第29夜 (ああ・・、こういう時はマトモでいてくれるのに・・・) ルヴァイド達と会話を交わす主の後姿を見つめながら、キュラーは大きくため息を吐いた。 さっきからまだ完全に治療されていない胃がキリキリと痛んで仕方がなくて。 帰ったらお粥ですかね・・と病気中の主婦のごとく、自分の胃を守るたの献立を頭の中で グルグルと献立を考えていた。 いっそもう転職しろ (それにしても・・どうしてあそこまであの人間に熱をいれるのか・・私には理解しかねますねぇ) この森へ来る数刻前の出来事を、キュラーは思い出しつつ再びため息を吐いた。 ◆ 人には見つかることのなかった、岬の館に唄が響いていた。 それは愛しいモノのための唄ったモノ。 レイムの声が、館に静かに響き渡る。 それは声が大きいというわけではなく、ただこの館が静か過ぎるだけの話。 紡がれる涼やかなその声は、美しいモノだった。 レイムは歌い終わると、竪琴を机に置いた。 「嗚呼・・さん・・・」 そうしてほうっと切ないため息を吐いた。 そのため息は本日9回目のため息で 掃除を頼まれたガレアノは、わざわざ数えていた。 「・・はぁ・・・」 「・・・・・・・・」 「・・・・・・・・・・・・・・ふぅ・・・・」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・嗚呼ー、貴女に会いたい・・・」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」 何ともいえない空気が流れた。 けれどレイムはにっこりと、掃除を続ける部下に微笑み。 「ねぇ?ガレアノ?」 「・・・・私には返答できません」 ガレアノの返事を聞いてレイムはピクリと眉を釣り上げる。 そして“こっちへ来なさい”と手招きをして、素直に近寄ってくるガレアノの頬を。 笑顔で、思いきりつねり上げる。 「ふふふふふふふふふ、ガレアノのクセに私に意見するのですか?(笑顔)」 「いへんしてませんってひゅーかいひゃいです!いひゃいですへいむさまあああああ!!!(泣) (訳:意見してませんっていうか痛いです!痛いですレイム様ーーーーーーー!!!!)」)」 「んふふふふふふふふふふふふふふ・・、よく伸びるようになりましたねぇー。 あそこまでやつれていた貴方の姿はどこへいったのですか・・?」 「もももうひわけごじゃいませんんんんんんん!!!(訳:申し訳ございませんんんんん!!)」 「いいですか?私はこんな所で書類をしているわけには行かないんですよ?」 こうしている間にもさんが私に恋焦がれて涙しているかも知れないというのに・・・ いや、それはないでしょう(きっぱり) 「ガレアノのクセにいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!(怨)」 「ひょおおああああああああああああああああああああああああああああああ!!(叫)」 レイムの歌の次に、ガレアノの悲鳴が館中に響いた。 その悲鳴を聞いて、別室で仕事をしていたキュラーは“はふーっ”とため息をついた。 「・・どうやら限界のようですね・・。 ガレアノを付けておけば、あの人間の禁断症状も少しは収まるかと思ったのですが」 鬼か、お前は 鬼人使いですから そう、レイムはに夢中だ。(その理由は知らないが) 彼女にかまけてばかりいたので、デグレア顧問としての仕事が大量に残っていたのだ。 いい加減職務を果たさないと、ルヴァイド達からブーイングが殺到する。(実際来た) (なんとも、滑稽ですね) 断崖都市:デグレア。 その国はもう、当の昔に滅びている国。 一見しただけでは生きているのか死んでいるのかわからない、死人だけが徘徊する国。 ルヴァイド達は、何も知らない。 ルヴァイドは、何も知らない。 まさか自国が、自分が幼い頃にすでに死人の国と化しているだなんてことを。 それは<黒の旅団>の兵士達にも言えることだった。 ルヴァイドの部下も自分達の家族がすでに死んでいるとも知らずに、仕事に精を出して。 酷く滑稽だと、キュラーは嘲笑う。 そうしている間にガレアノの悲鳴が再び響いて、キュラーは重いため息をまた吐き出して。 「しょうがない人ですねぇ」 立ち上がって、レイムの部屋へと歩き出した。 人気がまったくない通路を歩いている間にも、レイムとガレアノの悲鳴が響く。 「嗚呼ーーーーー!さんに会いたいーーーーーー!!!!」←悲鳴? 「いひゃいですうううううううううううううう!!!!(泣)」 「レイム様」 キュラーがレイムの部屋に足を踏み入れると、レイムはぱっとガレアノの頬をつねっていた手を 離して、キュラーに笑顔をプレゼント。 「キュラー!出かけましょう襲いに逝きましょう夜這いに逝きましょう!!」 「(逝くな)だめです」 「(Σ ̄□ ̄)!何故ですか?! 私のさんが私を想って寂しい涙を流していたら貴方といえども許しませんよ!!」 寧ろそういうシチュエーションカモン!! だから無理ですってば(byガレアノ) 「ガレアノおおおおおおおおおおぉおおおぉぉぉぉおぉぉぉ!!!!(超怨)」 「ぎゃーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!」 レイムは本気でキレているのか、血の付いた竪琴を振りまわしてガレアノを追う。 その目は本気で殺るつもりの輝きがあって。 レイムは駆けた ガレアノを抹殺するために ガレアノは必死に逃げた 生きる為に キュラーはため息を吐いた あまりにも情けなくて レイムに追いかけられるガレアノに“黙ってなさい”と落ち着かせて今度はレイムに目を向ける。 もう気分はまるで保育園の保父さんですね そんな考えが浮かぶ自分を哀れに想いながらも(本当にな)、キュラーはレイムに椅子に座るように 薦めて、自分もガレアノと共に空いている椅子に座る。 「外へ出る事はお許しします、ですがあの人間の少女と会ってはいけません」 「何故ですか?!私達の逢瀬を邪魔するつもりなんですか?キュラー!」 「・・逢瀬以前の問題だと言う事だと自覚してください、良いですか? 仮にも大悪魔の貴方があの人間の娘に踏まれ蹴られ殴られ捨てられている姿を 他の悪魔に見られたら情けな過ぎて示しがつきません」 正論だ、キュラー(ガレアノの心の応援エール) 「”仮にも大悪魔”とは失礼ですね・・その前に捨てられていませんが」 「・・(・・どう見ても捨てられかけのような気が)・・」 「ガレアノ、何かいいましたか?」 「な、何でもありません」 「・・とにかく、しばらくルヴァイド達に顔を見せていないので怪しまれています。 ルヴァイド達の元へ行くなら外へ出てもかまいません」 「しょうがないですねぇ・・行って来て差し上げましょう」 「もちろん私達もご一緒です。 貴方が寄り道をして人間に会いに行く可能性があまりにも高過ぎるので、 その監視役としてご同行致します」 「・・(ッチ)そうですか、それは残念です」 せっかくさんと一緒にファナンの砂浜を歩けると思ったのですが・・ ヤベぇよ、コイツ 「ガレアノ、ビーニャを呼んで来てください、レイム様が逃げると追いかけるのが大変なので」 「(逃げ足、速いからな・・)わかった」 ◆ ・・と言う訳でここまで来たのだが。 どうやらルヴァイド達はレイムの八当たりの対象になったらしい。 何とまぁ哀れな、と彼らの会話を聞き流すキュラー。 ガレアノはガレアノでうんざりとした表情で、道を歩くアリを見つめながら現実逃避。 ビーニャもビーニャで“つまんなーい”といいながら魔獣と一緒に遊んでいる。 当のレイムはルヴァイド達に怪しい笑みをプレゼントしながら、毒舌発揮。 「どうして“”と聖女を捕獲できないのでしょうかぇ・・貴方の父君もさぞかし 残念に思っている事でしょう。ああ、それにしても今日の貴方の大切な用事とは この村の墓参りだったのですね、くだらない用事に1日を無駄にするとは貴方も 落ちましたね」 お前の方が落ちてるぞ(禁句) だがルヴァイドは平然としながら、レイムの言葉に冷静に返す。 落ち着いた姿勢で、不敵な笑みを浮かべながら。 「貴様にはくだらないかもしれないが、俺にとっては重要な事だ」 その言葉に、レイムはピクリと眉を釣り上げる。 どうやら不機嫌領域に入ったらしい。 変態モードに入るか入らないかと心配しているキュラー達を尻目に、 レイムは胸を張ってルヴァイドを見た。 「ほぅ・・・それはそれは、さぞかし良い休暇だったのでしょうねぇ・・羨ましい限りですよ」 心底羨ましそうな表情を作って、レイムはルヴァイド達に向ける。 だがその間にも、ガレアノとビーニャはこそこそと会話をしていた。 「(レイム様って演技派よねー、ガレアノちゃん)」 「(何たってレイム様だからな、嫌味も最大級に立派だぞ)」 「ビーニャはともかくガレアノ、後で覚えておきなさい」 いきなり向けられたレイムのその言葉に。 ガレアノは身を震わせながら黙った。(ルヴァイド達は首を傾げていたが) そんな彼の心の中では”男女差別だ!”と喚いているが、ルヴァイド達がいる手前、何も言えない、 男は我慢、である 「(いいですか、ビーニャ。あれが本当の意地っ張りと言うものですよ)」 「(ガレアノちゃん、カッコワルーイ)」 「(ほっとけ!)」 キュラー・ビーニャ・ガレアノのアイコンタクトには気付かないルヴァイド達。 一方ルヴァイド達はレイムの言葉を聞き流しつつ、3人は同じようなコトを考えていた。 とっとと帰れ、と (・・うわー、何かすっごく疲れた顔ー。ルヴァイド達に同情するわ・・・) あたしはぼんやりとデグレズの光景を眺めながら、ルヴァイド達に手を合わせる。(合掌) だってさっきからねちねち嫌味を言われ続けているのだ。 なんていうか・・部下いびりってやつ? 空はもうすっかり夕方で、“トリス達どうしてるかなー”と考えながらあたしはレイム達が 帰るのをひたすら待った。(ってか、もう本気で帰れ) (・・あー、眠くなってきたんだ) ウトウトとしてきて目をこするが、レイムの話は一向に終る気配がない。 しょうがないのであたしはそのままコロンと横になって寝てしまった。 とにかくルヴァイド達が起こしてくれるだろーと、のん気なコトを考えながら。 おやすみなさい・・・ ペラペラペラペラペラペラ・・・・・ ガレアノも、うんざりしていた。 機嫌が悪くなると、相手の愚痴を言わずにはいられないこの人。 ルヴァイド達も呆れている事に気付かないのだろうかと、そっとため息を吐いた。 「・・ガレアノ、顔色悪い顔色がますます悪いですよ」 「(ほっとけ)お前もな。・・・・・・・・・ワシは少しその辺りを歩いてくる(沈)」 「私はまだ大丈夫なので行って来ても構いませんよ、でもなるべく遠くの所に行かないで下さい。 探すのが面倒なので、置いて帰ってしまいますから」 何気に酷い事言うな、お前 私も疲れているんですよ ガレアノはキュラーに手を振りながら森の中へ入っていった。 森の空気は澄んでいて、この空気をあの上司の部屋に入れ替えたいと願ってしまう。 それほどまでに汚れているというか・・濃い空気? それがガレアノには耐えられなかった。 (・・ああ・・もうあの方は何でああいう変質者になってしまわれたのだろうか・・) しばらくとぼとぼと歩いて、思い付いたように顔を上げた。 原因。 それは一人の少女。 あれだけ欲しているのにも関らず、強引に奪おうとしない・・悪魔の流儀に逆らっている程、 大切に、夢中に想っている人間・。 (あれが原因・・だとすると・・何故だ?たかが人間だろうに) たかが人間、と言う言葉に引っかかりを覚えてガレアノは首を傾げた。 ただの人間ではない空気を持ち、異様に生命力に溢れた魂の持ち主。 思い出したように、ガレアノはそっと額に触れた。 以前、ビーニャに箸で刺されて出血した時に慌てて抑えて血を止めようとした妙な人間。 あの驚いたような顔と、桜色の着物が目に焼き付いて離れない。 どうか、している。 「・・・ん?」 奥へ入ってしばらく。 どこかで人間の気配を感じた。 しかもそれは“”の気配で、この近くから。 ガレアノは息を潜めて歩きながら、気配がする方へと歩き出す。 彼女がいると思うと、心の中が落ち着かない。 どこかがざわめいて、煩い。 少し歩くと寝息が聞こえて来て、ガレアノはそこを覗き込んだ。 覗き込めば。 「・・・ぐー」 青い草の上で、穏やかな表情を浮かべたまま眠るがいた。 その顔には夕日に照らされ美しく浮かび上がっていて、ガレアノは思わず息を呑む。 側に近づいて、震えた手でそっと目につく髪を払い上げるとサラサラとした、柔らかい感触 が指の中を擦りぬけて落ちて行った。 ただ髪に触れただけ。 それだけで手に汗が滲んでいたことに、驚きを隠せない。 「 手に入れたいと、思ってしまった。 己の中にある、悪魔の本能に従って・・連れ去りたいと、思ってしまった。 (・・なんだ、これは?) 困惑の感情の中、その時に、ふと思い出す。 ・・ずっと、ずっと昔。 気の遠くなるような、昔の話。 かつて栄華を極めていた二つの一族が豊穣の天使アルミネを使い、リィンバウムへと 侵攻を始めた大悪魔を退ける、少し前の事。 とある強力な悪魔が・・影で魔王とも呼ばれていた紅の悪魔が、 人間の召喚師に、自らの意志でつき従っているという噂がサプレスに流れていた。 その悪魔の通り名は”狂嵐の魔公使”。 ガレアノも過去に一度、戦っていたことがあった悪魔。 強力、かつ獰猛。 あのような、ギラギラと輝く瞳の悪魔はそうそういない、影で魔王と呼ばれた悪魔。 それが、自らの意志で人間に従っていた。 誓約のせいではなく、自らの意志で。 ・・そこには恋慕の感情もあったのではないか、という噂。 思い出すだけで、嘲笑える話。 (・・何故だ・・?) 今は、笑えない 笑うことが、出来ない 考えれば、急に、目の前で眠り込んでいるが腹立たしく、憎々しくなった。 起きることも考えずにザッと彼女の隣に座り込み、その顎を掴み上げて顔を寄せる。 何故だ 酷く、苛々するのは何故だ 壊したくなってしまうのは、ズタズタに引き裂きたいと思うのは レイムのことも思い出さず、そのまま小さな唇に自分のそれを重ねる。 ・・いや、重ねようとした。 だがそれは、一声で防がれた。 「ガレアノちゃーーーーーーーーーーーーん!!!」 ガクッ! 脱力してしまう、呼び声。 それにはっと我に返って、今、目の前で起きそうな様子を見せるの顔から慌てて離れた。 ついでに、レイムのことも思い出した。 (い、ま・・何をしようとした?!) 何をしようとしたのかわからずに慌ててのいる草陰から出て行くと、少し離れた場所で、 ビーニャが魔獣に乗りながらガレアノの名前を叫んでいた。 「ガっレアっノちゃーーーーーーん!!暇だから遊んでーーーーー!!!」 “こっちは暇じゃないぞ!”とツッコミつつ、先ほどの出来事を思い出す。 あのままビーニャが現実に引き戻さなかったら、あの血の付いた竪琴で殴り倒される 自分の姿が間違いなくあっただろう。 ガレアノは急いで草むらから出ると、ビーニャを小脇に抱えて森の中を走りぬけた。 「あーーーー!ちょっと何すんよーーーーーーー!!」 「五月蝿いぞ!静かにしろ、ビーニャ!」 「何ですってー?!ガレアノちゃんのクセに・・魔獣達殺っておしまいーーー!!!」 「ぎゃああああああーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!」 屍使い・ガレアノ。 自分の運の悪さと、人運の悪さを激しく呪ったこの瞬間であった。 ・・近いうちに死ぬかもしれんな・・(ガクリ) 「・・んー・・・なにー?今の悲鳴・・・」 ヤケにうるさいなーと目をこすりながら回りを見る。 けれどあたしのほかには誰もいなくて。 思わず、首を傾げた。 なーんか今・・雑巾を引き裂くような悲鳴が聞こえたんだけど・・? あたしはぼんやりとしながらレイム達の方向に目を向けると、レイムはまだ喋り続けていた。 いい加減出て行きたい衝動に駆られたが、このままだ出て行くと捕まって、襲われる事 間違いナシ100%であろう。 それだけは勘弁願いたい。(ってか、嫌過ぎ) 「・・まぁ・・とにかく、“”と聖女をお願いしますよ」 「・・・手に入れてどうするつもりだ?」 「それはもう思いきり愛で・・いえ、(身体の隅々まで)研究させていただきますよ」 あたしはその言葉に何となく悪寒を感じて、ぞっと身を震わせる。 キュラーの方を見ると今の発言でキュラーの頬は引きつっていた。 どうやら部下である彼は、レイムの言葉の裏に隠れた考え(寧ろ妄想)をわかってしまったらしい。 ルヴァイド達はまったく気付いていないが。 ってか、イヤだーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!(泣) 「研究だと?」 「そう怒らないで下さいよ、イオス・・別に殺す事だけはありませんから」 「・・貴様が言うと怪しいがな」 「心外ですねぇ・・ルヴァイド、はっきり言わせてもらいますが」 レイムが、ルヴァイド達に一歩迫った。 それを”?”というような表情で見返すルヴァイド達。 そんな彼らに、レイムは。 (え・・・?) あまりにも、穏やかな。 とても優しい微笑を、浮かべて。 「 ルヴァイド達も、キュラーも・・・あたしまで呆然としてしまった。 それがあんまりにも優しいもので、穏やかなもので。 ・・・・・・・ヤバイ!少しトキめいちゃったよ・・!!(汗) ルヴァイドはいまだ驚いたような表情のままだったけど、隣で我に返り、今度は怒りを露にしたイオスが吼えた。 「貴様の私情で“”を捕獲しろと言うのか!?ふざけるな、レイム!」 「ふざけてなんかいませんよ、イオス・・“”の中にある力は本物です」 ? あたしは首を傾げて、自分の手の平をマジマジと見つめた。 本当にあたしに力があるの・・? 「それに私と彼女はずっと前から会っているんですよ、・・最も、今の彼女は知りませんがね」 俯き加減で言葉を漏らすレイムの表情は暗くて、どこか悲しそうだった。 その時何となく、あたしの中の何かが痛んでぎゅっと胸の奥を抑える。 ココロが、痛い・・・? 「・・レイム?」 「別に私情と言う訳ではないことはわかって欲しいですね、それに彼女は私のモノです」 “誰がアンタのモノよ!”とツッコミをいれながらあたしは胸の痛みを振り払うように首を振った。 んでもって恥ずかしいから“愛してる”なんて言うんじゃねーーーーーー!!! しかもルヴァイド達の前でーーーーーーーー!!!!! 恥ずかしさに怒り寸前のあたしに、トドメの一言が入った。 「そのうち彼女も私を愛してくれるようになるでしょう、こんなにもこの私が追いかけて、 想いを寄せているのですからvv」 プッツーーーーーン! あたしの中で、何かがキレる音が聞こえた。 ルヴァイド達の訳解からん、というような表情を見せたと同時に。 あたしはとうとう、茂みから飛び出していた。 「ふっざけんな変態ーーーーーーーーーーーー!!!」 ほんとにあんたのイメージ大幅ダウンだよオイ!!! 一方、怒り狂うあたしの出現に。 驚きで目を丸くしているのは、イオスだけではなかった。 「・・・さん?」 「?!」 イオスとレイムの声が被り、ルヴァイドは目元を抑えた。 そんな視線が集まって、あたしはやっと我に帰ると、頭を抱えて。 ジーザス 「あ、あははは・・あたしはこれで帰りま・・」 「さん!貴女を愛してるーーーーーーーーーーーーーーーー!!!(マッハ)」 輝きながら走ってくるレイムにあたしは背を向けて逃げようとしたが。 いつの間にか抱き付かれて、あたしは鳥肌を全開にして震えあがってしまった。 ぎゃ−!変態ー!! 「ああ!キモい!!ってか頬摺り寄せるな口尖らせるな逝けーーーーーーーー!!!」 「ジュテーム!ジュテーム!!フォーリンラァァァァブ!!!!」 「イヤー!どさくさに紛れてどこ触ってんのよオラー!!(ガスッ!!)」 「ああ・・!ナイスキック・・!!」 出血しながらあたしの足にしがみ付くレイムを何回も蹴り倒しながらも、 あたしは助けを求めるためにルヴァイド達の方を見た。 でも何故かルヴァイドもイオスも機械兵のゼルフィルドまで倒れていたのだ。 何 で や ね ー ん !(ツッコミ) 「ちょっとあんたら!何でぶっ倒れてるのよこんな時にーーーーーーーーー!!!!!」 「さぁぁぁぁん!!私と一緒にラブラブしませんかああああああああああ??!」 「ああもう黙れよ!っていうかしたくねえよ!ノーセンキュー!いらん、死ね!!」 「ああ、その言葉の鞭・・・・!!良い・・!快感でクセになりそうです!さん!!」 「なるなー!ってか!服脱ぎ出すなよ!キモい!!」 「いや、直に貴女に踏まれたいなと思いまして・・(服脱ぎ出し)」 「ぎゃーーーーーーーーーーーーーー!」 「さぁ!さん・・いえ、ご主人様、踏んでくだ」 「いい加減にしてください!!( ゴ ス ッ ! )」 レイムが、ハンマーで後頭部を殴りつけられて地に沈む。(ナイスアタック!<拳グッ) 一体誰がと振り返れば、どこからともなく取り出した覆面を装着した、キュラー。 ・・ひぃ!怖ッ!!その前に何で覆面してんのよ!!それで顔を隠したつもり?!(隠せてないよ!) あたしが何か言いたそうな表情で覆面キュラーを見上げていると、彼は血のついた ハンマーをあたしに手渡す。 うわ、グロい・・。 「私は怪しいものではありません、ただ襲われそうになった貴女を助けにきたモノです。 この変態は私がゼラムの騎士団に突き出しておきますのでご安心下さい」 「・・・・はぁ・・?」 「それではさようなら、変態に襲われそうになったらお会いしましょう!」 そう言い残して、覆面を被ったキュラーはレイムを抱えて森の中へ消えていった。 あたしはその背を呆然としながら見送って。(っていうかまたお会いしましょうってアンタ・・!) 「・・このハンマーを、どうしろと・・・・?」 そんな呟きを漏らしてから、あたしはルヴァイド達の介護に当たるのだった。 ・・今日は帰れそうにないかな・・?(また怒られる・・) 「ルヴァイドー、イオスー、ゼルフィルドー?起きてってばー! じゃないとあたしがモーリン達に怒られるんだってばー!」 あたしはルヴァイド達の頬をペチペチと叩くが、彼らはまったく起きなくて。 どうしようかと途方に暮れる。 しばらく考え込んでピンと思い付いて、ルヴァイドの頭とイオスの頭を膝に乗せて、その髪をもてあそぶ。 おお・・!サラサラして柔らかくて気持ちがいい・・!!(悦) ってか、目の前に美形が寝てるっていうのに、このチャンスをモノにしなくちゃ女が廃る!!(廃れ) ゼルフィルドは少し離れた場所にて寝かせている。 だってあの重量をどうにかできるわけがない・・っていうかどうやってゼルフィルドぶっ倒したんだ よ!覆面キュラー!!!(命名<虐めか) 「ちょっとー、早く起きてよ!・・・・・・・・・・じゃないと唇奪っちゃうわよー?」 「・・キミは相変わらずだな・・」 イオスが虚ろな目であたしを見上げて、穏やかに笑った。 お!久しぶりのイオスのエンジェル・ヴォイス!! 「久しぶりー、イオス。元気にしてた?」 「ああ・・キミの方こそ元気そうだな・・、安心した」 イオスは起きるかと思って、あたしはイオスの髪に触れている手を離そうとする。 けれど彼は起きないままであたしの膝に頬を摺り寄せて、ぎゅっと手を握ってきた。 え?え?ちょっと?? 「本当に、・・・・・・・・・安心した」 「・・イオス?」 あたしはイオスとルヴァイドの髪を梳きながら、イオスに聞き返した。 何だか、悲しい響きがあったから。 に髪を梳かれながら、イオスは安心して目を閉じた。 頬に当たる彼女の体温がとても愛しくて温かい。 握っている手も小さくて、でもすごく温かい。 「・・・すまなかった」 思わず、謝罪がこぼれた。 多分、ずっとずっと謝りたかった。 「君を手放した時も、本当はルヴァイド様や僕達の側に、いて欲しかったんだ・・・」 「・・・イオス?」 「キミはルヴァイド様に『忘れろ』と言ったけど、僕には無理だ」 月明かりの下で、君と再会をした。 あの時も君は優しく受け入れた。 ・・優しすぎて、君を狙った僕は苦しかった。 「・・ごめん、でも傷ついて欲しくなかったの、悩んでほしくなかった。 ・・忘れたら、何も躊躇わずに前に進んでくれると思って」 泣きそうな顔 抱きしめたくなる イオスはその気持ちをぐっと堪えて、言葉を繋げた。 「・・これからも、僕はキミを忘れない。キミが忘れろと言っても・・絶対に忘れないよ」 忘れない 君だけは、絶対に 髪を梳いていたの手が、止まった。 それを不思議そうにイオスが彼女を見上げれば。 彼女の目に、涙があった。 それにイオスが驚いて、慌てて起き上がって彼女を見据える。 「ど、どうし・・(汗)」 「ありがとう」 お礼を言われた。 それの意味がわからずに首を傾げつつ、彼女を見つめれば。 の頬に、涙が流れた。 「・・・ しばらく、何もいえなかった。 思わず固まってしまったイオスに構わず、彼女はぼろぼろと泣き出して。 泣きながら、笑って。 何度も”ありがとう”と呟いて、両手を覆った。 「・・?」 「本当は・・忘れてほしくなんか、なかったんだからねっ・・・! もうあんなこと言いたくなんか・・ないんだから!」 その言葉で、涙の意味を、少しだけ理解した気がする。 ”忘れて”と言った彼女。 その時の気持ちは、多分・・・さっきの言葉そのもの。 ようやくの気持ちが知ることが出来たみたいで、イオスは思わず笑みを浮かべた。 それにも笑って。 イオスの笑みが、ますます深くなる。 君は、笑ってくれるから どんなに僕が酷く突き放しても、君は歩み寄ってきてくれるから そして僕が笑うと、キミも笑ってくれるから そんな事が 酷く幸せに感じて 心に、染み渡って だから、きっと僕は忘れられないのだ 「・・レイム様・・“”は・・何者なのですか?」 ようやく戻ってきた岬の館。 帰ってきたキュラーは本気でレイムに殺されそうになった。(との逢瀬(?)を邪魔したから) だがキュラーも馬鹿ではない。 超至近距離で撮ったの写真で許してもらったのだ。 撮るなよ レイムはキュラーにの生写真を受けとって、それをうっとりと愛でながらキュラーの質問に答える。 「もちろん、私のスイートハートですvv」 「・・・ま、マジメに答えて欲しいのですが・・・(汗)」 「・・いえいえ、教えるわけには行きません。 他人に興味を持たないキュラーがそこまで気にかけるとなると私もうかうかしてられませんからね」 「・・・・は?」 側でピザを頬張っていたビーニャが声を上げた。 「えー!キュラーちゃん、アイツの事好きなのー?」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・は?」 レイムはポカンとするキュラーに微笑みながら親指を下にして、訴えた。 手ぇ出したらブッ殺ス ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。(滝汗) 「・・まぁ、合えて言うなら・・ある者の生まれ変わりと言う事ですね。 このリィンバウムには輪廻転生のシステムがある事をご存知でしょう?」 その言葉に、キュラーははっと息を呑む。 リィンバウムは魂を亡くすと転生して、次の生を受けると言うシステムがある その輪廻を巡って生まれ変わったのがなのだ 何の生まれ変わりかは・・、まだわからないが 「彼女の前世と私は色々とありまして・・・今だから言えることですが、私が悪魔を率いてこの世界を 攻めたのも、前世の彼女を手に入れるためだったのですよ」 「な・・・!?」 「ですがたかが一人の人間を手に入れるために、他の悪魔達は手を貸すはずがない・・・。 だからこの世界にある様々なことを彼らに吹き込んだのですから」 吹き込み、信じさせるのも苦労しましたよ そう言うとレイムは写真を抱えながら自分の部屋に戻って行った。 キュラーはそれを呆然としたまま見送り、ビーニャはそんなキュラーに魔獣をかじらせて遊ぶ。 出血多量で意識を無くしそうになりながらも、キュラーはレイムが変質者になった理由がわかった。 ああ、歪んだ愛でああなったんですね・・(遠目) かじられて出血しながらも、キュラーはそのまま部屋に戻り力尽きたのだった・・・。 合掌 一方、場所は変わってモーリン道場 トリスは大泣きしていた。 「うわーーーーーーーーん!おにいちゃーーん!さんが帰ってこないよーーーー!!(大泣)」 泣き付くトリスの頭を撫で撫でしながら、マグナはギロリとリューグを睨む。 兄貴本領発揮である。 「・・・・・・・・リューグ、はどこに行ったんだ?」 「し、知らねえよ!あいつが「先帰れ」って言うから・・(滝汗)」 リューグの言葉に、トリスは更に泣きだした。 それにつられて泣く事を堪えていたレシィまで泣き始めてしまって、モーリン道場はパニックである。 「うわーーーーーーーーーーーーーーーーーーーん!!(トリス大泣)」 「うわーーーーーーーーーーん!ご主人様あーーーーーーーーー!!(レシィ、大泣)」 「うるせーーーーーーーーーーーーーーーー!!(バルレル、マジギレ)」 ・・そしてギャアギャア言い合うモーリン道場の外では。 「ちょっとフォルテ、止めて来てよ!」 「無理だろ、あそこまで泣いてるあいつらを止めたら今度は俺が行方不明になっちまう(汗)」 「早く泣きやましておくれよ・・ここは周りの家から離れてても、あたい達が眠れなくなるんだよ」 不眠症になる自分達の姿を想像し、背筋を震わせながらトリス達を懸命に宥める。 そんな賑やか(過ぎる)空気の中、世界はとうとう夜になり。 月が美しくリィンバウムを照らしていたのだった・・。 NEXT ----------------------------------------------------------------------------- *後書き* 第29話をお届けさせて頂きました。 話のスピードは亀並です。 おおおおおおおおおおおお遅くって申し訳ありませんーーー!!!(土下座) 今回も、デグレアオンリー。 イオスもどんどん惹かれていきます・・と、いうかイオスは自分の気持ちに気付くのは早いと思います。 そして気がついたら気がついたで、さっさと行動に移しそう・・・(それはそれで、恐ろしい・・!) ヒロインの正体の事も少し出ました。 彼女はレイムと関係があります、そしてバルレルとも。 覆面キュラーからもらったハンマーは、次の服のためにと思って登場です。 新コスチュームですね!!(その言い方ヤメレ) それではここまで読んでくださってありがとうございました! 2002.1.17 2004.1,10(大幅修正) |