全員がルウの家の居間に集まり、わいわいと賑わっている中で。 こんな会話が交わされた。 「ルウ、本当に案内してもらっちゃっていいの?」 「ええ、もちろん♪」 あたしは、えらくご機嫌の良いルウを見る。 そんな彼女の手元には、あたしの持ってきた秘密兵器・・・もとい、聖王都ゼラムでも 人気を誇るスペシャルメニュー・・・『オレンジシフォンケーキ』が乗った皿がそこにあった。 第48夜 ルウは、お菓子やケーキとかが大好き。 だから戦う前に仲良くできる方法はないものかと考えて、あたしはそのケーキを秘密兵器として買って来たんだけれど・・その作戦は無意味に終わってしまったため、今こうして、仲間の皆や召喚獣たちと、賑やかに騒ぎながら食べている。 ちょっとしたティータイム、というものかな?(たまには悪くないわよね) 秘密兵器のケーキを入手した経緯はこうだ。 森に行く前に、ファナンのケーキ屋に向かったらパッフェルに会った。 そこで彼女に”オススメのケーキってある?”と問うと、新製品のこの『オレンジシフォンケーキ』を 勧めてくれたのだ。 ケーキといえば、思い出すのはギブソン・ジラール。 あたしは“やっぱギブソンはお腹いっぱいまで食べたんだろうなー・・”と、某甘味大王を羨めば、 パッフェルが何となく・・誰かを哀れんでいたような表情を見せた(42話参照)・・ような気がするが、 取り合えず気のせいにしておいた。 「ん〜、美味しい〜!ルウ、こういうの食べるの初めて〜!」 ご機嫌でケーキを食べるルウの隣りで、トリスとマグナも幸せそうに頬張っていた。 いやもう本当、幸せそうに。 あー・・何か和むー・・(悦) 「美味しーいvvさん、本当にありがとーvvv」 「うん、さすがはパッフェルさんが働くお店だなぁv・・あ、ケイナ、お茶貰えるかな?」 「ええ、いいわよ」 本当ならば、ティ−タイムをしている場合でもなかったりする。 あたし達は、アメルが過去にアメルのお祖母さんがここにいると、アグラ爺さんに聞いたから この森までやってきた。 けれどもルウの話では、周りに人は住んでいないはずだという。 それを聞いたアメルの落ち込みは酷くて。 そんなアメルを励まそうとトリスとマグナ達が、森の奥まで探してみようよ提案して、 次は森の奥を探索するという話になっていたのだ。 ・・・そこまで話が決まっているのに、それでもここでティータイムをしているのは。 あたしが、原因だったりする。(滝汗) (あー・・アメルに申し訳ないわ・・) 怪我が、原因だった。 傷は塞がっても酷い出血だったためか、貧血の症状が出てきたのだ。 今はすっかりと立ちくらみも収まっているのだけれど、アメルが”さん、まだゆっくり していてください”と言ってくれて。(アメル・・!<感涙) ・・現在に至る。 「、やはり君はここで休んでいたほうがいい」 「大丈夫よネス、もう立ちくらみだってなくなったし」 「お前なぁ・・何があるかわからねえんだぞ」 「だぁー!リューグも心配しすぎ!皆のおかげでしっかり治ったんだから大丈夫だって!」 心配してくれているネスやリューグの気遣いが、とてもありがたい。 ロッカやミニス、ケイナとモーリンもあたしによくしてくれて・・刺された痛みなんてすぐに忘れてしまえる。 ・・・けれど、これからがまた大変だということがわかってしまっているあたしとして、ここに一人で残っている わけにもいかないのだ。 (・・心配してもらえて嬉しいってのは本当なんだけどね) “あー、仲間っていいなぁ”と幸せな気分になりながらも。 あたしの左隣りに座って一生懸命ケーキを頬張っているハサハに目が行くと、 彼女の口の周りについているクリームも一緒に目が入った。 「おねえちゃん・・?(首傾げ)」 「あはは、ハサハ、クリームついてるわよ?」 あたしは優しく微笑みながら、ハサハの口の周りについたクリームを拭ってやる。 その際に、ぷよぷよしたほっぺに触ってしまうが、あたしは叫びたい衝動を堪えて、 ニコニコと笑って終らせた。 ああ、神様 私は別にこういうシチュエーションを期待して、このケーキを買ったんじゃないですよ? あくまで、ルウのため、デス ええ、ルウの、ため・・ だから ハサハの天然素材な可愛さに鼻血吹いても許してくれますよね・・・っ・・・!!!?(愛) “かーわーいーいーぞーぉー!”と、あたしの右隣りでケーキを食べるバルレルのほっぺを突つきながら、 ハサハの口を拭けた幸せを噛み締める。 ついでにバルレルのほっぺも最高な感触だわー!! 「だああ!テメエ触るな!!(ウゼェ!)」 「触るなと言われたら触りたくなるのが人間の性!!・・って、あ バルレルはギロリとあたしを睨んで、“何だよ”と難癖をつける。 あたしはそんなバルレルに構わず、彼にズイっと顔を近づけた。 途端に、バルレルがひどく驚いた表情を見せる。 「?!っ・・な、何・・」 「ここ、ついてるよ」 ゴシゴシと、そっと拭ってやる。 バルレルに振り払われる覚悟のうえの行動だったが(いまだ友達未満なので!<泣)、 バルレルは何も言わないまま、振り払わないまま、じっとしていた。 そんなあたし達を見て、トリスは笑って言う。 「バルレルもさんには大人しいよね♪」 「う、うるせぇよ!!」 「おー、そうなのー?バルっち可愛いなぁ〜vvv」 そんなキミにフォーリンラヴ!!(愛) あたしはぎゅうっとバルレルの首に抱き付きながら、グリグリとその頭を撫でる。 ははははははは!友になれる日も近い!!(嬉々) 「仲がいいですね、バルレルくんとさん」 「そうね、それに(が)楽しそう・・」 アメルとケイナはのほほんと紅茶をすすって呟く。 それを聞いたロッカはガタンっと立ちあがり、にっこりとしたまま、あたしとバルレルの後ろに立って。 バルレルの頭を、そしてあたしの肩を掴んで・・・・グイっと引き剥がした。 はぅあー!あたしの癒し系ー!!(ほっぺー!) 「ちょ・・ロッカぁ?(一体何事・・?)」 「さん、そんなに抱き付いていたら傷が開きますよ? 人が恋しくなったなら僕へどうぞ(笑顔)」 「どうぞって何?!どうぞってナニ?!??(B様降臨?!)」 あたしがいきなりの、ロッカの豹変に驚いていれば。(僕へどうぞって・・あんた・・!<滝汗) 先ほど、いきなり引き剥がされたバルレルがギロリとロッカを睨んだ。 「テメェ・・痛ぇじゃねえか!!何しやが・・」 怒鳴ろうとするバルレルに。 ロッカは微笑みながら、バルレルの頭をガシィっ!とワシ掴みして。 彼にぐぐっと顔を近づけて・・・・・・・・囁いた。 「抜け駆け禁止だよ?バルレル・・(ニッコリ)」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・スンマセン・・・・」←思わず謝る そのやりとりを見ていたあたし達は、ロッカの行動に思わず、恐怖を覚えた。 そんな状況を、ご機嫌な気分で見ていたルウは一言。 「仲が良いって素敵ねー♪(モグモグ)」 ・・・・・・・視力、いくつデスカ?(素朴な疑問) ティータイムを終えて、あたし達はルウを先頭にして森へと向かった。 なんでも、彼女が見回るルートを回っていけば迷うこともなく、なおかつ誰かが住んでいる形跡を 見つけることも出来るかもしれないからだ。 緑が溢れる木々を見上げて、あたしは感嘆の言葉を洩らす。 「うわぁ、結構薄暗い・・」 いや、ルウのいた森とはまた別に一段と暗いというかなんというか。 ・・けれどここら一帯の空気はどこか淀んでいる気がする。 (・・もしかして、これってかなりヤバイんじゃない?) ルウが教えてくれた昔話。 大悪魔がリィンバウムを侵略した時の昔話。 唯一人間達に味方をしてくれた天使のお話。 そして森に奥に封じられている、悪魔の軍勢のお話。 その話を聴いてから、少しだけ気分が悪くなった。 なんていうか、胸の奥から何かが湧き上がってくる気がする。 これは・・なんというものだろうか? (・・・違う) 伝えられていたその物語 それは偽りだ (でも、何でこんな気持ちになるんだろう) 偽りで隠された真実 それをあたしは、全て知っているのに でも、こんなにも切なくて、悲しくなるのはどうしてだ? あたしは関係ないではないか (怖い) 自分が時々、わからなくなる わからなくなって、どうしようもなく不安になる どうして 「?」 ネスに呼ばれて、はっと我に返って顔を上げれば。 あたしの手はいつの間にか、ネスのマントを端をしっかりと掴んでいた。 「どうしたんだ?」 「あ、・・ご、ごめんっ!」 ぱっと手を離して、慌てて俯いた。 無意識に掴んでしまったというその事実になんだか酷く気恥ずかしくなってくる。 (うあ、な、何で・・?) 思わず頬に、熱が集まってくるのがわかる。 少し考えて、あたしはようやく気恥ずかしい原因を理解した。 自分の、弱い部分の一部見られてしまったような気がして 恥ずかしいのだ 素直に、怖いと言えばいいのかもしれない。(オナゴポイントも上がるだろうし!)←何のポイントよ けれど口から出てくるのは、恐怖していることを否定する言葉だった。 「い、いや、別に怖いとかそういうんじゃなくて、ただつい、つい掴んじゃったというか・・! (この時ばかりは自分の意地っ張りな性分が恨めしいわ・・!(滝汗)」 「僕は別に何も言ってはいないが・・」 「・・・・」 「怖いのか?」 黙ったあたしに、ネスは口元に笑みを浮かべた。(どこのラブコメのムードだこれは・・!<滝汗) 滅多に見せないその微笑を物珍しく見つめれば、今度はネスが気恥ずかしげにごほっと咳払いをして、 それから呟く。 「だが、僕は・・・嬉しい」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・は?」 怪訝そうに見るあたしにネスは慌てて手を振りながらも、動揺のためズレた眼鏡の 位置を元に戻して、再びぽつりと呟いた。 「・・そ、その・・・君が僕を頼るなんてことはそうそうないじゃないか」 ・・・・・・・・・・・・・・。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・は?? 思わず、首を傾げてしまった。 一体何のことだろうか・・、頼って欲しかったということ?? 「・・なんか、良くわかんないんだけど・・って、違うってば!怖いんじゃなくて・・」 あくまで否定するあたしに問答無用と言わんばかりに、ネスがぐっとあたしの手を掴み返した。 それに思わず言葉を詰まらせれば、ネスはそのままあたしを引っ張って、 皆と少し遅れつつも森の奥へと進んでいく。 「ちょ、ちょっと!(ああああ!ネスがどんどん男らしくなっていくぅぅぅぅぅぅ・・!!)」←だめなのか しっかりとした足取り。 それに少しだけ勇気づけられる。 しばらく歩いて、ネスは小さく、ぽつりと呟く。 「頼られたのがこの森でじゃなかったら、もっと喜べたんだがな」 「・・え?なんか言った?」 「何でもない」 繋がれている、手。 男の人なのに、相変わらず綺麗な、冷たい指と手。 ・・・でもあたしにはどこか温かく感じて、彼の背中で揺れるマントをしばし見つめて、 そこでようやく、ほっとした気持ちになれた。 (・・あたし・・やっぱりこの手が好きだな・・) 冷たくても、どこか温かくて 臆病でも、寂しさと闘ってきた気持ちを知ってる手 あたしはとうとう、観念した。 子どものように”怖くない”と弁解するのも馬鹿馬鹿しくなってきたのだ。 ・・・・・取り合えず、手をとってくれた彼に一言。 「・・ありがと」 「お互い様だよ」 よくよく見れば、ネスの頬も赤い。 思わず笑ってしまったが、彼は振り払うことなくそのまま、奥へとあたしを連れて行ってくれる。 手は繋がれたまま。 ・・ねぇ、あたし この手を知ってる? そう考えた途端。 突然、あたしの頭の奥底から、声。 ”もうこれ以上、僕に関わらないでくれ!” (ぁ・・) また、声だ。 きっぱりとした、拒絶の言葉だ。 この間の、”死にたくない”と願った男の声とはまた違う・・男の声。 (誰?) ”君は僕のことを何も知らないのに!僕の痛みも、想いも、何も知らないのに・・!!” それはまるで、苦しみと悲しみが重なったような声音 ”君がいると・・僕はおかしくなってしまう 「!」 ネスの声に再び、現実に引き戻された。 気がつけばネスがあたしの両肩を掴んでいて、ひどく心配そうに顔を覗き込んでいる。 眼鏡の奥にある、彼の深い黒色の瞳と視線が絡まる。 「大丈夫か?」 気遣われたあたしの身体は、顔には・・どっと汗が噴出していた。 鼓動も、いつもよりも幾分、早い。 「・・急に立ち止まったかと思えば、何も反応を示さなくなるから・・」 「ん、大丈夫・・ちょっと緊張してるだけだから」 「緊張?そんなものには見えなかったぞ」 「・・本当、大丈夫だから」 あたしはネスにそう言い返して、掴まれている手をぎゅっと握り返した。 さっきの声も、”死にたくない”と願った男の声も、全部、全部、あたしには知らないもののはず。 なのに、それは記憶のように、あたしの中で反芻する 何度も、何度も・・ ネスは握り締めてきたあたしの手に少し、驚いた表情を見せたけれど、 何も言わず、握り返してきてくれた。 強く、握り返してくれた。 ”大丈夫だ”と、励ましてくれているかのように。(実際どう思っていたのかわからないけれど) それに酷く、酷く 「・・ネス、イイ男になってきたね」 「それは、君の中で僕は乙女じゃなくなってきたということか?」 「うーん、微妙!」 (微妙なのか) しかし、これは一体どういうことだろう。 奥へ行けば行くほど、“行きたくない”、“怖い”といった気持ちが増えてくる。 あたしはこの先にあるものを知ってるのに、心は酷く混乱していて、これ以上進みたくなくなってしまう。 お祖母さんがいると、信じて進んでいる、アメルはどうなるんだろう? ひたむきに、進んでいる彼女 その後姿を見て・・・・・納得がいくまで、連れて行ってあげたいと思う そして、この後のことを見て、強くなって欲しい ・・強くならなきゃだめだから 「・・ま、ここで引き帰しても・・女が廃るわね」 怖くて、たまらない。 何もかもを振り切って、逃げ出したい。 そんな心境。 けれど・・・・・・・それを乗り越えたいと、願うのもまた事実で。 (頑張ろう) 何を知るか 何が見えるか、わからないけれど この物語は、進まなくては進めない 自らが、切り拓いていくお話 それぞれが不思議そうな表情で、薄暗い森を見渡している。 「獣の声が聞こえねえ」 「・・・・・・・本当だわ。 どうしたんだろう・・・いつもならタヌキに出くわしてもおかしくないはずなんだけど・・・」 タヌキいるんスか あたしはルウの言葉にツッコミを入れつつ、ふっと表情を緩ませた。 やっぱり黙々と進むと、余計なことばかりしか浮かばない。 気分転換にもなりそうなので、あたしはネスの手をグイグイと引っ張りながらルウ達に駆け寄った。 後ろでネスが抗議の声をあげていたけれど、もちろん無視。(オイ) 「ね、ルウ!やっぱタヌキ鍋とかするの?」 「うーん、たまにするかなー・・・」 「あれって美味いよなー・・。お前何派?俺しょう油派」 「ルウはタレ派!どっちも美味しいけど、やっぱりタレのあの味がなんとも言えないのよねぇ〜vv」 「へー、そうなんだ・・(あぁ素敵!これがナマの森っ子(森で育った子の略)トークなのね!!)」 ルウとリューグの会話にあたしは相槌を打ちつつ、ガッツポーズ。 ってか、さすが森っ子!!何だか奥の深さを感じるわ・・!!(意味分からんぞ) でもタヌキ鍋って美味しいのかなーとぼんやりと考えていれば。 リューグがネスの手を掴んでいるあたしの手首を掴んで、強引に引き剥がした。 「リューグ?」 「・・何でテメエらが手ぇ繋いでるんだよ、オイ」 リューグの鋭い睨みが、(何故か)ネスへと降りかかる。 けれどもさすがは説教魔・・ネスはそれをあっさり受け流した。 すげぇよネス・・!あたしじゃ怖くて土下座したくなるよ・・!!(ブルブル) 「別に、君には関係ない話だ」 「なんだと?」 「それに繋いでいると言っても、のほうから握ってきたんだ。僕からじゃない」 「・・なっ・・!?(リューグが慌ててを見る)」 「(視線が刺さる!<滝汗)ギャー!ネス!そ、そんな暴露しなくたっていいじゃない!? あんた最近性格悪く・・わっ?!」 リューグが、強くあたしの腕を掴んだ。 掴まれた腕の力に驚きつつ、あたしは呆然とリューグを見つめることしか出来ない。 あ、あのー・・今度は一体何が起こるんでしょうか神様・・?(これ以上のサービスは死にます!) 「りゅ、リューグ・・?」 「あんな眼鏡に頼るんじゃねえよ」 「(そんな酷いこと言ってやるなよ!)は?何言って・・って、痛っ、痛いってば、リューグ・・!」 あんまりにも強く、握られた腕。 それに思わず顔を歪ませれば、リューグが慌てて手を離した。 「あ・・わ、悪い」 ・・・・・・・一体、何が起きている?(滝汗) リューグ、ネス、ルウ、あたし・・その4人がいる場に一瞬、妙な沈黙が流れた。 しかしそれは後ろから届いた”大丈夫かー?”という声に破られ、リューグはそれに”何でもねぇ!”と、 気まずそうにあたしを一瞥しつつ、さっさと森の奥へ行ってしまった。 ネスも妙に厳しい表情をしながらリューグを睨んで、そのまま奥へ進んでしまう。 残ったあたしとルウは、一緒に並んで歩き出した。 「どうしたの?2人とも・・」 「さぁ・・、なんか、様子変だったよね?あんなこと今ままでなかったのに・・」 ”どっちかというと、ある意味似たもの同志だったから仲も良かったほうだと思うけど・・”と、 唸るあたしの横顔をルウがじーっと見つめてきた。 それに”ん?”と顔を向ければ、ルウがぽつりと、一言。 「もしかして、リューグもネスティもが特別に好きだったりして」 「あっはっはっは、ありえないね!(スッパリ!)」 質問を笑い飛ばしてしまったあたしに、リューグとネスが”は?!”と一斉に振り返った気がするが、 あたしとルウは彼らに気付かず話を続ける。(哀れ二人組み) 「え?ありえないって・・どうして??」 「だってあたしは別世界から来て、今は帰る方法がなくとも・・いつかは帰る身なんだよ? っていうかあたしみたいな暴力女、恋愛感情で好きになってくれる人なんていないって!」 「って暴力女なの?」 「おうともよ!(誇らしげに)←誇るな ルウやトリス達に何かあれば、あたしの拳が光ってうなる!(拳グッ!)」 「へー!すごーい!!」 「・・っとまぁ、光るとかは冗談なんだけど・・でも、やっぱり有り得ないでしょ?」 あたしの言葉に、ルウがきょとんとした。 とても不思議そうに。 「どうして?」 「どうしてって・・・だって、すぐいなくなっちゃう人のことなんて、 特別に好きになれないもんじゃないの?別れを思うと悲しいじゃない?」 「そうかな・・?ルウはよくわからないけど・・。 でもそういうものって、あんまり関係ない気もするな」 「・・・???」 ひたすら疑問符を浮かべるあたしに、ルウはにっこりと微笑む。 「それじゃはさ、この世界で知り合った誰かを好きって思ったことある? 友達になりたいとか、一緒にいたいなぁとか、そんな感じ」 あたしの脳裏に、ルヴァイド達、トリス達が思い浮かんだ。 ルウの問いに”ある”って頷けば、ルウはやっぱり、笑顔で。 「それと同じなんじゃない?人を特別に好きになるって・・」 「・・なのかなぁ?」 「ルウもまだ、男の人を好きになったことなんてないけど・・叔母様が言ってたわ。 人を好きになってしまうことに、種族も何もないって。 ・・・相手がどんなに酷い人でも、嫌な人であっても・・好きになってしまうこともあるって。 だってこれから誰かを好きになっていくかもしれないよ?」 にこにこと、そう言って笑うルウ。 叔母さんが殺されて、召喚獣達だけで生きてきた・・ルウ。 叔母さんが亡くなった時 彼女は召喚獣達を抱きしめて、泣いたのだろうか ・・それを思うと、すごく切なくて。 「〜〜〜〜っあたし、ルウが大好き!愛してるーーーーーー!!!」 「え?」 「「ちょっと待てーーーー!!!!」」 あたしがルウにそう言ってがばぁっ!と抱きつけば。 前方を歩いていたはずのリューグとネスに、速攻で引き剥がされた。 ・・・・・・・いやもう、あんたたち、本当に何なのさ・・・?(意味わかんないわよ・・) 「・・ふぅ、結構奥まで進んだなぁー」 「しかし、やはり妙でござるな・・」 休憩がてらに地面に座り込むフォルテの隣で、カザミネが呟いた。 その言葉を聞き逃すことのなかったフォルテは、”ああ”と一度頷いて。 「獣も、鳥も、一匹もいねえ」 「森の入り口には多くいたはず、けれども獣達が本能的にここを避けている・・」 彼らは冒険者でもあり、戦士でもあり、戦いの経験者。 そんな彼らはやっぱり鋭くて、伝わる緊張にあたしは思わず水筒の水をごくりと、音をたてて飲み込んだ。 「この森は悪魔が封じられている森だから、皆避けてしまうのはわかるけど・・。 でもいつも見回りに行ってる時は、鳥はいたよ?」 「森の番人がそう言うんだから間違いないわなぁ・・」 フォルテがルウを見つつ、剣先の手入れに手を動かす。 他のメンバーも武器の手入れを怠ってはいなくて・・あたしはそこで、皆が本能的に 何かを察知しているのだとようやく気がついた。 (でも) それでも、悪魔を封じた結界は解けてしまう 彼女によって 「・・・・・・・・アメル?」 トリスの、不思議そうな声にあたしは顔を上げた。 心ここにあらず、と言ったように呆然と立っているアメルに、皆の視線が集中する。 「アメル?どうしたんだい」 ロッカの問いかけに、アメルは何も応えなかった。 彼女はただ、森の奥へとゆっくり・・その足を進めている。 柔らかな茶色い髪が、ふわりと、生温い風に揺れた。 どこからともなく、流れ出てきた風。 彼女が歩を進めるたびに、周りの木々がガサガサと激しく揺れ動いて、 そのうちに妙に生温い風があたし達全員を包み込んでいる。 酷く、生温い風。 「アメル!!」 「・・・知っている」 ケイナの叫びに、アメルがようやく応えた。 いや、応えたというわけではない・・・・・・・彼女はただ、呟いたのだ。 「・・あたし・・・この森を アメルが向かおうとする森の奥から、強い風。 どこか禍々しいモノを感じさせる、生温い風。 それが彼女の長い髪を激しく揺らし、叩きつけるように襲ってくる風にあたしは手で顔を覆った。 木々たちが、叫ぶように身体を揺らしている。 「アメルッッ!!!」 トリスの叫ぶような声が、あたし達の耳に入った。 けれどもアメルは止まらない。 あたしはアメルに近づこうと足を動かすけれど、強風に煽られて逆に押し戻されていく。 動けない。 進めない。 「ぁっ・・アメル!!!」 だから変わりに、叫んでみた。 そうすれば、今まで誰の声にも反応しなかったアメルが、あたしの声に反応したかのように、 ぴくりと身体を震わせながら彼女は僅かに振り向いた。 「・・・え あたしは、息を呑んだ。 アメルの、横顔。 それがまったくの、別人に見えた。 甘やかな茶の髪は、長く美しい金色に。 瞳の色はアメルと同じ茶ではなく、深く美しい青色。 そして背よりやや下の腰部分には 「 吹き荒れる強風の中。 あたしはぽつりと、名を呟いた。 哀れで、悲しい、天使の名。 あたしは、唐突に胸の奥に焦燥感が湧き上がったのを感じた。 何だか酷く、酷く、もどかしい。 あたしも森の奥に呼ばれているような気がして、何故か焦る。 それに足を動かそうとしても、ただ強風に押し戻されるだけ。 あたしが動けないでいると・・ふと、吹き付けていた風が止まった。 「あ」 顔を上げれば、風が止まったのではないと理解した。 大きな黒い機体・・護衛獣のレオルドがあたしの前に出て風を遮ってくれのだ。 しっかりと守ってくれている彼に思わず苦笑して、あたしは小さく礼を言う。 「ありがとう、レオルド」 「アルジ殿、オ下ガリクダサイ」 「・・?」 「来マス」 レオルドの言葉が耳に入ると同時に、バルレルとレシィが吼えるように叫んだ。 「オイ!そのオンナをそれ以上行かせるな!!!」 「誰か・・誰かアメルさんを止めてください!!!」 彼らも酷く、焦っている。 本能が、彼らの心に嫌な予感を訴えているのだろうか。 けれど全て、何もかも遅かった。 彼女の身体の周りが光に包まれて、それがどんどん膨れ上がっている。 それでもアメルは何かに憑かれたようにブツブツと呟きながら、1歩1歩足を踏み出す。 森の奥を、目指す。 「知っている」 「アメル!戻って!!!」 マグナの声を掻き消すように、アメルは大きく1歩を踏み出して、再び呟いた。 「あたしはこの森を知ってる・・・!!」 風は一気に舞上がって光を爆発させた。 木の葉が舞う 小さな木の葉が、ちらほらと 踊るように、滑るように ・・・・・・あたしは、目の前の光景をただ見つめていた。 木の葉が視界を遮りながらも、あたしはただ真っ直ぐに奥を見つめた。 かすかに、ルウの”結界が・・”と呟くように発せられた掠れた声が耳に届く。 誰よりも森の深部に近い位置にいたアメルは倒れていて、更にその奥から、 生温い風とはまた別の・・・とても冷たい風を運んできて、あたしの頬を柔らかく打つ。 刺すような、冷たい風があたしの髪を撫でる。 優しくない、それでもって寒気すら感じさせる風。 あたしはアメルに駆け寄って、彼女を抱き起こすと柔らかな頬をペチペチと叩いた。 「アメル、しっかりして」 「・・う・・・ん・・?・・あ、あたし・・」 アメルは首を振って意識を取り戻すと、今度は、背筋を走る寒気にぎゅうっと自分の身体を抱きしめて。 今までにない怯えようをあらわにしながら、ガタガタと肩を震わせ始めた。 あたしはぎゅっとアメルの肩を抱くと、奥を睨み付けながら後ずさりをしつつ仲間の元へ戻る。 皆が皆、冷ややかな風が吹く森の奥ばかりを凝視していた。 「な、何が起きるのよぉ・・・」 怯えを含んだミニスの声を耳にいれつつ、あたしただ、目の前の暗い森を見つめた。 じっと、目をこらす。 何が出てきても、すぐに反応できるように・・・・・。 (来る) 嫌な予感。 それが胸の奥をぎゅっと締め付けたその時、・・・・・唸り声が、響いてきた。 獣のようで、でもこの雰囲気は決して獣じゃない。 禍禍しい、黒をイメージさせる空気。 「グルルルル・・・・」 唸り声。 次の瞬間には憎しみに溢れかえった咆哮が、あたし達全員の耳と心に、 そして薄暗い森一体に響き渡る。 「グルアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!」 禍々しく。 怨念のごとく。 全てを憎み、恨むがごとく。 悪魔の咆哮に、ビリビリと空気が震えている。 激しく響き渡るそれにあたしの肩も震えるけれど、ぎゅっと唇を噛んでそれを耐えて。 目を逸らさずに、それを見つめた。 女性の身体を持った、悪魔。 血のように赤い瞳に、怪しくも艶やかな、赤の唇。 尋常ではない光を灯らせた赤の瞳は、憎悪の光が混じりながらも解放された恍惚感で満ち溢れている。 「・・ルウ、ここは悪魔が封印された森だったよね・・・」 「ええ・・でも・・まさか、まさか封印が解けるなんて・・・!」 「皆!!逃げろ!!!」 ネスが放った言葉。 それに呪縛が解けたようにあたしはアメルを支えながら立ち上がると、一気に来た道を引き返した。 仲間の皆も、あたし達と一緒に全速力だ。 「さん・・、さん・・・・!あたし・・、あたし・・!こんなつもりじゃ・・・!!」 「わかってる!アメル、走るのよ!!」 あたしはアメルの手を離さないまま、走り続けた。 僅かに後ろを振り返れば、赤の瞳と視線が絡む。 (これが・・悪魔・・!!) 絡んだ視線だけで、こんなにも背筋が逆立つ。 足が、立ち止まりそうになる。 でもあたしは、アメルの手をしっかりと掴んで、走っていた。 黒の悪魔が細い腕に似合わず大きな剣を携え、あたし達を追ってきた。 血のように濡れた赤い唇からは、ほとばしるほどの憎悪の叫び。 「ヨクモ・・ヨクモ我ラヲコノ地ニ縛リ続ケテ来テクレタナアアアアアアアアアア!!!!」 縛り続けてきた。 それは過去の戦争から、今までの時間の経過を指すのだろう。 ルウは素早くサモナイト石を掲げ、早口に詠唱を唱え、 <真の名>で異界の者を呼び寄せる。 「シャインセイバー!!」 空間を裂いて現れたそれは、真っ白い光を身に纏いながら悪魔に突進して、 悪魔の剣と対立する。 聖と闇の力が激しくぶつかりあって火花を散らすその勢いに、あたしは一瞬息を呑んだ。 あわわ、本格的にヤバイよあれ!! 「皆!散るんだ!!」 ネスの掛け声と共に、あたし達は別れて出口を目指して走った。 全速力・・そう、これまでになかったほどの全速力で走った。 今なら自分的新記録を出せると思うほどの、全速力。 けれどここは、悪魔の軍勢が封じられている森。 数え切れないほどの悪魔たちが大量にあたし達の跡を追ってきて、振り払うことなんて叶わない。 あたしは、心の中でカイナ達の到着を祈った。 (早く・・!カイナ!!) 「・・私・・もう走れないよぉ・・っ・・・」 「ミニス!頑張って!!」 あたしはミニスの手を掴んで走り出す。 けれど子供な彼女の手を掴んで走っても、ミニスが何度も転びそうになる。 いっそ背負っていこうかと考えたその時。 「何やってんだお前ら!」 リューグが素早くミニスを肩に担いで、あたしの手を掴んで強引に引っ張りながら走り出した。 あたしと全然違う走るスピードに、あたしの身体はぐんっと強く、引っ張られる。 「リューグ!」 「急げ!!!」 リューグのスピードについていけなくて、今度はあたしが転びそうになりながらも、彼に続いた。 レシィとレオルドも悪魔たちを振り払いながらあたし達の後ろを守るけれども、 後から後に溢れ出るように出現してきてキリがない。 (ど、どうしよーーーーーーーーーーーー!!!(滝汗)) 「忌マワシキ人間メ!!我ラヲ縛ッタコノ地デ屍ト化セ!!!」 「じょーだんじゃないわよ!!あたしはまだ生きなくちゃいけないんだから!!」 振りかえって言い返すと、レシィとレオルドの間をすり抜けてきた悪魔が、 あたしとリューグと、リューグに担がれているミニスの背後へ、一気に迫って来た。 恐ろしい、怒りに満ちた表情があたしの視界にクッキリと映る。 「げ・・」 「死ネ!!」 反射的に、”でりゃ!”と力の限りリューグ(+ミニス)を突き飛ばした。 リューグ達は”うわ?!”やら”キャー!”やらと小さく悲鳴をあげながら横に吹っ飛んで、 肝心な悪魔は真っ直ぐにあたしをめがけて突進してくる。 ギャー!何も考えずに突き飛ばしちゃったヨ!(自分大ピンチー!) 「!!」 突き飛ばされて尻餅をついているリューグが叫んだ。 しかしその間にも鈍い色を放つ剣はあたしを貫こうと迫っている。 ”わー!”と混乱が頭をよぎったけれど、あたしの目の前に立った影が、 ガキィンっ!!と激しい音をたててそれを防いだ。 「あ・・マグナ・・」 「大丈夫か?!」 マグナの剣が悪魔の剣を弾き返して、あたしを庇うように立つ。 それに”ギャー!カッコイイぞマグナー!”と心の中で大拍手を彼に送っていれば、 悪魔がマグナの存在を視界に認めて、今までにないくらい・・怒りに満ちた表情を露わにして吼えた。 「調律者ノ一族ノ末裔カ!!殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス!!!! 貴様ラヲ忘レタ時ハ一時モナカッタゾ!!忌々シイ!!!!」 「調律者・・・?」 再び、振り下ろされる剣。 マグナはそれを渾身の力で受けとめながら、悪魔の言葉に眉を潜めた。 しかし悪魔は理性を失くしたかのように、ひたすらマグナを剣で攻め立てては追い詰めていく。 何度も繰り返される剣戟。 マグナもどうにかそれを受け流して悪魔に対応しているけれど、悪魔のほうが小回りや スピードが勝っていて、マグナには少々部が悪い。 「マグナ!!」 木の幹へと追い詰めたマグナを、悪魔が恐ろしいほど嬉々とした表情で剣を振り下ろす。 マグナはそれをどうにか避けて悪魔へと剣を振りかざすが、背後から現れた悪魔に後頭部を 殴りつけられ、地面に顔を擦りながら叩きつけられた。 動けないマグナに再び剣を振り下ろそうとする悪魔に、あたしは背後から飛びかかるようにしがみついた。 意地でもマグナを死なせてたまるかってーのコンニャロー!!(ヤケ) しかしやっぱり、人間と悪魔の差が物を言うのか。 あたしは悪魔の細い腕に大きく振り払われて、地面に強く叩きつけられて、 身体に走る衝撃に掠れた息が零れて落ちる。 「!」 少し離れたところから、モーリンが叫んだ。 けれどその間にも悪魔が、動けないあたしに剣を振り下ろそうとする。 いや、ヤバイ、かなりヤバイ、死ぬ そこで、何かがはばたく音が耳に届いた。 大きく、大きく、はばたく音。 音と同時にブワッと吹き付けた風であたしの髪が舞い上がり、どうにか上半身を起こして見上げれば、 上空に浮かんでいる大きな影が森を覆っていたのが見えた。 ( ただでさえ暗い森。 森は影によってさらに闇を深め、あたしはただ、はばたいて上空を泳ぐその竜を 見上げて、唖然としていた。 それらは竜ではなかった。 3匹のうち一匹は竜のような形をしていたけれど、残り2匹は竜ではない。 なめらかな紫色の肢体と、金色の兜のようなもので頭部を覆っている。 白い翼をばさりとはためかせながら、それは悠々と空を泳ぐ。 (レヴァティーン2匹と・・ゲルニカ?) 竜たちと、視線が絡んだ。 けれども、どの竜も、どこか優しい瞳をしているように見える。 ぼんやりと上空を仰ぐあたしだったが、一番に我に返ったネスが珍しくも驚きを露わに叫んだ。 「・・レヴァティーン・・?それにゲルニカ・・!!?霊と獣属性の最上級の召喚獣だぞ!??!」 ネスの叫ぶ声と同時に、3匹のうちの一匹の竜の背から誰かが跳躍したのが見えた。 それは一瞬で下降してきて、ダ ン ッ !っと足が痛くなるような激しい音と砂埃を撒き散らしながら、 あたしと悪魔の前に着地する。 あたしは音に、砂埃に 「な・・」 砂埃が晴れる前に、煙の中から切り裂くような刃が現れた。 それはあたしの傍にいた悪魔の身体を一瞬で引き裂いて葬り、そこでようやく、 あたしは飛び降りてきた来訪者の姿を目にする。 赤の瞳がまたさらに、ただでさえ凶悪そうなその目つきに凶悪感を目立たせている。 助けてくれた来訪者は、男だった。 しかも、ネスやイオスやレイム(サモ2美白代表)にだって負けないくらいの、白い肌。 ワインレッドの色のマントに、腕には妙にゴテゴテとしたものをつけている。(ガントレット?) ・・・っていうか、その凶悪な目つきと不健康そうな色白は・・・!! (ば、バノッサぁ!??!?!) 突然の、まったく予想すらしていなかった登場人物。 彼の姿に危うく悲鳴が出そうになった・・・・・・・けど、堪えた。(エライわ!あたし!ビュリホーよ!!)←落ち着け っていうかなんでバノッサ?!何であんたがここでしゃしゃり出てくるわけ?! カイナは?!エルジンは?!エスガルドは!?!? いやそれよりも前にあんた死んだんじゃなかったのかああぁぁぁぁぁあああーーーーーーーー!!(混乱) (しかし今までにないくらい不健康そうだわ・・あの目つき、本当に凶悪・・!)←好き勝手言い放題 あたしが放心していれば、バノッサは周りから襲い掛かってきた悪魔達に目を向けて。 口元にニヤリと笑みを浮かべながら、刃先が普通の剣や刀とはまた違う、丸みを帯びた刃・・・・曲刀で切り裂いた。 切り裂かれた悪魔から悲鳴と恨み言がいくつも木霊して響くが、それは砂となって消滅していく。 わずかに血の滲んだワインレッドのマントが、ばさりと風にたなびいた。 (凶悪だけど・・強い・・) 思わずごくりと、喉を鳴らしてしまった。 ・・でも、本当に強いのだ。 太刀筋だって見えなかったし(あたしは素人だけど)、でもマグナ達やルヴァイド達の傍にいて、 戦っている彼らを見てきたあたしには、突然の来訪者が明らかに戦い慣れをしているのがわかる。 姿も、格好も、声も・・あれはあたしの記憶にあるバノッサそのものだ。 「・・あんた・・」 「うわぁーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!」 今度は、上空から悲鳴。 それに思わず顔を上げればなんと、竜の背・・レヴァティーンの背から、少年が落ちそうではないか。 いや、あれは落ちそうと言うべきか、落とされかけていると言えばいいのか謎だけれど ・・・・次々と起こるアクシデントに唖然としてしまっているあたしの少し向こうで、トリスもあんぐりと口を開けて呆然としている。 寧ろこの展開にどうついていけと?(最もな疑問だ) 「ナツミーーー!!落ちる!落ちるぅーーーーーーーーーー!!!!!!」 「だって女の子が悪魔に襲われてるんだよハヤト!ここはやっぱり、バノッサみたいに かっこよく飛び降りて・・・」 「俺は死ぬってばーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!(滝汗)」 ・・・・・・・・・・・・・・・・なんだか・・・。 あっちのほうがデッドオアアライブ(生きるか死ぬか)な感じがするのは気のせい? そう思いながらも見上げていれば、バノッサが忌々しそうに彼らを見上げながら舌を打ち、 あたしを一度一瞥して、すぐに別の悪魔に曲刀を振り回し悪魔達を葬り去っていく。 あれ?もしかして助けてくれてる・・・? (いやいや、今はそんなことはどうだっていいのよ! だってハヤトとかナツミとか言ってたのよ?ってことはアヤとトウヤがいたって・・・) 目をこらして見上げれば、いた。 アヤとトウヤの、二人の姿が。 しかももう一匹の竜、ゲルニカのほうにはパートナーズが揃っていて、 ヤバイ ヤバイよ神様 これ以上サービスされたらほんと、身がもたないヨ!!!!(出血多量は確実!) 「あ、バノッサがどんどん悪魔やっつけちゃってるじゃない!あたしたちも行きましょう!」 「それじゃレヴァちゃん、降りましょう」 「俺は先に降りるよ」 「あ!トウヤずるい!!あたしも降りるわよーーーー!!!」 「うわああああああ!!俺まで巻き込まないでくれナツミーーーーーーーーーーーー!!!」 ゆっくりと降下を始める竜たちとは別に、バノッサのように飛び降りた3つの影が見えた。 彼らが重力に身を任せ、陽の光と共に落ちてきた・・と思えば、いつの間にか召喚されていた フレイムナイトの肩や手に支えられて、彼らはふわりと地面に着地する。 ・・・・・・そんな彼らの姿も、やはりあたしの記憶とは違っていない。 ハヤトが、必死でフレイムナイトの肩にしがみつきながら呟いた。 「な、ナツミ・・!心の準備もなしはキツいよ・・・!!!(滝汗)」 「それよりも、団体様でお出迎えされてるねぇ」 「・・・カイナ達が修復している間に俺達も悪魔退治を手伝おう」 ナツミとトウヤ、そしてハヤトがそれぞれの武器を手に、フレイムナイトから離れた。 それを合図に悪魔達が叫び声を上げながら彼らに襲い掛かれば、彼らも戦い慣れを していることを感じさせる動きで、撃退しては葬り去っていく。 やはりそれぞれ、個人差があるものの・・・強かった。 (・・これが・・) 誓約者の力 エルゴの王として認められた、彼らの力 ”っていうか、何でここに揃ってるんだ?”とようやく動けるようになった身体を起こそうとすれば、 しなやかな、細い手があたしに差し出された。 「大丈夫ですか?」 レヴァティーンからふわりと降りてきた、黒髪の少女・・アヤがにっこりと、あたしに微笑みかけた。 唐突に現れて悪魔をズンドコ退治していく彼らに驚いたまま、どうとも反応できないあたしに 彼女が首を傾げた際に、真っ直ぐな、柔らかな黒髪が華奢な肩を流れて綺麗に輝く。 「・・何だか悪魔たちがいっぱいですね・・・カイナさんが言うには結界が 壊れてしまったということですが・・早く修復しなくちゃいけませんね」 その時、反応できないあたしの代わりに、嬉しそうに顔を綻ばせた人がいた。 それはシルターンの侍、カザミネだ。 彼は嬉しそうに、アヤに駆け寄る。 「アヤ殿!お久しぶりでござる!」 「カザミネさん?!わぁ、お久しぶりですね!」 「そうでござる・・もう半年近く・・いや、一年は経っているでござるか・・フラットの面々も皆、 変わりはないでござるか?」 「ちょっと待てマフラー侍」 しみじみと、懐かしそうに笑みを浮かべるカザミネのマフラーを、あたしはグイと引っ張った。 途端にカザミネの首はイイ感じに絞まったが、取り合えずそこはスルー。(鬼) 「殿?!一体何を・・!?!(三途の川が!)」 「思い出話は後よ!ねぇあなた、さっき結界を修復しなくちゃって言ってたわよね?」 「はい」 「(はぅあ!イイ笑顔だ・・・!!)そ、それじゃお願い、早く結界を修復してほしいの! さっき二手に別れた仲間達もきっとすごく疲れていると思うし・・」 「それでしたら、大丈夫ですよ」 にっこりと、アヤが微笑んであたしに言った。 それにあたしが首を傾げれば、アヤは自分が乗ってきていたレヴァティーンの傍に立つ、 巫女服の少女へと視線を向けて。 「カイナさん、お願いします」 「はい」 カイナと呼ばれた少女はにこりと笑むと、懐から鈴のついた祈り具を取り出し、詠唱を始めた。 カイナの持つ祈り具の鈴が、リンッ・・と、とてもすんだ音色を立てて空気を震わせる。 「鬼界を統べる竜神様・・鬼道の巫女・カイナにお力をお与え下さい・・ 光が、森の木々から、彼女の手にある祈り具から・・溢れ出てきた。 白い、白い光。 眩しくて、目を伏せかければ・・ 「グルアアアアアアアアアア!!!!!」 あちこちから響く悲鳴。 それが、森に、あたしの耳に響き渡る。 けれども悲鳴とは裏腹に、光はとても温かで優しくて・・あたし達を包み込んで、 アメルが壊してしまったらしい結界を修復し始めた。 鬼妖界の力が結界を作り上げていく。 悪魔達は、光に触れれば砂粒になって消えていく。 「・・キレーイ・・」 トリスはぼんやりとそれを見上げて、呟いた。 あたしは取り合えず助かったーと、ため息を吐いて。 少し離れて倒れたままのマグナに、慌てて駆け寄った。 「マグナ!しっかり!!」 「・・っー・・・・・?」 「あー!良かった!無事だったぁーーーーーーー!!!!!!1」 あたしはぎゅうっとマグナに抱きついて(役得ですな!)、心の底から安堵した。 抱きつかれたマグナは殴られた衝撃でまだ上手く思考が働かないのか、しばしきょとんと していたけれど 「マグナ?何で謝るの?」 「俺、を守るつもりだったのに守れなくて・・」 「お馬鹿ーーーー!!!(スパーン!)」 あたしのビンタが、マグナの頬に見事に決まった。 だいたいの悪魔達を退治して終わった仲間やハヤト達が、目を見開いてあたし達を見守っている。 「あそこまで頑張ってくれてたのに、何で守れなかっただなんていうのよ! しっかり守ってくれたでしょ!」 「・・」 理不尽に怒られたというのに、彼はにこりと笑んだ。 そして安堵させるかのようにあたしの手を掴んで、微笑む。 大きな手があたしを包んで、優しい笑顔に切羽詰っていた心が安心して行くのを感じる。 「こそ、大丈夫?」 「・・うん、あそこの不健康そうな人(バノッサ)が助けてくれた」 「・・ううん、それもあるけど・・」 「?」 「ここに来て、ずっと不安そうだったから」 ネスだけでなくマグナにも知られたかと思うと、思わず顔を上げられない。(エスパー兄弟か・・!) 「、怖いときは怖いって言っていいんだよ」 「・・・・うん」 「がそう言っても誰も笑わないから」 うん。 ここの人たちは笑わないだろう。 けれど、時折感じる焦燥感、いくつも響く男の声 それらを素直に相談してしまえば、きっと皆心配する (今は、皆これからもっと大変なのに) まだ、閉じ込めておくべきだ まだ、誰にも言わないでいておくべきだ あたしは心配そうに覗き込んでくるマグナに、にっこりと笑った。 自分に何が起こっているのかわからない不安が、胸の内に渦巻いているけど。 ・・・けれどそれを無理矢理押し込めることにどうにか成功して、あたしは笑った。 「だいじょーぶ!まだまだイケるって!」 「・・」 「でもそれより、あなた達何者なの?」 そこであたしがハヤト達に振り返って見やれば。 何故か、赤い瞳と視線が絡んだ。 ( 「調律者アアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!」 身体がボロボロになりながらも、茂みから姿を現したのは悪魔だった。 武器も何もない両手を突き出して、瀕死の身体で悪魔があたし達に突進してくる。 だが理性も何もない・・ただ憎悪がこもっているその瞳にあたしは映っていない。 ・・・映っているのは、マグナの姿。 「マグ・・・っ」 「!」 マグナはあたしが襲われると思ったのだろう。 咄嗟に自分の身体を盾にして、あたしの前に身体を投げ出す。 その時、悪魔が歓喜に満ちた笑みを零したのを、あたしは見た。 悪魔が、マグナの胸板に両手をついた。 次の瞬間何かがジュッ!と何かが焼けるような音が聞こえて、音のあとでマグナのうめき声が あたしの耳に届いた。 「マグナ!」 「調律・・者・・眠リ、・・・・・死ネぇ・・・」 復讐を果たした・・とでも言うように、悪魔は消滅した。 消滅と同時にマグナの身体はぐらりとあたしのほうに倒れて、あたしは慌てて彼を背中から受け止める。 マグナの胸に、何かの刻印のようなものが浮かぶ。 けれどそれは滲み込むように消えて、途端に触れているマグナの身体が妙に熱くなってきているのがわかった。 「お兄ちゃん!!!」 「マグナさん!!!」 アメルとトリスの悲鳴が森に木霊して、あたしは彼を揺さぶりながら名前を呼ぶ。 「マグナ!マグナ・・!!!」 「・・・っ・・」 呼びかけに答えない。 ただ、うなされるように苦しげに呻いて熱い吐息を零すだけ。 あたしは彼の体温の高さに驚いて、再びマグナの意識を取り戻そうと名前を呼ぼうとすれば、 カイナがあたしをそっと押しのけてマグナの額に触れて、眉をしかめてあたしを見た。 「・・この方・・ 「え・・」 「最後の最後で、振り絞った呪いなのでしょう」 ・・・だんだんゲームのシナリオがズレてきていると、困惑しながらあたしはハヤト達を見た。 彼らも困惑しながらあたし達を見ていて、あたしは彼らからマグナへと視線を映す。 「・・マグナぁ・・・」 ぎゅっとマグナを抱きかかえて、恐怖と混乱から溢れ出る嗚咽を漏らした。 怖くて、涙が止まらない。 とめどなく、ボロボロと溢れ出て。 ただ、熱い吐息を零すマグナの頭を抱きしめた。 NEXT -------------------------------------------------------------------------------- 後書き 第48話をお届けさせて頂きました。 長いです、長いですね。 しかも妙にややこしいと思います、書いてる自分がそう思うんだからきっとそれ以上に皆様も そう感じておられたかと思います。 予想以上に時間がかかった!もう10何時間は打ち続けていた記憶があります・・なんでこんなにかかるんだか。 リューグVSネス、バルレルVS(黒)ロッカ、な要素を入れてみました。 すみません、もう彼らしか出張ってないとしかいいようがないです。 タヌキ料理ってよくわかりません。 タレつけるのかしょう油つけるのかサッパリです、半ば怪しいです、信じてやらないでください・・。 そこはかとなく、マグナメインが多い気がします。 誓約者たちでたのに、バノッサだって出たのに、喋ってないし。 悪魔の呪いなんてゲームにすらなかったのに・・またプチにオリジナルストーリーで行くようです。 お許しを・・・!! 2002.3.11 2004/7/16 |