人の心は脆いけれど それでも生きていくもので 第43夜 あたしはふっと空を見上げた。 青空だったはずの青は赤みを帯び始め、浮かぶ太陽は先ほどよりも少し傾いて、 もうすぐ夕刻だということを伝えようとしている。 暮れていく世界が”時間がないぞ”とはやし立てているように物語っているようで、 あたしは思わず頭を抱えて叫んだ。 「あー、早く行かなくちゃ花が手に入らなくなるー!!(それだけは勘弁!)」 「うん!それじゃちょっと急ごう!!」 あたしはハサハの手を握って、先走るトリスの後を追う。 そうしてこうして辿り着いたのは、ミニスとケルマが決闘をしたあの薄暗い洞窟だ。 彼女達の決闘話を思い出して、花が咲いている場所への道が、ケルマの暴走に 半壊してしまって潰れているんじゃないかと心配したけれど、さらに奥への道があると 吟遊詩人のレイムが言っていたので、肝心の場所が潰れているというその可能性はないようだ。 (でも入り口が潰れていてもどうかと思うが) ・・・急ぐあたし達が探しているのは、<蒼の雫>と呼ばれる花。 その花は不思議な力があって、不仲になった人たちの心を和やかにしてくれるという、 小さな伝説がファナンの人たちに囁かれているらしいのだ。 (まぁ信じていない人が多いのもあるし、花が咲く場所も結構危険らしいから誰も見たことがないようだ) それは、日付が変わる時刻と同時に花を咲かせる。 そして5分経ってしまえば、すぐにまた蕾に戻ってしまうらしい。 ・・・「どんな生態だよ」とツッコみたい気持ちがいっぱいあるのだが、 摩訶不思議ワールド・リィンバウムだから、そのツッコみも無意味なような気がしたので、 あえて何も言わないでおく。 しかしすぐに枯れてしまうものを、どうやって手に入れるというのか? それは特殊な水晶玉に花を吸い込ませて(吸い込むってすごいよね・・!)おけば、 花は蕾に戻ることも、枯れることもなくなるようだ。 そんなこんなで色々と準備をしたり、情報を集めたりしてきたあたしだったけれど。 半壊しかけていると聞かされていた洞窟が想像以上に崩れてしまっているのを見た時は、 なんていうかもう、呆然と見上げる他なかった。 い、一体どんなキレかたをしたのよ・・ケルマ・・!!(召喚師ってすげぇっ・・!<滝汗) 「・・普通に考えて、この状態で中に入るだなんてちょっと無謀じゃねえか?」 「そんなことないわよレナード!・・(半壊した洞窟を見上げて)・・こ、根性で掘り起こせば・・!」 根性あっても無理だろ 「でもそれじゃ時間がかかっちゃうわよ?」 「うーん・・ミニスの言うとおり、時間はかかっちゃうね・・って、あれ?レイムさんは?」 トリスが、レイムの姿がないことに気がついた。 それにあたしも”そういえば・・”と辺りを見回しても、どこにもその姿がない。 「私はこっちにいますよ」 そう言いながら、レイムが現れた。 彼は崩れてしまった洞窟の脇あたりにいて、微笑みながら指を指す先には 人が2人分くらい入れそうな、穴。 「崩れかけているようですが、いきなり全部が崩れるということもないようですし、 ここから入れますよ」 「よし、それじゃ先に俺様が入ろう。 女子供を先に入れるわけにはいかねえからな」 レナードが穴の入り口に手をかけて、あっという間に中へと姿を消した。(身軽だねレナード) その後にミニスもレナードに続き、トリスとハサハも穴へ潜っていく。 レイムがあたしが先に入ると思っているのかあたしに向き直るけれど、あたしはレイムの前に立って。 「ちょっと待って、レイム」 「何ですか?(笑顔)」 あたしの問いかけに、奴はえらく眩い笑顔を見せる。 その歯はキラリと輝いて、違う意味であたしに眩暈を起こさせた。 頬を引きつらせながらも取り合えず冷静に、怒らないようにしながらレイムの胸に手を当てて、押し留める。 「・・・あんたは帰れ(命令口調)」 「・・その命令形な所が堪らなく甘美な響きですが取り合えずお断ります」 根っからのマゾだな、アンタ(退) レイムは、胸に手を当てているあたしの手をそっと包み込み、心配そうな表情を見せる。 「私は、貴女の側に居たいのです」 「(うっ・・マトモなら美形なのに・・)いやいなくていいからその前に手を離せこの変態マゾ男」 あたしがギロリと睨み上げるとレイムはそっと手を撫でて来て。 (無駄に)熱い瞳であたしを見下ろして呟いた。 「・・美味しそうな手触りですね・・vv(恍惚)」 「(耐えろ!耐えろあたし!)・・・・・・・・あんたは、先に帰って」 真面目な表情でそう告げるあたしに、レイムが不思議そうな表情を見せた。(手は繋ぎっぱなしだったが) そして微笑んで、首を振る。 「帰りませんよ・・でも、何故ですか?」 「・・・・花の場所さえ、教えてくれればいいの」 「・・・・」 「危険だって、言ってた。何があるか起こるかわからない。 でも でも、レイムは あたしのためじゃなくて、あたしに重ねている人の為に動いている 彼には 大切な人がいる 「無理して、付き合わなくても大丈夫。 トリス達だってあんたが酷い奴だなんて言わないわよ」 「さん・・」 「花の場所だけ教えてくれればいい・・・教えてくれるなら、だけどね」 ”取り合えず先に、手ぇ離して”と無理矢理振りほどいてから、あたしはにっと笑った。 レイムはただじっとあたしを見下ろしていて・・・・・やはり、笑む。 温かに。 「 「は?」 「さんが私の為に身を案じてくださるのはものすごく嬉しいですが、 一度案内を引き受けたからには、やはり最後までお供いたしますよ」 「・・・・・・・(この男はこの妙な言い回しさえなかったら花マルなんだけどなぁ・・)」 「・・・・私は確かに、さんを別の誰かに重ねているかもしれません。 いえ、重ねていたのでしょう レイムがそっと、あたしの両手を取った。 あたしはあたしで振り払わずに、ただ、レイムの見せる温かな表情をぼんやりと見つめて。 「今、ここで、さんの力になりたいと思っていることは確かです」 「・・・ふーん・・」 素っ気無い返事が出た。 何だか、顔がまともに上げられない。 あんな表情で、あんなこと言われたら、誰だって気恥ずかしくなる。 「・・それじゃ、手伝ってもらうわ」 「はい、頑張りますよ。・・その前に」 そう言って、レイムは身体を傾かせて。 あたしの頬に、一つのキス。 「・・・(硬直)」 「あぁ、やはりさんへのキスは思わず気合が入りますね!それでは次は唇にでも」 「・・おい、お前さん大丈夫か」 レナード、トリス、ミニス、ハサハのそれぞれが、穴から落ちて来た(落とされた)レイムを見下ろす。 レイムの後から降りてきたあたしは彼を冷ややかに見下ろして、”殺しても死なないわよ”と呟いた。 レナードはそんなあたし達に呆れたのか、“フー”っと煙草の煙を吐き出して。 「痴話喧嘩もほどほどにしろよ、」 「・・ちわげんかって、なに・・?」 あたしはレナードの発言を無視しつつ(ハサハもそんなこと知らなくていいのよ・・っていうか どこをどう見て痴話喧嘩よ・・)、先に進んだ。 最初はあちこちの壁に亀裂が入っていたけれど、奥に奥にと進むうち、亀裂が入っている壁の 代わりに、無傷な壁に代わり始めた。 どうやら、レイムが言っていた”奥の道”に入ったらしい。 (・・・・?) ”奥の道”に入ったと理解した瞬間、違和感を感じた。 洞窟内が、先ほどよりも妙に明るい。 さらには波の音も、かすかに聴こえてくる。 あたしは一度立ち止まり、洞窟を見回した。 壁が、薄く、青く輝いていた。 一瞬目の錯覚かと思って直に触ってみれば、ひんやりとしていて、そして青に発光している壁だ。 発光、と言ってもそんなに強く光っているわけでもない。 自分の足元が申し訳程度に見える、その程度の光だ。 (・・青い・・) 淡く、青く輝いている壁。 申し訳程度の光とはいえ、薄い青が地面を照らしてくれているおかげで、 足元を確認しながら進む事が出来るのは嬉しい。 でもこの蒼く光る壁がどうして光っているか知らない。 それ以前に壁が蒼く光る事なんて自分の世界ではあり得なくて、興味もふつふつと涌き出る。 だけどトリス達もこういう現象は初めてなのか、物珍しそうに進んで行っている。 そして、洞窟内なのに波の音・・ということは、どこかが海に繋がっているようだ。 目を伏せて耳をすませれば、確かに、間違いなく潮騒の音が耳に届く。 (・・海?) さらに奥へ進めば、急に広い空間に出た。 段の浅い下る細い階段があるのだけれど、その階段を下り終わった地点のすぐ側に、海。 海水がどこから流れてきているのかと目で辿れば、辿るにつれて海が明るい色へと増していくのがわかる。 どうやら光が零れているあたりに、穴が開いているらしい。 「・・奥は、海に繋がってるんだ」 「、滑りやすくなってるから気をつけろ」 段の浅い階段を降りようとしたあたしに、声がかかった。 あたしは慌てて足を退いて階段を見ると、妙にぬかるんでいるのがわかる。 「海が近いせいか、足元はコケで滑りやすいぞ」 「うわっと・・本当に滑るー・・(汗)」 彼は足場をしっかりと確かめるとあたしの手を取って、転ばないように支えてくれた。 一段、一段、丁寧に、慎重に。(トリス達は後から降りる予定なので、待っている) おぉ・・!紳士的だね!レナード!(ちょっとトキめくぞ・・!<落ち着け) あたしは何とか平坦な道に出るとレナードの手を離した。 「少し待ってな、先に進むんじゃないぞ?何かあったら大変だからな」 「ありがと、ここで待ってるわ」 レナードが器用に滑りやすい階段を登っていくと、ミニスの手を取ってゆっくりと降りてくる。 あたしはそれを見届けつつ、海を眺めた。 綺麗な青色の海。 白い飛沫が青の壁を濡らし、緩やかに音を立てている。 ぼんやりと眺めていたら、青の色からロッカが浮かび上がってきた。 (・・ロッカ・・) 何に、怒ってる? あたし、あなたに何かしたかな? (あんなロッカ、初めて・・・) 冷たい感じ。 いや、本気で怒ってて、その怒りが通り抜けて、逆にものすごく冷めた感じ。 軽蔑されてるような、もうお前は仲間なんかじゃないって言われてるような気になる。 (ロッカ、お願い、あたし、あなたに嫌われたくない・・) 仲良くしたい。 みんなと、笑って過ごしたい。 そう思うのは、だめなのだろうか? あたしには、そう思う権利はないのだろうか? ・・デグレア軍を友達と思っている、あたしには。 (・・でも、嫌、嫌だ。どっちとも、一緒にいたい) マグナ達とも、ルヴァイド達とも。 みんなと、みんなと一緒にいたい。 一緒に、過ごしたい。 そう願う権利は、望みすら、あたしは持ってはいけないのだろうか。 全てを知っている、あたしには (やっぱり、だめ・・なのかな・・) あたしは、やっぱり望んではいけないのだろうか。 願うことも、祈ることも、だめなのだろうか。 微妙に悲しくなって来て、思わず顔を俯かせた。 潮騒の音が、物悲しく聴こえてくる。 (・・あたしは 「さん?」 後ろを振り返ると、ミニス達よりも早くレイムが一人で、さっさと降りてきた。 軽々と、銀の髪を揺らしながら何ともないような表情をしながら。 あたしが苦労してきた道を、こいつはあっさりと降りて来て。(そんな服着てるくせに・・!) 息を乱さずににこりと笑いかけてきた。 「さん、酷いですよ?恋人を置いていくなんてあんまりじゃないですか?」 やめて。 苛々する。 今は、そんな軽口を聞いていられる心境じゃない。 「・・っあんたは恋人じゃないって何回言ったらわかるのよ!!」 「一生わかりませんvv」 飄々と答えるレイムにあたしは何だか酷く苛立ってきた。 こんな馬鹿に構ってる暇なんてないのに・・(怒) 「・・あたし、先に行く!」 「ですがさん、レナードさんはここで待てと・・」 「あんたと一緒に居るより断然(貞操が)安全だわ!それじゃあんたはそこで待ってなさいよ!」 あたしはレイムに背を向けてズカズカと歩き出す しかし胸の内は後悔でいっぱいだ。 何で、レイムに八つ当たりなんかしてるんだろう。 誰かに当たってしょうがないのに、これはあたしの我が侭が元なのに。 けれどどうにも腹の虫が納まらない。 ぐあー!あたしって最悪ー!(あぁもう謝りに戻れない自分が憎い!) 「っさん!!」 「何よ?!邪魔しな ひたり。 冷たい、感触に。 ・・・・足が、掴まれた。 何か、ねっとりとした、そんなモノに (・・え 見下ろすと、目が合った。 青い、瞳。 j海面からあたしの足を掴んでいるのは、白くて細い、手。 見たことがある、これは召喚獣の (ローレライ!?) 理解した瞬間に、ローレライが冷たく笑んで。 細い腕からは信じられないくらいのものすごい力で、海へと引きずり込まれた。 「 体が、一気に海へと沈みこんだ。 視界も一気に沈んで、海の中へと変わる。 足元が海底へと吸い込まれて、身体が冷たい水に体温を奪われていく。 (・・・っ・・!) はぐれ、召喚獣だ。 陸にはぐれ召喚獣がいるのなら、海にいたっておかしくない。 どうにか掴まれている足を自由にしようとローレライの指を引き離そうとするけれど、 混乱と、想像以上の海の冷たさと、息苦しさに上手く行かない。 しかもローレライは海に属するモノだから、あっという間に海底まであたしを招いてしまった。 (・・このっ・・) ローレライが、槍を取り出した。 どうにか、掴まれている手から解放されようと抵抗するけれど、海の中では動きも鈍い。 さらにはゴホッと、酸素が口から零れて行った。 息が、苦しい。 苦しい、苦しくて頭が、働くなる。 (・・死・・・ぬ 諦めに近い心境で、顔を上げた。 そうすれば少し向こうから、誰かが飛び込んできたのか、飛沫が、水泡が激しく立つ。 (・・?) 銀だ。 長い、長くて、綺麗な、銀の そこで、あたしの意識は途切れた。 夕暮れが、迫る。 ロッカはそれを、砂浜の岩場に座りながらぼんやりと眺めていた。 世界が赤から夜に染まりかけるのを、彼は見届けていた。 頭の中にあるのは、やはりの事。 「・・・はぁ」 自分の心がわからない 自分の気持ちがわからない そんな板ばさみの状態が、酷く痛くて、とてもつらい ロッカはごろりを仰向けに倒れて、雲が流れる空を見つめた。 そろそろ紅い空から薄暗い空へと変わっていって、やがて『今日』という終りを告げる夜となる。 世界はおかまいなしに、明日へと進んでいる。 「おい、馬鹿兄貴」 声が、投げかけられた。 それに慌てて身体を起こして見やれば、自分と似た容姿を持つ少年。 不機嫌そうに立っているように見えるが、彼はこれが元なのでしょうがない。 「リューグ?」 リューグはロッカの隣りにどっかりと座りこんだ。 そしてしばらく海を眺めて、ロッカをジロリと睨み付ける。 「何、悩んでやがる」 「・・・・別に、何でもないさ」 「そのツラがどうでもないというようなモンに見えるかよ」 リューグはため息を吐いて、空を見上げる。 海も街もなにもかも、全てが赤と夜色のグラデーションに染まって行く。 「 ドクンッ その名前にロッカの心臓が激しく高鳴った。 顔を見られないように俯くがリューグにはお見通しだったらしく、”ったく”という呟きが聴こえた。 ”隠してもしょうがない”と、ロッカは観念してすぐに顔を上げた。 「リューグは、好きな人が敵かもしれない可能性があったら・・・・どうする?」 「・・・まさか・・のこと言ってんじゃねえだろうな?」 「そのまさかだよ」 ・・・・・・・言いたく、ない でも心が潰されそうで怖い 憎しみが蝕んで来て、悲しみがそれを包み込む 楽に、なりたくなる だから口が止まらない 「・・さんが・・・もしかしたら旅団と関ってるかもしれないんだ。 確信したように言い放つロッカに、リューグは一瞬、息を呑む。 しかし勘のいい彼だ、薄々と、について何か感じ取っていたのかもしれない。 しかし今度は呆れたような表情で、ため息を吐いた。 「っは、馬鹿馬鹿しい」 「な・・?リューグ!僕は本気で・・!!」 「うるせえよ」 リューグは、冷静だった。 とても、とても、冷静だった。 確かに彼は頭に血が上りやすい性格でもあるが、本質的には、冷静な部類なのだ。 リューグは、海を眺めながら、言う。 「あいつが旅団と関ってても、俺達を罠にハメたり、殺そうとしたことなんて一回も なかったじゃねぇか」 「・・・」 「 「・・・あ」 思わず、声が零れた。 まるで初めて気がついたかのように、記憶を探り始めれば。 ・・敵として助けてくれようとしたかもしれない。 けれどよくよく考えれば、デグレア軍には大して得にもならないことだ。 「デグレア軍と違って誰かを傷つけようとした事なんて、なかったじゃねえか」 リューグはかすかな笑みを口元に浮かべながら、呆れたようにぼやく。 「誰かの為に泣いて、誰かの為に笑って、誰かの為に必死になる事が出来る。 あいつはそんな女じゃねえか・・ ロッカはそんな事を言い出すリューグをぼんやりとと眺めていた。 そして、次には、 久しぶりに、穏やかな気持ちで、笑うことが出来た。 彼女を思い出して、微笑むことが出来た。 それが、嬉しい。 「・・リューグは本当に、さんが好きなんだな」 「バッ?!馬鹿言ってんじゃねえよ!んなワケあるか!!」 怒り出す弟。 大切な家族。 ・・・・・・・・・・今度は、泣きたくなった。 僕もそんな風に 信じてあげる事が出来たなら ロッカは夜に変わりかけている空をもう一度仰いだ。 かすかに星が輝いて見える。 そろそろ、道場に戻らなくては。 「・・なぁ、リューグ」 「んだよ?」 「・・ 難しい 本当に、難しい 仲間と思っていた人物から、一つでも疑惑が持ち上がれば その一つだけで、何もかもを疑ってしまう 信じられなく、なってしまう 今まで共に過ごしていた日のことを、見失ってしまう 「真実を知って、裏切られているという事を信じたくなくて、 逆に傷つけて、遠ざけて、自分を守ってしまう」 「ずっと仲良し、なんて出来ねーよ。 人間は傷ついて、癒して、また傷つけて・・・・そんなくだんねーことの、繰り返しなんだよ。 ・・完璧な神様ってもんじゃねーからな」 ああ、とても、泣き出したくなる。 自分の弱さが、自分の臆病さが、悔しくて。 「・・なぁ、リューグ」 「・・・・・」 「・・さん、許してくれるだろうか?」 彼女に掴まれた手を振りほどいた時に見せた、あの傷ついた表情に。 彼女を抱きしめて、何度も謝りたくなる。 ”傷つけて、ごめん”と ”勝手に避けて、勝手に傷つけて、ごめん”と 「あの女の事だから、テメエが何に怒ってんのかわかってねえんじゃねぇの?」 「そんな事・・・・・・ははっ、あるかもな」 「それになぁ・・、テメエがそんな顔してやがったら、親父達に殺されるのは俺なんだよ」 ぼやくように呟くリューグに、ロッカは苦笑して立ち上がった。 青い前髪がサラリと風に流されて、心地良い。 潮騒の音も、夜を迎えていく世界も、全て、本当に心地良い。 先ほどまでの息苦しさが嘘のよう。 そして、リューグを見下ろす。 彼の言葉が心にコトンと収まって 自分の中にある負の感情に、冷水をかけて消し去った “認める事も勇気である” 父の言ったことは、確かに勇気が必要だ 裏切りを受け入れる勇気が それに押しつぶされないように踏みとどまる、勇気が必要だ ”は、デグレア軍と繋がっている” それを認めるのは、辛い それを認めるのは、怖い だが、真っ直ぐに受け入れなくても良いのだ 別の方向から受け入れれば、その人を許す事が出来る ・・裏切り具合によっては、許す事が出来ないかもしれないかもしれないけれど でも、彼女は 彼女は、傷ついた顔を見せてくれる 彼女は、笑った顔を見せてくれる ・・今は、それだけで充分なのだ 「リューグ」 「何だよ」 ロッカは優しく笑って、リューグの頭を撫でながら言った。 撫でられた本人は突然の事態に唖然として固まっていたが、 ロッカが浮かべているその表情は、久しくなかった兄の顔。 「 怖い気持ち 悲しい気持ち 嬉しい気持ち ヒトにはたくさんの気持ちを感じる事が出来る その分たくさんの痛みを感じる事も出来る それはとても複雑で 理解するには難しい けれども分かり合えた時、それはとても嬉しいもので 人の心は脆いけれど そうして癒されるものだから NEXT ------------------------------------------------------------- *後書き* 第43話をお届けさせて頂きました 中途半端な終わり方です、時間がないのでマッハです。(ヒー) 何だか修正前とまったく違う、シリアス率です。 本当はものすごくギャグな展開だったのですが・・・あれ?あれれれれ??(滝汗) 洞窟などローレライなど、何事もスルーな方向でお願いします・・・!!(土下座) いや、陸にはぐれがいるのなら海にいたっておかしくないなぁなんて考えたので・・あは。(笑ってごまかす) それではここまで読んでくださった方に、最大の感謝を。 2002.2.119 2004/6/12大幅修正 |