神様、仏様



あたしはとうとう、ダメでした



ね、眠く・・眠くて仕方が・・・・・・・・・・・・・(ガクリ)







第46夜







眩しい。


ロッカは眉を寄せて顔を歪めた。


(・・もう・・朝?)


だが身体はまだ睡眠が必要だと言っているような気がして、
寝帰りをうって、布団の中に身を沈める。

すると、ふと、甘やかな香りが鼻についた。


(・・・?)


香りのその源を調べようと手を探るように動かせば、指に何かが絡まった。
柔らかで、ふわふわとした感触。
それはまるで、人の髪のような            ・・・。


(・・・・・・・・・・・・、髪?)


ロッカはそこで初めて、目を開いた。
眩しい光を視界の片隅に移しつつ、目を開いた彼の目に映ったのは、顎。


(・・・・・・・・・・・・、顎?)


そこでようやく、ロッカは今、自分が何かに抱き付いている体勢だということがわかった。
抱きつく、というよりは覆いかぶさっている、と言ったほうがいいのかもしれない。

目線を上に上げていくと細い首筋が見えた。
そして次には、桜色の唇。

視線を少し下にずらしてみれば。
視界に、柔らかそうな膨らみを持った胸が映る。



ああ、女の子か



寝ぼけた思考が、最終的にそう結論付けて。
ロッカはその細い首筋に頬を寄せて、再び目を閉じた。



・・・・・・・・・・・・・・・・・。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・女の子?



背に、どっと冷や汗が噴き出した気がする。
眠気は一気に吹っ飛んで、バチっと目を開いて顔を上げ、
柔らかな髪を指に絡めたまま身体を起こす。


そして絶句。


「な」


自分が抱きついていたのは、覆いかぶさっていたのは、少女の体だった。
しかもその相手は             で。


「あ・・な、なんで」

「・・ん〜っ・・」

(ぅわーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!)


眩しそうに顔を歪めて呻く声に、ロッカは思わずベッドから転げ落ちた。
しかも背中から落ちたのだが、そんな痛みよりやはり驚きのほうが数倍にも上回り、
顔中に、身体中に熱が集まっていくのかわかる。
耳まで熱を感じるそれに動揺しつつ、片手で口元を抑えながらもう片手で自分の心臓を抑えて、
どうにか落ち着かせようとする。


(お、落ち着け、落ち着くんだ・・で、でもなんでさんがここに・・どうして、こんな所に・・!??!)


突然の事態に、混乱は増えていく。
一体、何がどうなって、喧嘩(?)をしていた彼女が、自分の隣で眠っているのだ??


(僕は、謝ろうと思って・・)


謝ろうと、思っていたのだ。
アメルの祖母がいる森に向かう前に、に謝って、そしてまた、一緒に過ごしたいと
言うつもりでいたのだ。

・・・・・・・・・・なのにこれは一体、どういうことだ?


取り合えず、恐る恐るとベッドを覗きこむ。
そこには先ほどとまったく変わらぬ様子で、がぐっすり眠り続けている。


(・・うわ、マズイ)


昨日は、彼女に怒っていた自分。
だが、随分と自分勝手なモノにも思うが・・・・彼女への不信も解消された今では、
胸の内を占めるのは淡い恋慕の情だけだ。



きっと



好きで、たまらないのだ



憧れが、彼女の中にあるのだ



芯の強い、優しいと思う人         ・・・。



その事実に思わず頭を抱えた。
恋慕の情を自覚しているだけに、妙に恥ずかしくて、自分がおかしくなりそうなのだ。
・・レルムの村でも、同年代の少女にこの感情は抱いたこともあるけれど、
今回のは特に、酷い。


(と、とにかく起こそう・・・ここにいる理由は、それからだ)


ロッカはベッドに身を乗り出すと、の反対側で寝ているリューグに(ようやく)気がついた。
何で僕のベッドに寝てるんだ・・?と疑問を感じながらも、半ば覆いかぶさるように、
の顔の脇に手をつく。

その重みで、ベッドがわずかに軋んだ。


さん」

「ぐー・・・(寝)」


お世辞にも、綺麗とはいえない寝顔。
寧ろこれは可愛らしい、というか・・まるで小さな子どものようだ。

ロッカはその寝顔に思わず笑みを零して、の前髪を掻き上げた。


「起きてください」

「ん〜・・」


ふと、窓から涼しげな風が部屋に滑り込んできて顔を上げた。
窓の向こうには青い海と、清天だということを告げる広大な空と、白い雲しか映らない。

耳には、ファナンの波の音が届く。
とリューグの寝息も耳に入ってきて気持ちが良かった。
カーテンもゆるやかに流れて、柔らかな風を部屋に伝わせる。

ロッカはその風に前髪を揺らしながら、にそっと顔を近づけた。


「起きてください・・・・、さん」



こんなにも



こんなにも、世界は広いもので



けれど自分は



こんなにも、ちっぽけで、愚か




さん」



信じられず、疑うばかりで、傷つけて、傷つけられたりを繰り返す



きっとこれからも繰り返す



何度も、貴女を傷つける



         けれど勝手にも、自分は貴女に情を抱き続けてしまうのだ



ゆっくりと、瞼が開く。
覆っていた瞼は、ぼんやりと寝ぼけた瞳の姿を見せた。


「・・さん」

「ロッカぁ・・?おはよー・・・」


ロッカは苦笑しながらも、寝ぼけているの肩を抱き起こす。
するとふらりと胸に倒れて来て、彼女の柔らかな髪が自分の肌を滑った。

甘い香りと共に。


       鼓動が、早まった。


「あ、あの」

「・・ぐー・・」

「ぐー?」


ロッカはの肩を少し離すと、の首はガクンっと後ろに大きく傾いた。
それを慌てて支えようとしたが、バランスを崩してと一緒にベッドに倒れ込んでしまう。

ベッドが再び、大きく軋んでは弾んだ。
軋むその音に思わず、さらに鼓動が早まる。


「び、ビックリした・・(床じゃなくて良かった・・)」


安堵のため息を吐いて顔上げると、自分の状態に硬直した。
ロッカの世界にビシリと、ヒビが入る。


またもや、の身体が自分の下にある状態。


「うわぁ!?」


いくらなんでも、これは心臓に悪かった。
と、いうか毒だ。
目の毒ならぬ、体の毒。
好きだと思う相手なら、なお悪い。

取り合えず慌てて離れようとすれば、隣りからリューグのうめき声が耳に入ってきた。


「・・ったく・・うるせーなー、もう少し寝かせ・・ろ          ・・」


リューグと、目が合った。
今のこの状態に、ロッカの背に再び、ぶわっと冷や汗が浮かんだのを自覚した。

・・この部屋には。
冷や汗を掻きまくっている、に覆いかぶさっているロッカと。
大きく目を見開いてロッカ達を見ている、リューグと。
彼ら二人の状況をまったく知らぬまま、なんとも幸せそうに眠りを堪能している


リューグの目には、兄がを押し倒している=襲っているように映っているだろう。
ロッカの目には、弟が今、この状況をどう思っているかが手に取るようにわかっているだろう。



兄貴ピンチ



慌てて、ロッカの口から弁解が出た。


「あ・・リューグ!これは、違っ・・!」

「・・・」


顔を赤くしつつも出た必死の弁解に、リューグは無言で立ちあがると自分のベッドに戻って行った。
ロッカはその背を見送って“わかってもらえた・・”と安堵のため息を吐くが、
次の瞬間には頬を引きつらせ、血の気が退いた顔色になる。


弟は、片手に斧を持ってこちらを見ていたのだ。

凄まじい殺気、丸出しで。


「・・この最低野郎・・!!」

「(あぁやっぱり!)ち、違う!リューグ!話を・・!!」

「ごちゃごちゃうるせぇ!!見損なったぞ、この馬鹿兄貴!!!」


本気の、怒りだった。
彼は珍しくも、心の底から怒りを覚えている。
リューグがロッカに斧の刃を向け、ロッカは頭を抱えたくなった。



父さん、母さん

僕は弟に命を狙われてしまってます

どうすればいいんでしょうか・・?(遠目)



ロッカは幾度か深呼吸をして、説得しようと顔をあげた。
だがその時、自分の身体の下から・・の口から声が漏れた。


「これは何事・・・?(滝汗)」



















何やら騒がしくて、あたしはふっと目を開ける。
すると目の前には、ゆったりとした黒のタンクトップの露出部分から、
とても素敵な鎖骨(どんな鎖骨だ)が映る。



まぁ、なんとも素敵な鎖骨だこと・・・・ん?



自分の顔の両脇には自分と違う太い腕があって。
自分の身体の上に大きな身体が乗っかっていて。

あたしははっと目を覚まして顔を上げた。

見上げた先には、(血の気が退いたような顔色の)ロッカ。


「・・・・・・・・・・・・・・これは何事?(夢なら覚めないで欲しい・・!<オイ)」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あ・・」



もしかして

いや、もしかしなくとも


あたしってばロッカに押し倒されてる・・?



あたしは問いかけるように見上げれば、ロッカはかぁっと頬を赤く染めてぶんぶんと首を横に振った。
まるで”自分は何もしていない”と言うかのような、そんなジェスチャー。
・・・・・いやもうなんていうか、可愛いんですけど!


「えーと・・(取り合えずこれは夢でもなければあたしの願望が見せた目の錯覚でもない、つまり・・<ブツブツ)」

「ち、違います!ただつまずいて・・」

!起きるな!!」


それぞれの会話が交差した。
その中でも一際強く響いた声にはっと顔を向けて見やれば、リューグがあたし達に向かって
斧を振り下ろそうとしている。

あたしは、思わず自分を呪った。

ぎゃーーーーーーーーーーーーー!!唇奪ったならごめんなさいいいいいいい!!!!
っていうかあたし、眠気に負けてうっかりこの双子と夜を過ごしちゃったってことなの?!
そ、そんな・・!貴重なイベントなのに勿体無い!!(イベントなのかこれ)


けれどもよくよく見れば、リューグはあたしに斧を振り下ろしているわけではなかった。
正確には、あたしの体の上に乗っかっている・・ロッカに向かってのものだった。

ロッカはあたしから素早く離れると転がるように床に降り立ち、あたしは慌てて身体を起こした。


「ちょっとリューグ!今かなり本気だったでしょ!ねぇ?!(泣き笑い)」

「テメエがそんな最低な野郎だとは思わなかったぜ!馬鹿兄貴!!!」


リューグはあたしの言葉を無視してロッカに一喝し。(ロッカが最低な野郎・・?)
今度はあたしに向き直ると、両肩を掴んで顔を覗き込んできた。
ノォ?!今度は何事!!?(滝汗)


「りゅ、リューグ?」

、何ともないか」

「へ?何ともないって・・?」


あたしが思わず、きょとんと彼を見上げれば。
リューグは言うことを躊躇うかのように一つ咳払いをして、微妙に頬を染めながらも、
肩を掴んだままあたしから目線を逸らす。

そして小さく、呟いた。


「だから、その・・兄貴に何もされてないかって、意味だ」


珍しく、はっきりとしない物言い。
リューグにしては本当に珍しい。
彼は何事もストレート、直球タイプだというのに。



っていうか



何されたんだ、あたしよ(き、聞くの怖いかも・・!<ガタガタ)



「と、取り合えず身体に異常はないと思うけどー・・?」

「・・・そうか」


彼がこっそりと、ほっとした、安堵のため息を吐いたのが聞こえた。
あと、わずかながら唇に浮かんだ、小さな笑み。
・・・・彼がなんか可愛く見えるのは気のせいだろうか?(鼻血出すぞ!リューグ!)←女としてはどうかと思うが。

リューグ、可愛いやつめ!とあたしは笑いながらペシペシ頭を叩いてやれば。
彼はむっとした表情に変えて、力づくであたしの頭をベッドに押し戻した。
・・当然、いきなりだったからあたしの悲鳴も色気ない悲鳴が出た。


「むぎゃ?!」

「何ともなかったらそれで良いんだよ」

「だから違うといっただろう、リューグ・・」


ロッカはため息を吐きながら、ずいっとリューグの顔を横に押しやる。(リューグにこんな扱いが出来るのは
彼くらいだと心底思う<最強兄貴伝説)
そのおかげであたしはリューグに抑えつけられた手から解放されて、一気に空気を吸い込んだ。


「はー・・助かった」

さん」


“何ー?”と返事をしながら起きあがったけれど、ロッカの顔を見て、あたしはようやく
これまでのことを思い出した。


あたしは、ロッカに避けられていた        


急に、恐怖心が沸き立った。
思わずリューグの手を掴んで、俯きながらも唇を噛む。



逃げるな


逃げちゃ、だめだ


ロッカに、ちゃんと、理由を聞いて、それから         



(怖い)



友達と仲直りをしたいと、強く望んで。
仲直りをしようと、行動を起こすその寸前の、あの心境とまるきり同じだ。
否定されることが怖くて、けれど踏み出すことが出来なくて・・・・・・・。







”本当に人の心を繋ぐのは、花なんかじゃないのですよ”







あぁ、まさにその通りだ


でもやっぱり、それでも、今でも花にすがりたくなってしまって          



「なにやってんだよ」



ベシ!っと。



リューグに、後頭部をハタかれた。
それに驚いてリューグを見れば、彼はいつもの、仏頂面で。


「さっさと、言いたいことがあるなら言えよ。・・二人で固まってどうすんだ」


・・・・       背中を、押されたような気がした。
トンと、ゆっくりと。

けれど、力強く。



踏み込めるように、押してくれた。




        ロッカ!」


あたしはようやく、今日始めて、意識してロッカを見上げた。

言いたいことがあって。
聞きたいこともあって。


けれど。


次に視界に映ったのは、彼の、あたしへと伸ばされた両腕と、・・・・・少し、泣きそうな顔。




        っ」


強く。
強く、抱きしめられて。
苦しくなるくらいに、抱き込まれて。


その温かさに、いつかのルヴァイドを、イオスをほんの少し思い出して。
思わず、彼の背中にそろりと腕を伸ばせば。



「ごめん」



      言葉が、耳に届いた。
それにやっぱり、あたしはルヴァイド達を思い出す。
初めて、ルヴァイド達のいるあの場所に来た時と、同じ光景を思い出す。

あの時も、苦しいくらいに抱きしめられて      



「ごめんなさい、さん」



また、届いた。



「避けてしまって」

「ロ」

「振り払って・・・・傷つけて、ごめんなさい」


途端に、胸の奥が熱くなった。
なんだかよくわからないけれど、妙にあっさりとしていたものだけれど。





けれども、ロッカが、許してくれたような気がして。





それだけが、酷く、酷く嬉しくてたまらなくて。





「・・・・・・あ、あたしも・・・」


気がつけば、そんな言葉があたしから出た。
彼らに秘密の多いあたしだから、思い当たることが多すぎて、どれを謝ればいいかわからない。


「あたしも、ごめんっ」


でも、言わずにはいられなかった。
謝らなくてはいけないと、本当にそう思った。

ロッカが勝手に怒って、あたしを避けていたけど。

・・・・・・でも、言わずにはいられなかった。


「ごめん、ごめんねロッカ・・あたしっ」

「・・・・・・傷つけた僕を」


ロッカが、あたしの頬を撫でた。
そして覗き込んできて、優しく、笑む。


「・・自分勝手な僕を、許してくれますか?」


自分のことを、自分勝手と言うロッカ。
でもそれは、あたしも同じ。
許して欲しいと望んでいたのも、あたし。


あたしたちは、同じ。


「許すもなにも、あたしだって許されたいよ」



笑ってくれてる

いつもの優しい笑顔で

あたしに笑ってくれてる

いつもの優しい瞳で



「良かった」


ロッカがまた、嬉しそうに笑う。
泣きそうな表情でもなくて、ただ、ただ、嬉しそうに。
あたしもそれに思わず、泣き笑いに近い表情を浮かべれば。


ロッカが、静かに目をふせた。
そして。



「・・・・・・・・・・・・・・・・・(唖然)」

「お詫び、になればいいんですけど」


苦笑しつつも、彼はあたしを見下ろした。
そんなあたしは、左頬を押さえたまま、ただひたすら硬直。




・・今、何しましたか兄貴よ

何か、“ちゅっ”と音がした気がしたんですけど

ってか、ほっぺに柔らかい何かが触れた気がしたんですけど

良いんですか 良いんですか?

このあたしに、そんな事して



押し倒すぞ



「ってか、押し倒さなきゃ女が廃るーーーーーーーーーーーーーー!!!!(突撃)」

「ぅわ!?」


復讐・・寧ろ発作的(治療法ナシ!<だめだろ)にロッカの首抱き付いて、勢いで押し倒す。
ロッカの慌てた声が、リューグの怒鳴る声が耳に入って来たけれど。
あたしは構わずロッカに抱き付く腕に力を込めた。



嬉しい

喧嘩(?)して、仲直り

そんな些細な事が、すごく嬉しい

・・・泣きそうになるほどに



さん?」


ぎゅうっと首に抱きついたまま、あたしは小さく、何度も謝った。

こんな思いをするのは、本当に悲しくて耐えられないって実感したから。
友達と喧嘩しても、仲直りするって事はそう簡単にできないものって知ってるから。
だからその分、本当に嬉しかった。


「・・さんにも事情が・・さんの気持ちがあるんですよね・・」

「?」


小さく呟かれた言葉を、もう一度聞き取ろうと顔を上げれば。
ロッカはあたしの背中に腕を回して、頬をあたしの頭に摺り寄せてきた。
ひいいいいい!!!み、密着ううううううううううう!!!(何を今更)


(ロッカ大胆!!<せ、積極的だわ・・!)

「本当に、ごめんなさい・・・信じて、あげれなくて



ロッカは更にあたしを抱く力を込めるが、あたしは必死に押し返していた。
なんていうか!
なんていうか、今更なんだけども!
やっぱり抱き付かれたら嬉しいけど恥ずかし過ぎる!ギャラリー(リューグ)いるし!!



弟はギャラリー(見物人)扱いか



「ロッカ・・痛っ・・(鼻血でそうー!!<オイ)」

「もう少し、このまま・・」

「そ、そんな・・(ヒーーーーーーーー!このままーーーーーーー!?!??!<滝汗)」


思わず俯いてしまえば。
先ほどから沈黙を保っていたリューグが、ものすごい力であたしの肩を掴んだ。
ギャ!こっちも痛い!!<汗


「い・・」

「・・胃?」←違う

「いい加減に離れやがれ!!!」


リューグはあたしとロッカを引き剥がし、なんと、そのまま勢いであたしを腕の中に抱き込んだ。
今度は赤色にかよ!!(汗)


「リューグ?!(タンクトップって本当に美味しいー!!<逝け)」

「どさくさに紛れて何やってんだよ!」


猫のように毛を逆立てて怒る。
そんな表現が似合っているような様子を露にし、リューグはロッカを睨みつけた。
ロッカはロッカでむっとした表情を見せて・・・・・・・・次には、にこりと微笑んだ。(Bロッカ降臨?!<滝汗)


「何もしていないよ、たださんと仲直りをしていただけだろう?」

「・・っこの野郎・・!上等だ、久しぶりに相手になってやるぜっ!!」

「望むところだ」


ロッカの返事を聞いて、リューグはあたしをドスンっとベッドに放り投げた。
痛いっつーの!(怒)


「ちょ・・?!痛いじゃない!!何す」

「黙ってろ」


リューグは座り込んだまま抗議しようとしたあたしの腕を掴み上げて、ロッカと反対側の頬に
ちゅ、っと軽い音を立てながらキスをしてきて。

あたしは目を丸くしてリューグを見上げた。


「・・・な・・(唖然)」

「テメエも無防備過ぎなんだよ」



あんたまで言うかこの野郎(イオスにも言われた・・)



「少しは男を警戒しやがれ!!」



強引野郎ばかりだからどう警戒せーっちゅーねん



リューグはえらく自分勝手なことを叫び、やはり唖然としているあたしをぱっと手放すと、
ロッカと口喧嘩しながら部屋を出ていった。
しかも、それぞれ武器を持って。

・・・・・・・・・・・・あたしはそれを呆然と見送って、ベッドの上で両頬を抑えた。
頬が熱い。
彼らの唇が触れた感触が、まだ鮮明に残っている。

・・・・・どうしようもなくなって、思わずポツリと呟いた。


「・・本当に・・どーやって警戒しろっつーのよ」




最終的には、”キス魔がここにもいるんか!”と両頬を抑えながら、あたしは叫んだのだった。



キス魔、増殖中(嫌な言い方だな)





















あたしはその後フラフラしながら部屋に戻って、ベッドの上に置かれてある紙袋を覗き込む。
その中には赤い服とメモが入ってあった。
あまり文字にも詳しくないので、通りがかりのレシィにそれを読んでもらう。



さんへ  アメルが服を買ってきてくれました。後で着て見てねvv  トリスより!』



「服だそうですよ、ご主人様」

「おぉ、シンプルで良いな〜vv」


レシィにお礼を言って別れて、部屋に戻ると鍵をしめて、着替えを始めた。
今回着ていた服はちゃんとタンスにしまって、畳んで置く。

まず、スパッツを履いて上から赤い服を着る。
更にその上から小さな黒いベストを羽織って、赤い手袋をはめる。
柔らかい素材で作られたブーツは足を痛めないようになっていて、長時間歩いても平気そうだ。

長時間、歩ける。
それはまさに、これからのことを考えると本当にありがたい。


(よっし、これから森に行くんだよねー・・・・・・・・・確か、ルウと会える)


あたしはそこまで考えて、あぁそういえばと、慌てて外へ出て行った。
出て行く途中、道場で激しい、気合のこもった掛け声が聞こえるのだがあえて無視。
ロッカとも無事仲直りしたし、双子のファイトまで付き合ってられないよ!

彼らの声に呆れながらも、あたしは空を仰いだ。



「良い天気だなー」






















「それじゃ、さん準備できた?」

「オッケーよー♪」


とうとう、出発の時間だ。
それぞれが道場の戸締り、火の元の点検、忘れ物のチェックをしている間に、
あたしはトリスににかっと笑って荷物を持って門を出た。
あー・・、しかし本当にいい天気だ。


トリスがふと、あたしの手元に視線を集中させていることに気がついて、
あたしが”これ?”と聞けば、トリスは”うん”と頷いた。
彼女が気になっているらしいのは、色々と入っている鞄とは別の、小さい、可愛らしい箱。
よくケーキ屋などでもらえる、ケーキの入った箱だ。

トリスは不思議そうに首をかしげた。


「それ、何ですか?」

「んふふふ・秘密デスvvv」



これは秘密兵器なのよ!!



ひみつへいき???



ー!トリスー!行くぞー!!」


少し離れた向こうから、マグナがあたし達の名前を呼んだ。
それに返事をして、あたし達一行はファナンの外へと出発する。






・・・・・・・・・そうしてこうして、あたし達はファナンを出発して、アメルの祖母がいるらしい森へ向かった。
とある理由から、ネスは森に行くことを猛反対していたけど・・・・・結局はこうしてついてきている。
・・まぁ、ストーリーには逆らえないのよねー・・(遠目)


          彼は、森の別名を知っていた。
これからあたしたちが向かう森の別名、それは<禁忌の森>。
そこには蒼の派閥の一部にしか知られていない、特別の秘密があるのだ。

ネスがそこへ向かうのを酷く否定するのは、その森の深き場所に隠されているものが原因。

森の奥深い、深いその場所にあるもの。
一つは、多くの数の悪魔達。
二つは、過去に栄華を極めていた、2つの一族の隠された罪の象徴ともいえる遺跡。
三つは、トリスとマグナの血に関する秘密、そしてネスの本当の姿の秘密・・色々と、ある。


彼は、恐れているのだ。
普通の人間ではない身体が、マグナ達に知られてしまうこと。
過去に栄華を極めた一族が犯した、裏切りの罪が知られてしまうこと。


・・・・・・・・・・彼は、それを何よりも、恐れている。


(・・ネスって本当、苦労性というかなんというか)


あたしは苦笑しながら、不機嫌そうに、むっつりと押し黙っているネスの肩を叩く。


「まぁまぁネス、そんなに怒らなくても・・ね?」

「僕は今でも反対だ」

「理由もいわずに反対論が通ると思ってるの?」

「・・・・・・・君は、知らないからだ」


苛立ったような、声音。
ネスがあたしを睨むように視線をぶつけて、彼は続けた。


「君は、知らないからだ。
何も知らなくて、何も恐れる必要なんてないからそんなことが言える」

「・・・・・・・ネス」

「僕がこの身体を知られることを何年も恐れていたさ。
だがな、それよりももっと恐ろしいと思うことがあの森にはあるんだ」


・・・・・・・・知ってる・・・なんて、もちろん口には出さず。


あたしはただ、彼に笑った。


「うん、知らない」

「・・・・」


ネスは笑いながら先を歩くあたしに、眉を潜める。
あたしはあたしで、ただ、つま先で小石を軽く蹴ってやった。



中にある事実。
それは知ってるけど・・・・でも、<怖さ>は知らない



「あたしは知らない。
ネスは何も言ってくれないもの、・・・・・そんなの、誰にもわかるわけないじゃん?」



何も伝えないままで



知ってほしいと願うのは、ずるいことだ



何も伝えないままは



誰にも、届かないのだと



・・・・・・・・あたしは、知っているつもり




あたしも、ずるい人間だから




「でも、ネスもずるいね」

「・・それは」


俯いてしまったネスを見て、あたしはあーあー・・、とこめかみを抑えた。
真面目なネスだから、その分考え込んで自分を追い詰めるようだ。

だから、たまには誰かが背中を押して、考え込むことを止めなくてやらなくてはいけない。


あたしはドン!っと背中を押してやった。
急な衝撃に、ネスはあっさりと地面にコケそうになる。
もういっそコケてしまえ!(鬼か)


「何するんだ!!!(こける!)」

「ごめんごめん。
でもさ、もうファナン出ちゃったんだし、今更とやかく言ってもしょうがないでしょ?」


ネスの背中をグイグイ押して進むあたしに、ネスはこっそりとため息を吐くのを目撃。
とうとう、諦めがついたらしい。
これで少しは大丈夫かな?ってか、大丈夫であってくれ。


「・・僕は何があっても知らないからな」

「あ、小屋発見!ネス、行くわよー!!」


ネスを放置して駆け出すあたしの後に、ネスはレシィと一緒に続く。
レシィも走るあたしを追いかけようとするが、ネスに首根っこを掴まれて引きとめられた。

掴まれた状態が状態なだけに、レシィの表情は一気に泣き顔に変わる。



頑張れ、子羊



「ね、ネスティさん?(ぼ、僕・・また何かしましたか?!<汗)」

「・・レシィ、レオルドと一緒にを守ってくれ」

「え」

「・・・・・・・・・・この先、何があるかはわからないからな」



真剣な瞳での背中を見送るネスに。


レシィはただ頷く事しか出来なかった。




















森の、少し奥に佇んでいるのは一軒家。
少々年代を感じる建物で、森に溶け込むような落ち着いた雰囲気が漂っている。

そんな中で、トリスが大きく挨拶。


「こんにちわー!」


小屋に向かって挨拶に、小屋の中から何の反応も示されなかった。
仲間達は一斉に首を傾げる。


「ねえねえトリス、誰もいないじゃない?」

「でもミニス、さっきまで森を歩いてきたけどこの小屋しか見つからなかったんだよ?」


皆は最初、村があるのかと思っていた。
けれどそこには村もなく、ただただ不思議な空気が漂う森が広がっているだけで、
ようやく見つけたのはこの一軒家だけなのだ。
・・・・・・アメルの祖母がいるとすれば、ここしかいないと誰もが思っている。


「こんにちはー!・・すみませーん!」


再度の挨拶にも、応答はなかった。
それにやはり、トリスはミニスと一緒に首を傾げた。
アメルは心配そうに、胸の上で手を組んで成り行きを見守っている。

一方、あたしは皆から少し離れた場所で、森の奥を見つめているバルレルを発見した。
その顔はしかめっ面、・・・・・彼が、何かが気に食わないときの顔だ。

あたしはバルレルに話しかける。


「バルっち、どしたの?」

「・・この空気、何だか妙に綺麗過ぎる」

「綺麗?」

「ああ・・何かあるぜ、この森は」

「んー?淀んでいるんじゃなくて・・・・・・綺麗??」


“悪魔が封印されているなら淀んでいるんじゃないのかなー?”と考えつつ、
あたしはバルレルの横顔をぼんやりと見つめる。

ふと、その一瞬。
彼の横顔がぼやけて、別の顔が映った。


       え?)


あたしは目をこすってもう一度、バルレルを見る。
でも今度は何もぼやけず、別の何かが映るなんてことはなかった。

不思議な現象に、あたしは目を丸くした。


(・・気のせいかな・・?・・一瞬・・・一瞬、だけど)



バルレルの横顔が

大人のバルレルに見えた



あたしがじーっと見つめてたら、バルレルは不機嫌そうな表情を見せてあたしを怒鳴る。


「何だよニンゲン、ジロジロ見んな!」

「(ぎゃ、逆ギレ?!)あーはいはい、悪かったってば」


適当にあしらいつつもちょっと悔しかったので、彼の頬をむにーっと摘まんで引っ張ってやった。
そうすれば何とも気持ちいいくらいに、伸びる伸びる。
ビバ、子ども顔!と心の中で拳握っちゃうよ!(キラキラ)


「はなひぇ!」

「あんたってば本当に、最高の伸びしてるわねー(癒されるーvv)」

「くほー!」


悔しがるバルレル。
そんな彼にとてつもなく癒されるあたし。(最高・・!)

しかしそんなあたし達の間に、一つの声が耳に届いた。



        アフラーン一族の名において・・」



仲間内にはいない、その言葉と声に。
あたしも、バルレルも、小屋に声をかけ続けていたトリス達も皆、扉に視線を集中させた。


まず目に入ったのは、艶やかな、真っ直ぐに流れている黒髪。
そして滅多にいないであろうやや黒い肌色に、どこかの民族衣装を思わせる、露出の多い服。

けれど瞳は、とても真剣な色を帯びている。


周りの仲間が驚いている中、”っていうか踊り子ルック最高・・!”と一人で萌えている間に、
少女は構わず詠唱を続けた。


「誇り高き剣を持ちて、悪魔達を排除せよ!・・シャインセイバー!!」

(いきなりそれかーーーーーーーーーー!!!!!!!!<Noーーー!!)


あたしは逃げるのも忘れて思わず頭を抱えるが、急に突き飛ばされて地面に腰を打った。
痛む腰にうめきながらも、耳には大きな爆音が響いて来て、さらに酷く痛む。
あうー・・これが生の爆発音・・・(耳にビリビリと残るー!)


「うそぉ?!外した?!あんなに至近距離で撃ったのに・・」


逆にあっちが驚いたみたいだ。
腰の痛みに耐えつつもその声にガバッと身体を起こせば、あたしを突き飛ばしてくれた人物が、
視界に入った。
それは忌々しそうに舌打ちをしている、バルレル。


「バル?!」

「ニンゲン!お前は下がってろ!邪魔だからな!!」


”何で邪魔?”と思えば、少女が召喚したのか、ポワソやテテなどの色違いの召喚獣が、
家の周りをうようよといる。(か、可愛い・・!<オイ)


「ぎゃー!可愛いあれ!!」

「アホだろお前・・さっさとそのへんに隠れてろ!」


バルレルは呆れながらも叫ぶと、片手に持って、戦場と化した小屋に駆け出した。
あたしは呆然とそれを見送るが、すぐに我に返ってバルレルの後を追って、少女・・ルウの元まで走り出す。

手には大事に抱えていた荷物も一緒に持って行って。


さん、来ちゃだめだよ!」

「トリス、大丈夫よ!あたしに考えが」

!トリス!!危ない!!」


マグナの叫ぶ声に、あたしとトリスが振り向けば。
迫り来るのは、ルウが召喚したシャインセイバーの剣先だった。

他のものにも眼もくれずに(剣に目なんてないけど!)、あたし達に真っ直ぐに、突進してきていた。


さん危ない!」


トリスは躊躇せず、素早くあたしの前に庇うように立ちふさがった。
小柄な身体が、あたしの視界から剣の姿を遮る。


「トリス!」


剣は止まらない。
このままではトリスが、あの鋭い剣先に          
















”死ぬのは、嫌だ・・・!”













            え?











突然の、言葉。



それに驚いている間もなく、それは続く。











”俺は、生きたいんだっ・・・!”












            あぁ、これは












これはずっと、ずっと昔の、哀れな男の言葉











金色の髪の天使に、そう呟いて、嘆き、彼は・・・涙して          ・・














急に、胸の奥が熱くなった。
(それは泣きたくなる感覚に似ている)



名前を、叫ばずにはいられなかった。
(それは誰の名前か自分でもわからない)



あたしは、血が滲むほど唇を噛み締めて。
(そうでもしなければ身体が動いてくれない気がして)



立ち上がって。
(そうすれば、胸の奥の熱さは勢いを増した)




腕を伸ばして。
(まるで、伸ばせなかった・・届かなかった瞬間があったかのように、精一杯に)





トリスの肩を掴んで。







無我夢中で、あたしの後ろへと引っ張った。








        そうすれば、あたしの視界に再び、あの鋭い剣先。




さ」




トリスが



あたしを呼んだ、その瞬間。








”俺は、生きたいんだよ・・っ・・”









             誰かの願いと、嫌な、音。
それが心に、耳に、身体に重く響いて聞こえた。




一瞬、思考が止まった。
何も考えられなくて、感じるのは、ただの熱。

わき腹に、熱が走った。
火の熱でもなくて、そういうものとはまた違った、熱。
次いで、ぬるりとした、感触。


触れれば、あたしのわき腹が、濡れている。


鉄錆びた匂いがあたしの鼻についた。



シャインセイバーの剣が、あたしの脇腹を薙いだのだ。



         っ・・・」




足に力が入らなくなって、鋭い痛みに苛まれて、ぐらりと地面に倒れそうになれば。

トリスの、叫ぶ声が聞こえた。
レシィの声も、バルレルの声も。
いつもはあまり喋らないハサハの叫ぶ声も、レオルドの淡々とした声も。

たくさんの声が耳に入って。

でも掌に流れ落ちる水のように、零れるようにすり抜ける。


目を閉じそうになった瞬間に映ったのは。






青い顔をして口を抑えた、ルウだった                             

























「で、あの女はどこだ」

「・・・落ち着けよバノッサ・・」


ハヤトは、バノッサにカツアゲよろしくと言わんばかりな体勢・・もとい、胸倉を掴み上げられていた。
カツアゲはされたことはないが、気分的には多分一緒だろう。


そんな関係ない事を考えながらも、ハヤトは必死にバノッサをなだめていた。
けれども返ってくるのは、なんとも乱暴な言葉の数々。
どうやらよほど、ストレスがたまっているらしい。


・・・・自分はどうやら、凶の星の下に生まれてきたんじゃないかと思ってしまう。
それほど運が悪いように思えてきた。



頑張れハヤト



バノッサはイライラした様子でハヤトを睨んでいたが、引きつった顔を見せているハヤトに、
怒る気もうせたのか、舌打ちしながらも掴んでいた胸倉を解放する。


「デタラメ抜かしやがったら召喚術で殺してやる」

「(死刑宣告?!<滝汗)」

「あはは、何言ってるのよ!バノッぴー♪(ゴスっ!)


ナツミはバレーボールにアタックをかますがごとくに、バノッサの頭にサモナイト石を投げた。
そして彼の後頭部に、なんともいえないくらいに見事なまでに、サモナイト石がぶち当たった。
(俺、別の意味で死刑決定・・?!byハヤト)


ハヤトは自分の命の危険を感じつつ、打撃音と彼の悲鳴がミックスされた、
奇妙・・・なそれでいて痛々しい効果音を、明後日の方向に目を向けて聞き流していた。



頑張れ、バノッサ



床のリビングに崩れ落ちるバノッサの向こうで、ナツミは彼を笑顔で見下ろす。


「だってあたし達は誓約者なのよ?
バノッぴーの召喚術だったらあっさりと消せるって!ね、トウヤ?」

「・・理論的にはそうなるな(ため息)」


トウヤが、哀れむようにバノッサに視線を向ける。
それにつられてハヤトも哀れむように彼を見て。
・・・・・床に沈んだバノッサを放ってその場にいた仲間に向き直った。


「取り合えず、俺が感じたのは昨日の・・夕食が食べ終わってから。
ものファナンの方で、ものすごく・・妙な、違和感を感じたんだ」



違和感


それは、遠くにいても、近くにいても、まるですぐそこにいるかのような、



そんな、奇妙な感覚



「ファナンにあの子が・・・・・・・・・・・っ?!」


そこまで言って、ハヤトは脇腹を抱えて床に膝をついた。
そして顔を歪めて、何度も荒い呼吸を繰り返し、唇を噛み締める。

それはトウヤとナツミ、アヤも一緒で。

その異常な様子にギブソンとミモザは駆けつけて、ハヤト達の背中をさすった。


「アヤ、しっかりするんだ」

「ギブソンさん・・・・っつ・・何だか・・痛みが・・」

「痛み?」

「はい・・脇腹に・・一瞬だけ・・熱い痛みが走って・・今はもう大丈夫です」


アヤはほぅっと息を吐いて、眉を歪める。
多少はまだ,痛むようだ。

ソル達も駆けつけて、キールはハヤトの容態を見る。


「っキール」

「・・そうだな、怪我はないが・・だけどハヤトの言っている少女に関係しているのかも知れない」


誓約者四人の表情が強張った。
先ほどの受けた痛みは明かに、斬られたような痛み。
何度も戦った経験から味わったこともあるので、それは確かだ。

それが自分たちに伝わったと言うことは。
          探している少女の身に何かがあったと言うこと。


「っ・・違う」


トウヤが、脇腹を抑えながらぽつりと呟いた。
それにミモザは眉をひそめて、彼の言葉に耳を傾ける。


「ファナンじゃ、ない」

「なんですって・・?」

「・・ファナンより、少し北に言った場所・・・クラレット、地図を」

「は、はい・・どうぞ」


トウヤはクラレットから地図を受け取ると、近くにあった鉛筆で地図に何かを書き込む。
カシスがそれを覗きこむと、今度は赤いペンを取り出して森に大きく丸をした。


「ここに、いる」


きっぱりと、彼はそう告げた。
ギブソンとミモザがその地図を見れば、記されたその場所に思わず、
互いに顔を見合わせた。


「・・ここは、まさか・・あの森?」

「ギブソン達はここを知ってるの?・・ただの森みたいだけど・・」


ナツミも地図を覗き込んで、そう言った。
しかし地図には確かに、名前も、何も載っていないのだ。
普通に地図を広げてみても、強い印象は何ら残らないだろう。


「この森のことは、部外者には絶対言ってはいけないことだけど・・でも、
誓約者の貴方達なら構わないかも。・・・・・・・ハヤト、この森は<禁忌の森>と呼ばれている、
非常に危険な森なの」

「・・<禁忌の森>・・?」

「そこに遠い昔に封じられた、様々な秘密が隠された森で・・」


ミモザの言葉に耳を傾けている隙に、バノッサはカシスの手から地図を引っ手繰る。
カシスがバノッサに抗議する前に、バノッサはさっさとギブソン邸から抜け出して、
外へと出るとサモナイト石を掲げ、レヴァティーンを召喚した。

ものすごい勢いの風が家々の木々を揺らし、白い巨体は空に姿を現した。
周りで人々が悲鳴をあげるなか、彼はその背に乗り込んで浮上する。


「バノッサ!!」


ハヤトの制止は、無意味に終わった。
彼のレヴァティーンは一度旋回し、そのままゼラムの出て行ってしまったのだ。


「〜あぁもう!バノッサはせっかちだな!」


ハヤト達も後を追おうとする。
しかしそれを止めようとするのはミモザだ。


「ハヤト!まだ話があるわ!せめてこれを聞いて言ってくれなくちゃ、あなた達にも危険が・・!」

「ごめんミモザ!あたし達も行くわ!        レヴァティーン!」


ナツミの声に、新しいレヴァティ−ンがその姿を現わした。
神々しくも見えるその巨体、だがここまでの大きさの召喚獣をあまり見たことがない住民達は、
恐怖に陥れられた。
ハヤトは“時と場所を考えような・・”とツッコミをいれながらも、ナツミの召喚したレヴァティーンに飛び乗る。


「レヴァちゃん!バノッサの後を追って!!」

「ナツミ!ちょ、待って、俺、まだちゃんと乗り込んでな      



「お待ちください」



凛とした、声。
それに一同はぴたりと動きをとめて、声の主を見下ろせば。


「あー!久しぶりじゃない!!」


ナツミは笑顔で、彼らに手を振った。
ミモザもギブソンも、彼らの突然の登場にやや唖然としつつも、嬉しそうに顔を綻ばせた。

その姿を確認したアヤも、嬉しそうに手をポンっと叩いた。


「まぁ、皆さん・・。元気そうで良かったです」


アヤもにっこりと微笑んで、下にいる者達に手を振った。
その者達の中にいた少女は、アヤ達を見上げて声を出す。


「皆さん、私達も森に連れていって下さい」


編みこまれている艶やかな黒髪が、シルターン特有の赤い袴の裾が風になびく。
どこか神聖なイメージを抱かせる、巫女・・・彼女の名は、カイナ。
そんな彼女の隣りに立ったのは、小柄な少年と、付き添うように少年の隣には、
紅の身体を持った人型の機体。


「我ラモソノ森ニ用ガアルノダ」

「しかも急ぎでね、お姉さん!」

「えぇ?!カイナ!エルジン!エスガルドまで・・どうしたの?!」


カイナはナツミににこりと微笑んだ後、次には真剣な表情を浮かべ、
彼女達誓約者を見渡した。

それがただならぬ事体だという事を物語る。



「今は話している時間がありません。
           どうか私達も・・貴方がたが向かう森に連れていって下さい」














NEXT



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後書き



第46話をお届けさせて頂きました


ここまで来て、サモンのゲームだとやっと10話です。
お、恐ろしいほどまでの進行具合・・!なんて遅いのかしら・・はわわ・・!

ようやくロッカと仲直りをして、進みました。
もうちょっと、彼の心情を入れてみたかったかなと思ったり・・花、無意味になっちゃったよ・・!(ヒー!)

途中で、ヒロインの中に浮かんだ声。
あれはサモンナイトドラマCD<あの日のカケラ>で登場した、彼の声です。
セリフを忘れてしまったので、半分はかなりアレなのですが・・(何)

シャインセイバーという召喚術。
あれは剣や槍などがいくつも同時に召喚されて、相手を貫く術だったような気がするのですが、
そんなものに串刺しにされれば完璧に死んでしまうので、今回は剣のみで。(汗)

次回でようやく、誓約者たちと出会えるかな?
・・わ、忘れた・・!(オイ)

それではここまで読んでくださってありがとうございました。(ぺこり)


2002.3.2

2004/7/3大幅修正アップ。