第27夜 トリス達がジャキーニを総勢リンチにしていた同時刻。 ロッカはの身体を砂浜に横たわらせ、頭を自分の膝に乗せて彼女を診る。 そして手首を握り、持ち上げた後にその手に自分の頬を当てて目を閉じた。 心底、安堵したため息を吐きながら。 「・・良かった・・・」 硬くない 冷たくない 肌の色も 小さな唇も、綺麗に色づいている 「 ロッカは大きく深呼吸を繰り返した。 取り合えず、恐れていた事は避けられた。 遠い人にならなくて、手の届かない人にならなくて・・済んだ。 (・・それにしても・・) どうして彼女が? その前にどうしてこんな時期に、こんな事が起こるんだ? 17年間生きて来たけれど、未だに忘れられない 世界で一番後悔したあの日 あの日が、再びやってくる 毎年、毎年 そうして僕らを苦しめる 悲しいあの日 (・・・マグナさんに“二人ともピリピリしてる”って言われたけど・・・どうしようもないし・・) ロッカは首を捻って苦笑した。 この時期になるといつもイライラして、落ち着かなくなる。 悲しくて、苦しくなって、そこから逃れたいように何かに当たって。 そうして、過ごして終わらせた。 それは弟のリューグも。 (・・そういえば、二人でお墓参りに行った事、なかったな・・・) ・・二人で父と母の墓に、行ったことがない・・ ”だがそれもしょうがないな”、とため息を付いて手で目元を覆って、空を仰ぐ。 爽快な、快晴。 それが酷く、目にしみた。 一人で泣いていたかったから 毎年、墓標の前で そんな姿を、兄弟にも誰にも見せたくなかったから ふと、膝に乗せてある顔が少し動いて、ロッカは慌てて思考を戻した。 小さなうめき声を漏らしてから、はパチっと目を覚ました。 そして、叫ぶ。 「いやああああああああ!!胸毛ーーーーーーーーーーーーー!!!!」 ・・胸毛・・? 意味不明の、言葉。 それがロッカの脳内に到達したその時、頬にバチーーーン!と彼女の平手が炸裂して。 ロッカの頬を殴り飛ばしたのだった。 それはもう見事としか言いようがない程、素晴らしく。 空手のチャンプも、プロボクシングのチャンピョンも拍手しそうなそんな拳。 微妙に懐かしき父を思い出したが、ロッカは取り合えず感想を述べた。 さん、痛いです・・・・(遠目) 「は、はれ?ロッカぁ???(滝汗)」 あたしは殴ったままのポーズで、すぐ側で痛そうに頬を抑えているロッカに目を丸くした。 ロッカはロッカで苦笑していて、腫れた頬をさする。 「・・いい腕してますね、さん(^^)」 「(Σ ̄□ ̄)わー!ごめーん!!だ、大丈夫・・?思いきり引っ叩いちゃった・・・(汗)」 あたしはロッカの頬をそっと撫でて、彼に詫びる。(うおー!やっちまったー!!!(滝のように後悔)) 一方、何故かロッカは顔を紅くしてわたわたと慌て出す。(か、可愛い・・!) 「だ、大丈夫です・・さん、無事で良かったですよ。」 「・・身体は大丈夫だけど心のトラウマは大きいわ・・・(沈)」 ロッカは“とらうま?”と首を傾げるが、すぐに真剣な表情に切り替える。 それは戦う時のように、厳しくてどこか物悲しい色を秘めていて。 今度はあたしは首を傾げた。 「・・ロッカ?」 「さん、約束してください」 「?(突然何・・?)」 ロッカはあたしの肩に頭をもたれさせて、懇願する様に頭を垂れた。 くぁ・・!受けクサイわ!!(そしてあたしが攻めで・・!)←痴女 「・・消えないでください」 はて? 今度はあたしがロッカの言葉に首を傾げた。 消えるってどーいう事さ?? 「いなくならないでください」 ”お願いですから” 苦しそうに、呟いた。 呟かれたそれにあたしは思わずロッカの肩に手を置いて、彼の肩をなだめるように とんとんと叩きながら、考えた。 こんなに悲しそうなロッカは二度目だ。 レルムの村の時も、こんな、すごく悲しそうな表情で。 (その前に、こんな話、知らない・・) 知らない それがあたしの頭を、さらに混乱させる。 「ロッカ・・、どうしたの?」 「 「・・ロッカ・・」 あたしの肩の服に、熱いモノが染み込んで来た。 それにあたしははっとロッカに顔を向け、もう一度名前を呼ぶ。 けれど彼は答えずに、肩に額を押さえつけている体勢から、あたしにしがみ付くように抱 きしめて来て、それに少しどきどきした。 彼の言いたいことがわからない でも、これだけは言わなくては 「ロッカ」 あたしはロッカの背に手を回して、優しく、ゆっくりとさすってやる。 「 約束、するよ 勝手に消えたりなんか、しないよ? だってあたしも死にたくなくて、生きていたくて しなくちゃいけないことも、したいことも、たくさんあるから ロッカは何も言わなかった。 ただ、更に力強くあたしを抱きしめて。 ・・抱きしめられながら、あたしは思わず顔を紅くする。 ロッカの肩が、腕が、首筋が オトコの人のものだと、ありありと物語っていたから 「ロ、ロッカ、そろそろ放して・・」 「さーーーーーーーーーーーーん!!!」 「わーーーーーーーーーーーーーー!!!!!////」 反射的に、どーん!っと思いきりロッカを突き飛ばしてしまった。(酷) それにロッカも、不意打ちをつかれたのかあっさりと吹っ飛ばされて、砂浜に倒れる。 妙に、酷く恥ずかしいと思うのは何故?(ときめきフラッシュか?!) 火照る顔を抑えつつもバッ!と、呼ばれた方向へ勢い良く振り向くと。 太陽の光に輝く砂浜を、笑顔で駆けてくるトリス。 ああっ!トリスってばキラキラ背景といいう技まで習得しちゃって!!(愛)←幻覚です 「わーーーーーーいvvvv無事でよかったーーーーーーーーーー!!!(><)」 彼女は思い切りあたしに飛び付いて、擦り寄ってきた。 ああ!柔らかい!!(変態) ごめん母さん!娘は危うい人種となってしまいました・・でも至福!(もうだめだ) 「さん、怪我してない?大丈夫??」 「け、怪我はないよ!大丈夫・・・!!(でも鼻血が出そうです)」 「・・良かったー・・」 トリスはニコニコしながらあたしにぎゅうっと抱き着いて来て、あたしもぎゅうっと抱き付き返した。 うはああああああああ!!!もう今ならジャキーニ瞬殺出来そう!(寧ろ殺りたい) (っていうか、ジャキーニ・・?) あたしはサッと顔を青くして、ばっとトリスとの身体を離し、トリスの顔を真正面から見返した。 「トリス!街は?!胸毛は?!」 「(胸毛・・<笑)街?街なら・・」 「街は無事ですよ」 後ろからのほほんとした声がして、あたし達は一斉に視線を集中させる。 ってか、今ののほほん声は・・・(ドキドキ) 目を向けた先には、綺麗な女の人がいた。 紅茶色の、柔らかな髪。 華奢なその体つきながらも、どこか大きな存在を感じさせる・・威圧感?(プレッシャー!?) そして、にっこりとした穏やかな笑顔。 あたしはもちろん、この人も知っていた。 金の派閥の議長、ファミィ・マーン ミニスの母親でもあり、あのマーン三兄弟の義理姉でもある あたしはその笑顔に眩しさを覚え、クラリと眩暈に襲われた。 ファミィさん、超マブシーーーーーーーーーーーーーー!!!! 旦那様を見てみたいです!ってか、見せてください(どんな経緯で結婚したのか知りたい・・) あたしは溢れ出て来ては止まらない疑問を振り払いながらも、ファミィさんを再び観察する。 相変わらずにこにことしていて、おっとりとしている雰囲気を醸し出している謎な女性。 その人の後ろには大量の、金色の鎧に身を纏った兵士達(またムサイ集団かい・・)。 うっわ、ピカピカのペカペカだー・・・(眩しいっちゅーねん!)←ツッコミ 「それでは、あとは私達に任せてくださいな・・・皆さん、お願いしますね」 「はっ!」 ワラワラと兵士達が船に乗り込んで行くその姿を見送ると、ファミィさんは 再びあたし達に目を向けると可愛らしく首を傾げた。 「あら?あららららら??」 「?え?ええ??(汗)」 「変ねぇ・・派閥の子の顔は皆覚えているつもりだったんですけど・・嫌だわ、私も歳かしら・・・?」 いーえ、貴女は充分現役で行けると思いマス(汗) 「・・所で・・そこで倒れている男のコを起こしてあげた方がいいんじゃないかしら?」 「あ、ロッカいたんだ?(気付かなかった)」 「ロッカーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!(滝汗)」 ああ!力強くなってく自分に乾杯だわ!!(泣) 突き飛ばした後、地面に倒れて頭を打って気絶してしまった彼の身体を揺さぶりながら、 日々日々逞しくなって行く自分に涙したのだった・・・ 「・・そう、そんなことがあったのね」 ファミィさんは、憂い気にため息をついた。 そんな彼女のため息に、マグナとトリスの後ろに隠れているミニスは、びくっと肩を震わせる。 あの負けん気の強いミニスがここまで怖がるとは・・!!(しかもため息だけでこの恐怖・・!<滝汗) 「皆様も、娘がお世話をおかけしてしまって申し訳ありませんでした」 ペコリと、ファミィさんが頭を下げる。 それにさすがのネスも”頭を上げてください、ファミィ様”と慌てて告げる。 相手は金の派閥の議長だ。 蒼の派閥の総帥や議長ならともかく、師範でもないただの下っ端である自分達に頭を下げるなど、 本来ならば恐れ多いことなのだろう。 けれどファミィさんは首を横に振って、にっこりと笑顔をネスに向けた。 「いいえ、ぜひお礼もさせてくださいな。娘のことを助けてくださったうえ、その上海賊達から この街を守ってくださって・・・本来なら、私がやるべきことでしたのに」 「その通りだよ!」 今まで黙っていた、モーリンが叫んだ。 それにあたし達はびっくりして、驚いた目のままモーリンを見る。 モーリン・・? 「あんた達は一体何をやってたんだよ!もう少しで・・もう少しでこの街があの馬鹿海賊どもに 壊されるところだったんだよ!!」 モーリンは息を荒くさせたまま、俯いてしまった。 ファミィさんはじっと彼女を見つめて、後ろに控えている兵士達が渋い表情を見せる。 自分達の議長が責められていることに、やはり気持ちいいものではないらしい。 兵士が、剣を持った手を動かした。 それにあたしはバッ!と両手を広げてモーリンの前に、兵士とファミィさんの前に立ちふさがる。 正確には、兵士達からモーリンを守るように。 金の派閥の兵士達に、傷つけられないように。 ファミィさんがいる前で、そんなことは有り得ないんだろうけど・・でもやっぱり、万が一のために。 モーリンは、疲れて、くたくただったあたし達を守ってくれた なら今度はあたし達が、モーリンを助ける番だ 「・・あなた・・」 「モーリンが言ったことは、謝ります」 「!何で謝る必要が・・!」 ・・あたしは知ってるから。 ファミィさんたちが、海賊退治よりも下町の人たちを非難させていたということを。 海賊よりも、人命を優先していたのだと。 だから知らないモーリンを止めるのは、知っているあたしの役目。 「謝る必要なんかないんだよ!こいつらは下町を・・!」 「ま、待ってモーリン!」 今度はトリスがモーリンのコートの裾を掴んだ。 慌てて舌がもつれているのか少々変な言葉を出していたが、ようやく落ち着くと一気に喋りだす。 「この人たち!下町の人たちを避難させていたんだって、ケイナから聞いたんだよ! 海賊退治より、下町の人たちを助けてたんだって・・!」 「・・え?」 その時、わらわらと兵士達が集まってきた。 それぞれ、下町の被害報告、壊れた箇所の報告、ファナンの港が大砲の被害を受けているか否か、 などなどの報告が全てファミィさんに寄せられていく。 そんな彼らの状況に、モーリンはポカンとしたまま彼らを見ていた。 あたしは彼女に、にっこりと笑う。 「ほら、モーリン」 「あ・・う(汗)」 「ちゃんと言うことがあるでしょ?」 モーリンがファミィさんの前に出た。 それにファミィさんはにこにこと彼女を見て、それにモーリンがさらに恥ずかしそうに俯いて。 「・・わ、悪かったよ・・」 「いいえ、そう思われても仕方がありませんわ」 「・・・ありがとう」 「どういたしまして(^^)」 和やかな空気。 それにモーリンはようやくほっとしたように表情を緩ませて、頭をかいてようやく笑った。 ああ・・モーリンの笑顔も癒し系だと思うわあたし・・!(和む・・!) 「も・・止めてくれてありがと」 「いいのいいの、そういう時は誰だってあるし」 あははと笑い返すあたしに、モーリンも笑って。 ほっとした空気に、あたしはほーっと胸を撫で下ろして、ジャキーニに連れて行かれた 経路の仲間達に説明していた。 だから、ファミィさんがあたしをじっと見ていたなんて、ちっとも気付かなかった。 ◆ 「・・それじゃ、後で私の娘を連れて来てくださいな・・ミニスちゃん、いいわね?(笑顔の圧力)」 「はわわわわ・・・!(汗)」 ファミィさんは“それではまた”と言って砂浜から姿を消して行った。 金の鎧の兵士達がジャキーニ達を引きずっていたけれど、あたしの目にあの胸毛の姿は入らなくて あたしは不思議に思ってアメルに訪ねた。 「ね、アメル・・どうしてあいつの胸毛がないの?」 「ああ・・剃りました♪(笑顔)」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・マジすか?」 「ええ!・・それじゃさん、1度モーリンさんの道場に戻りましょう?」 アメルはニコリと笑って、あたしの手を引いて道場へ足を運ばせた。 ・・ってーか、誰が剃ったんだ・・・・(汗) そんな切ない(?!)疑問を胸に秘めながら・・・ ようやく、無事に戻れたモーリン道場。 あたしは帰還できたことに喜ばずには、感激せずにはいられない。 だって・・だってほんとにもうあの胸毛海賊たちのところから戻れないかと思ってたんだもん・・!!(泣) そうやって感激に打ちひしがれている間に、話はズンドコ進んでいって。 ミニスが恐怖の的としているファミィさんのところへ行く話に、彼女はブンブンと首を振って いるところだった。 「ミニス・・どうするんだ?」 「いーやー!ぜーったい嫌ーーーーーーー!!!(><)」 ミニスは身を震わせながらダダをこねる。 まぁ・・行ったら行ったでファミィさんお得意の“どっかーん”やら“ビリビリ”だしねー・・(遠目) ・・頑張れ!ミニス!! あたしはミニスに応援エールを送りながらも、そっとその場を離れた。 そして辺りを見回して、ロッカとリューグの姿を探しに廊下を歩く。 ロッカの様子もおかしくて、リューグの様子もおかしかったから。 (マグナも、トリスも、皆心配してたし・・) 何かあるんじゃないかって、思ってしまう。 いつも喧嘩していて、気丈に振舞っているけれど・・本当は深い傷があるから。 誰にも癒せないような・・深いココロの傷が。 あたしは、やっぱり、それも知っている (あー・・なんかあたしばっかり知ってる気がするなぁ) 少し、ズルイよねぇなどと思いつつ、彼らの姿を探し続ける。 けれど外には姿が見えなかったから、あたしは道場に戻って割り当てられた部屋を探すことにした。 リューグの部屋に辿り付いて、ガチャリとドアを開ける。 「リューグ、入るよー・・ 「テメエ、ノックくらいしろよ・・・(呆れ)」 乙女の為にあるゲームのお約束展開、その1 着替えでバッタリ☆そしてドキリシーン!である あたしは思わず“うっしゃぁ!”と、心の中でガッツポーズ。 それにリューグが不審そうな目であたしを見るので、ハッと我に返って、乾いた笑いを 出してごまかしながら、遠慮なく、ズカズカと、リューグが着替えている部屋に入り込む。 ああ!何か快感だわ・・・! 「あ、あたしのことは気にせずどーぞvv」 ボスンとベッドに座りながらそう言って、ジッとリューグの身体を 発達した、無駄のない筋肉がついた体。 斧や剣を振るっているおかげか二の腕なんてあたしの2回りも違う。 少年と言う年齢だけど・・彼もまた立派なオトコの人なのだ。 ああ!でも近くで見ると美味しそう!!(悦) 「・・リューグって・・ほんっとーーーーーーーに良い身体付きしてるよねー・・・(うっとり)」 「・・・・・目がアブねえぞ・・・・(滝汗)」 危なくてオッケィ!(意気込み) 良くねえよ(俺が怖ぇ) リューグは再びため息を吐きながら、いつもの上着を軽く被って顔を出すと、 ベッドに座っているあたしをじっと見下ろした。 「ん?何?」 「何って・・テメエが俺に用事でもあるんじゃねえのかよ」 「・・あ、そっか。うんうん、用事アリです」 リューグは呆れた表情を見せながらも、ドカっとあたしの隣りに座り込んで、話を促した。 座り込んだ衝動にグラリと身体が揺れて後ろに倒れそうになったけど、慌ててバランスを とって彼の横顔を見つめる。 うわー、薄着のリューグって初めてだワー・・ 「で、何の用だ」 「うん、・・なんかイライラしてるねーって思って」 「別に」 あ。 今、どこか突き放された。 (・・うむむ、あくまで突き放すつもりね!) 逆に絡み付いてやるワー!と無駄に意気込んで、あたしは喋ることを続けた。 絶対、絶対ここで突き放されてなるものか。 あたしは確かに関係ないんだろうけど・・でも、知りたいのだ。 「それにピリピリしてる。んで不機嫌オーラのせいで近寄りがたくなってる。 ・・あんた、普段から近寄りがたいんだからこれ以上近寄りがたくしてどーすんのよ」 「・・・・・」 「ロッカもヘンだったし、気になったのよ」 「・・・馬鹿兄貴も・・だと?」 「うん、ロッカも、リューグも、二人そろってピリピリして・・何かあった?」 「何でもねえよ」 不快そうな表情が、彼の顔に表れた。 それに一瞬怯みそうになったけど、あたしはじっとリューグを見つめ続けて、 もう一度”何かあった?”と聞けば、彼はついに怒鳴った。 「うるせえ!何もないっつってんだろ!!」 側にあったあたしの手を取って手首をきつく握り締めた。 突然の事に訳が解からず戸惑った表情でリューグを見上げると、 リューグは怒りの表情を露にしたままあたしを見ていて。 「テメエが俺の中に無遠慮に入ってくるんじゃねえよ!関係ねえだろ?!」 「ちょ・・どうし・・?」 「お前の行動が全部気にくわねえ!何もかも見透かしているような目で俺を見て・・!」 リューグの言葉に、ギクリとした。 ”何もかも見透かして”という言葉。 別に見透かしているつもりはない。 あたしは知っているだけ・・いや、それが見透かしているっていうんだろうけど。 でもあたしは、知らない。 ロッカとリューグの様子がおかしい理由なんか、しらない。 手首を掴んで抑え込んでいるリューグの手を外そうとするけど、まったく敵わなくて、 しょうがないのであたしはリューグを睨み返した。 でも知りたいのよ 知りたいなら、こっちから近づいていかなくちゃいけないじゃない 違う リューグはを見下ろしながら、先ほど言い放った言葉を後悔した。 違う 本当はこんな事を言いたいんじゃない ・・確かに、見透かされていると思って、少々イラついたこともある。 けれど行動が全部気に食わないというのは、嘘だ。 彼女の言葉に・・癒されたことだって、ある ただ、怖かっただけだ あの日が近いから 両親の命日が そんな時に、あの海賊達に連れて行かれてしまうから 「・・ッチ・・!」 リューグは舌打ちながらの手首から自分の手外して、ベッドに置いて あった鎧を体に取り付ける。 手には、先ほどの腕の感触がまだ残っていた。 掴んだ手首は自分には細くて、細過ぎて、壊してしまうかと思ってしまって。 妙な気持ちが体を渦巻く。 「・・」 「な、何よ」 「・・ は、きょとんとした表情でリューグを見上げた。 まさか素直に謝られるなどと思ってもいなかったのだろう。 彼女はため息を吐いて、首を横に振る。 「あたしも、しつこく聞いて悪かったわ・・」 「今、時間、あるか?」 は首を傾げて、戸惑ったような表情を見せながらも頷いた。 あと、一言 本当は一人で行きたかったし、誰にも見られたくない自分を晒してしまうかもしれないけれど。 それでも、なら リューグは深呼吸しながらも、を見下ろして言い放った。 「・・俺達の、イラついてる原因を教えてやるよ」 「・・ホント?行く!!」 はベッドから飛び降りて、リューグの隣りに立つ。 その瞬間、不思議と落ち着いたような感覚がリューグの中に生まれて。 思わずをジッと見つめてしまった。 「・・?何よ」 「何でもねえよ」 「あ!言っとくけど今更“着いて来るな”って言ってもダメだかんね!絶対教えてよ!!」 思ったことと全然違っている内容に怒り顔を見せるに、リューグは思わず笑みを零した。 「・・テメエって・・馬鹿だろ?」 「馬鹿ぁ?!リューグよりかは賢いと思ってるわよ!ってか、賢いわよ!(断言)」 「・・さっさと行くぞ、トリス達があのガキの面倒見ている間に終らせなくちゃいけねえからな」 「・・どこに行くの?」 リューグは一瞬暗い影を作って、さっさと外へ出ようと扉を開いた。 そして部屋から出る直前、ポツリと短く言葉を漏らして廊下の窓から見える空を見上げた。 「レルムの村だ」 「・・?あれ・・アメルの声しない??お兄ちゃん」 「あ、ホントだ」 マグナ達は、台所から聞えて来るアメルの声に足を止めて、そっと耳を済ました。 晴れわたる空 風にそよぐ花 今日は 今日は 遠くへ出かけましょう バスケット持って おいもさんのパンを焼いて みんなを誘って とてもわくわくする トリスはヒョコっと顔を覗かせて中を見ると、アメルが楽しそうに歌を歌いながらパンの 生地を練っていてそれを手慣れたように形をつけていた。 覗いているトリス達に気付くとにこりと笑って、話しかけた。 「どうしたんですか?皆揃って・・・」 「え?いや・・歌が聞こえたから・・・」 アメルはふっと俯いて、パンの生地を練っていた棒を机の上に置いて窓の外を見る。 外は天気が良いがアメルの心は晴れなかった。 もう少しでリューグとロッカの両親の命日 きっと近いうちに、彼らは墓参りにいくのだろう ・・独りで 「明日出かけるでしょう?それの昼食のための下地を作ってたんです。 お弁当を持って出た方が・・途中でお腹空かないようにって思って・・・。 それでいつものクセで歌を歌ってしまうんです」 リューグには呆れられて、ロッカには笑われちゃいますけどね? アメルは笑ってパンの生地を再び練る。 あの大人数&食欲旺盛なのでたくさんなければあっという間になくなってしまう。 トリス達に「行ってらっしゃい」と言ってから、アメルは再び歌い出した。 みんなと一緒にいられて すごくうれしくて お礼に おいしい パンを焼こう 晴れわたる空 風が心地いい 今日は みんなで 遠くへ出かけましょう バスケット持って アメルはそこまで歌ってピタリとパンを練る手を止めて、目元を滲ませ床にしゃがみこんで嗚咽を漏らした。 それは血の繋がらぬ家族の為の涙で。 さん ロッカとリューグを助けてください すごく すごく悲しくて 傷ついた心を持っているんです あたしじゃ癒せてあげられないんです 聖女の奇跡でも無理なんです ・・誰かの優しさが さんの優しさやその行動が 二人を助けているから 包んでいるから ・・時折見る貴女の淋しげな表情は知ってます 眠れないのか、よく屋根に登って膝を抱えて蹲っている貴女を知ってます でも お願いです お願いですから アメルはボロボロと涙を拭いながら、元気を出そうと再び歌を歌い始めた。 自分を励まそうと、勇気付けながら。 晴れわたる空 風が心地いい 今日は みんなで 遠くへ出かけましょう バスケット持って 聖女が声を震わせて歌われたその歌は 風に乗って穏やかに運ばれるのだった。 「・・っ・・」 モーリンの道場のとある一室。 暗くなっている部屋で、ネスティは自分の体を抱きしめながら壁にを背に座り込んで痛みを耐えていた。 それは長年に渡りながらも、ネスティの体を苦しみ続けた激しい痛み。 蒼の派閥の薬がなければ未だに治らず、蝕み続ける。 「・・っく・・・クソ・・!」 どんなにもがいてもあがいても この苦しみがこの激痛が和らぐ事は1度もない 融機人の体が酷く脆い この痛みが永遠に自分を蝕むと思うとゾッとして たまに 消えてしまいたくなる時がある それはいつまでも同じで 悲しい宿命 それを独りで抱え込まなければならない 義父が死んでしまうと 側に居てくれる者は、本当の自分を知る者はいなくなり 独りでこの痛みに耐えなくてはならない (・・それは・・嫌だな・・・) 虚ろな意識の中、ネスティは一人自嘲した。 トリスとマグナに知られる事が怖い。 先輩達や仲間に知られる事も怖い。 にも。 異常なこの体を見て、離れて行かれるのは嫌だ。 独りになりたくない。 融機人は自分一人になってしまったのだ。 「僕は・・どうすれば良いんだろうか」 どうしようもない気持ち覆われながら、ネスティも空を見上げた。 こんな激痛に覆われながらも、思い出すのはの顔。 「・・キミは・・本当に変わってる」 額に口付けされた時の感触もまだ残っている あの小さな唇の温かさも柔らかさも 小柄なその身体も キミに素直になれたら、どんなに気持ちがいい事か ネスティは以前、自分がしそうになった事を思い出して思わず頬を染めた。 二日酔いで眠っているにキスしそうになった事を。 あの瞬間に、自覚した・・のかもしれない。 口に出すと、何かが変わってしまいそうで彼女に言えないけれど。 言って、想いが通じたとしても・・自分の姿を拒絶されるのが怖いから。 トリス達に過去を打ち明ける勇気すら足りないのに、そんなことが出来るはずがない。 「・・それでも・・」 キミが側に居てくれる時は 消えたくないと願える 痛みに意識を奪われて、ネスティはそのまま深い眠りに陥った。 微かに開いた窓からは、風が小さく流れ込んで来て。 眠りに落ちた彼の髪を揺らしたのだった・・・。 癒される事を願うように NEXT ----------------------------------------------------------------------------- *後書き* 第27話をお届けさせて頂きました。 強い女の人は好きです。 腕っ節が強い人も憧れるのですが、芯の強い人も憧れです。 リューグとロッカがが落ち込んでいる理由は、両親の命日が近いからです。 彼らの両親の命日なんて知りませんが・・オリジナル設定と言う事で許してください。(汗) その前に護衛獣どうした主人公な展開ですが、・・お留守番と言う事でツッコミを入れない でやってください。(吐血) それにしても今回ギャグ少ない・・次も少なそうだ・・は、ハジけてぇよ・・・! アメルが歌っていた歌はちゅーりぽぽんた様から頂いてしまいました! 丁度アメルのシーンで止まってる時にぽぽさんが歌詩掲示板にカキコんでくださってたので 即行で打てました!ありがとうございます!!(><) ハサハたちのセリフや、祭りのセリフを送ってくださった水無月様。 どうもありがとうございました!とても参考になりました・・!! 2002.1.12 2004.1.4修正 |