そこは暗い空間と、大地を白く彩る雪だけが存在していた。 その二つしか存在していなかった。 それらをずっとずっと見続けてきた少年は、これら以外のものを見たことがなかった。 少年はずっとこの世界で生きていた。 第56夜 「 呟いた少年の唇に、ぽつりと白く、冷たい雪が触れて消えた。 暗い空から雪が降り始めたのだ。 雪が積もっている上からさらに、ちらほらと降り積もっていく。 紅紫色の髪を持った少年は、その光景を眺めていた。 いつもと変わらぬ世界の景色。 降っては止み、降っては止み、幾度も繰り返すすように。 決して光が差すことがなくただただ広がる雪景色。 その世界を、酷く冷めた瞳で見つめて、少年は再度呟いた。 「ルヴァイド」 彼の足元には、まるで心がない人形のように膝をついて座り込んでいる、ルヴァイド。 少年の呼びかけすらこたえず、視線は虚空を見つめ、彼の頬には血と雪が混ざり合ったモノが こびりついていた。 「・・・・」 「まるで昔のようだね」 ルヴァイドの幼少の頃の姿をかたどった少年は、すっと手をかざす。 雪が小さな手にふわりと舞い落ち、すぐに溶けてなくなった。 「・・父上が、殺されたあの日みたいだね」 「・・・」 ルヴァイドは何も答えなかった。 ただ静かに沈黙を保ちながら、足元に降り積もる雪をただ目に映している。 ・・・ただ、映すだけ。 少年はふっと笑みを浮かべ、ルヴァイドの頭や身体に降り積もった雪を払ってやって。 再び暗い空間で空の役割を成している天井を見上げた。 そこは真っ暗で何も映していないけれど。 「・・君も僕も、本当は時間が止まってるんだよ」 その証拠は、この雪達 「17年前のあの日、父上が目の前で殺されて。 ルヴァイドが雪原で泣いて涙を枯らせた瞬間から 凍り付いているんだよ」 決して癒えることのない悲しみを抱えている 「・・以前、君はあの女の前で泣いたようだけど・・でもあれは本当の涙じゃない。 本当の涙は、君が自分を取り戻した瞬間に出るものさ」 “あの女”の部分で、まったく反応のなかったルヴァイドの指がピクリと動いた。 そんなルヴァイドに少年は苛立たしげに顔を歪め。 「でも君には涙なんて必要ない、もう何もいらないよ。誰も、何も・・」 ここで死ぬのだから 虚空を見つめていた瞳に、光が灯った。 弱々しくとも、それは確かに生きている証。 ルヴァイドは唇を噛みしめ、最後の力を振り絞るように肩に置かれた少年の手をバッ!っと振り払った。 反動でふらりと大きく後退するが、雪が積もっている大地を踏みしめながら足に力を入れ、 少年を睨み上げた。 そんなルヴァイドを見て、少年は薄く笑う。 「まだ死のうとは思わないの?」 「・・俺は・・・俺はまだ死ねん・・まだ・・まだ、死ぬわけには・・・約束が ろれつの回らぬ舌を懸命に動かし、荒く呼吸を繰り返しながらルヴァイドは思考を巡らせる。 随分と記憶が薄れてしまったかのような・・消失感。 さらにこれが進めば、自分自身さえも忘れてしまうだろう。 「・・諦めなよ、ルヴァイド。 誰も君を待ってなんかいない・・君は、ここで死ぬべきだ」 「ふざけるな・・っ!」 「この世界がその証拠だよ、雪が降り積もるこの世界は君の心をあらわしている。 ・・こんなにも寂しい世界を背負ったままで、君が生きていけるはずがない」 「黙れ!・・・・うるさい・・っ!」 生きていけるはずがない。 それはわかっている、自分でもそう思う。 人間は脆いものだ・・どんなに強くあっても、脆いのだ。 いつかは、独りで、死んで行くだろう。 少年は、疲労の色を濃く見せ始めているルヴァイドに、ニマリと微笑んだ。 そしてさらに優しく、囁くように・・・けれど追い詰めて突き落とすかのように、言葉を繋ぐ。 「君はここで朽ちていくべきだ・・僕は君の<憎悪>の化身だから、 君が生きている限り消えないけれど、君が死ねば必然的に僕も消える。 ・・・・僕は消えても・・平気だから構わないけれど、君はそうはいかないよね」 「・・・・っ・・!」 「成すべきことがある・・けれど君は、ここで死ぬんだ。 死んで、終わらせるんだ・・・・疲れただろう?」 少年の瞳の光が、僅かに揺らめいた。 それはどのような意味で揺らめいたかは、ルヴァイドは気付かない。 少年は再び言葉を紡ごうと唇を動かして 「そこまでだ」 瞬間。 大きな手に後ろ襟首を乱暴につかまれ、少年の身体は後方に大きく投げ飛ばされた。 勢いよく視界が回転し、妙な浮遊感に体が包まれる。 「っ!」 地面に叩きつけられると思考が事態を理解すると、少年はふわりと身体を宙に浮かせ、 投げ飛ばされ叩き付けられるであろう衝撃を無効にし、ゆっくりと地面に降り立ってそれを防いだ。 そして・・音も気配もなく現れた男を睨む。 「お前は・・」 少年は、わずかに驚いた表情を隠さないまま、その男を凝視した。 ルヴァイドと少年の間に立っている男は感情という名の表情を浮かんでいない、長身の男。 漆黒色の黒髪と、紫色の瞳が酷く印象的だ。 すらりとした体つきではあるが、先ほど後ろ襟首を掴んだ手は、衣服に覆われた腕は相当な力があり、 筋力があり・・・戦闘経験が多くあることを感じさせる。 そして、 男は少年を一瞥し、だがすぐに興味が失せたように視線を逸らし、ルヴァイドに歩み寄る。 ルヴァイドに近づくことを防ごうと少年が足を一歩踏み出せば、男は再び、紫色の瞳で 少年を視界に映し。 「我が将を返してもらう」 だが思考が上手く働かず、小さく呻いて頭痛を堪えるだけに終わる。 少年は、問う。 「お前は何者?何で僕の邪魔をするわけ?・・その前に、どうやってここに来た?」 少年は後ずさりしながらも,警戒の色を強める。 男はそんな少年を見下ろしながらも、ルヴァイドを支えるように腕を掴んだ。 「立ち上がってください」 「・・・お前は・・・」 「・・貴方には、貴方の帰りを待つ人間がいます 「邪魔をするなぁ!!」 少年が手をかざすと光が溢れ、男はルヴァイドから弾き飛ばされた。 あまりの強いその力に、男が白い大地に身体を打ちつけたことをルヴァイドは理解し、 倒れた男に駆け寄ろうと足に力を込め だが男はすぐに身を起こした。 その拍子に顔から鮮血がボタボタと滴れ落ち、無垢な雪を黒の混じった紅で染める。 こめかみが怪我をしたらしいが、男はそれを知らないと言ったふうな顔色でルヴァイドを見た。 「・・声を」 「・・何?」 「声を辿ってください」 「・・声?」 無感情な瞳が和らいだ。 深い紫色の瞳が、優しい色へと変化を見せる。 「・・彼女が、貴方を迎えに来ます」 誰かを思い出して、瞳の色が和らいだのだろうか。 そんなことをぼんやりと思いつつ彼の言葉の意味を模索していれば 紅く染まっていた雪は白に戻り、そこに男が現れたのかさえ疑問に持つほど静かな世界へと戻る。 ルヴァイドは男の言葉を、胸の中で反芻させた。 “・・彼女が、貴方を迎えにきます” ( 誰かが、俺の元に来るのか? 混乱するルヴァイドの前に、少年が雪を踏みしめながら近づいた。 彼がルヴァイドを見下ろす表情は・・無表情と言ってよい程に、冷めている。 少年は座り込んでいるルヴァイドの前髪を掴んで、無理矢理持ち上げた。 「遊び過ぎた」 「?」 「お前には強制的に眠ってもらう」 パチンっと乾いた音がルヴァイドの頭の中で響き、意識が一気に遠ざかる。 ”お前を二度と、幸せになんかしてやらない”と髪を掴んでいる少年の手が離れれば、 瞼に重みを感じながらルヴァイドは、雪の降り積もった地に身体を預けるよう倒れ込んだ。 心の中には、一つの疑問。 誰が、迎えに来てくれる 「それじゃ、入るよ?」 激しく吹き荒れる風が収まり、再び静かな夜の世界が戻ってきたなかでそう言えば、 頷く一同を確認して、テントの出口の裾を掴んだ。 久しぶりに触った、テントの布の感触。 それがあたしは本当にここに戻ってきたのだと実感が湧く。 っていうかもう美形の寝室はいつでもドキドキアドベンチャー・・!!(燃) ”邪万歳!”ともほざきそうな勢いで、あたしはバッ!とテントを捲りあげて中に大きく踏み込んだ。 途端に大きな物体がぬっと視界に現れて、敵か味方かもわからない一瞬の恐怖から ”殺られる前に殺れ”精神がぶわっと沸き立ち、反射的に足がでた。 「ギャーーーーーーーーーーーーーーーー!!(ゲシィ!!)」 ガッショォォォォォォォォン!!! ・・・・・大きな轟音が辺りに響き渡る。 それを聞きつけてか、周りを警備していた他の兵士たちがワラワラと集まってきて、 ハヤトは頭を抱えて”何やってんだよーーー!!”と叫ぶ。 あぁぁぁ!こっそり来た意味がない!(本当にな) 「!早く中へ!」 しかしさすがのイオスは冷静だ。 あたしとレオルドとレシィをテントに押し込めて、バノッサとハヤトをテントの外に出す。 いきなり突き飛ばされたあたしは慌ててイオスに向き直ろうとすれば、テントは既に閉じられて、 イオスの姿もハヤトとバノッサの姿も見えなくなった。 「イオス隊長!今の音は?!」 「その者達は敵なのですか?!」 隙間からこっそり外を伺えば、ハヤトは冷や汗をダラダラと流しながらも逃げたい衝動をじっと耐えていて、 バノッサは眠たそうに欠伸をしている。(あんた欠伸してる場合じゃないでしょー!<汗) そんなハヤト達の素性と物音の原因を知りたがる彼らに、イオス淡々と言った。 「お前達にはまだ紹介していなかったがこの少年はハヤトだ」 (紹介!?<ハヤト汗) 「今回の任務の重要参考人であり、この凶悪無慈悲強盗犯を捕まえるのに手を貸してくれた者だ。 と、いう事でこの男を牢に入れて閉じ込めておけ、処刑は明日で僕自らが行う」 ・・・・・・隙間から覗いているあたしの視界に映ったイオスの顔は、 どことなく楽しそうに見えるのは気のせいだろうか? 寧ろ気のせいであってくれ(願) 当然、凶悪犯な扱い方をされたバノッサはキレて、腰から円曲刀を取り出してイオスに向けて構えた。 その表情はもうイオスの言った通りにまさに凶悪。 これでは先ほどの言葉を肯定しているようなモノである。 ・・・・・あたしは堪らなくなってバノッサにさよならの言葉をボソリと告げた。 グッバイ・バノッサ(遠目) 告げるなよ 「誰が凶悪無慈悲強盗犯だこの優男!ブッ殺されてぇか!!手前!!!」 「貴様!隊長に無礼だぞ!!」 「隊長が何だって言うんだよ、アア?!って・・オイ、お前ら!離せ!!触るんじゃねぇよ!!」 大勢の兵士に捕まるバノッサに向けて、イオスはにやりと笑みを浮かべた。 それにプツーンと、バノッサの堪忍袋の尾が切れたらしく・・・・・彼は兵士の一人を殴り倒し、 イオスへと一気に距離を詰めた。 だがやはり、所詮は一人VS大勢だ。 あっという間に再び拘束され、イオスは兵達に向けて命令する。 「連れて行け!」 「ブッ殺すこの女男がーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!」 イオスは(珍しく)綺麗に笑い、怒り狂いながら連行されるバノッサを見送った。 やがては彼の姿が視界から消えると更に嬉しそうに微笑んで、部下達を見る。 ・・・そんなイオスにその場の兵士達が肩を震わせた行動を、あたしは見逃さなかった。 あぁうん、あそこまで清々しいと逆に怖いのよね〜・・・(汗) 「ハヤトはルヴァイド様に紹介するためにここにいる、心配はない」 「そ、それでは先ほどの轟音は・・(汗)」 「・・ああ、あれはあの男の召喚術だ。 あの男はああいうナリをしていても立派な召喚師でもある、気をつけろ」 「召喚師?!」 あまりにも召喚師らしくない顔。(顔は関係ないが) それに一同が驚いていると、次の瞬間に熱風と轟音がこの辺り一帯に大きく響きわたった。 ゴウゴウと唸る風と共に紫色の光が空へと溢れ、それが止むのと同時に大きな体を持った生き物・・、 召喚獣・レヴァティーンが姿を現わした。 レヴァティーンは一度高く飛翔し、次には勢いよくイオスの目の前に着地した。 (踏み潰そうとしたのかもしれないが) イオスがレヴァティーンを見上げれば、その背に乗ったバノッサはイオスに叫ぶ。 「この俺様をコケにしやがって・・本気で殺す!!」 「返り討ちにしてやるさ、この凶悪犯めが」 (本当に仲悪いな・・<遠目) ハヤトは切ない視線をテントから覗いているあたしに投げかけてきて、うんうんと頷いてしまった。 大人気ない男が目の前に二人もいて、それを止める術はあたしにもハヤトにも、 そしてイオスの部下兼仲間である旅団の彼らにも知らない。 (まったくもー・・イオスってばこんなに子供っぽかったっけ? ・・美白と美白じゃあわないのかなぁ・・うーん、波長は合いそうなんだけど)←何の波長だよ 外の光景に呆れていると、レシィが震えながらあたしの袖を引っ張った。 その目には恐怖の色がありありと浮かんでいて、あたしは彼の怯える理由に疑問に思いながらも、 ”どうしたの?”とそちらに目を向ける。 ・・・・・そしてあたしの目に、黒い塊が倒れているのが映って。 「ぜ、ゼルフィルド?!」 「・・胸部ニ微軽量ダメージ確認・・」 どうやら先ほど蹴り倒したのはセルフィルドらしい。 あたしはかなり慌てながらレオルドと一緒に重い身体を持つ彼を起こした。 ま、また蹴っちゃったよ・・!(汗)っていうかあたしの蹴りなんかで倒れちゃう機械兵士もどうかと 思うけど・・!!(禁句だ) 「ごめん、ゼル。あたしまたやっちゃった・・」 「大丈夫ダ、。大シタ事ハナイ」 そう言う彼だったが、こめかみ部分に何か・・打ったような、ヘコんだような痕がある。 もしかしてあたしの蹴りで倒れたときにヘコんだんじゃないか!?と思って聞けば、 別の者に傷つけられたらしい。 ・・・・・あたしの他に蹴り上げた人がいるってこと・・?(世界は広いわ!)←違う 「そ、そうだ!ルヴァイドは?」 「・・我ガ将ハ・・」 あたしはゼルフィルドの言葉を最後まで聞かず、彼を押しのけて奥に走った。 奥には簡単に作られた寝床があって、そこでルヴァイドは静かに眠っている姿がある。 ・・何となく、顔色が悪いようにも見える。 「ルヴァイド」 やっと会えた。 あたしはそっと彼の髪に触れて、目元にあった髪を掻き上げてやる。 柔らかで長い紅紫色の髪は静かに流れて、パサリと枕に流れ落ちた。 「・・ねぇ、どうしたの?何があったの?」 「原因不明ダ、ダガ我ガ将ノ心ハココニナイ」 あたしはふと、先ほどのレオルドの言葉を思い出す。 ・・・・・誰かが彼を殺そうとしている・・? 「ど、どうすればいい?あたしじゃ何の役にもたたないし・・」 「・・そうだ!ご主人様!!」 レシィは閃いたように顔を輝かせ、あたしを見上げた。 その笑顔もまた眩しいことをこの上なく(ヒマワリが見える!<幻覚)、 あたしは一瞬逝きそうになったが取り合えず“何?”と聞き返す。 「ルヴァイドさんは眠っているんですよね?」 「う、うん」 「僕、前に本で読んだ事があるんです!キスしたら王子様が目覚めるっていう本なんですけれど・・」 「・・・え?(汗)」 「えーと・・確か“戦う森の美女”だったような気がします!」 美女が戦ってどうするよ あたしの頭の中に、マシンガンを持って乱射しまくる美女の姿が思い浮かんだ。 というかリィンバウムは一体どういう基準で物語を作っているのだろう。 せめてもうちょっと、女の子たちが夢や希望を持てるお話を作った方がいいのではないだろうか・・。 思わず顔を引きつらせるあたしにかまわず、レシィが説明を始めた。 「お話の内容は、王子様が悪い人と戦うんですけど最後に悪い魔女に呪いをかけられてしまって、 死んだように眠ってしまうんです・・それで以前王子様に助けられたお姫様は、召喚術の連発で 悪い魔女を倒し、そして王子様を口付けで起こして幸せになるんです!ご主人様!!」 王子が助けられるんかい キラキラとした笑顔であたしを見上げて、生き生きとした表情を見せる。 その姿は褒めながら頭を撫でて欲しい子犬のようなモノで、あたしは取り合えず“うんうん”と メロメロになりながらフサフサの頭を撫でてやる。 そして確認する。 「それでー、レシィがルヴァイドにキスしてくれるのかなぁー?(笑顔)」 「まさかー、ご主人様に決まってるじゃないですかー♪」 「あたしがルヴァイドにキスしろって事ー?(笑顔)」 「はいー、僕の中ではご主人様が一番綺麗でカッコ良いですー」 「ああー、そうなんだぁvvありがとねレシィ♪(笑顔)」 そんな会話を交わした後。 あたしとレシィは二人一緒に“あははははー”と笑い合う。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。 「・・って、出来るかそんな事ーーーーーーーーーーーーーーー!!!」 あたしは思わず近くにあった机をちゃぶ台返しのごとく“ガッシャーン!”とひっくり返した。 あまりにもけたたましい物音が響き渡ったけれど、バノッサとレヴァティーンが大暴れしてくれている おかげで、どの兵士も気付いていないようだ。 ありがとうバノッサ!ある意味ヒーローよ!(顔凶悪だけど!)←ひどい 「っていうかレシィ!本質がチキンハートのあたしに出来るわけないでしょうが! そんな度胸があるなら今頃あんなことやこんなことだってしてるわよ!」 「ええぇぇぇ?!あ、あんなこと?こんなこと??」 「まぁそれは置いといて!・・とにかく、それじゃだめなのよ。 それで解決するなら・・まぁ、腹をくくるわよあたしも」 命と羞恥心なら、取るべきものは命だろう。 ・・そりゃ当分はルヴァイドと顔を合わせづらくなるけど・・あぁでもちょっと惜しいかもしれない・・(落ち着け) ふと倒れた机に目を向けた。 その机は何かに殴られたかのようにわずかにへこみを見せて、表面に血の痕が残っている。 (・・何で、血・・?) あたしははっとしてルヴァイドを見た。 正確には、彼の手を。 彼の手は包帯が捲かれているのに、何故か紅く染まっている。 捲いた後でも机に手を叩きつけていたということがわかって 辛かった? 「アルジ殿、ドウナサレマスカ?」 「・・何とかして、ルヴァイドを起こしたい・・でも・・」 どうすればいい? あたしは考え込むように目を伏せて自分に問い掛けた。 答えなんか返ってくるはずがない、でも問わずにはいられなかった。 “ ぱちりと目が開いてしまった。(開けた、ではなく開いてしまった) 返ってくるはずのない質問の答えが返ってきて、うっかり目を開けてしまったのだ。 思わず辺りを見まわしても、レシィはきょとんとしていて、レオルドとゼルフィルドもそこに立っているだけだ。 (気のせい?) そう考えれば、再び、声。 聞き覚えのある声・・・・・・・ネスの時に、あたしの背を押してくれた声だ。 ”ルヴァイドを助けたい?” (誰?) ”今度は時間がない・・” ”だから、急いで探さなくては・・” (・・探す?) ”あなたが望むなら” 急に、自分に対しての恐怖がわきあがった。 ずっとずっと押し込めていた、自分への恐怖。 普通自分の中から別の声が届くなんて、有り得ないし気味が悪い。 (でも) ・・・・きっと、そうは言ってられないのだ。 ネスだって連れ戻せたのだ、だから今度もやっぱり、この力に頼らなくちゃいけない。 頼らなくては、だめなのだ。 あたしは、ルヴァイドの傍らに膝をついて座り込み、彼の胸板に耳をあて、そっと目を閉じた。 心音が聴こえる。 ルヴァイドが生きている証拠の心音。 身体も温かくて、すごく安らいだ気持ちにさせられる。 これがルヴァイドの、本当の性質かとも思う。 「・・ご主人様?」 「・・ちょっと、探しに行ってくるね・・」 それだけ告げて腕を伸ばして側にいるレシィの頭を撫でると、急激に意識が遠くなった。 同時に、深い暗闇に放り出された。 怖いとも思うけど。 不安にもなるけれど。 誰かが側にいてくれる感覚がして。 手を引っ張ってくれてる気がして。 あたしは暗い意識の海に潜り込んだ が意識を失った同刻。 ファナンの街のモーリン道場で大きな怒号が響き渡った。 「リューグってばズルイーーーーーーーーーーーーーー!!!!」 マグナの復活に大きく喜んだトリス。 だがロッカからリューグの行き先を聞いた途端、彼女は拳を硬く握り、天に向かって叫んだのだ。 ・・・・・どうやらトリスは相当、を追いかけたかったらしい。 「と、トリスさん落ち着いて・・」 そんなロッカに構わずトリスは“抜け駆け反則−!”と暴れながら、ぼーっとしているマグナの 背中にがばっと飛び付いた。 「おにーちゃん!このままだとさんリューグに獲られちゃうでしょ?!しっかりしてよー!」 「へ?トリス??(あ・・冷たい視線が・・!/汗)」 「さんはあたしのお姉ちゃんになるんだから! お兄ちゃんもカッコ良い所見せなくちゃだめだよ!」 「え?えええええ???(ああ!何か痛い視線が!!)」 詰め寄られるマグナの背中を貫くように見ていたのは、に好意を寄せている者。 詳しくは言えないが・・取り合えず、男の嫉妬炸裂である。 「こうなったら黒のタキシード来て白い馬に乗ってさんを迎えに行こう!! そしてさんをルヴァイド達から取り戻した後にそっとあまーい口付けを・・キャー!!」 お兄ちゃん!ウエディングケーキは目の前よ!! え、ケーキだけ?(汗) そんな仲良い兄妹の後ろから、フォルテは頭を掻きながら”だんだんに似てきたな・・”と呟く。 フォルテの呟きにネスティは頭痛を覚えるのか、こめかみ抑えながらもトリスにツッコみを入れた。 その端整な顔は少々不機嫌そうだ。 「その前にどうやって迎えにいくつもりなんだ?道を知らないだろう?」 『あ・・・』 「それに行ったとしてもキミ達じゃ逆に返り討ちにされてしまうのがオチだな」 「あうー・・酷い、ネス・・あたしの夢を壊すなんて〜!」 「・・・(沈)・・」 妙に沈んでいるマグナに気にもかけず、ネスティはトリスを見下ろして呆れたため息を吐く。 どうしてこの兄妹はこうなのか・・ネスはそう思いながらも訪ねた。 「が旅団と繋がっていたと聞いても、どうにも思わないのか?」 トリスはきょとんとした表情を見せて、マグナはただ沈黙を保つだけだった。 彼女が旅団と繋がっていたと聞いて 鈍器で頭を殴られた衝撃がきた気がした 信じたいと想っているけれど それでもどこか疑っていて トリスは目を閉じて、次にはにっこりと笑った。 「さんだったら、何でもいいもん」 「・・は?」 「旅団なんて関係ない・・あたしは『』さんが好きだよ。 信じるとか、信じないとかそんな問題は二の次で・・ようは、 あたしが『』さんをどれほど好きかってことだもの」 トリスは驚いた表情を見せるマグナの背中に再びガバァッ!と飛び付いて、言葉をつなげた。 「あたしはさんが好きだから、帰ってきてくれるならそれだけでいいの! 繋がってたって、さんがここにいて優しくして、助けてくれたりしたことは変わらないでしょ?」 あの人があたしの事をどう想ってるか知らない でもあたしはあの人が好きだから 好きだから、帰ってきて欲しくて 側にいて欲しくて だから迎えに行きたくなったりするの 「さんの口からちゃんと聞いたわけでもないし、あたしはさんの言葉を信じるって決めた。 ・・そんな理由じゃだめ?」 「・・それに、にもの事情があるんだし・・別に待っても良いんじゃないか?」 トリスはそう言うマグナにニッコリと笑って、首にブラーンとぶら下がって遊び始める。 首を締められている本人はかなりの瀕死状態だが、そんな二人にネスティはまたため息を漏らす。 (・・僕は・・馬鹿だな・・) この二人には、もう心配も要らないみたいだ 彼らは、強くなって、しっかりと地面を立っている ・・自分も、この二人のように、負けないように先に進んで そして “ の声が胸に響く。 思い出すだけで、温かなモノが溢れる。 他の人間にとって冷たいと思われても、嫌悪されても・・・・・けれど自分にとっては、温かな人。 あの笑顔も、あの優しさも偽りだと言うなら。 この世界の全てが偽りだ。 (・・もう少し、待ってやるか・・だから、) 早く帰ってくるんだぞ 僕は君を待っているから 窓から濃い夜色に染まる空を見上げていれば、トリスはネスティの隣りにやってきて。 ニヤリと笑い、ボソリと呟いた。 「あたしはお兄ちゃん派だからネスに協力出来ないのvvごめんねvvv」 ・・・・・・・・・・・・本気でこの兄妹(特に妹)に負けてられない・・・ にっこりと笑う妹弟子に、ネスティは決意を強く固めたのだった。 NEXT 後書き 第56話をお届けさせて頂きました。 お、遅くなってすみませ・・!(二度目) ルヴァイドの救援が未だに来ない第56夜です!(オイ) そしてそしてー・・ ゼルフィルド擬人化登場です!!(愛) 桐茉様、素敵案をありがとうございましたー!! もうあの紫の瞳にめろめろデッス!!押し倒したい・・・・・・・・・!!!! というか、少年がえらく鬼畜です、ルヴァイド様ある意味ピンチ。(オイオイオイオイオイ!) しかしイオス・・そこまでバノが嫌いか・・(寧ろこのVSが好きな自分もどうかと思いますが) そしてレシィもルヴァイドにキスしろとか言ってるし・・でもあんな童話があったら夢も希望もないヨ。 何だよ!戦う森の美女って!!!(汗) まったく進まなかった今回のお話。 メインはやはり擬人化ゼルフィルド初登場です。 機械姿でも充分萌えるのに、こっちでも燃えるなんて・・美味しい・・・!! さて次こそは助けに・・! 次は擬人化レオルドでしょうか・・。(未定) ・・ここまで読んでやったあなたに、最大の感謝を熱烈に捧げさせてください・・!(愛) 2002.4.15 2004.10.18加筆修正 |