支えられて進むことは 一人で歩けない場所すら、踏み越えて行けるものなのだ 第53夜 (それにしても、どこに連れて行かれるんだろ・・) そんな事を思いながらも、あたしはトリスに手を引かれたまま廊下を歩いていた。 薄暗い廊下なのに、トリスの目にはしっかりと見えているか彼女は何のよどみもなく 歩いては奥へと進んでいく。 ・・黙々と歩く彼女の背に、ほんの少しだけ怒られるのかなとも考えた。 (それはヤバイかも) トリスにまで何か言われてしまったら。 今度こそ、本格的に後悔してしまうかもしれない。 ・・・・・助けたことを、後悔してしまうかもしれない。 それだけは、絶対したくないと思っていたのに 行き着く先はトリスの部屋。 扉をくぐって部屋の中心まで進めば、ふと・・・・トリスの足が止まった。 それにつられて足を止めれば、急に突進するような勢いでトリスに抱きつかれる。(ギャア!<驚) 「と、と、とりす?(な、何事何事?!)」 「さん、これからどこに行くの?」 あたしの肩に顔を埋めて・・泣きそうな声で彼女はそう呟いた。 それにあたしはぐっと息を詰まらせて、何も言えぬまま黙り込む。 「・・もう二度と会えないの?」 「・・それは・・」 「嫌だ」 「・・・・・・」 トリスが顔を上げて、真っ直ぐにあたしを見た。 怒りではなく悲しみの色に染まった瞳がしっかりとあたしを映す。 「さんと会えなくなるなんて嫌っ」 「でもトリス、あたし・・トリス達に・・」 黙っていた ずっと、ずっと黙っていた トリスがぶんぶんと首を横に振った。 あたしを抱きしめる腕の力を緩めないまま、トリスは堪らなくなったようにあたしの肩に再び顔を埋めて、 泣いているのだろうかと思わせる声音で言う。 「今まで全然思いもしなかったけど、ゼラムから出るとき。 あの夜にイオス達がさんを捕らえるって言ったときの、イオスの顔・・すごく苦しそうな顔してて。 さんだって本当に、すごく困った顔してて、苦しそうで、悲しそうな顔してて、 何でこの人たちはこんなに悲しくて苦しそうな顔をしてるんだろうって、さっき考えて、思い出してた」 「・・トリス」 「今までのこと振り返れば振り返るほど、さんがずっとずっと前からイオス達のことを 好きでいたんだって。イオス達もさんのこと好きでいたんだって、あたしようやく気が付いた」 「・・・」 トリスは、あたしの服についているイオスの血を見た。(そういえばイオスを助けてから着替えてなかった) 既に黒く変色してしまっている、布地。 おびただしい広がりを見せているそれにトリスは顔を歪めて、もう一度あたしに抱きついた。 「好きだから、助けたいって。 好きだからどうしても死なせたくないって気持ち、わかる。ものすごくわかる。 あたしにとってお兄ちゃんやネスやアメルや他の皆・・さんにだって、そういう気持ちが沸くもの」 「・・トリス」 「好きだから、好きだって言ってくれるから、だからその分大切にして守りたくて、 ほとんど知らない他の人の事より大事なその人の事を優先したくなったりもするもの。 ・・大事な人と知らない人を比べるなら、あたしは大事な人を取る」 「・・・・・」 あたしは、マグナとは少し違う色のその髪をそっと撫でた。 それにトリスがますますあたしを抱きしめる・・しがみつく力をこめて、言葉を出す。 「怪我をしてない大事な人より、死にそうになっている大事な人を取る」 「トリス」 「だって死んじゃったら二度と会えないもの! ごめんなさいもありがとうも、大好きだよも大嫌いも二度と言い合うことが出来なくて、 楽しく笑い合うことも出来なくて悲しくて一緒に泣くことも出来なくて・・ そんなのあたしだって嫌だよ、耐えられないよ、寂しいよ」 トリスが顔を上げた。 泣いている声音かと思っていたけれど、泣いてはいなかった。半泣きだ。 「あたしもリューグ達と同じ村人じゃないからこう言える。 アメルのためには負けられないけど、でも許そうと思うことだって出来ちゃうよ。 さんと一緒だよ」 「・・」 「だから、だから我慢しなくていいよ、ここにはあたししかいないよ。あたしとさんだけだよ。 トリスが泣いている。かと思えば、泣いていたのはあたしだった。 唐突にそれを理解すれば、込み上げるそれを我慢することが出来なくて、 とうとう顔を両手で覆って、声を洩らすまいと唇を噛み締めて引きつった呼吸を洩らす。 溢れ出て止まぬ後悔が、あたしを襲う。 「っ・・」 「泣いても誰も知らないよ。 イオスだって知らない、リューグだって、他の皆だって知らない。 あたししか知らないよ・・・さんが泣いてること、あたししか知らないよ」 「・・っ、・・・・っく・・」 「さん、お願いだから二度と会えないなんて思わないで、言わないで。 戻ってきてよ、待ってるから・・・・・・・イオス達のこと好きでいいから、さん・・」 頬に、トリスの柔らかな手がかかる。 あたしの前髪を掻き上げて、涙で濡れた頬に張り付く髪を払って、”戻ってきて欲しい”と。 ”戻ってきて”と、彼女は言う。 「ごめっ・・ごめ、ん、と・・トリス、ごめんっ・・」 「さん」 「今だけ、今だけ・・・、で・・いいからっ・・後悔させて・・。 泣いてるこ、と・・っ誰にも言わないで・・・・っ」 「・・うん」 トリスの言葉を聞いて、あたしは彼女の肩に額を押し当ててすがりついた。 小柄な身体で温かなトリスにますます涙が溢れ出して止まらなくなる。 イオス、ごめん ごめんね 今だけでいいから あなたを助けたことを後悔させて 本当は、本当は後悔なんかするつもりなんてなかった でも、リューグに”離せ”って言われたとき どうしようもなくて、苦しくてしょうがなかった リューグも好きだから、苦しくてどうしようもなかった ・・・息が、詰まった 今度はトリスがあたしの頭をそっと撫でてくれた。 彼女がこの部屋まであたしを連れてきてくれたのは、誰もいない場所で、 この言葉を言うためだったのだろう。 トリスは、優しい。 優しすぎる・・だから、ずるいあたしは甘えてしまう。 リューグに嫌われてもあたしは悲しくて、その”離せ”の言葉すら心に届かなかったかもしれないけど でもイオスは助かって、元気になって、歩いて、笑っているから 生きてくれたから だから、リューグのあの言葉がこんなにも苦しい ”離せ” (・・リューグ) 触るな、よりかはマシだったかもしれない。(それこそ完璧な拒絶だ) でも離せ、も相当痛い・・・・痛いと感じるのは、リューグに負い目があるからだ。 (・・まだ、だ) 痛みに、惑わされるな。 痛みに、見失うな。 ・・・・・・・まだ、諦めるな。 まだ全部、全部言ってない。 あたしの全部を、皆に伝えてない。 それは許しを請う行為に近いけれど(実際そうかもしれないが)、 それでもあたしの気持ち全部を、皆に伝えていない。 ちゃんと、最初から。 最後まで、伝えていない。 「さん・・・?」 あたしはトリスから身体を離した。 何度か深呼吸を繰り返して、彼女に微笑む。 「ありがとう、トリス」 ありがとう。 本当にありがとう。 彼女があたしを泣かせてくれなかったら、後悔をさせてくれなかったら、 離せと言われたあの痛みに、自分のするべきことを見失ったまま・・あたしはトリス達の 所に戻ろうとしなかっただろう。 「・・戻ってくるよ、あたし」 ここに、戻ってくるよ。 最初からルヴァイド達の傍に乗り換えるつもりなんてなかったけれど。 (レイムがあたしを狙っているのだから、あたしが彼らの傍にいれば余計彼らの立場が悪くなる) 「帰ってくるよ、あたし・・皆と、リューグとも、これで終わりなんて嫌だから」 もう一度。 皆と、歩いていけるあの居場所に。 あたしは、戻りたいと思うから の笑みに、トリスはぱっと顔を綻ばせた。 とてもすっきりとしたあの表情に、自分が彼女の役にたてたのだと思ったからだ。 それが嬉しくて嬉しくてたまらない。 「それじゃさん・・」 「よし!気合充分!行ってきます!」 二人で気合をこめたつもりで腕を振り上げて部屋を出ようとすれば、ノックが響いた。 それにトリスはと顔を見合わせて不思議そうに扉が開くのを待てば、開けられた扉の 向こうには、アメルとハサハが立っていた。 「アメル、ハサハ・・」 の言葉に、アメルは手に持っていた紙袋を差し出して、微笑んだ。 「これ、着替えです」 「へ?」 「そんな血だらけの服だと、帰って来たときネスティさん達がビックリしちゃいますよ」 ハサハがの手を握って、口元を小さく綻ばせた。 それには泣き笑いに近い表情を浮かべて紙袋を受け取って、自らの服を脱ぎだしていく。 「アメル・・」 「トリスさん・・ううん、トリス・・頑張りましたね」 こそりと耳打ちするアメルに、トリスは小さくうんと頷いた。 本当はアメル達も心配で扉の外にいたことに気がついてはいたのだが、には黙っていた。 しかし、トリスははっとアメルの顔を見た。 アメルは少し恥ずかしそうに顔を俯かせて、トリスを見返す。 「あ・・呼び捨ては・・嫌ですか?・・その・・」 トリスは頬を真っ赤にしながら、アメルの言葉にブンブンと首を横に振る。 すごく、すごく嬉しいから。 「そ、そんなことない!すっごく嬉しい!!」 思わず、にこぉっとアメルに笑いかけてしまった。 アメルはトリスの言葉にほっとして、胸を撫で下ろす。 「良かった・・トリスには今までずっと側にいてもらって・・あたし、すごく嬉しかった。 ・・でもトリス、苦しかったらいつでも言ってくださいね?・・<アメル>として貴女の側にいたいから」 「・・ハサハも・・呼んでね・・?」 じわりと、嬉しさがこみ上げる。 ハサハにも、アメルにも何度も頷いて、トリスは今の幸せを噛み締めた。 友達っていいなぁと、心底思う瞬間だ。 そんな事を考えながら、衣服を脱いでの流れる髪を見る。 露になっていく素肌に同性ながらも多少ドキドキしながらも、柔らかそうな、綺麗な髪に目を細めた。 (・・きれいなひと、だなぁ) これは素直な感想だ。 普段は意識することは少ないけれど、時折、酷くドキリとさせられるような表情を見せる。 兄であるマグナもその表情を見てポカンと口を開けて突っ立っていることもあった。 (その時に話しかければ酷くうろたえて何を見ていたかを誤魔化すけれど) 「・・と、トリス・・」 ふいにがこちらを向いて、トリスの名を呼ぶ。 その顔はやや頬が引きつっている、そんな感じで・・トリスは首を傾げた。 「?」 「いや・・あのー・・あんまりに見られるのも恥ずかしいかなー・・って・・」 そこでトリスははっときがついた。 自分はじっとの着替えている姿を眺めていたのだ。 妙に気恥ずかしくなって慌てて顔を俯かせた。 「あ?!ご、ごめんなさい!!!」 「いや女同士だし、一緒にお風呂を入った仲でもあるし・・。 でもさすがにじっと見つめられると照れるわ〜(笑)」 の笑い声にますます縮こまって、顔を俯かせてしまった。 ベッドに座っていたアメルとハサハはそんなトリスにクスクスと笑う。 笑われて、更に恥ずかしくなって顔をまた真っ赤にさせてさらにさらに俯いて。 次にそろりと顔を上げれば、視界に入ってきたのは着替え完了のの笑顔。 紫色のタートルネックに、黒色のスパッツの上から深い抹茶系の短パンをはいている。 左腕には青色のリストバンドがはめられていて、よく似合っていると思う。 準備が、整った。 「行って来るね」 言葉に、思わずがっしりとその腰にしがみついた。 突然の締め付けにのうめき声が聞こえたが、トリスはまた少しだけ力を込めて抱きしめる。 「と・・トリス・・!!ギブギブギブ!!!!(滝汗)」 「・・・・・・・(ギブソン先輩?←違う)・・・・・・・さん、行ってらっしゃい」 トリスの言葉にはうめきを止めて、ぽんぽんとトリスの背を叩いた。 あやすように、心音にあわせて、ぽん、ぽんと。 「・・いってきます」 それにトリスは目を細めて、祈る気持ちで目を伏せた。 やっぱり貴女は 進んで行くんだね そうしてあたしは 貴女がいる広い世界に 貴女がいるこの場所で ・・貴女の隣りで・・ また笑いたいと 望まずにはいられなくなるのだ 「イオス!お待たせ!」 バタバタと廊下を走って、あたしはイオスの隣に並んだ。 けれどもその場の空気はどことなく微妙なモノが流れていて、あたしやトリス達は首を傾げる。 まさか乱闘なんか起こったってわけじゃないでしょーねー・・?(汗) 「イオス、どうしたの?」 「・・いや、何もなかったよ・・」 どことなくぎこちないイオスを不思議そうに見つつ、キョロキョロと周りを見渡せば。 右には、少し離れて窓から外を眺めているリューグと、何やら考え込んでいるロッカ。 左には、何やら準備運動をしているナツミ(何故?!)、そして何故かニコニコをしているアヤ。 そんな彼女達の隣りでバノッサは椅子に座って、我が家のごとくくつろいで(あんたの家じゃねぇだ ろ!<ツッコミ)、ハヤトはレシィとあたしを見ていた。 ・・・・・・よし、目があった彼らに聞こう。 「ハヤト・・何かあったのか知ってるわよね?(笑顔)」 「(俺?!)・・・ええーと・・・一応、乱闘はなかったよ(汗)」 「じゃあ乱闘以外の事はあったんだ?レシィ?(笑顔)」 「(僕?!)は、はい!ただ平和な会話があっただけですご主人様!!(汗)」 「(平和ねぇ・・)ふーーん、ま・・いいか」 あたしはリューグを見た。 彼の広い背中しか見えないので、表情を伺うことが出来ない。 リューグを見つめるあたしにイオスは心配そうな表情を浮かべたけれど、あたしは にっこりとイオスに笑うことが出来た。(これもトリスのおかげだ) 「大丈夫。行こう」 あたしは再びリューグの背を見つめて、深呼吸。 それをレシィが不思議そうに見て、あたしは心を落ち着けたまま、言葉を出して呼びかけた。 「リューグ」 あたしは、窓から外を見つめていたリューグを呼ぶ。 けれどもリューグはあたしに目も向けず、ぴくりとすらも動きを見せなくて・・ただ無言で外を見ていた。 それでもあたしは笑いながら、言った。 取り合えず、遠まわしに<帰ってくるよ>と伝えられる言葉を。 「いってきます」 その瞬間、リューグがあたしに振り向いた。 次には何かを言おうと口を開きかける。 その時。 ズゥン!! 道場が、揺れた。 ズゥン!!! バノッサが椅子から落ちた。 一瞬の沈黙の後、ナツミとアヤとハヤトの大笑いの声が響く中、バノッサの怒声が更に響いて来て、 ただでさえ痛い頭が更に痛む。(まぁ、悲しいくらいに格好悪いわよね、アレは) 取り合えずあたしはリューグを押しのけて窓の外を見ると、ゴ●ラ映画を思わせるよう なシルエットが視界に入って来て・・・・・・・・・・・・・・次には眩暈を起こした。(ああ懐かしい・・) レヴァティーンとゲルニカが舞い降りてきたのだ。 これ即ち・・・・・・・・・・・・・・・・・ネス達が帰ってきた・・と言うことになる。 「帰ってきたわね・・超乙女系毒舌説教魔!!!(拳グッ!)」 『は?(その場一同)』 “説教は帰ってからネー!”と叫びながらあたしは身を翻して、裏口から外へ出ようと走り出す。 けれども腕を掴まれたのかぐんっと立ち止まって、不思議そうに振り返る。 ・・リューグに腕を掴まれていた。 「リュー・・グ・・?」 「・・っ俺は・・!」 耳に、ガラガラっと玄関の扉が開く音がする。 あたしは振りほどこうかどうしようかと迷っていると、イオスが横からあたしの腕を掴んで。 リューグを真剣な眼差しで見た。 「離せ」 「・・・・・・」 互いに睨み合うことほんの一瞬、すぐにリューグの手から力が抜けた。 その光景に”やっぱり何かあったんじゃないの!”とイオスを見やれば、 彼はあたしの腕を掴んだまま走り出す。 「行こう。外に馬を繋いである」 「ちょ、ちょっと?! あー、もうっ」 あたしは最後にちらりとリューグを見たけど、リューグは俯いたまま何も言わなくて。 それがどこか、ひどく落ち込んでいるように見えて思わず・・あたしがまたもう1度『いってきます』を言おうすれば。 ああああああ!!何か腹に刺さる!!!(痛ぇ!) 「ちょ・・な・・!?」 バノッサが、あたしを肩に担いだのだ。(また荷物扱い?!) しかもそのまま走行しているのだから、見た目が不健康でもかなりの力はあるのだろう。 というか、お腹にバノッサの肩のゴテゴテが当たって痛い。痛すぎる。 ”っていうかまさかバノに担がれる日が来るなんて・・!”と唖然としていれば、 バノッサはあたしを肩に担いだまま、イオスをアホを見るような目で見下ろす。 っていうかあんたがそういう目で見る?!(椅子から落ちたクセに!<禁句) 「バカか手前。馬なんかでチンタラ行ってたら手前の言う『用事』も間に合わなくなるぜ」 「何だと・・」 「っていうか降ろしてよ、自分で走れるってば!」 「取り合えず広い場所に出られりゃいい、案内しろ、女」 「(な、何様だコイツ・・!)この時間帯だとファナンの正門はとっくに封鎖されてるわよ! 今から出してくれーっていっても出してくれない・・」 「僕が入ってきた裏の出口で外に出よう」 最初あたし達がマグナを連れて戻ってきたときは、ちゃんと外で降りて街中に入ったし、 ネス達がレヴァティーンで道場まで戻ってこれたのはファミィさんや門番達からの許可も あっただろうけれど、今のあたし達は許可も何もないのでそういうわけにもいかない。 イオスが通ってきたという裏出入り口から通って抜けるしかないようだ。 バノッサはあたしを担いだままその、夜のファナンの街中を走り抜ける。 夜とはいえど充分な活気のあるファナンの街の住人は、驚いたような表情を隠さずにあたし達を見て、 次にはあたしを哀れんだような目で見る。 ああ!何やらとんでもない誤解を受けているような気がします! そして誤解している貴方がたに言わせてください! 誤解です!! 「あたしは今日から“いかにも凶悪な男に売り払われてまぁ可哀想ねぇと囁かれる哀れな少女” という変な称号を貰っちゃうんだわーーーーー!!もう当分堂々とファナンの街を歩けない・・!」 “嫌ダー!”と叫ぶあたしのお尻をベシっ!とバノッサに叩かれた。 凶悪な男、といった部分が気に食わなかったらしい。 「ぎゃあぎゃあ騒ぐな!ウルセぇだろうが!!」 「ち、ちょっと!お尻叩かないでよ!」 「手前の貧相なケツなんかどうでもいいんだよ!」 ”貧相で悪かったな!”とバノッサに抗議をすれば、イオスがバノッサの横に並び、 思いきりバノッサを睨みつけ低い声で呟きながら槍を装備。 「・・殺す・・!!」 「手前みたいな野郎に殺されてたまるか。逆に殺してやるぜ・・かかってこいよ」 「あーもーそんなことしてる場合じゃないでしょー!」 武器を装備しつつも言い合いながら走るイオスとバノッサを見て、ハヤトは苦笑しながらポツリと呟いた。 「似たもの同士(色が白い)は仲が良いって言うけどなぁ・・」 ああ、納得 バノッサの肩に担がれたままポンっと手を打って、ハヤトの意見に納得する。 喧嘩するほど仲がいいっていうからそんなに喧嘩しちゃうのねー・・。 「納得するな!!」 「お前(ハヤトの事らしい)もに変な事を吹き込むな!!」 何で俺が怒られるワケ・・・?(ハヤト汗) ・・ううーん、僕には何とも・・・(レシィ汗) ・・・・・・・・・。(レオルド無言) 裏出口の扉を通り抜けた先に広がるのは、相変わらずの満月と、淡くも深い紺色の、 優しげな夜の空に覆われた草原だった。 ほんのりと冷たい風に身を震わせていれば、あたしをようやく降ろしたバノッサが マントを放り投げてきた。 「?何これ」 「預かってろ、邪魔だ」 ”ラッキー、借りよう”とマントで身をくるめれば随分と温かい。 ・・もしかして貸してくれたのかなぁと思いつつもバノッサを見れば、うっとおしそうな視線をあたしに 向けている。・・・いや、本当に邪魔なだけだったんだ、見直しかけたあたしが馬鹿だった、うん。 風があたし達の髪を撫でる。 そんな中、バノッサは白髪を風に攫わせたまま紫色のサモナイト石を持って、あたし達から少し離れた。 そこでようやくあたしはバノッサの、あの妙な自信の理由を理解した。 ああ、召喚術か!(納得) 「誓約の名の下に、俺の呼び声に応えろ」 バノッサの声に応えるように紫色の光が石から溢れ、淡い光の粒子が地面を踊り、 巨大な光の塊がバノッサの目の前に降り立ってくる。 ・・それは綺麗な、人を魅せる儀式の光。 光の塊から大きな身体がゆっくりと姿を現した。 小さな扉を大きな身体でくぐってくるような、そんな勢いであたし達の前に舞い降りる。 金の兜で顔を覆い、数枚の翼を持ったレヴァティーン。 「行くぞ」 「バノッサが召喚するときっていつもヒヤヒヤさせられるよ・・」 「えぇぇ?!ぼ、暴走召喚しちゃうんですか!?」 「うるせぇぞ!羊!!俺がんなヘマをするわけがねぇだろう!」 「ぼ!ぼぼぼ僕は羊じゃありません〜!!」 あたしは心の中で“かなりごめん!レシィ!羊かと思ってました!”と謝りまくりながら、 イオスに手伝ってもらってなんとかレヴァティーンの背に乗り込む。 ネス達が追いかけてくる前に、さっさと行ってこなければ。(じゃないと説教地獄<超滝汗) 「それじゃイオス、道案内よろしく!バノッサ!あんたも頼んだわよ!」 「俺様に命令すんな」 「してないでしょーが!」 ”っていうか何でハヤトやバノッサが一緒に来てるわけ?”と考えるあたしを乗せたレヴァティーンは、 その翼を一度大きくはためかせ、丸い月が浮かぶ夜空へと飛び立った。 ぐらりと大きく傾く背の上で、あたしは落ちそうになって咄嗟にハヤトにしがみついた。 び、ビックリしたーーーーー!!(汗) ハヤトは、驚いていた。 いきなり腕にしがみついてきたから、あの、いいようもない懐かしさに覆われる。 探していた少女と、まるきり同じ (・・、だったのか?) 言いようもない懐かしさ。 はっきりと、感じた。 そして理解する。 ハヤトの体の中に残っているサプレスのエルゴが反応している。 それは無限の力を持つ、集合意識。 4つに分かれてそれぞれ4つの世界を作り出した。 そうして生まれた世界が、ロレイラル、シルターン、サプレス、メイトルパ。 ハヤトの中に、サプレスのエルゴの一部がいる。 ナツミたちの身体にもエルゴの一部がある、だからそれぞれが同じ、共通に感情を読み取ったのだ。 ・・・・以前に涙を流したのは、が悲しくて悲しくてどうしようもなかったときがあって、それが自分達に伝わってきたせいだろう。 に掴まれている腕が熱い。 熱さに思わず呻けば、が驚いた表情を見せて叫んだ。 「ハヤト!」 ” 叫ぶ声と同時に脳裏に甦るのは、不敵に笑む、女。 これは誰の記憶だ? いやそれよりと声のトーンがまったく一緒だなんてどうして 「ハヤト!しっかりして!!」 「ブッ!」 ばちーん!と響くほどの見事な平手に、強制的に我に返った。 痛む頬に思わず涙目になっていれば、が心配そうに顔を覗き込んでいる。 ・・・・・・あまりの顔の近さに思わず息が詰まった。 「ハヤト?大丈夫?」 「・・・だ、大丈夫・・たぶん・・」 ”たぶんって何?!”とさらに顔を寄せてくるを慌てて押し留めて(イオスが!イオスが睨んでる!<滝汗)、 無理矢理笑顔を作って“大丈夫だから!”と叫んで落ち着かせた。 は納得していないようだったが、ハヤトは眼下に広がる緑の大地を見降ろして、ひどく冷や汗を掻いている自分の額を軽く拭った。 (・・あれは・・・・) 不敵に、笑む女。 あれは一体誰だろう。 彼女はエルゴと対話を許されたのだろうか。 ・・・エルゴは自分達と同じ、強い精神の輝きを放つ者と対話することを望んで、 このリィンバウムに魂の輝きを強くするための転生の輪のシステムを作った。 それらと対話をすることを許されたということは、相当の力と、輝きを持つ者ということになる・・・・・・。 (・・もしかして・・) ハヤトはちらりと、を見た。 イオスから色々と話を聞いているようで、彼の言葉に熱心に、真剣に耳を傾けている。 普通の・・・・・少女。 夜風に髪をなびかせながら、ハヤトは唇だけをかすかに動かして、声に出さずに呟いた。 NEXT -------------------------------------------------------------------------------- 後書き 第53話をお届けさせて頂きました。 色々と削り、色々と変更しました。 泣けば色々とすっきりするんです、前向きになるためには一度おお泣きしたほうがいいです。 私はこれですっきりします・・ヒロインもすっきりして、頑張ってリューグ達とところに戻ろうとします。 しかしヒロインの気持ちを知らないリューグがどう出るか・・またのお楽しみということで。(笑) ちらりとトリスの過去話(捏造)めいたものも入っていたのですが、あっさりカット。 ハヤトがヒロインの中で見た女の人のことも、かなり内容を変えてしまいました。 修正前と全然違うゼェ・・!!(超滝汗) サモンナイトシリーズの内容が相当おぼろげになってきましたので、間違いがあっても多少目を 瞑っていただければかと思います・・この場面もサモコレ発売前に書いたものなので・・(汗) 特に一番気になるのは、ハヤトの中にサプレスのエルゴがあるということ。 某サイトの辞典だと、彼らのなかにサプレスのエルゴが入ったままのようなので。 捏造設定も入りますので、色々とお見逃ししてやっていただけると幸い・・ガフガフ・・。 ヒロインの衣装も変更です! 朧屋 ひかな様の衣装案を採用させていただきました! 生肩燃え!ですな!!可愛らしい・・・!! (すみません、またたくさんの衣装案絵をアップさせて頂きたいのですがデータが見つからなくて・・ヒィヒィ!) それではここまで読んでくださった方に、最大の感謝を。 2002.4.1 2004.9.3加筆修正 |