた彼らの背後に現れたのは、あの魔獣だ。
 今度は5匹以上が牙を剥いて唸り声を上げている・・その視線の先はやはり、だ。 はデグレア軍に狙われている立場であるのだから、それを理解してに意識を集中しているのではないかと考える。

(・・いや、違う)

 唾液と血(あれは砦の内部の者たちの血だろう)にまみれた魔獣は、飢えているようにも見えた。
 フォルテを視界に入れていない・・それほどまでに、彼らの意識はに向けられている。
喰らおうと狙いを定めて、飢えた瞳でを見つめている。

 ―――先ほどの魔獣たちもに襲いかかっていた。
 あれは、どこをどう見ても喰らおうとしていた。 召喚主はを殺さずに捕らえよと命令をしていないのだろうか。
  こんなに大量に魔獣を召喚して使役している召喚術師・・・。

(・・・まさか、あいつの仲間か?)

 屍使い・ガレアノの姿が脳裏に浮かんだ。
 大量の屍人兵・・そして今回の、大量の魔獣―――似通った部分がある。 だとすればスルゼン砦のときと同じように召喚主の姿を暴かなければ、この魔獣たちはいくらでも湧いてくるだろう。

「フォルテ」
、合図したらシャムロックの所にまで走るぞ」
「でも」
「この魔獣、ルヴァイドの策略かも知れねえが・・それでも」
「違う!」

 の声に、フォルテはきょとんと目を丸くした。
 それにははっと口元を抑えて   けれど意を決したように唇を引き締め、続ける。

「違う、ルヴァイドたちの策略なんかじゃない」
「・・・・」
「信じるわ」

 確信めいた、言葉に聴こえた。
 何か根拠があるようだ・・だが彼女の心通りにこれが策略ではないかどうか、フォルテにはわからない。


だから。


「―――ああ、それじゃ俺は、お前を信じる」
「・・・・え」
「今の俺にゃ、あいつらを信じるなんて無理。 だからお前を信じるぜ・・いいな?」

 彼女ならまだ、信じようと思うことが出来る。(デグレアは無理だが)
 疑って、信じて、疑って・・そんなことばかり繰り返しているような気もするが、しょうがないと乗り切るしかない。
 人間に、絶対に揺るがぬ心などないのだから。

「信じて、いいな?」
「・・いいわよ! どーんと信じなさい!」
「了解。 ・・ま、こいつらが俺らめがけて襲ってきたら決闘どころじゃねえだろ。 それにこの数、俺一人じゃ太刀打ちできねえし、逃げるしかねえよ」
「わかった」

 はじりじりと後退して、合図を待つ。
 それにフォルテは”やっぱこいつ、強くなったな”と目を細めてから、息を吸う。

「―――走れ!」

 鋭い声に押されるように、が駆け出した。
 それに続いてフォルテも駆け出すが、魔獣たちは素早い瞬発力で迫り来る―――動かない腕に無理矢理力を込めての腕を掴み、転びそうになる彼女を支えながら走るスピードを上げる。

「振り返るな! すぐに追いつかれるぞ!!」

 獣の足は、速い。
 そのうちの一匹があっという間にの背後に迫り、華奢なその背に牙を剥く―――そして悲鳴を上げて、地面に転倒した。 フォルテの剣が獣の腹を裂いたのだ。

「フォルテ!」
「行け! 振り返るな、走れ!!」

 血に汚れた腕に無理矢理力を込めて、立ち止まりかけたの背を押した。
 ・・この片腕はもう、まともに動かないから戦いには使えない。 けれど腕は二本ある。 まだ片手が残っている―――守るための腕はまだ残っている。

 シャムロックたちはもうすぐそこだというのに、彼らは戦いに夢中でこちらに気付かない。
 だがこのまま振り切るのは無理だ・・まだ使えるこの腕で、自分が立ち塞がるしかない。

 シャムロックに今の状況を伝えれば、きっと、は大丈夫だ。

「フォルテ!!」
「お前には絶対傷つけねえって、マグナたちに勝手に約束して来たからな」


 そう、守るのだ。

 シャムロックも、も、守るのだ。



 彼らは、大切だ。


 疑って、傷つけて、憎んで、愛おしい・・・大切だ。





 生かすためなら、何度でも剣を振るおう。





 それは、最低な自分が、唯一出来ることだ。





「さぁ来いよ、犬・・俺が相手になってやる!」






 飢えた獣の瞳に口元を歪めて、フォルテは大地を蹴って駆けた―――。















「ったく、あの馬鹿野郎が!」

 ダンッ! と拳を岩に叩きつけてリューグは毒づいた。
 それから彼は数回深呼吸を繰り返し―――斧の柄を握り、戦い続ける騎士二人を見下ろす。
 冷ややかな目で戦いを見下ろす彼の赤髪をさらうのは、冬季の冷たさを帯びた風だった。

「リューグ落ち着いてっ」
「落ち着けるかよ、は連れていかれるわフォルテの野郎は死ぬ気覚悟で突っ込もうとするわで・・あの馬鹿野郎。 一人で行ってんじゃねえぞ・・・」

 アメルはリューグに微笑んで、ふぅとため息を吐いた。
 リューグが少し心配だったのだが、彼は彼でフォルテのことを心配しているようだ・・何より、仲間と認めている。 だから”一人で行くな”と怒るのだ―――行くなら自分たちも連れて行けと、怒るのだ。

「で、これからどうすんだよ。 突っ込むのか?」
「・・フォルテとを放っておけないからな・・フォルテが砦のほうに下っていくのを見た。 幸いにもイオス達と正反対の位置にいるということになる・・なら僕らは彼が行動を移すそのときにイオス達を抑える」

 ネスティの黒髪が、風にさらわれた。
 彼は頭痛がするのかこめかみを押さえながらも、騎士の決闘に目をやり、後方に控えるイオス達を見る。

「・・こうなったら、やれるところまでやるまでさ」
「ネスかっこいい! さすがあたし達の兄弟子〜」
「俺達が授業抜け出すもんだから色んな知恵が身についちゃったよなぁ」

 しみじみと呟くマグナとトリスに、ネスティは刺すような視線を彼らに向けた。
 そそくさと離れていく弟妹弟子にため息を零し・・壮大な大地に佇む砦を見て、目を細める。

(・・まったく・・、彼まで君と同じようなことをするから、本当に頭が痛いよ)

 フォルテのしていることは、以前、がイオス達を救うためにネスティ達から離れたあのときと同じことだった。
 ネスティはシャムロックを知らない。
 だから半ばどうでもいい・・けれどフォルテの友人であるなら話は別だ―――ケイナが言ったように、フォルテが大切に思うなら、その大切な者を守るため出来るところまで手を貸そうと思うからだ。
 これでシャムロックがこの仲間達と全く関係がなかったなら、ネスティにとってシャムロックは”ある程度の力を持った騎士”という認識しかなかっただろう。

(でも、彼はフォルテの親友だ)


 ならいくらでも、この手を差し出そう。


 彼は、自分の大切な人を守ろうと全てを振り切ったのだから―――その勇気を、称えよう。


(・・僕も。 守ろうとして、全てを振り切ることが出来るだろうか)

 それを思って、ネスティはため息を吐いた。
 自分の事さえ話すことができない自分が、誰かのために全てを振り切る勇気など持てるはずがない。


(・・でも、そのときが来てしまえば僕は、選ばなくてはいけないのだろうな)


 また見ぬその瞬間に、ネスティはやはりため息を吐き。
 再び、騎士二人の戦いを目をやって―――彼は数度、目を瞬かせる。

 二人の人間が、シャムロックたちに近づきつつあった。
 そんな人間を追うように現れたのは、獣だ。 漆黒色の毛を持った、黒い獣―――魔獣だ。
 犬型の魔獣の後方からは続々と現れたのは、同じ型の魔獣と、どうにか人型だと特定できた魔獣だ・・溢れるようにローウェン砦から現れて、逃げていた二人の人間を追う。

「・・! フォルテ!!」
「え?! どこどこ・・って、何なのあの数! あれ、メイトルパの召喚獣だわ!」

 ミニスの瞳が素早く種族を特定する。
 さすがマーン家の召喚師・・そして彼女が最も得意とする属性、幻獣界メイトルパ。 その世界の知識はネスティに勝るものもあるかもしれない。

「僕達も行くぞ! いくらなんでもあの数じゃ不利だ!」
「皆、急いで―――!」

 しかし、立ち向かったフォルテは、数に敵わなかった。
 シャムロックとルヴァイドも彼を救おうと参戦するが、瞬く間に取り囲まれ、片手で剣を操っていたフォルテは魔獣に背中から襲われ、押し倒されるように地面に平伏した。
 大柄な彼の体は血にまみれていた。 それでも抵抗をしようとするフォルテの身体に圧し掛かり、魔獣は、残酷なまでに鋭い牙を彼に剥く。




「・・っフォルテ―――!!!」




 ケイナの叫びの応えるように。



 刺すような光が、辺り一帯を焼き尽くすように爆発した。










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あとがき

第69話をお届けさせて頂きました。

 超お久しぶり更新です、すみません・・といいたいところでありますが、
今回は別のセリフを言わせて頂きます・・
・お疲れ様でした・・!

いえもう本当、フォルテ、キャラ違うよ・・?!と自分の脳内に驚きながら打ちました。
戦闘シーンとか、苦手ですみませゲフゲフ! 忙しいほど展開変わってばかりですアフー!
ものすごくあわてているので、文章間違いとかあったらすみません・・!

アルバートが死にました。
フォルテと多くの言葉を交わすことなく、守って、死にました。
人の死に顔は本当に、眠っているように見えて・・とても安らかだなぁと思ったことがあります。
彼のことについてはまた後日に…。
これは前編後編的に続くようになっておりますので、後編もお付き合いして頂ければ幸いです。
さんは、いつだったか、ローレライに襲われたときと同じ理由で魔獣に襲われております。
そのあたりの説明もまた、いつか明かしていきたいなと思います・・。

少しでも楽しんで頂ければ、この上なく幸せです。



2005.4.27