想いは、これからも受け継がれる

歯車は、これからも動き続ける

歯車を動かす者がその足を止めない限り



諦める事を、しない限りは








第35夜








             待つんだ、フリップ・グレイメン”





その声音は高く





けれどあたしは、少し前に聞いた気がした





「・・ん・・?」


体が揺れている。
それにあたしはふっと目を覚ますと、一番に視界に飛び込んできたのは眩しい程の金色。
よくよく見るとそれは髪で、あたしの身体を誰かが背負っているとわかる。


「・・イオス?」

「気が付いたか?」


イオスは首をあたしの方に傾げて綺麗な笑顔で微笑んだ。
あたしはそれを“美人ダー”と眺めていたが次にはハッとして周りを見渡した。


「イオス!薬は?!」

「薬はちゃんと貰ってある、今・・ルヴァイド様が馬を迎えに行っているところだ」



薬が貰えた



その事実が、あたしの中にじんわりと染み込んで来て。
思わず“やったー!”と喜びながらイオスの首に自分の腕を回して喜んだ。


「うわ?!」

「やった!やったよイオス!!手伝ってくれて本当にありがとう!!」

・・」

「これでネスも助かる!イオス達があの時いなかったら・・あたし・・、あたし・・!」


あたしはイオスの背から飛び降りて彼の手をぎゅっと掴んで笑った。


「本当に、後悔してた。            ありがとう」


嬉しくて泣きそうになる。
あとは薬を持って帰ってネスに飲ませればいい、それだけ。


それだけで、ネスが助かる


助かって、また一緒に笑ったり、怒ったり、悲しんだりすることが出来る




・・とても嬉しい




当のイオスは頬を赤らめて、あたしから目を背けた。
あたしはすっかり舞上がっていたためイオスの行動に気付かなくて、ブンブンと彼の手を
振って何回も“ありがとう”と繰り返した。

それにイオスが呆れたため息を吐いていたけれど、ふと話題を切り出した。


「ところでキミはもう・・大丈夫なのか?」

「はれ?何が?」

「・・派閥で暴行を受けたと聞いた」


イオスの声が低くなって怒っていると感じたあたしは、今度は自分の首をブンブンと横に振った。
ってか、殺気丸だしで怖いー!(汗)


「そ、そりゃー多少は殴られたわよ、でもあたしが無理矢理入ったのが悪かったし・・しかも
あっちは会議中で、あたしが会議を中止にしちゃったんだからしょうがないよ(汗)」

「・・だが僕は派閥が許せない」

「イオス?」


イオスはそっとあたしの手を取って、指に軽く唇を付けて、甘く噛む。(ギャ?!)
途端に甘い感覚があたしの身体を駆け抜けて、あたしはゾワッと背筋を強張らせた。
ひぃ!何か変な感覚があああ!!(滝汗)


「キミを傷つけた奴を、僕は許せない」

「(キス魔発病?!)ええええええーーーーーと・・」


あたしがどう言おうかと思っていると、イオスはあたしをゼラムの城門に押しつけて、
華奢なその腕を柵として、城門の壁とイオスの身体に挟まれて閉じ込められる。

・・ようするにー・迫られ体勢って奴デスカー・・?(遠目)


「いいいいいいいいい、イオスさん・・?(目が・・?!)」

「・・どうして・・」

「はい?」

「殴られた事、全部あの男から聞いた」








*








イオス達が待合室で落ち着きなく時間を持て余しているとき、コンコンとすましたノックが部屋に響いた。
誰よりも扉の近くにいたレシィが素早く扉を開けると、そこにいたのはを背負ったラウル。

それに一同、驚きを隠せずに目を見開いた。


「ご主人様?!」

「大丈夫じゃ、眠っているだけじゃ」


顔をどことなく苦しげに歪めながら、ラウルは呟く。
それの意味に何か引っかかったのか、ルヴァイドが彼の記憶に切り込むように、さっと質問を返す。


「何故、眠っているのだ」


それはいつもよりも、低い声。
傍にいるイオスも、レシィも・・彼が僅かながらに怒りを秘めていることにも気付き、
蒼の派閥の師範代、ラウルを見る。


「ワシの、責任だ」


ラウルはそれを真っ直ぐに受け止め、ルヴァイドにの体を渡す。
遠まわしに怒りをぶつけられている彼の表情は何故か穏やかで、
ルヴァイドは静かに呼吸を繰り返しているに安堵の表情を見せつつも、
その視線をラウルへと向け、無言で経緯を語ることを促す。


「彼女は派閥の者に暴行を受けた」

「暴行だと?!」


イオスが、じわりと殺気を膨らませた。
今にもラウルを殺そうとするその殺気を、ルヴァイドは制しながらラウルの言葉を辛抱強く待つ。


「・・会議中に乱入した殿は、入ることを食いとめようとした兵の者に抑えつけられたのじゃ」


”やはり”とルヴァイドは思った。
時間もなく、余裕もなく、他者の命がかかっているというのに、
それを救うための目的のものが目の前にあって、この少女がただおとなしくしているわけがない。


「抑えつけられたのにも関らず、抵抗し、ネスティの薬をくれと懇願してくれた」



どんなに殴られても

冷たい床に押さえつけられ、意識が朦朧としつつも


彼女は、”たすけて”と



それに、ラウルは不謹慎がらにも喜びを覚えた。
目の前で少女が暴行を受けているにも関わらず、心の奥底から喜びが湧き出た。



愛しい息子に、ここまで思えてくれる人が傍に現れたことを



「これが薬じゃ、殿が目を覚ましたら渡してやってくれ」


イオスは怒りを静めて渋々と、ラウルの手から大量の薬を受け取る。
その尋常ではない薬の量に、イオスはふっとネスティの顔を思い出す。


(ここまで重い病気を患っていたのか?あの男は・・)


召喚術の発動によって生まれた風に、赤のマントを躍らせて。
掲げる杖に異界の者を呼び出す、ロレイラルの術の召喚師。
・・確かに肌の色は白いが(お前が言うか)、そこまで病弱そうには見えなかったが       


ラウルは穏やかに微笑んで、ルヴァイド達に頭を下げた。


「・・お前さんたちも、感謝を」

「勘違いをするな」


ルヴァイドは頭を下げるラウルを見下ろしながら、言葉を放つ。


「・・に頼まれたから、手伝っただけだ。ネスティとやらの為ではない」


ルヴァイドの言葉に頷きながら、イオスはルヴァイドの腕の中で眠るを見た。
懇々と眠りに落ちているその顔は、見ていて呆れがこみ上げる。



けれども

たくさん走って、たくさん汚れて

膝をつけ、頭を下げた時に流したあの涙は

たった一人の者の為



イオス胸が痛んだ。
それは小さな、本当に小さな痛みだったけれど。
小さくても、何故か大きな痛みに感じた。


(・・これは、嫉妬・・なんだろうな)


正直、ネスティとやらが羨ましく思えた。
ここまで彼女に想われて、こんなに遠い所まで薬を受け取りに走った彼女の、側に居られて。



羨ましい



「イオス、行くぞ」

「・・はい。ルヴァイド様」

「そ、それではラウルさん、失礼しました!」


ペコンっとお辞儀して、ルヴァイド達の後に続いて走り去るレシィ達の後姿を見ながら。
ラウルはそっと呟いた。



「・・殿・・」







ありがとう










*






思考が、現実に戻った。
少し顔を上げれば、イオスの腕と白亜の城壁にはさまれ、閉じ込められているが不思議そうな
表情で彼を見つめていて。

黙り込んでしまっていたイオスに首を傾げつつ、その金色の髪を優しく撫でた。
相変わらず、彼女は何も変わっていない。



自分は、こんなにも変わってしまったというのに



「イオス?」



その手が

その声が

その優しさが

手に入れることが出来るのであれば

もう何もいらないのに



「・・

「何?」

「・・キミは・・」


イオスは暴れそうになる心臓を抑え、息を呑みながら次の言葉を頭に浮かべる。



ネスティが好きなのか?



(聞きたくない)



言えない

“好きだ”と言われたら、どうなるのかもわからない

もしかしたら、このまま彼女を連れ去ってどこかへ行ってしまうかもしれない

もしくは、この場で組み敷いて、己の激情をぶつけてしまうかもしれない

・・・けれど

そんな事をしたら

傷つくのは目に見えているのに






自分も



は自分を閉じ込めているイオスの頭に、ポンっと手を置く。
そのまま金色の髪を指に絡ませて弄んで、次には優しく頭を抱きしめた。


「・・・・?」

「あんた気分でも悪いの?大丈夫??」


“熱でもあるの?”と言って抱きしめていた身体を離し、コツンと額を合わせてきて。
イオスは想わず硬直して動けなくなってしまった。
触れ合っている部分が、酷く熱く感じる。


「んー・・?熱は・・ないようだけど・・・少し熱いわね。風邪かな?」

「あ、な、何を」

「ん?熱測ってるの。それよりちゃんと食べてるの?
健康に気をつけなくちゃ部下に示しが付かないでしょ?」


いたずらっぽく、彼女は笑む。
それにイオスは鼓動が一段と早くなり、血が逆流するかのように身体内が火照っていく。


(重症だ)


離れたのにも関わらず、触れ合った額がどうしようもなく熱い。
深みにはまっていく。
どうしようもない。

このまま抱きしめて、唇を近づけて、そして        


(やめろ、そんなことはするな、それだけは)


さきほどまで考えていた暗い思考は何処かへ吹き飛んでしまった。
変わりに酷く彼女を愛してみたくて、しょうがない。
理性を総動員させても、ギリギリだ。
何故こんなにも深みに入ってしまっている?・・わからない。

イオスが暴れそうになっている激情を耐えていることも知らず、はのん気に話を続ける。


「また会えなくなっちゃうけど、元気でいてくれたらあたしは安心していられるから。
ちゃんと元気でいてね?イオス」


・・・・・あまりにものん気なそれに。
暴れかけていた激情が、がくっと一気に収まってしまった。(いや、収まってくれたのは良かったのだが)


「(脱力)・・・・・キミも・・、元気で・・」

「当たり前!でもイオスったら自分の事なんかおかまいなしにルヴァイド様!って
感じがしてしょうがないから、本気で心配だわ・・」


はしばらく考えて、パッと顔を輝かせた。
何か良い閃きが思いついたような、子供の顔のようだとイオスは思った。


「約束!お互い健康管理はちゃんとしよう!ってね?」

「・・何で小指を出すんだ?」

「あれ?知らないの??親しい相手と約束をする時は小指と小指を絡ませて、約束事を言うの」


は唖然とするイオスの腕を取って、小指と小指を絡ませて笑う。


「約束、ね?」



初めての、約束

との、二人だけの


それだけで、イオスは胸の中が一杯になったような気分になった。
単純すぎる、と自分でも思ってしまうのだが、とにかく抱きしめたくなったので
の腕を引き寄せて、柔らかい身体をぎゅうっと抱きしめた。

その時に髪に顔を埋めて、彼女の香り良い髪の匂いを楽しみながらすごく嬉しそうに笑った。


、約束なんだな?キミと僕との」

「そ、そうだけどどうしたのよ?!恥ずかしいから離れてってばー!!」

「だめだ、もう少しこのまま・・」


イオスは更に力を込めてその華奢な体を抱きしめた。
”ギャー!”と色気もムードもなにもない悲鳴が空に響いたが、そんなことは知ったことか。

必死に押し返すのの力があんまりにもか弱い。

イオスはそれに、激情が煽られかける。
けれどもそれを無理矢理押さえつけて、ぎゅううっと抱きしめて、さらにが悲鳴を上げて。


それにまで愛おしさが込みあがってくる自分に笑いが堪えきれなくなって、吹き出した。


「なっ・・?イオス!!」


が、怒った。
イオスは自分に笑ったのだが、彼女には抵抗する彼女自身が笑われたのだと思ったのだろう。
抱きついているイオスの髪をグイグイと引っ張るが、本気で引っ張ることを遠慮しているのか、
その力も弱い。


「キィー!もうはーなーせーってばーーーーーー!!!
あんたねぇ、いい加減にしないと押し倒すわよ!

「君になら喜んで押し倒されるよ(そして押し倒し返す)」←危険軍人

「うぇ!?(滝汗)」


あんまりにも、崩れた顔。
それにまた笑いがこみ上げてきて。


「ふふっ・・・・あははは!」


イオスは抱きしめていたの身体を開放する。
そして口元を抑えながら、遠慮なしに声を出し、笑いのせいで目に涙を浮かべて笑った。











あたしって夢でも見てるのかな・・?(汗)



あたしは彼を殴ろうとしていた手を止めて、試しに頬を軽くつねって見る。
夢なら痛みはないが、実際に痛いので頬をさすり、もう1度イオスに目を向けた。
彼はまだ笑っている。

とても大きな声を出して。


(夢じゃない・・!?)

「あははっ・・キミって、ふふ・・本当におもしろいな・・・・」


お腹を痛そうに抱えて、イオスはまた笑いだす。
イオスがあたしの前でこんなに大笑いしたのは初めてで、あんまりにも可愛らしいそれに、
あたしはドキドキする心臓を抑えるのに必死だった。


(え、ええい!静まれ心臓!!(汗))


あたしは混乱していた。(静まったら死ぬってーの!)
あまり表情を大きく変えることのないイオスが、こんなに大笑いするなんてなんだか不思議だ。



っつーか、可愛い・・・・!


(うわー!うわー!何なのあれ?!すっげぇ可愛いめっちゃ可愛い、カッコイイじゃなくて可愛い!
あれが20歳だなんて嘘だろって思うくらい可愛い!レシィ並みに可愛いかもしれない・・!!
っていうか押し倒したいーーーーー!!!!(←人としてやめとけ)


頭の中はパニックだ。
寧ろそのパニックに乗じて痴女的思考が目を覚ますけれど、取り合えず人として
それを無理矢理押さえつけて、心臓部分をぐっと押さえた。



混乱してて

彼の笑顔に心臓が妙に早くなったけど


あたしはすごく嬉しくなった


だからあたしも笑った

イオスも一緒に笑い出す

たった笑い合っているだけなのに




酷く幸せに感じた




散々笑い合って、あたし達は草原の草の上に座り込んで、呼吸を整えた。
お互いが顔を見合わせるとまた吹き出しそうになって、少し笑いながらも慌てて顔を逸らす。


「ねぇ、イオスがそんなに笑うなんて初めてじゃないの?」

「そうだな、僕もここまで笑った事がない」


イオスの背にトンっと背中を合わせて、あたしは空を見上げた。
蒼くて、蒼くて見事なまでに晴れ渡り、心の中も清々しくなってくる。
そういえばあたしもここまで笑った事なんて、あんまりなかったかな?


「ねぇ、イオス」

「何だ」

「今度さ、ルヴァイドとゼルフィルド連れてさ。ゼラムの街を回らない?
きっとすっごく楽しいと思う!(っていうか、絶対楽しい!あたしが!<あんたがか)」

「・・そうだな・・」



きっと楽しい



「・・だけど、それは無理かもしれない・・キミと僕は           敵なのだから」


ざわりと風が髪を攫いつつ、イオスはあたしを少し悲しげに見て言った。
当のあたしはその言葉に驚いた表情を浮かべるしかなかった。


(そんなこと、言うわけ?)


むかむかとした気持ちが一気に湧き上がって、立ちあがってイオスを見下ろした。
表情はもちろん、怒っている。
それにイオスが不思議そうにあたしを見上げて。


?」

「馬鹿ーーーー!!」


あたしはそれを言うと同時に。
イオスの脳天に、あたしの中で最高得点な空手チョップを、ゴスン!っと食らわした。

鈍く、いい音がしてそれにイオスが痛そうな声を出す。

”あっはっは!本気でやったからね!”とやや外道的に心の中で笑いながら、
イオスに向かって呆れたようなため息を吐いて、そして怒鳴った。


「あのねぇ、そんなこと言わないでよ!あたしは、確かに対立はするけど、
敵同士だなんて・・これっぽっちも思ってないんだから!!」

「え?」

「それとも何?イオスはあたしと敵同士になりたいって言うの?」

「そ、そんな事はない!」

「なら!冗談でもそんなこと言わないで!        あたしだって、不安なんだから」


俯いて、あたしは言葉を漏らした。
本当に敵になってしまう可能性があるのだ、絶対ないとは誰も言えない。
あたしを何回も助けてくれたイオス達が、本当の敵になるなんて考えたくもない。


怖くなる。


「・・絶対、言わないで」

「・・・・・・すまない」


イオスはあたしの頬に触れて、すまなさそうに謝って。
顔を近づけて鼻の頭に、ふわりと唇を落とす。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。


「ギャアアア!!!」


あたしはその瞬間に、イオスを思いっきり突き飛ばして後方へ下がる。
何でそう来るか?!あんたは!!


このキス魔野郎!!!何であんたはそうやっていつもいつも・・!!」


怒鳴るあたしにイオスがまた、クスクスとおかしそうに笑って。
あたしはそれに言葉が、続かなかった。


(ひ、卑怯だ・・!美形は卑怯者が多い!多すぎる!!!)


訳のわからない理屈に地団駄を踏み、あたしは頭を抱えてのけぞった。(キィー!)
あんな顔で笑われたら、怒るに怒れなくなるではないか。
卑怯すぎる、この男。(美形にほんと弱いなあたしってば・・!<泣)

行き場のない怒りに震えながらも、怒る代わりにイオスに“恥を知れー!”と叫んだ。
その後は、何か言われる前に方向転換して、その場からダッシュで逃げた。


(いつか・・いつか見てろよキス魔軍人ーーーーーーーーーーーーー!!!!)


負け犬の遠吠えを心の中で木霊させつつ、あたしは草原を駆け抜けるのだった。






イオスは慌てて逃げるの後姿を見つつ、再びおかしそうに吹き出した。
あんなに慌てて逃げられるとは思っても見なかった。
というより、”恥を知れー!”と叫ばれたのは初めてで、逃げていく彼女がとても可愛くて。

笑う気持ちが、止まらない。

再び、ゴロンっと草原に寝転んだ。
見上げれば爽快な空、鼻腔くすぐる草木の匂い、頬を撫ぜるのは緩やかな風。

それらに包まれながら、まだ笑みの残る表情で呟いたのだった。


「・・にしても、キミが好きだからに決まっているんだがな」




呟きは、風に流されて消えるのだった             


















「ルヴァイド!レシィーーーーー!!」

、目が覚めたか」

「わーん!ご主人様良かったぁーー!!(><)」


あたしの腰に抱きついてひしっと泣き付いてくるレシィの髪を優しく撫でながら、
馬を縛っている縄を切り落としているルヴァイドを見た。


「ね、もうすぐ戻れるのよね?あたし、その時絶対!誰が何と言おうとも
ルヴァイドの馬に乗るからね!

「・・?ああ、別に構わんが・・」

「イオスの馬はだめ!あたしの心臓が持たない!!」

「??」


訳がわからないのか、ルヴァイドは首を傾げた。
そしてしばし考えた後に“馬がだめなのか?”と聞き返してきたけど、乾いた笑いを浮かべつつ、
あたしは木の下に置かれてある荷物の中に、見慣れない袋があることに気がついた。


「この袋・・」

「それが薬だ。ラウルがお前が目を覚ましたら渡せと言っていた。量もいつもより多いらしい」

「・・うん」


ぎゅっと薬を抱きしめて、あたしはネスを思い浮かべる。
きっと今も苦しんでる。
早く届けてあげなくては。


「・・いつごろ出発するの?」

「もう少しだ、日が暮れ始める頃にファナンには戻れるだろう」


そして馬に向き直って、その背の髪を優しく撫でた。
それに馬も嬉しそうに鼻を摺り寄せて、素直な甘えにルヴァイドの瞳もぐっと和らぐ。


「・・ルヴァイドも、ありがとう」


あたしは改めて頭を下げるて、礼を言った。
レシィも少し遅れて、ぺこりと頭を下げる。

そんなあたし達にルヴァイドは苦笑して、あたしの髪にそっと触れた。
顔を上げれば先ほどよりもずっと、ずっと優しげな瞳と視線がかち合う。


「ル       


名前を呼ぼうとすれば、あたしの髪に触れている手とは別に、ルヴァイドのもう片方の手が
レシィの頭をぽんっと撫でて、撫でられた彼は”わっ”と驚いた声を出す。

けれどレシィが頭を撫でられている間に、ルヴァイドが一気にあたしの顔に距離を寄せて、
耳元で静かに囁く。


「お前が悲しむのは、見たくないからな」



・・・・・・・・・・・・・・・・・・。



顔が、どんどん熱くなってきた。(ギャー!)
多分表面に現れていたのだろう・・それにルヴァイドがククッと喉を可笑しげに鳴らしながら、
あたしから離れて、馬に向き直った。(っていうか、レシィを撫でていたんじゃなくて押さえつけてた・・?)


「あ、あはは・・・(汗)」


“大人の魅力”って奴かしらね・・っていうかあれは寧ろエロ声・・ゲフンゲフンッ!、と
自分の考えていたことに咳き込んでいたら、レシィがぎゅっと手を握ってきた。
それは小さくて、子供特有の柔らかさ。
ああ!すっげー小さいプニプニな手!!(愛)ワンダホー!!

無意味にテンション高いあたしを隠しつつ、あたしはにっこりと微笑みながらレシィを見た。


「どうしたの?レシィ」

「ご主人様・・ルヴァイドさん達との事・・トリスさんたちに話しちゃうんですか?」

「(そんな上目遣いで見られたら逝きそうです、マジで<危険)うん、話すよvv」


あっさり言い放つあたしに、ルヴァイドは驚きの表情を見せる。


「だってあたし、隠すのはもう無理なんだ。バルっちに・・気付かれちゃったし。
それに折角だからルヴァイド達のことを話す良い機会かなーって思うし」


あたしは心配そうなレシィに笑って、再びフサフサの頭を撫でた。
柔らかな髪、とても気持ちが良くて・・落ち着く。


「あたしも不安だけど、でもあたし・・誓ったから」


あたしはルヴァイドを見て、彼の腰に納まっている剣を見つめた。
死んでしまっても、ルヴァイドと共に在るレディウスの剣。






             貴方に、誓います”






「・・逃げないって、誓ったから」



誓った


あたしはあの人に、誓った


その誓いは、ルヴァイド達の友達であろうとするあたしにとって、立ち向かう勇気になる



「だから、平気。
リューグ達が怒りそうだけど、いい加減慣れた」



まぁ、腹立つものは腹立つけどね!



だから大丈夫じゃない?と笑うあたしの頬を、いつの間にか近くにいたルヴァイドは、そっと撫でた。
それに目を丸くして見上げたら、ルヴァイドの、”本当にわからない”とでも言うような表情。


「何故だ」

「は?」

「・・お前は、どうしてそこまで俺達を」

「だってあたし達、友達でしょ?」


ルヴァイドが疑問を出す前に、あたしはあっさりと言ってやる。
そうすれば今度はルヴァイドの目が丸くなって、あたしは思わず笑ってしまった。



大切な友達のことを



大切な他の友達にわかって貰いたいと思う事は、変じゃないでしょう?



その言葉にルヴァイドはしばらく呆然としたままだった。
けれども次には口元に手を当てて、小さく笑い声を洩らす。


「お前は、本当に変な女だな」

「ノンノン、あたし以上に変なヤツなんかいっぱいいるわよ?(例えば某変態吟遊詩人とか)」

「お前はその中でもズバ抜けているぞ」

「・・・・・・・・褒めてんの?それ」


呆れた表情のあたしの視界で、ルヴァイドの身体が急に沈んだ。
いや、彼は屈みこんだのだ。
”どうしたの”と聞こうとすると、あたしの身体がふわりと持ち上がって、視界がグンっと高くなる。


       え?


いつもよりも、ずっとずっと高い視界。
下からレシィの驚いた声が聞こえたけど、寧ろあたしが驚いた声を出したい。(でも出ない)


「ルヴァイド?」


抱き上げられた。
まるで父親に抱き上げられているように、腰を掴まれて、だ。

驚き状態から、現実に返る。


ひぇー!高いーーーーーーーーーー!!!
ルルル、ルヴァイド!高い!怖ぇ!!降ろしてーーーーーーー!!!(ヒー!<泣)

「お前は、何者なのだ?」

「えっ?」

「レイムは執拗にお前の事を手に入れろと言う。
そしてお前と初めて会った時・・お前は俺の父を知っているような、そんな言葉を俺は聞いた」


心の中で、”しまった”と思った。(顔には出なかったけど)
あの時は心体的にもギリギリな状態だったから、無意識に、言葉が出てしまったんだ。

あたしは真っ直ぐに見上げているルヴァイドから、目が逸らせなかった。
真実を求めようとする彼の瞳は、とても強くて。


「・・お前が話してくれるのを待つつもりだった。
だが待つことが酷く、もどかしいのだ。・・お前は何か知っているのか?」


ルヴァドから、目を逸らせなかった。
でも答えることも出来なかった。
まだ、知る時じゃない。



いや、”知る時”なんか・・・・・ない


あれは、”知ってはいけない”ものだ



          何も、言えないよ」

「・・何故だ?」

「言えば、あたし・・もう二度と、ルヴァイド達に会えなくなる」



会えなくなる


会っては、いけなくなる


あたしの存在は、ここでは存在してはいけないもの



反則的で、異常なモノだから



あたしの言葉にルヴァイドの目が、見開いた。
”二度と会えなくなる”という言葉に、衝撃を受けたかのように。


(ごめんね)



言ってはいけない


知られてもいけない


誰にも、誰にも


これはあたしが、墓にまで持っていく秘密事



「お願い、聞かないで。・・勝手だとはわかってるけど、聞かないで。
あたしはルヴァイド達と会えなくなるのは       嫌だ」



それは今のあたしには



とても、辛いことだから



「ごめん、ごめんね。ルヴァイド・・」

「・・・そう、か」


少しだけ、重たい沈黙が降った。
あたしの下にいるレシィは、キョロキョロとあたし達を交互に見比べて。
オロオロと困惑な表情を出しつつ、ウロウロする。



ってか、それってすっげー可愛い動きだよ・・レシィ・・(悦)



「・・ルヴァイド、高いから降ろして」


何だか、妙に気持ちが沈んでしまって、彼の傍に居難い。
ルヴァイドは屈みこんで、あたしの足を地に降ろし、そのままの、酷く密着した
状態のまま、じっとあたしを見つめた。
な、何・・?(汗)


「・・俺は」

「・・?」


ルヴァイドの言葉に、少しドキドキしていた。
何を言われるんだろう?
それでも教えろと、言うだろうか?


(ああ・・でも)



彼が望むのだったら、いいかな


少しだけなら、教えたって



・・本当の、ことを知る権利が・・あるから



”でも本当、あえなくなるのは嫌だな”と思えば、酷く、胸の奥が苦しくなって、あたしは俯いた。
けれどルヴァイドはそんなあたしを見つつも、包み込むようにあたしを抱きしめて。


静かに、告げる。




「俺も            お前に会えなくなることなど、望まない」




一瞬、言葉が出なかった。




いや、出せなかった。
ルヴァイドが広い手の平であたしの後頭部を掴んで、髪に顔を埋めてきたからだ。
驚きに、声が出ない。


(う、うわーーーーーーーーーーーー!!!!)

「決して、望まない・・このままでいたいと、思う」


多分、無意識で呟いたんだと思うけど。
それってかーなーりー上級者の殺し文句デスよ?わかってます?
絶対わかってないでしょーねー(遠目)
自分のカッコ良さを自覚しろよ!あんたもイオスも!!

心の中でわめきつつ、触れているのだろうか?・・・彼の固い唇の感触が髪を通して伝わってくる。
それに顔が赤くなるのが抑えられない、けれどもイオスの時にように突き飛ばすことが出来なかった。




”俺も            お前に会えなくなることなど、望まない”



あたしは泣いてしまいそうだった。
同じことを思ってくれていたのが、すごく、酷く嬉しくて。
父親のことがすごく知りたいだろうに、でもそれをあたしのために無理に聞こうとしないでいてくれて。



泣きそうだった



そして、ずっとルヴァイド達の、トリス達の傍にいたいって思った



必要としてくれて、嬉しかった



そろりと、ルヴァイドの背中に手を伸ばした。
嬉しかった、本当に嬉しかった。
力強く抱きしめてくる腕も、必要としてくれていることを表す言葉も、嬉しかった。


・・けれど、だんだんと苦しさが募り始めてきて、あたしは我に返った。


「ん・・ちょっ・・苦しーーーーーーーーーー!!!(窒息する!)


すがっていた手でバンバン!とルヴァイドの背中を叩く。
けれどもさすが騎士の体、まったく、ビクともしない。


(ああ!今思えばあたしってば何を抱きしめ返してんのよ!阿呆ーーーー!!!)


ルヴァイドの身体と腕に包まれていることで、イオスの時と同じように心臓が五月蝿く動き始めた。
ヤバイ、なんだかわからないけど、非常にヤバイ(汗)


「ルヴァイド・・!もう、離し・・」


ルヴァイドが膝をついた状態のままあたしを抱きしめていたので、自然と視線は低くなる。
少し低いルヴァイドの目とかち合ったと同時に、顎を軽く掴まれてしまった。
ってか、これじゃ以前と同じパターーーーーーーーーーン!!!(汗)

ヤバイよヤバイよルヴァイドさん!!そんな事してたらキスしちゃうってば!ってか
顔近づけて・・うぎゃああああああああああ!!!(パニック)


顔を上げようとしたら、顎を掴まれているせいであがらない。
あたしの髪がルヴァイドの頬にかかって、それだけで頬が熱くなるのを感じて、
思わず目を瞑って肩を震わせた。


「っルヴァイド・・!」


動いたあたしの唇を、ルヴァイドが一度親指で撫でて黙らせた。
それに身体がビクっと震えて、あたしは更に強く、目を瞑る。
どうしよう                 



「うわーーーー!!!」



今まで静かだったレシィが、もう耐え切れないといわんばかりに大声を出した。

それにあたしは金縛りが解けたように、ルヴァイドを力いっぱい、思いっきり突き飛ばした。
イオスとは違って大きい身体をしているので、そんな後方まで吹っ飛なかったが、あたしが
ルヴァイドから離れるには充分な距離だった。

当のレシィは顔を真っ赤にさせながら手で目元を覆っている。


「ぼ、僕はどうすれないいんですか?!ご主人様!!やっぱりいなくなったほうが・・/」

「あーあー!いい!!あたしの側に居てくれたらそれでオッケーだから!」



寧ろ、お願いだからそこに居てくれ!!



ぎゅうううっとレシィを抱きしめて、未だ収まらない火照る顔が収まるのを待つ。
最近のあたしは妙に変というか、寧ろ周りが変というか。
こういうことが増えていっているような気がする。(気のせいか?いや、気のせいだと思いたい)


ルヴァイドの方をチラリと見る。
彼は先ほどのことなどなかったかのように、黙々と馬を繋いでいた最後の縄を切り取って、
出発の準備をしていた。


(あー、良かった。からかうにも程があるわよ・・ってか、ルヴァイドってあんなに
茶目っ気があったっけー?ううむ・・・なかったような・・?新技かな?)



技名は“瞬殺、女殺し”か?



それはそれであったら嫌だけど、と考え込みながらあたしは空を見上げた。
空はまだ変わりなく、青々としていた。














・・ちなみにレシィは、ルヴァイドの方を見てブルブルと体を震わせていた。
それはもう半泣き状態だった。

彼らの間に、アイコンタクト会話が展開される。


(邪魔を、したな?)

(うわーん!ごめんなさいーーーーーー!!で、でもでも!僕だってご主人様が・・!)


彼らの、静かなる戦い。



それにぼんやりと、自らの思考に耽っているの目には入らなかった。
















その後、あたし達はゼラムの草原を駆け抜けていた。
強い風を受けながらも走りつづける馬達。
馬からあたし達が落ちないようにちゃんと支えてくれているルヴァイド。
先行く道を仕切り・・迷わないように案内をしてくれているイオス・・彼らと一緒に。

あたしは相変わらず馬の振動にぐったりとしていたけれども、舌を噛まないように歯を食いしばって、
目の前にあるルヴァイドの腰にしがみついていた。


長時間走りつづけて、ようやくファナンの明かりが見えた。
それにあたしとレシィは疲れを吹き飛ばして、思わず歓声を上げた。
もうしばらく走っていると、ゼルフィルドとレオルド達の姿を見つけて、あたしは思わず名前を呼んだ。


「レオルド!ゼルフィ!!」

「オ帰リナサイマセ、アルジ殿。レシィ」

「ゴ無事デ何ヨリデス、我ガ将、いおす。・・そして


あたしは二人(?)に飛び付いて、薬が手に入った経路を簡単に教えた。
彼らを見ると本当に戻ってこれたと思えて嬉しくて仕方がなかったのだ。


「それじゃ・・ルヴァイド、イオス、ゼルフィルド。もう1度お礼を言わせて。
            ありがとう」


最大の感謝を、彼らに。


「・・ヨ、我々ハ友ナノダロウ?」


あたしは思わず、目を丸くした。
だってあのゼルフィルドがそんな事を言ってくれるなんて、思っても見なくて。
ルヴァイド達の方を見ると、彼らも驚きの表情を露にしてゼルフィルドを見ていた。


「ゼルフィルド?」

「何デショウカ?我ガ将」


首を傾げるイオス達に、あたしは笑ってゼルフィルドに近づいた。
そして彼の機械な腕にぎゅっと抱きついた。


「ゼルフィルドとはあんまり話せなかったけど、絶対、絶対今度話そう?」

「ワカッテイル」

「忘れちゃだめよ?あと、ルヴァイド達の事よろしく・・護ってあげてね」

「命ニ代エテモ・・イヤ、命ヲ張ッテオ守リスヨウ」


あたしはその言葉に、オッケーサインを出した。
以前“命に代えても”言ったゼルフィルドに怒って、あたしは“命を張って護れ”といった。
それを覚えていてくれて、嬉しい。


「ご主人様、早く帰らなくちゃ夜になります〜!」

「アルジ殿」

「・・う、うん・・。・・元気でね!本当にありがとう!!」


あたしは名残惜しげに手を振りつつ、叫ぶように別れを告げた後、ファナンへ走った。
足も身体も体調完璧で、あたしは来る時よりも早く走れているような気がした。




とにかく、無事で。







それだけを願いながら。


















場所は変わって、サイジェント。
世界は既に夜と化していた。


サイジェントの南に位置する、住民が住む場所・・・南スラム。

大きな月の光を浴びながら、賑やかに食事をしている家があった。
そこは見ただけでも分かるよう貧しい。
家の所々が壊れている、けれどもそれらが修復されている部分が多々見えて、
最近になってその家に余裕が出てきたのだということが伺えた。


「皆!らーめんは一杯あるからたくさん食べてね!」


紅い髪を三つに編んでいる、しっかりとした口調の少女が言った。
賑やか食卓には多くの者達が集まって、楽しそうに食事をしている。
そんな彼らの何人かが、少女の言った言葉に反応して、”おかわりー!”と
元気よく答えて、自らの腹を満たした。


そんな中、難しい顔をした少年は、大きくため息を吐いて“降参だ”とでも言うように手を上げた。


「だめだ、俺にもわからない」

「そ、そんな〜・・ソル、頼むから何か手がかりの一つでもないのか?」


情けない声を出すハヤトに呆れながら、ソルと呼ばれた少年は首を横に振った。
少々しかめっ面になっているのは、わからないことで頭がいっぱいいっぱいだからだ。


「わからないものはわからないんだ、ハヤト。俺達は父上・・オルドレイクから均等に召喚術
を学んだんだ。だからお前のいうような“懐かしい感覚”に対する答えが見つからない」

「そっかー・・ソルにもわからないかー・・」


ソルはラーメンをすすりながら、隣りにいる義兄弟のキールに目を向ける。
彼もまだ考え込んでいるようだが、ソルと目が合うと首を横に振って静かにラーメンに口をつけた。


「カシスとクラレットもわかんないって言うし・・あ〜!もう気になってしょうがないぜーー!」


ゴッッ!!・・ガンッ!!


頭を掻き毟るハヤトの後頭部を、少女の裏拳が飛んで、ハヤトは机に顔面を打つ。
激しい衝撃、
鼻先に感じる鈍い痛み。


それらに、ここ最近己の身に降りかかる災難を思い出しながら、ハヤトはこっそり涙した。



俺ってこんなんばっか・・(遠目)



ハヤトが痛さにうめいていると、少女はビシィっと指を差して大声で喋る。
どうやら先ほどの言葉にご立腹のようだ。


「なーによ!それじゃーあたし達が頭悪いって言ってるようなもんじゃない?!」

「か、カシス・・誰もそんな事言ってないだろ!?その前に何で裏拳するんだよ!(痛い!)」

「召喚術使ったら屋根に穴が開くでしょ?!なら静かに裏拳しか・・って、そういうんじゃなくて!
キミが感じたその“懐かしい感覚”は、感覚の問題なの。本や何かの文献に書いているような
ものじゃないんだから・・あたし達がわかるはずがないでしょう?」


カシスの論にソルもキールもこくこくと頷く。
ハヤトは「うう・・」とうなって息を呑む。
そんな彼に、物静かな雰囲気を醸し出す少女が、そっと肩を叩いて慰めた。


「大丈夫ですか?ハヤト」

「クラレット・・俺って、こういう星の下に生まれついたみたいだよ・・・」

「(星の下?)取り合えずカシスも落ち着いて下さい」


ハヤトの言葉にやや小首を傾げつつ、クラレットはカシスをなだめる。
それに”フンだ”とそっぽ向く彼女だったが、クラレットは未だ落ち込むハヤトの肩を再び、
ぽんぽんと叩いて、言葉を続けた。


「ハヤト、貴方が言ったそれはトウヤも感じたと言っていました。
つまり貴方達誓約者・・“エルゴの王”に関係する事だと言う事は間違いないのです」

「でもあたし達は何も感じなかったわよ?ね、アヤ」

「はい・・、ナツミの言う通りです。その時はハヤトと一緒にお話しをしていたんです」



アレク川で、どうやってハヤトさんの洗濯を板でやるかつり竿でやるのかと



忘れようよ、アヤ・・



ううーん、とうなる彼らのとは別の少年がハヤトの頭を軽く小突いた。
ハヤトは見上げなくともわかる、小突いた仲間の名前を呼ぶ。


「ガゼル」

「何シケたツラしてんだよ、別にそんなの放って置けばいいじゃねえか」

「そう言う訳にも行かないんだ、ガゼル。これは誓約者達に共通している事・・。
何かの予兆かもしれない」


キールの言葉を、ガゼルはしばらく考え込む。
そしてピンと思い付いたように言葉を出した。


「それじゃあよ、アイツにも聞いてみればいいんじゃねえか?」

「アイツ?」


ソルは首を傾げて、ラーメンの最後の麺をすする。
ガゼルは気が進まないような表情をしたが、言い放った。


「ホラ・・いるだろ?元・魔王様がよ」


その場にいた全員は少し考え込む。
そして全員同時に思い付いたのか、大声を出してガゼルを見た。


『ええ???!』


それは近くに住み込んでいる猫を飛びあがらせる程に大音量で。


しばらく猫は、その家に近寄ることが出来なかった。













NEXT






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*後書き*

第35話をお届けさせて頂きました。

タイトルって決めるの大変です。
なかなか難しいです・・・一瞬無題で行ってやろうかと思うくらいに!!(ヤメレ)

デグレアズ・・思いっきり抱きしめてやって貰いました。
もう裏を打ちたくてしょうがないようです、うおおー!(クサレ管理人・・!)

やっと次回でネスが登場です。
でもまた少しづつ、こういう番外編っぽいモノを入れつつ話を進めていこうかと思ってます。
折角だから、書いて見たい話もたくさんあるので。


リンカーズ、パートナーズ、登場です。

そして元・魔王様・・あの方しか、いません。
本当は死んでしまっているキャラですが、弟共々生きてます。無理矢理です。
だってあの二人、すっげぇ好きなんです。ええ、そりゃもう友人に趣味悪いとか言われても全然
オッケー!と威張って言えるほど好きです。
だから趣味で出しま・・ああ!ナイフ投げないで!!(逃亡)

それではここまで読んでくださった貴方に、最大の感謝を。


2002.1.31

2004.1.31大幅修正