第62夜 血の匂いが、する。 濃く、強く、鉄錆びているような、匂い。 それはレルム村を思い起こさせる、匂い。 あの時は炎が全てを赤く照らしていたけれど (何やってんのよ、リューグの馬鹿っ) イオスを先頭にしてこそこそと、デグレア兵の視界に入らないようにリューグ達に近づきながら、あたしは心の中でリューグに呟いた。 しかし当の本人に全く届いていないので、これが解決したら真正面から思いきり言ってやろうと心に誓っている・・・解決すればの話だけども。 (解決させてみせるんだからね・・思いきり馬鹿って言ってやるんだから) 「・・、ものすごい顔になってるよ」 心の中でリューグに文句ばかりを呟いているあたしを見て、 ハヤトが引きつった表情でこっそりと告げた。 「こんな事になったら誰だって般若のような顔にだってなるわよ。 まったく・・ようやく帰れると思ったのに・・リューグは馬鹿よ、大馬鹿よっ」 「・・散々な言われようだな」 兵の注意がルヴァイド達に向いているかどうか確認しながらイオスが呟けば, あたしはイオスを睨むような視線を向けて。 「だって、追いかけてきてくれるなんてこれっぽっちも思ってもなかったものっ」 ” あんなこと言ったくせに あんなことを言ったくせに、迎えに来てくれるなんて 「馬鹿よ、リューグは・・馬鹿なあたしに劣らない馬鹿。 リューグは誰がなんと言おうとも 彼は本当に、優しすぎる イオス達を優先したあたしなんかを迎えに来て (あぁもう、ずるい、反則、フェイントだ! あたしってばこういうのにすっごい弱いのに・・惚れるぞあの野郎・・!) そこに、どんな思惑があっても それでもその事実だけで、泣きたくなるほど嬉しくてたまらなくなる 「 イオスが兵達をわずかに誘導して、テントの裏からルヴァイド達の姿が見える場所へと辿りついた。 黒の兵士に囲われている中で繰り広げられている激しい剣の裁き合い・・それをあたしは、 ようやく目に留める。 月のない闇夜の中でも、燃えているような鮮やかな赤髪は印象的だった。 赤髪の持ち主は口下手で、少し怒りっぽくて。 手は器用なのにどこか不器用な、優しい少年。 目を細めて、口元に笑みを浮かべて笑う人だけど・・だからこそ顔全部で、 屈託なく笑ってもらえると何故だかとても嬉しくて その笑顔に、”傍にいてもいい”と許されているような気がして 隠していることが多いあたしには、罪悪感に苛まれると同時に・・・・・・どうしても甘えてしまう。 「・・・・・・何・・で」 手が、血だらけだった。 頬にも、鎧にも・・何故、あんなにも所々に血がついているのだろう。 何故、あんなにも獣のようにギラギラとした瞳で剣を振るい、地面を蹴ってルヴァイドに斬りかかっているのだろう。 リューグはルヴァイドを相手にただ、がむしゃらに ルヴァイドはそれを受け流し、剣を重ね合わせて接近すると、密かに言葉をリューグに向けているのがわかった・・・・ここからではその言葉は耳に届かないけれど 唖然と光景を見守るあたしに、イオスがひそりと囁く。 「様子がおかしいのは、わかるか?」 「・・う、ん」 「どうやら君が死んだとキュラーに吹き込まれたらしい」 「・・・・・・・・・は? あのアゴに!?」 「(アゴ?)を返せと言ったのは”君の死体を返せ”ということなのかわからないが・・、 でもやはり様子がおかしいんだ。もうなりふり構わず全てを投げ出しているというか・・」 「・・どっちにしても最悪じゃないの、状況が・・」 あたしはガクリと項垂れて、地面に両手をついた。 しかしイオスはさらに続ける。 「あそこまで様子がおかしいとキュラーに操られている可能性もある・・。 だから、君が出てきてもあいつがをわかるかどうか・・」 「分かってもらえなかったらもうあっさり斬られちゃうよな〜」 「イヤァーーーー! ハヤト! 怖いこといわないで!!」 「 珍しく(本当に珍しいよバノッぴー!)静かだったバノッサの言葉に我に返って、 あたしは戦う二人と、その周りの状況を見た。 彼らの持つ剣が振るわれる度に風を薙ぎ、ぶつかる度に火花を散らし、刃と刃がせめぎ合う。 そんな二人の周りで兵士達が弓を構えたりサモナイト石を持って二人を見守っている。 なんというか・・もうバリバリでやる気満々デスネ皆さん!(リューグが死ぬー!) まさに、彼は敵軍真っ只中に孤立中。 「・・どうするもこうするも、あたしのやることは一つよ」 ぐっと拳を強く握って、あたしはリューグの姿を目に焼き付けた。 血に濡れて、ルヴァイドを罵りながら戦うリューグを。 「あたしは、一緒に帰るのよ」 今度こそ、帰るのよ 皆がいるあの場所に 「 突然投げかけられた言葉に、一瞬意味を理解できなかった。 思わず目を丸くして告げた張本人 あたしを見下ろしていた・・彼が手伝うと進んで言ってくるなんて、明日は雨でも降るのだろうか? 白い肌を包むワインレッド色のマントが冷たい夜風にさらわれて、揺れる。 「手伝ってほしいか?馬鹿女」 「(馬鹿女呼ばわり・・そりゃ自分でも馬鹿だとは思ったけどこの男にそう呼ばれるのはものすごく屈辱的っていうか・・屈辱ーーーーッッ!)そりゃ、今は一つでも力が欲しいけど・・」 「(あぁがものすごく悔しそうだ・・!)バノッサ、何を言うつもりだよ・・」 ハヤトにちらりと視線を向けて、バノッサは変わらぬ笑みのままで。 「レヴァティーンでここまで連れてきてやった。 これからあのガキを助けるのにも手を貸してやる。 ・・・ここまでやってやるって言ってんだ、何か礼の一つや二つはあって当然だろ?」 つまり この男は、あたしに貸しを作ろうということか? 彼の言葉にハヤトが一瞬、強張らせたような表情を浮かべたことに気付かず、 あたしは負けじとバノッサを睨み上げて・・・口元に笑みを浮かべ、了解する。 「・・いいわよ。 あたしが出来る範囲ならね。 あんまり無茶苦茶なことは要求しないでよ」 「ッハ、どうだかな」 「嫌な笑い顔ーーーーーーー!何頼むつもりよアンタはァーーーーーーーー!!」 人間、あんな感じに笑うなら完璧に何か企んでいる証拠だ。 リューグを助けるためとはいえ、ものすごくヤバイことを了解してしまったような気が・・! いやいやいやいや、今はあたしよりリューグ! リューグの命優先よォォォ!(悶) 「何悶えてんだよ。 ガキを助けるんだろ、早くしねぇと間に合わなくなるぜ」 「わかってるわよっ、でもルヴァイド達の立場も考えないと」 「・・ 男の顔から、笑みが消えた。 同時に前髪が、大きくて白い手に掴まれ、強く引っぱられる。 痛みに思わず悲鳴が零れ、前髪を掴まれたまま無理矢理顔を持ち上げられた。 イオスとハヤト、レシィがあたしを名前を呼ぶ声が聞こえて、レオルドが動き出そうとするのが 視界に見えた 「っ・・・・」 「いい加減にしろよ、馬鹿女」 冷たい声だ。 さっきまでの、からかうような声とうって変わって、冷たい声。 ・・・・・あたしはバノッサを怒らせるようなことを言ったんだろうか? 怒気が、肌に伝わってくる。 「あの野郎の立場だと?」 「何・・ぃっ・・」 「こんな状況になってまだそんな事考えてんのか、手前は」 「主殿ヲ離セ!」 レオルドがバノッサに向けてドリルの切っ先を向けた。 特別な金属で出来た、頼もしくて大きな身体。 それが目の前で武器を振りかざそうとしていても、彼は恐れることなくレオルドを鼻で笑い、 あたしの前髪を掴んだままレオルドに告げる。 「ポンコツが俺を殺るのか?」 「レオルドはポンコツなんかじゃ・・っぁ・・!」 「一つ忠告しておいてやるぜ、馬鹿女」 バノッサの唇が、あたしの耳元に近づいた。 白髪の髪があたしの頬をわずかに掠めて、言葉を吐き出すと共に吐息が首筋に触れると、 思わず身体が震えてしまった。 彼は低いその声で、囁くように言葉を紡ぐ。 「中途半端な手前が、この状況を招いたってことを自覚しな」 アメルを護ろうとするマグナ達 アメルを捕らえようとするルヴァイド達 彼らの間にいる 「 「元は手前がまいた種だぜ、そろそろどっちを優先するか絞れよ」 どちらを優先するか・・絞る? 「手前が”戻ってくる”なんて言って妙な期待をかけさせるからあのガキが来やがったんだよ。 裏切るなら裏切るで傷つけて突き放さねぇからこんなことになったんだろうが」 傷つけて・・突き放す? 「・・・・いい加減自覚しねぇと手前、どっちも失くすぞ」 <崖から落ちそうになっている、大切な人が二人いる> <あなたはどちらを助けますか?>・・・・・そんな話に似ている。 二人を持ち上げるために、二人の手を必死に掴んで繋がっていても あたし一人じゃ、持ち上げられないほど二人は重くて どちらかを優先しなければ・・・・迷っていれば、両方失くす? だから、失くしそうになるその時にどちらかだけでも優先しなければいけないの 「・・ 前髪を掴まれた痛みに顔を歪めそうになるのを堪えて、あたしは自然に呟いた。 それにバノッサは”お”と声を洩らして、あたしの瞳を覗き込んでくる。 「どっちか優先しなくちゃいけないなんて、嫌だ」 「・・人の話、理解してんのか?手前」 「してるわよ! はっきり言ってあんたの言葉が思いっきりグサァッってきたわよ! もういっそ殺せとかちょっとだけ思ったわよ!!」 彼の言葉が、あたしにとっては鈍器で殴られたような痛みになった どちらも譲れない、と思うことは他の誰かにとったら中途半端で それが誰かを傷つけて 誰かを悲しくさせるんだと そして最後は自分に降りかかるんだって あたしに思い知らせる でも 「でも、嫌よ。 あたしにはやっぱり、どっちも大事な人なんだもの。 そう思うのはあたしの勝手だってわかってる、それで傷つく人がいるんだっていうのもわかってるよ。 だけど・・・」 決められない 好きになったり、嫌いになったりして、憎くなるときだってある その時その時で違いすぎて決められない どっちも、捨てたくない どちらかを失うことになるその時は、こんな事を言ってられないけど 「でも、まだ間に合うのよ」 間に合うのよ あたしはまだ、両方を選べる場所に立っている 敵対している二人の手を、しっかりと握ることが出来る場所にいる この手は、離さない 「あたしはまだ間に合うの。 バノッサやイオス達が助けてくれればリューグも助けられるし、ルヴァイド達とあたしの関係が バレなくてすむようにもなるの だから 「だからあたしは、ルヴァイドもリューグも選ぶ あたし一人じゃ、確かに彼らを引き上げられない でも、誰かが力を貸してくれたなら ほんの少しの力でも、それでも腕の一本だけでも、引き上げることに力を貸してくれたなら あたしは、二人を失わずにすむ可能性が高くなる 「 前髪を掴んでいる力は一向に弱まらない。 でもあたしはバノッサを睨み上げながら、猛禽類を思わせる赤の瞳から視線を離さずにいた。 なんて我が侭すぎるんだろうか でもまだ、どうにかなるはず 本当に、どうにか出来るはずだから 諦めてしまっては、それこそ二人の手が離れて・・・終わりになってしまうから 「 忌々しそうに舌を打ち、バノッサは前髪を掴んでいた手を離した。 あたしの髪の毛が2本くらい地面に落ちていったが(ハゲたら責任取ってよね・・!)、 マントをひるがえして背を向けたバノッサを、小さく呼ぶ。 「・・バノッサ」 「40秒だ」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・はい?(いきなり何すか?)」 バノッサはあたしを一度睨んで、次には紫色の、霊属性の召喚石を手の上で転がして。 「40秒、あいつを止めてやる。 その間にあいつを戻せ。 あの狂った状態じゃ手前なんか近づく前に殺される」 あたしは目を丸くして、まじまじとバノッサを観察する。 ってか、どうやって戻せと・・?(滝汗) 「どうやって戻せというのよ・・?」 「知るか、失敗したら失敗したその時だろ。 お前にしかあのガキを止められねえのは確かだ・・ コラァァァァ! 乙女になんつーーーーことを言うんじゃアンタはァーーーーー!! (あぁぁもう本当この男がイヤだわ・・!) ハヤトもイオスも引きつった表情でバノッサを見ていたが、当の本人はそれを軽くスルーして、 唇を小さく動かしながら術の詠唱を始める。 彼の言葉と共に紫色のサモナイト石から光の粒子が踊りだし、それは一つの輪を作り上げ、 光が踊るその中心から・・・・・パラ・ダリオが現れた。 本物のパラ・ダリオを間近で見るのは初めてだ。 (・・なんか、過激な 細い紐で縛られているそれを見上げれば、パラ・ダリオの身体の表面にパリパリと 白い電気が弾いているのがわかる・・この召喚獣の能力は、相手の身体を一定時間動けなくさせる麻痺の能力を持っているのだ。 バノッサはこれでリューグの動きを封じるらしい。 「これであいつを麻痺らせる、その間に何とかしろ」 「簡単にいうけどかーなーりー不安なんだけどー・・・(巻き添え食らいそうで)」 「はぐれ野郎はレヴァティーンを召喚しとけ。 俺様がガキに近づくためには周りのザコ共が邪魔だ・・軽く暴れさせておけ」 「オッケー、まかせろよ」 「待てハヤト、すぐに逃げる足も必要だ。 がリューグを戻した後、お前達はそのままその場から逃げてくれ」 「だとしたら ・・リューグを助けようの輪が出来上がり、3人は色々と詳しく作戦を練っていく。 あたしはというとリューグをどうやって戻すかということを考えるだけで頭がいっぱいになっていたんだけど・・・・・あーもう本当どうしろと・・・?! 「ご主人様、頑張ってくださいっ・・僕、何も力になれなくて・・悔しいですけど・・」 「いやいや、応援だけでも嬉しいよレシィ。 リューグがわかってくれるかわかんないけど・・あたし、むっちり頑張るからね!」 「(むっちり?) リューグさん、きっとご主人様のこと、わかりますよっ。 だってリューグさん、ご主人様のこと大切な仲間だって思ってるはずです!」 握り拳を作ってそう言ってくれた小さな護衛獣を、あたしはぎゅうっと抱きしめた。 お日様の匂いがする、ふわふわとした髪に頬を寄せながら目を伏せる。 「・・うん、あたしも大事な仲間って、友達って思ってる。 今更あたしがこんな事を言うのは駄目かもしれないけど・・皆、大事だよ」 「ご主人様・・」 「レシィたちも、ハヤトたちも、イオスたちも たとえこの世界があたしの見ている夢で、偽りだったとしても (・・ッチ、苛々するぜ) 小さな羊の護衛獣(失礼)を抱きしめて、”大事”と呟くの後姿を睨みながら、 バノッサは毒づいた・・・酷く苛立つ感情が、を見ていると沸き立ってくる。 切り捨てればいいものを 大した力もないくせに、両方を望むなど 一度に全てを失うくらいなら、どちらかを斬って捨てれば 「バノッサ、顔、歪んでるよ」 ハヤトの指摘にはっと我に返り、バノッサはぎろりとハヤトを睨んだ。 今ではすっかり傍にいることが普通になってしまっているが、この男とその仲間達も かつては敵だった・・・・・のに、彼らは自分たちを助けようとしていた。 「が気になるのか?」 「勝手に言ってろ」 「・・目が追ってるけど」 ヒュンッ! 笑っていたハヤトは顔を引きつらせて、素早く剣を抜いて髪を切り落としたバノッサの剣を見つめ、 後に落ちていった自分の髪に視線を落して 「ひどいぞバノッサ! 本当のことだからって俺の髪に罪はないだろー!」 「黙れガキ。ガキはガキでその辺で転がってろ」 「・・・・・・・なんだかんだ言ってのこと気になってるくせに・・」 「それは本当かハヤト。 ・・・・・・おい凶悪面(バノッサ)、下心持ってに近づくな」 「手前のほうが下心持ってんじゃねーか、女顔(イオス)」 「当たり前だ、僕はが好きだからな。 そんな心を持つのは当然だ」 ハヤトは”えぇ!? そんなストレートに言っていいのか?!”と何故か顔を赤くして慌て、きっぱりとそう告げたイオスにバノッサは顔を嫌そうに歪めた。 「俺に言ってどうする、本人に言えばいいだろが」 「・・・・・・そうだな」 イオスは、口元に穏やかな笑みを浮かべた。 それはバノッサに向けられたものではなく、少し離れた位置でレシィを抱きしめて ”いやぁレシィはふわふわのモコモコね!”と、明らかに人間に言うべきではない(彼は召喚獣だが) 言葉を叫んでいるに向けられていた。 ・・そんなイオスに、バノッサは眉を寄せる。 「言えたなら、こんな想いをせずにすむかもしれないだろうな」 それはまるで、雪のよう 積もりに積もり、それは体積を増していく イオスはに近づいて、細いその腕を掴んだ。 そこではようやくイオスを視界に止めて、どうしたのと首を傾げる。 「、話があるんだ」 「ん?」 イオスは目を細めた。 愛おしくてしょうがない人の腕は、生きているからとても温かい。 自分とは違う肉のつき方で身体が構成されているから柔らかく、抱きしめれば どんなに心地よいかイオスは知っている。 ”好き”だと言葉にして、抱きしめられたなら それはどれほどイオスを満たすのか、想像もつかない けれど 「・・・・・・この後についてだよ、話を聞いていないだろう?」 「・・・・・・すみませんごめんなさいヨロシクオ願イシマス・・・・(平伏)」 イオスは平伏するに苦笑した。 それは愛しいものを見る瞳だと、ハヤトもバノッサもわかる。 「まったく、君が聞いていなくてどうするんだ。 ・・・・・・ここに君がいるって事は、まだ誰も知らない。 ・・他の兵はあの凶悪面(バノッサ)やリューグの対応に必死だったからな」 ハヤトの隣に並ぶバノッサは、ひくっと頬を引きつらせたのをハヤトは目撃。 ”い、イオス! 俺、生きた心地がしないよ・・・!”・・それはハヤトの心の叫びだった。 その間にもイオスはに説明を続ける。 「 ・・助けてくれた君に、すごく薄情な事を言っている事は・・承知している。 僕自身でも君に返しようもないほどの恩を感じているし 「・・・うん・・(またこの男は恥ずかしいセリフをサラリと・・!/悶える)」 「だが君やルヴァイド様の立場を考えると、それは無理だ。 君はレイムに狙われて、ルヴァイド様と僕は君を追う者。 君が安全に、安心していられる居場所は聖女達のところぐらいしか思いつかない」 「・・うん」 「 本当に最低で、申し訳ないと思う・・もしかしたら、君の仲間は君を許さないかもしれないのに」 こういう事態が、彼女にとってどれくらいの負担になるか、傷になるか。 が傷つくのは嫌だと思っているのに、それでもルヴァイドを助けたくて、 自分たちに追われているをこんな所にまで連れてきて・・・・・再び帰そうとしている自分。 トリス達が何も知らないなら、まだそれほど深い問題にはならない。 だがトリス達は、と自分たちの関係を知ってしまった。 が、ルヴァイドの命を優先してくれた。 今まで共に過ごした仲間達との繋がった紐を、自分やルヴァイド達のために自ら千切って、 ここまで来てくれた。 そしてルヴァイドは助かって、を彼らの元に帰そうとする。 一度千切れた紐を修復するのは容易ではないと知っているのに・・帰そうとしている自分。 後悔が胸に残って・・イオスの息を詰まらせる。 「 ここまでしてくれたのに こんな言葉しか言えないなんて そんな自分が、彼女に好きだと伝えるのは あまりにも、酷ではないか 彼女を苦しめるだけではないか 「・・・・僕はもう、望まないから」 “君に会いたい”と “側にいたい、いてほしい”と 口に出して、望まない 君に傍にいてほしいと思うことすらも 全て君の傷になるから だから二度と、口にしない もう、君に イオスの言葉が途切れて、静かな沈黙が舞い降りた。 誰もしばらく言葉を出さなかった。 風だけが木々を揺らす音をたてて吹き、それぞれの髪は冷たい風にさらわれて流れていく。 ・・風が世界を巡っていく。 そんな中で、が言葉を出した。 えらく驚いたような顔で、あっさりと。 「・・・・・・・あんた何言ってんの?」 「・・?」 「オイオイオイ隊長! あたし達を追ってくるんでしょ? 会うくらいならこれから嫌ってほど会うじゃん!!」 確かに。(レシィとレオルド、頷く) 「なのに今生の別れと言わんばかりに・・何? ここまで尽くさせておいて二度と会わない宣言? ヒドイわーーーーーーーーーーーーッッ!!!(スパーン!)」 綺麗な弧を描く平手を見て、ハヤトはおぉっ・・と声をもらした。 イオスはイオスで何故自分がビンタを受けたのかわからぬまま、 ただ痛みと熱を訴える頬を押さえて、唖然とを見上げている。 「イオスって、最低」 「うっ・・・(痛恨の一撃) 「・・はぁー、もう一度言うわよ」 は思いっきり呆れたため息を吐いた。 「あ・ん・た・は! デグレアの軍でしょーが! 自分の立場忘れてんじゃないわよ! 隊長!!」 ドスドスっ!と指でイオスの額をニ連続で突ついて、は不満顔をイオスの顔を近づけた。 イオスはそれに思わず頬に熱が集まるのを自覚しつつを見返していれば、 はにんまりと笑う。 「 「・・(クソ真面目・・<汗)」 「何で望まないなんていうのよ。 ・・・・望むくらいいーじゃん、望んでこその願い事だし」 望んでこその、願い事。 「さすがにこれからだと傍にはっていうのは難しいと思うけどさ、 会うくらいなら平気でしょ? あたしはイオス達の敵にはならないから、安心してちょーだい」 “ただ見た目が敵っぽくなるだけさー”と笑いながら肩を叩くに、 イオスの中で何かが息が詰まっていた後悔が、少しだけ流れていくのを感じた。 「何が起こるかわからないから、敵になっちゃうかどうかわかんないけど ・・今のところは大丈夫。まだそんなにキツイ出来事なんて起こってないし」 「・・だがは、僕達といても傷つくだけだ・・」 「それはあたしが決めることだけど?」 「トリス達に誤解されるぞ・・君が敵だと・・思われる」 言葉に、の肩が一瞬震えた。 少しだけ俯いて 「それはそれでしょうがないよ。 あたしも何とかわかってもらえるように話すよ」 「・・一度根付いた疑念は、晴れることが難しいぞ」 「わかってる。どこにいてもそれは同じだから。 ・・・あたしの世界でも、戻らないことだってあったから」 複雑なのは、どこも同じで 「でもねトリスは言ってくれたのよ」 ” さんと一緒だよ” 「・・あたしに、言ってくれたの」 ” 「 ”戻ってきてよ、待ってるから・・・・・・・イオス達のこと好きでいいから、 さん・・” はすっきりとした表情で、月のない深い夜色の空を見上げた。 「そしてリューグがここまで追ってきてくれた。 あたしを返せって、追ってきてくれた 何回話し合ってもいい・・ずっと隠してたあたしが悪いから責められたってしょうがない」 は少し離れた場所で、何度も剣をぶつけ合っているリューグとルヴァイドを見た。 「・・でもやっぱり、わかって欲しいとは思うよ。あたしの我が侭だけど・・。 皆を離れたあたしに、何の価値がなくても・・解って欲しいって。 だから解ってもらえるまでしつこく話し合いを要求するんだろーな・・ともね」 特にネスの嫌そうな顔が目に浮かぶよ そう言って笑うに、イオスは拳を握るしかなかった。 もう、何をどう言えばいいのかもわからなかった。 一度もイオスを責めないに、どう言っていいか・・何も思いつかない。 「・・イオス、あたしなんかのためにそこまで思い悩まないでよ」 「・・っ」 「いいんだよ、イオス。 ただでさえたくさん抱えてるあんたが、あたしの心配しなくても。 心配してくれるのは嬉しいけど・・もうちょっと量を減らした心配にしてよ。 重みであんたが潰れちゃうわよ」 爪が食い込むほどまでに握られていた拳に、柔らかな手が重ねられた。 生きている人間の体温を持つ、ぬくもりが伝わる。 「たくさん願って生きなくちゃ」 「・・・」 「願って、自分の足で立って、動いて、生きなくちゃ・・ね、イオス」 はふわりと、イオスの頭を抱きしめた。 とんとんと背中を軽く叩き、時にはなだめるように撫でていく。 いつもはこちらが抱きしめたなら悲鳴を上げて逃げるのに、こうやって 彼女から抱きしめてくれたなんて初めてではないだろうか。 (・・いや、違う・・) ファナンで生死の境をさ迷っていたとき 彼女は抱きしめて、死ぬなと言っていた 生きろと、泣いてくれていた 「・・僕は、君が傷つくのは嫌だ」 「あたしも嫌よ、見たくない」 「でも僕は・・君に会いたい・・傍にいたいんだ・・」 それは今、叶わぬ願いだけれども いつか叶うのだと、彼女は抱きしめる力をこめて伝えてくる 言葉のない、肯定 イオスは堪え切れないように、の背に腕を回した。 掻き抱くように抱きしめて、ただただ、その体温を身に染み込ませる。 一方は、“あたしってもう最高に良い思いばかりしてんなー”と妙に落ち着きをはらって呟いて。 ぽんぽんとイオスの背中を軽く叩く。 その手は何もよりも温かく、優しかった。 の髪の香りに落ち着きを取り戻しながら、誰にいうともなく小さく、掠れたように呟いた。 それはにすらも届かなかったが、それでもイオスは言わずにはいられなかった。 ”君が好きだ そして、出会わせてくれた誰かに感謝した。 出会わせてくれた全てに感謝した。 それは本当の、心からの感謝。 リューグはそう思って目をこすった。 手も赤い リューグはそう思って、自分の服で手を拭った。 心が、身体が、全てが焼けるように熱い それはどうしようもなくて、それを振り払うようにリューグは剣を振りかぶった。 リューグはただ、命令されるように剣を振っていた。 相手は憎い仇のルヴァイドだ。 だが接戦の度に何か伝えようと唇を動かしている・・なのに、どうしてだろう。 自分の耳にはルヴァイドの言葉が届かない。 こんなに間近にいるというのに、どうして何も聞こえないのだろう。 聞こえない・・はずなのに、それに答えるように自分は叫び返している。 自分じゃない誰かが答えるたびにルヴァイドが少し顔を歪めて、剣を裁いていた。 ルヴァイドは自分の太刀を見事なまでに避けている。 それはこの男ならではの技量だと思うが、それでもやはり完全には避けきれていなくて。 刃が鎧を掠めたり、頬に小さな傷を作り、涙のように血を滴らせる。 その度に、泣いている誰かの姿が思い浮かぶ。 ( リューグは剣で空気を薙ぎ、ルヴァイドの大剣の刃を受けて滑るように交す。 冬らしく冷気を伴った風がリューグの頬を撫でながらも、刃は休まずルヴァイドを追いかけて。 そうして剣は重り合って小さな火花を散らす。 ・・再び、リューグの脳裏に少女の姿がチラついた。 まろみを帯びた柔らかそうな頬に、再び涙が零れ落ちて行く。 自分が剣を振るう度 泣いている誰かの姿を、思い浮かべてしまう 「・・っ・・ 無意識に、リューグの口から言葉が漏れた。 ルヴァイドはそれを聞いたのか、眉を潜めて赤毛の少年の顔を伺う。 「・・・?」 「・・・やめ、ろ・・・俺、は・・・」 誰かが死ぬのは怖いと思う それは、今も昔も変わらない だがそれでも人を殺す、殺される事を承知で戦っているのは 護るモノがあるからで 安心して笑っていて欲しいからで 決して泣かせるためじゃない (・・ 急に、腕が重くなった。 長時間に剣を握って振るっていれば、体力の消費も激しい。 だが何よりも、泣いている少女が脳裏にチラついて離れないのだ。 目の前の男を傷つけると 彼女はきっと泣くだろうと、知ってしまったから だからこんなにも、思い浮かぶ (違う・・) 自分が今やっている事は、大切なモノを守る為の戦いじゃない。 自分の両親を殺した<はぐれ>・・・悪魔と同じではないか。 ただ憎しみに駆られ、殺すことだけを考えて戦う 本当は、ただ迎えに行きたいだけだ あいつと帰りたいだけだ アメルもロッカも、仲間達も 皆が笑っていられるあの場所に 腕の力が、身体の力がふと抜ける。 途端に、戦う意思を失くしかけたリューグの脳裏に、低く、暗い まるで有無を言わさず命令するような・・・・・嫌な声だと、リューグは嫌悪に顔を歪める。 “殺シナサイ” 黙れ “コノ男モ、他ニ生キテイル者モ殺スノデス” うるさい “ソウスレバキット、貴方ノ中ノ何モカモが楽ニナル” 俺は楽になりたいために、剣を振っているんじゃない “村モ彼等ニ滅ボサレテ・・哀レデ、惨メナ貴方。 目ノ前ニ憎キ仇ガイルトイウノニ、貴方ハソレヲ見逃スノデスカ? 村ヲ滅ボサレタノニ、貴方ハコノ男ヲ許スノデスカ 「っ黙れええええええええええええ!!」 囁きを掻き消すように、リューグは叫んで剣を突き出した。 ガチンっと金属が重なる音をたてながら、頭に響くその声は、 リューグを追い詰めるかのように嘲笑う。 そして殺せと甘く囁く。 それが酷く憎らしくて、自分が必死でフタをしていた感情が流れ出て行く。 ・・・・・・暴かれていく。 (違う!) 違う 俺はこんな事をしに来たんじゃない 誰かを殺しに来たんじゃない あいつを迎えに行くためなんだ 黒騎士と戦っている場合じゃない そう思っているのに、剣を振り上げる腕は止まらない。 ルヴァイドに切りかかる剣は常に動き、己で止まることはなかった。 自分の身体が言うことを聞かない。 同時に意識も遠くなっていくようで、眩暈さえも起こり始める。 このままでは、呑み込まれる。 リューグはそう確信して、逃れようと、声にならない声で叫んだ。 なのに喉からほとばしるはずの声は、世界に響きもしなかった。 いつの間にか世界の全てが赤かった。 怖いほどまでに赤かった。 夜の時間はまだまだ続くはずなのに、何故こんなにも赤い世界に自分はいるのだ。 何故、赤い世界に、たった一人で胸を押さえて、声にならない叫びを・・・・・・。 (なんで) 帰るためにここにいるのに。 また他愛ない話をしながら、出て行った彼女と軽い口喧嘩をしながら帰るために。 彼女を取り戻すために。 ( 誰かの名前を叫んだ自分の声さえも、呑みこまれていく。 呑みこまれる。 赤い世界に呑みこまれる。 ・・・・・自分が消えていく。 自分じゃない自分が、自分を支配しようと呑みこもうとする。 そんな彼の叫びを聞くのは、側で囁いていた声。 声の主は叫ぶ彼を嘲笑って。 リューグの意識を赤い世界で呑みこもうと、また笑った。 「目を覚ませ!」 ルヴァイドは、叫びながら素早く屈み、リューグの懐に滑り込む。 突然の接近戦を避けるためリューグは数歩後退しようとしたが、ルヴァイドの方が今一歩早く。 彼が握る大剣が振られたときには、リューグの剣は空高く舞い、弾かれた音を空に響かせた。 少年の手から、刃が綻びを見せ始めていた剣が離れた。 だがリューグは武器が弾かれたにも関わらず、口元に笑みを浮かべた。 拳を強く握り締め、獣のように牙を剥き、まだ体勢を立て直していないルヴァイドに殴りかかった。 硬く握られた拳。 それはルヴァイドの頬をえぐるように繰り出され、ルヴァイドは直撃に受けて地面に倒れると、リューグはルヴァイドの上に乗りかかって、手加減も何もなしに力の限り、首を締めた。 ルヴァイドの唇から、掠れた声が零れ落ちる。 「・・っ・・!」 リューグはにやりと笑みを広げた。 ギラギラとした瞳にルヴァイドを映し、荒く呼吸を繰り返しながら浮かべるその笑みは、恍惚としたような・・獣の笑みだ。 締める力すら、人外のようにさえも思えてくる。 (・・そう、か・・) ルヴァイドは過去の自分と・・夢の中にいた少年とリューグを重ねた。 彼もまた、全てが憎いと思う心をずっと抑えていたのだろう。 ・・・・・・・抑えていた蓋をあけたのは、他ならぬ自分で。 凄絶な笑みを浮かべ、荒い呼吸を繰り返しながら締める男の手は、一時も緩まない。 脳に酸素が回らなくなり、抵抗をする気力さえも失われていく。 視界の隅では仲間の兵士が弓を構え、リューグを狙っているが (・・駄目、だ) 彼を、殺してはいけない。 自分も、死んではいけない。 今は誰も死ぬべき時ではない。 今は共に、還るべきだ。 互いの居場所に還るときだ。 誰よりも、それを望んでくれている人がいるのに死んでは 視界が暗くなり始めた。 瞼が伏せられて、やがては真の暗闇が落ちるまでそう時間がかからないだろう。 ルヴァイドの意識が遠くなりかけた次の瞬間。 「ちょぉっと待ったーーーーーーーーーーーーァ!!!」 半ばヤケになったような声と同時に、リューグの身体が横に吹っ飛んでいった。 (リューグ! ゴメーーーーーーン!!) 足に思いきり力を入れて。 あたしは側面から、鎧に覆われていない部分のリューグの腹を蹴り飛ばした。(マジでゴメン・・!) ものすごく重たい衝撃が足にかかったと同時に、苦しさに呻くリューグの手は ルヴァイドの首から離れた 不意打ちに、リューグの身体は簡単に地面に転がった。 「ルヴァイド様から離れたぞ! 全員、狙いを定めろッ!」 兵士の一人の号令に、一斉に弓が転がったリューグに向けられた。 その間にあたしはルヴァイドに走って彼の体を抱き起こし(重いよルヴァイド!)、 止められていた酸素を取り込むため、何度も咳き込む彼の頭をぎゅうっと抱きしめて衝撃に備える。 ズンッ! 地面が揺れた。 それは何度も、何度も激しく地面を揺らす。 まるで地団駄を踏んでいるかのよう。 次いで猛々しく、獣の叫び声が月の光のない夜空に木霊した。 地面の揺れと咆哮に、弓を構えるどころではなくなった兵士が見たものは、 巨大で、神々しいほどまでに美しいレヴァティーン。 レヴァティーンはさらに一鳴き。次にぎろりと兵士達を睨みつけ、口を大きく開けて威嚇。 大型召喚獣の間近の威嚇には、さすがの”黒の旅団”も統率が乱れ始めた。 (演技派よレヴァティーン! 目指せハリウッド!)←何故 兵士はレヴァティーンにまかせ、あたしはルヴァイドをみた。 ようやく身体全てに酸素が回り落ち着いたのか、彼は驚いた様子であたしを見ている。 あー良かった。死んでない・・。 「遅くなってごめんね、大丈夫?」 「・・」 「リューグを守ってくれててありがと・・おかげで助かったわ」 「だがここに来るとお前も」 「ああもうあたしも今すごく逃げたしたい衝動に駈られまくりなんだけど ここで逃げてもしょうがないうえにバノッサが“さっさと行きやがれ馬鹿女!!”とか言って あたしを罵ってくれるからそういうわけにもいかないのよー! ・・・・てかもうあの野郎(バノッサ)覚えてなさいよ!」 悔しさに“ムガー!”と頭を掻けば、ルヴァイドがハッとしたようにあたしへと腕を伸ばした。 けれどもその腕が届く前に、頭を掻いていた腕が別の誰かに掴まれる。 痛みに呻いて視線を上げると、掴んでいたのはリューグだった。 彼はずるりとあたしを引っ張り上げ、あたしへと伸ばしかけたルヴァイドの腕を踏みつけた。 「ぐぁっ・・!」 「いやーーーー!! 痛い痛い見てるだけで痛い! つーかバノッサ! さっさとしろこの美白ーーーーーーーーーッッ!!」 空に向かってそう叫べば、暴れていたレヴァティーンが翼をはためかせた。 巨大な身体は旋風を巻き起こして地から離れ、あたし達がいる上空へと現れる。 その背には、白い肌に白い髪、長身痩躯で凶悪顔のあの男。 「いつかブッ殺す! 馬鹿女!」 叫ぶと同時にゴテゴテとしたガントレットに覆われた腕を掲げれば、主である彼の傍らに、白の電気をパチパチと爆ぜながら現れたのは、 バノッサはリューグに向かって掲げた腕を思いきり振り下ろせば、パラ・ダリオはリューグに視線を向け、身体が光ると同時に力強い電撃を彼に打ち放つ。 まるで雷が、真上から落ちたよう。 この世界に召喚(?)されてから、パラ・ダリオの電撃の威力を見たことがなかったのだけれど、それは見た目のとおり(だって縛られ(以下省略))激しい力だった。 ”どうか黒コゲ死体になりませんよーに!”と祈っていれば、電撃はリューグに見事直撃し――ついでに傍にいたあたしとルヴァイドにも及んでしまった。(ギャアア痺れる!) 「ば、バロ・・あんら、わらとれしょ・・! (ば、バノ・・あんた、ワザとでしょ・・!)」 「さぁな。 オラ、さっさとガキを元に戻せよ」 「ろうやっれもろせと・・(どうやって戻せと・・)」 電撃のショックで呂律が回らなくなってしまったけれど、あたしはいまだ腕を掴んでいるままのリューグを見た。(電撃くらっても離さないとは・・その根性天晴れよ!) 掴んだ腕を離さないままでいられたかわりに、彼はただ、ガクリと膝をついていた。 リューグの身体にはまだ、電撃の余韻が残っているせいで白い光が小さく爆ぜている。 「・・っ・・」 「よっし! 動き封じ成功! ・・てかこの後どうしろっつーねーーーーーーーん!!」 呂律が回らなかったのも戻って、ここまで上手くやったのは良い。 でも肝心の元に戻す方法は、いくら絞っても出てこなかった。 ・・・・・ハヤトが”取り合えずと向かい合わせればいいんじゃないかー?”な一言で作戦決行が決まったのだけれど イヤアアアアアアもしかして失敗ーーーーーーーーーー!?!? 滝冷や汗が背を濡らすのを感じつつ、痺れに身体を震わせているリューグをチラリと見れば。 遠くで見たときよりも多く、彼の身体には血が付着していて。 赤黒い色を所々に残しながら、顔を俯かせたまま震えていた。 その血は、自分のモノでもあるだろうし、兵士のモノでもあるだろうと予測がつく。 「・・リューグ」 恐る恐る、声をかける。 すると彼はピクリと肩を震わせて、痺れの残る身体で、ゆるりと首を持ち上げて。 掴んでいる腕を離さないまま、あたしとかっちり視線を合わせた。 リューグの目は、怯えているようだった。 ルヴァイドと戦っていたときはあんなにも、飢えた獣のように殺意に満ちた、 ギラギラとした瞳だったのに。 視界は一気に悪くなり、周りは兵士の喧騒に包まれて、風はふわりとあたしの髪を持ち上げてさらい、時間だけが過ぎていく。 「・・リューグ」 無意識に、掴まれていない片腕が、リューグの後ろ首へと伸びていく。 視線を離さないままリューグを自分へと引き寄せて、リューグは何ら抵抗のないままぐらりとあたしへと傾いて、首筋に、リューグの顔が埋まった。 「 ぬくもりを感じて、リューグは目が覚めた。 赤い世界に呑み込まれて、嫌な笑い声を聞くと共に意識がなくなったのは覚えている。 なのに今は・・・ただの暗闇の世界い佇んでいる・・・どういうことだ?と、内心首を捻った。 「 遠くから、か細く。 言葉が届いた。 その瞬間。 焼けつくような鋭い光が、リューグの世界と視界を覆い尽くした。 上空から様子を伺っていたレシィは、光を見た。 尽き刺すほどの、眩し過ぎる白い光。 それはを中心として放たれている。 「・・ご主人様・・?」 同刻。 ・・・ガシャンッ!! 机の表面を殴りつけるように握り拳でダンッ! と叩きつけると、その音は荒い呼吸音と重なった。 薄暗い一室の机に飾られていた花瓶が激しい音をたてて砕ける。 「あ・・ガッ・・!」 苦しみに呻く声。 外では波が囁きのように遠く響く トリス達がとリューグ達の帰りを待っている中、道場の暗い部屋の一室でバルレルは、 ただ苦しみに喘ぎ、自らの胸部を強く掴み、深い呼吸を繰り返していた。 「グゥゥ・・が、・・ッ!」 しかし拒否をするように耳鳴りがする。 不可解で、そしてあまりにも激しい二つの衝動。 その苦しみの前にバルレルは呻き声をあげて、頭を抱えて膝をつくしかなかった。 突如、バルレルは窓から外に飛び出した。 道場の庭を抜け、門をくぐり、茶色い道筋を走り、走って走って、 心臓が壊れそうになるまで走って、そうして波が囁く砂浜に辿り付いて。 そこでようやく走る足を止めて、膝をつく。 きめ細かい砂の感触が手の平に伝わり、地面の砂を強く握り締めた。 声が響く。 “ 「・・・・・ッあ・・ウアアァァアアァァアァアアアアァアアアァ!!!!」 少年の姿を持った悪魔の苦痛の咆哮が、砂浜一帯に轟く。 搾り出すように激しく、苦しみに耐えるように、 だが、その叫びは広大な海の波の音に掻き消され、叫ぶバルレルの髪は風ではなく、 彼自身から滲み出る魔力にゆらりと揺れた。 「・・アアァァァァアアァア・・!」 髪が、長さを増した。 骨は太さや長さと変え、顔や身体の肉付きも変わり、少年の身体は逞しい青年の身体へと変化する。 長く伸びた髪の隙間から角が見え隠れし、腰にあった小さな翼は、恐怖を覚えさせるような・・深い漆黒色の大きな翼へと姿を変えた。 彼を中心に風は渦巻き、砂は風にさらわれて空に舞い、やがて海に砂の雨が降る。 (誓約が解ける 遠方から感じる力が、彼の全てを解放していく。 ・・・ それは<誓約>と言う名の鎖をも引き千切り、バルレルの本来の姿を取り戻させようとする。 ・・・・・・突如、嵐に近い風が霧散した。 波の囁きは再び響き渡り、静かな夜の海を演出する。 ただ一つ違うのは、青年が膝をついて、震えていることだった。 「ハッァ・・ハァッ・・・はぁっ・・・ぐ・・」 何が起こったかわからなかった。 ただ無理矢理に<誓約>を破り、バルレルの身体に重く重く、疲労を与えたことしか理解できなかった。 (・・クソッ、・・身体が、重てぇ・・) 震えと呼吸がなかなか、落ち着きを取り戻さない。 (・・・なんで、俺は・・・こんなモノを・・・・・・) 大きくなった手で、頬に触れると手は濡れた。 頬に、伝う。 熱を持った、透明な、雫。 それは目尻から零れて、砂へと落ちて行く。 「何で、・・・・ッ・・こんな・・・」 涙が 切なく、悲しく、寂しく、怒り、叫びたいような感情が、胸のうちにとぐろを巻いて蠢いている。 先ほど聞いたあの声が。 耳に残り、何回も木霊する。 まるで、<これだけは忘るな>と、本能が叫んでいるように、何回も。 “あたしが死んでも、悲しまないでね” バルレルは何かを振り払うように首を振った。 それでも声は、心に刻まれて離れない。 「・・馬鹿野郎・・」 彼の声は、子供特有の高い声ではなく、青年として相応しい男の声だった。 「何で、お前は・・・あんなこと・・・っ!」 何故、こんな言葉が出るかわからない。 力に反応してしまった理由も、こんな涙を流してしまう理由も、 何かを悔いるような気持ちになってしまうのかも、わからない。 「・・馬鹿野郎・・!」 だがそれでも。 バルレルは、言わずにはいられなかった。 しかしそれを思い出そうとしても思い出すことが出来ないのは、声の持ち主のせいだと、 バルレルは知っている。 彼女は、悲しませるくらいなら忘れさせることを選ぶ女だった。 ・・波がバシャンっと、膝をつく彼の足と手を濡らしていく。 沈んだと思われていた月は、いつの間にか顔を出し、 涙を伝わらせる悪魔と、ただ囁きを繰り返す海を、優しく映していた ( 暗闇に漂う意識の中で、あたしは静かに、誰かに問い掛けた。 わからないけれど、誰がこれを聞いているのは確かだろう。 なんとなく・・そう思う。 (・・あたしがリィンバウムにいてさ・・大丈夫なの?) 何かあるごとに、そう思う。 今回の件もその前も・・何だか、あたしってばまるで疫病神のよう。 傷つけたり泣かせたり心配させてしまったり・・そんな事ばかりしている気がする。 ・・・・・・ていうかしてる、絶対に。(頭抱えて) ”そんなこと、ないんじゃないの?” あたしの考えが筒抜けなのか、クスクスと、笑いを零しながら声が返してきた。 それに”うわぁあたしってば本格的に多重人格の域に入っちゃたヨ”と再び頭を抱えつつ、 笑っている誰かに言葉を返す。 (いやいや、なんつーかもうそろそろ色々と厳しいわよ。 あたしに何かあるっていうの? そんな馬鹿な! ・・と言いたい所だけど、 レシィやレオルドを召喚なんてとても出来ないのに出来ちゃったし、 過去見れちゃうし変態に迫られるし・・・) ”あるにはあるわよ” (マジすか) ” 思わずぐっと、言葉に詰まった。 (・・確かにそうだけど・・過去見れちゃうのはさすがにヤバくない? なんか覗き見してるみたいでヤな気分・・(たまに嬉しいシーンもあるけど)) ”それはしょうがないわよ、だってそれもあなたの力だもの” ・・・・・・・・・・・・・”それも”ってことは他にもあるんでしょうか同居人。(あたしの中にいるから) (・・平穏な毎日はどこに置いてきたんだろう・・てかとうとう力があるって言われちゃった・・! パゥワー(力)があるとか言われちゃったよあたし・・・!! でも欲を言えば、どっちかというと戦う感じのパゥワーが欲しかったですー) ”何故?” 聞き返されて、あたしは一瞬、考え込んだ。 (・・戦える力があれば、少しはマシだったかなーって) 中途半端な気持ちを持っていても 誰かを泣かせず傷つけず、乗り越えることが出来るんじゃないかって ”出来るワケがないでしょ” (グハァッ!)←改心の一撃 ”力を持っていてもいなくても、それは塞ぎようがない。 嘆いても何をしていても 仰るとおりです。(例:ギブソンの太らない体質とか猛烈に羨ましい等々) ” 顔や身体と同じように、持って生まれたものはどうにも出来ない。 ・・・誰かに何かを押し付けられて、それがとても苦しくても・・あなたらしく、 少しでも、笑って泣いて、怒りながら・・足で立って、歩けるように生きなさい” (・・・・うん) ”生きるってことは、辛くて苦しいけれど、でもやっぱり素晴らしいことで、 生きてくれているってことも、憎くて嫌いになってしまう時もあるけど、 それでもやっぱり嬉しいことなのよ” (うん、それは知ってる) ”生きて”と願うのは 愛しさであれ憎しみであれ、その人物が自分の中にいる証拠 ”死んでくれ”と願うのも また同じ。 ”・・・そろそろ、起きなさいな” (へ?) ”とても心配して、怯えながら、あなたを呼んでるよ” 「 呼んでる・・? 「 頼んでいるのに起きろって命令はおかしいと思うよ、リューグ・・・ 相変わらず世界は闇夜に包まれているけれど、隠れていたはずの白い月は何時の間にか姿を見せて、その光の逆光で、あの独特な触角が目に入る。 色鮮やかな、あの赤い髪も視界に認めて。 彼は、酷く顔を歪めながらあたしを腕に抱いていた。 「・・リューグ・・?」 「だ、大丈夫か?! どこも・・怪我なんかしてないよな?!」 震えた、声だ。 リューグにしては珍しい・・こんなにも、怯えを露にするなんて。 (・・何で、そんな、泣きそうに・・) 大丈夫だと伝えるために、あたしは首を横に振る。 ただ身体がすごく重くて、首を振ることしか出来なかった。 けれどもリューグは酷くほっとしたような顔を見せてから、力強く、痛いくらいにあたしを抱きしめた。 あたしは思わず目を丸くして、リューグは途切れ途切れに言葉を出す。 「・・馬鹿・・野郎・・!」 「・・・・・・・・・・・・なにゆえ?(トゲ痛っー!)」 「お前・・・・蹴りが痛ぇんだよ・っ・・・」 「ウワォあんなにヤバイ目をしてたくせに何で覚えてんのよアンタ!」 (ってか、元に、・・・・・・戻ったって事よね・・?) あたしはそれの確認のため、首をもたげるようしてリューグに問いかける。 「りゅ、リューグ・・? 元に戻ったの・・・・?」 あたしがリューグの顔を覗き込もうと胸を押して顔を上げようとする。 が、リューグがそれを許さなかった。 だた強く抱きしめて、あたしの肩に顔を埋めたまま動かない。 「リューグ?」 呼びかけても、やはり微動だにしない。 リューグに抱きつかれながらも”これからどうしよーかねー”と考え込んでいても、その脱出口は見つからない。 (・・イオスの話だと、このままトンズラしろって事よねー・・。 いや無理。こんなに抱きつかれちゃってたら動けないし、動く体力ないし) ”でも解決っぽい”と、あたしがはぁーっと気の抜けたため息を吐けば、 リューグの身体がぐらりとあたしに倒れ込んできた。 驚きながらもあたしは力の入らない手で慌ててリューグを支えて、何事だと彼の顔を覗きこむ。 深く寝息をたてながら、眠っているリューグ。 どうやら、かなり疲れているらしい・・しかも目尻になんとなーく、涙の痕のようなものが 見えるのは気のせい・・・・でもなかった。 (・・心配して、くれたんだ) あたしがペシンと軽く頭をはたくと、リューグは僅かに眉を寄せる。 でも起きることなくそれで終り、あたしは彼に小さく笑いかけると、そっと、耳元に唇を寄せた。 ごめんね 迎えに来てくれてありがとう そう告げて、あたしは満面の笑みを浮かべた。 言いたいこともたくさんある。 伝えたい気持ちもたくさんある。 でも今は、リューグだけ、休憩の時間だ。 あたしはまだまだ、やることがある。 「 ルヴァイドが、放心したような表情であたしを見て佇んでいた。 それにあたしは不思議そうに思いながらも、あたしの肩に頭を乗せてぐっすり熟睡モードのリューグを抱きなおして”無事だった?”と問えば、彼は目を細める。 「・・・無事だ、何度も助けられてばかりですまない」 「平気平気・・それよりルヴァイド、あたし・・リューグに何かした?」 “記憶が一部、スポーンっと抜けちゃってるのよ”と笑っていうと、ルヴァイドの表情が強張った。 そして一度顔を俯かせて、再び上げて・・切なげに顔を歪めて、座り込んでいるあたしを見下ろしている。 「・・ルヴァイド?」 「お前の身体から光が溢れて、それがリューグを包んだ・・それぐらいしか俺にはわからぬ」 「ん、それで充分。・・・・・・そっかー、とうとう発光体になっちゃったのかー・・」 どんどん人間離れしていくー・・ ・・そう思うと、不安が、重く胸に圧し掛かった。 結局はあの声の主のことを何も聞けていないのだし、自分が何かもわからない。 思わず片手で目元を押さえれば、ルヴァイドが、片膝をついた。 ”お”と彼の動きを見守っていれば、大きな手はあたしの頬を撫でて、次に指先で髪を弄び、 鎧のない胸を押し付けられて、心音が耳に優しく響いてくる。 「・・・・ルヴァイド?」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・俺は、お前が、何者でもいい」 ・・あたしが意識を手放してから、そんなに時間は経っていないらしい。 レヴァティーンの砂埃が視界を悪くしたままで、今でも喧騒と悲鳴があたりに響き、あたしとルヴァイドの髪は砂と共に舞い上がり、踊るように揺れている。 「 「・・・・」 「お前が憎くなる時がきても、それだけは何があっても変わらん ルヴァイドが身体を離して、微笑んだ。 戦闘中はとても厳しくなる表情は影も形も見えず、ただ本当に、温かみのある、優しい笑み・・とても励まされる。 それだけで、不安が溶けていく。 「・・あり、がとう」 最近、とてつもなく涙腺が弱い。 色々ありすぎたせいなのだろうか・・でも、泣くことは決して悪いことじゃないし、別に泣いても良いだろうか。 「・・ほんと、あんた・・カッコよすぎ・・」 それでも泣き顔を見せるのは恥ずかしくて、無理矢理笑ったら泣き笑いの表情になった。 それにルヴァイドはまた目を細めて・・あたしの両頬を、温かい、大きな両手で包んで。 「お前にそう言われると光栄だ」 「いやもーほんと、男前、最高、結婚してちょうだい」 冗談めかして、そう言えば。 「結婚しよう」 ブハッ!!(噴) ・・・・・見事な反撃がかえってきた・・って、ええええぇぇぇぇぇ!??!?! 涙も不安な気持ちも引っ込んだっていうか・・・エエエエェェェェ?!?!?! 「や、今のは冗談! 冗談です冗談・・って、ひぇっ?!」 顎を掴まれて、頬に口付けられた。 ルヴァイドの唇の感触が頬に触れて背筋が逆立った・・って自分落ち着けェェェェ! 相手は手強い黒騎士だ! 下手すれば、囁きだけで腰砕けだ!(エロ声だから!) 「る、る、ルヴァイド・・あの、その、最近あたしのギャグの付き合いがいいっていうか・・」 「お前の友であるなら、付き合いが良いほうがいいだろう?」 「うぉぉおぉぉルヴァイドがこんな事を言ってくれるなんてとうとうマブダチかしらあたし達・・っていうかリューグ、リューグがおきちゃうから落ち着こうよ! 寧ろ落ち着けーー!」 「ー!」 その時、上空から声がかかった。 ハヤトの声だ。 あたしを呼んでる・・と思った次には、”帰りは掻っさらうように見せかけて行くから別れの挨拶しておけよー!”と、叫んでいて、あたしは慌ててルヴァイドの胸を押し戻す。 「と、とにかく・・元気でね!」 「・・・お前も」 「・・あ、あと・・その・・」 「・・」 ・・・・・・・・・何だか、今更過ぎて特に別れの挨拶らしい挨拶の言葉が出てこない。 それが何だかおかしくて笑ってしまえば、ルヴァイドも笑みを浮かべてあたしを見つめていた。 ・・・ううむ、ルヴァイドってやっぱり美形なのよね・・・(汗) あたしはハヤトに手を振れば、彼らを乗せたレヴァティーンは急降下してあたし達の目の前に降り立った。 ハヤトは急いで飛び降りてリューグをレヴァティ−ンの背に乗せると、あたしの腕を掴んで手慣れた様子でその背にのぼり、引き上げてくれた。 広い背中の上に座って、ようやく安堵の息を吐けば。 レヴァティーンは一気に、上空へと舞い上がる。 あたしは、下を見た。 ルヴァイドから少し離れた位置に、息を切らせてルヴァイドの隣に並ぶイオスと。 イオスの隣に立ったゼルフィルドと。 そして長い髪を風にさらわせたまま、あたしを見つめているルヴァイドがいて。 あたしは大きく手を振った。 声を出してはバレるから(いやこれでもバレるかもしれないけど)、大きく、大きく届くように。 “また会おうね”の意味もこめて。 そうしてレヴァティーンは、月明かりの空を再び飛行し始めたのだった 「 鳴き声を一つ上げて、夜空を飛翔するレヴァティーンの姿を見つめながら、 キュラーは自分の象徴とも言える(言えるんかい)顎に触れて問うた。 問われたガレアノが頷くと、キュラーは“なるほど・・”と呟いて、眉をひそめる。 「あれは忌々しい天使の光に似ていますが・・似ているだけです。 実際、彼女が天使というわけではないようですね・・口では上手く説明できないのですが、あれを至近距離で浴びると私達では苦痛に感じるでしょうね」 “なのにそれを間近で浴びてしまうなど、ガレアノは運が悪いですね”と呟くキュラーに、“やかましいわい!”と怒りの感情をあらわにする。 「・・まぁ、何はともあれ、私はあれを浴びるのは遠慮です。 それに戯れもほどほどにしませんと、私がレイム様にお仕置きをされてしまいます」 レイム様のお茶汲み1週間とか庭の手入れはまだ我慢できますが、 レイム様のお手製の衣装のミシン縫いは遠慮したいですし ワシもだ(同意すんなよ) 「まぁ、私の術を打ち消すほどの強力な光の持ち主ということで・・、 ・・これでレイム様があの娘に入れこむ理由その1がわかりましたね」 「?・・・その2もあるのか」 不思議そうな表情を見せるガレアノに、キュラーは頷いた。 切れ長の目をさらに細めて、世界を巡る風の匂いを鼻腔に吸い込み、深く一呼吸・・そして吐き出す。 それはため息にも似ている仕草。 求める理由が、他にある。 それを物語るのは、レイムが時折見せる、表情だ。 本人は全く気付いていないのだが、どこか冷たい印象を持たせるその美貌すらも、和らげて―――微笑む、その様。 それは確かに、に向けられている。 だけに。 ただ一人に。 NEXT ----------------------------------------------------------------------------- *後書き* 第62話をお届けさせて頂きました。 ・・・・あの、本当に、お疲れ様でした・・・。(笑) まさかこんなに長くなるなんて、思ってもなかったんですが・・丸々3日かけまして・・・。 むちゃくちゃに詰め込みすぎたので・・話の構成なんて、もう無いようなものになりまして・・・。 途中で文章が変だったりとかする可能性がかなり大きいです、もうひたすら打ち続けた・・! 90kbなんてそうそうないヨ・・! ・・も、もうお疲れ様でしたというしか・・皆様にも、自分にも。(笑) バノッサは今のところヒロインに対しての扱いがアレですが(前髪掴むなんて鬼)、 そのうちメロメロにさせてやりたい・・!(笑) 何故怒ったのかも、後々に語られるかなぁ・・と・・多分・・(オイオイ) ルヴァイド編は終了しました。 ですがまだちゃんと解決はしていないので、これから解決編へと。 バルレルも誓約が解けた姿になりましたし・・続きどうしよう・・! なんだか色々と削りたい部分があるんですけど・・うーむ。 それではここまで読んでくださってありがとうございました! 2002.5.13 2005.1.9大幅修正 |