月が晴れる 暗い世界に光が灯る 月明かりの下で揺れるのは、草原の草 それはまるで聖歌のよう 第23夜 ”・・聖女と・・“”は我らデグレアが勝利の為に捕らえる!” 告げられたのは、その言葉。 突きつけられたのは、彼らのこれから行うコト。 それはあまりにも、あたしの予想をはるかに裏切っているものだった。 (・・・ええと?) あたしは自分が(何故か)デグレアの捕獲対象になったことを聞いて、 すっかり頭の中は混乱していた。 ルヴァイド達が、あたしを捕まえる。 アメルと同じように、捕獲する。 彼女のように癒しの力が使えるわけでもないのに。 何故?!Why?!(動揺) 「ちょ・・ちょっと待って!どうしてあたしが対象になってるの?!」 ようやく出た抗議の言葉はそれだった。 でもその言葉は、トリス達も聞きたいことだろう。 あたし自身も信じられない気持ちで一杯だ。 「・・・・・・・」 けれど、ルヴァイドは何も答えてくれなかった。 あたしは彼の隣りにいるイオスに視線を向けて問いかけた。 「イオス!どうしてなの?!」 「・・・」 彼もまた、何も答えてくれなかった。 ただあたしから視線を逸らして、悔しそうに唇を噛み締めている。 イオス達を非難することよりも、あたしの中ではただ、それしか思い浮かばなくて。 (・・もしかしてレイムが何か・・って) あたしの中に、良からぬ考えが走った。 どうせあの変態のことだから“さんをGETしたいの連れてきなさい”とか、 マヌケな命令を出したんじゃ・・・・!!!?(滝汗) (いやああああああああああああああああ!!!!!それだけは勘弁!ってか、 そんなんで捕まるのはいやだあああああああああ!!!一生の恥だ!) あたしは思わず頭を抱えた。(後ろでフォルテがかなりビビっていたけど無視) ってか、そんなので連れて行かれたらあたしの貞操は一瞬で奪われるわよ! 冗談じゃない 彼らにあんな悲しい顔をさせるなんて嫌だ 大事な 大事な友達がそんなマヌケな理由で また苦しい思いをさせられるなんて絶対嫌だ 「ルヴァイド!!あんた達の上司は一体何を考えて 「総員!行けぇ!」 あたしの言葉を遮ってイオスが吼えた。 指揮隊長である彼の言葉に、十分な訓練をされている黒の旅団の兵士達が あたし達に襲いかかり、銀色の刃を月の光に照らしながら振りかざす。 「!!」 あたしを抱き寄せて、フォルテが両手で持つ剣を片手に持ち変え、向けられた刃を 受け流し、ガキィンッ!っと腹の底まで響くような音を立ててそれを弾いた。 抱き寄せられて、フォルテから草原の香りがしたのがわかった。(歩いてる時に移ったのかな?) 「フォルテ!大丈夫なの?!」 香りに一瞬、気を逸れたけど、あたしの意識はすぐにフォルテの手首に移った。 彼は片手剣も両手剣も使える器用タイプだけど、今彼が持っているのは両手で持つ剣で、 少なくとも片手で持って強い旅団の攻撃を弾き返せば、負担がかかるだろう。 フォルテは腕の中で心配するあたしに、呆れた顔を見せた。 「そりゃこっちのセリフだっての・・、しかしやっぱ両手用の剣だから、 ちっとばかし重かったな」 「い、痛い?!」 ああ、なんて変なことを聞くのだか 自分自身に呆れながらも、あたしはフォルテを見上げた。 彼はいつもの笑顔であたしの頭をぽんぽん叩いて、あたしを背に庇って剣を構える。 「重かっただけだって、気にすんな」 普段はケイナにどつかれているけれど、この中で一番長い実戦経験者であるフォルテ は、本当に頼もしい。(たまーーーーに、お馬鹿なところもあるけどね・・<遠い目) 彼に続きマグナ達も応戦し、銀の刃を己の武器で迎え打つ。 草原は一気に混乱の場になって、あたしはどうすればいいかわからなくなってしまった。 (と、取り合えず理由を・・!) 震えながらも一歩前に足を踏み出すが、草原の長い草に足を取られ顔面からこけてしまった。 くぅ!なんか情けない・・・!(汗) 土に汚れる顔をこすりながらもどうにか立ち上がろうと手に力をこめると、 あたしの頭上だけが陰る。 ・・・・・・・・・・・・誰か、いる 恐る恐る顔を上げれば、目の前にはルヴァイドがそこにいた。 月を背後にしてあたしの前に佇む彼の姿に、そして彼の手にあるそれに、息を呑む。 兜を被った彼の手には、血のついた剣。 「・・ル、ルヴァイド」 「・・・」 あたしは勇気を最大限にまで振り絞って、彼を見上げて睨みやる。 「何で、あたしなの?」 「・・・・・」 「・・・あたしが、何だって言うのよ!」 最後の言葉は不安をぬぐいさるために、自分に向けた言葉だった。 数日前に、自分の中にあるものに怖くなって怯えていたのに、さらに追い討ちを かけるようなルヴァイドの行動に、あたしはますます怖くなったのだ。 ルヴァイドはただ黙ってあたしを見下ろして、腕を掴んで無理矢理立たせると、 軽々と肩に抱えあげた。 ちなみに、あたしと彼の身長差は、あまりにも開きすぎているもので。 自然と、あたしの視界の目線は一気に高くなる。 ぎゃーーーーー!高い!ってか、いきなり抱え上げるなーーー!!(怖ぇー!) 「(高い高い高い高い!<恐怖MAX)ル、ルヴァイド!降ろして!」 「・・・・・」 やっぱり、また何も答えない。 それに不安がますます募り、ぎゅうっと彼のマントを一度、強く掴んで。 「嫌よ!あたしは嫌よ!!何も聞いてないのに!・・まだ、ルヴァイドの口から 何も答えてもらっていないのに、軍に引き渡されるなんて!!」 納得できなかった ・・・・・納得なんか、できるはずがないのだ 何が一体どうなって、こうなったのか あたしはまだ、そのことをルヴァイド達から何も聞いていない ルヴァイドに担がれながら、あたしは兜の頭部をガンガン殴って抵抗する。 その間にも彼はあたしをトリス達から引き離し、戦場から少し離れた、 馬を止めてある場所まで連れて行こうとする。 馬の意味に、思わず呼吸をすることを忘れてしまった。 このまま、連れて行かれるというのだろうか? 何モ、聞カナイママ 何モ、聞ケナイママニ 「ルヴァイド!嫌っ とうとう、悲鳴に近い声がこぼれた。 それにようやくルヴァイドが足を止めて、あたしは叫びに叫びまくったため乱れて しまった呼吸を整えて、降ろされないように彼のマントをしっかりと掴む。 降ろされたら終わりだー!(泣) 「 彼が、あたしの名前を呼んだ。 続いて出たのは。 「俺は、どうすればいいのかわからない」 戸惑いの声音を秘めた、言葉。 それがようやく聞けた、ルヴァイドの答え。 あたしはルヴァイドの肩に手を当てて、何とか身を起こすと彼の横顔を覗きこんだ。 兜が邪魔で表情まではわからないが、あたしを抱えている手がわずかに、震えている。 それに、あたしは抵抗する事さえ忘れてしまった。 「・・ルヴァイド?」 「イオス、を頼む」 ルヴァイドは、何時の間にか隣りに来たイオスにあたしを手渡して(ってか、 あたしは物扱い?!)、トリス達の戦っている輪の中へ駆けて行った。 こらーーーーーーー!!まだちゃんと返事してないでしょーーーーーーー?!!? あたしはあたしで、今度はイオスに抱えられながらも、何とか抗議の声を出す。 ルヴァイドがだめなら部下に聞くまで!! 「イオス!何があったの?!」 「・・」 「あんた達が、あたしを捕獲するなんてどう言う事? あんた達の上司は・・アメルだけじゃなくてあたしまで望んでいるの?」 「 頭が痛くなった。(マジかよ神様!) あの変態があたしを望んでるなんて・・ああああ、すごいロクなことしかなさそうだ。 「あたしが、一体何になるっていうのよ!・・あたしに、何があるのよ・・!」 今度はルヴァイドではなくイオスの肩にしがみついて、あたしは言葉を吐き出していく。 彼はあたしの言葉の一言一言に、苦痛の表情を浮かべて、眉をゆがめて耐えている。 そんなイオスの姿に、あたしは何だか悲しくなった。 ドウシテ、教エテクレナイノ? しばし、沈黙が流れる。 遠くのほうでは、召喚術の発動音や剣戟が、何度も耳に木霊する。 ああ、戦いの音が向こうでしているというのに、あたしは何でここで、 こんな荷物のように担がれているのよ? 考えていたら、哀しかった気持ちが、どんどん腹立ってきた。 こうなったらどんな答えが出ようとも、イオスに聞いてからじゃなきゃトリス 達のところに戻れないわよ! 「イオス!」 怒った声音で、耳元で怒鳴る。 それにイオスがびくりと身体を震わせて、・・・・・・答えを、吐き出していく。 「・・僕達は、キミのことに関して何も聞いていない」 「へ?」 いまだ、彼自身も信じられないとでもいうように、うわ言を言うようにしゃべり続ける。 「あの男がキミを捕まえて来いだと言うなんて思ってもみなかったんだ。 ただ、キミに不思議な力があるとしか教えてくれなかった」 不思議な力? ・・レイムは、あたしの、あの訳のわからない力のこと知ってんの? ・・・・・・・・・・・・っていうか何でやねん!(関西風ツッコミ) レイムに対してツッコミを入れていたら、イオスが突然、すとんっとあたしを 地面に降ろした。(ギャ!)それに思わずイオスの肩に両手を置いたまま、 驚いた表情のままの彼を見上げたら、彼はあたしの両手を取って、 ぎゅうっとそれを握り締める。 「でもこれだけは信じて欲しい、ルヴァイド様は迷っている」 「?」 「・・僕も迷っている、キミを ”あんな男の元に連れて行くなど従いたくもない”と、彼は低く呟く。 よほどレイム達デッビール(悪魔)組が嫌いなようである。(まぁわかるけれど) 「逃がしてやりたい、キミをこのまま離してやりたい」 イオスはさらに力をこめて、あたしの手を握る。 それが痛くて思わず顔をゆがめるけれど、あたしはイオスから目を逸らさなかった。 目を、逸らしてはいけない。 「・・・でも僕には無理だ、僕達には軍を逆らえない理由がある」 「・・理由」 あたしは、イオスの言葉の一部を呟いた。 けれどそれは呟きであって、問いかけではなかった。 あたしは知っているのだ、彼らが軍に忠実に従う理由を。 それはルヴァイドの一族のためだと 優しい騎士の、大切な物を守るためだということを、・・あたしは知っている 「それが他人にとって、キミにとってどんなにくだらないことでも・・ 僕達には、あの方にはとても大切なことなんだ」 「うん」 「でもだからといって、キミを引き渡して汚名を返上しても・・きっと、ずっと一生、 僕達は後悔したまま生きていくことになる」 その言葉に、あたしは少し嬉しくなって。 彼に、微笑んだ。 あたしは、彼らにとって良い位置にいるのだとわかったからだ。 「・・だから、キミ自身の力で逃げてくれ」 イオスがあたしの笑顔に、弱弱しく微笑み返してくれる。 それは何だか、泣き笑いに近い表情にも似ているなと、あたしは思った。 「・・自分で逃げて、離れて欲しい 「ルヴァイドを?」 「あの人を救えるのは、きっとキミだけだ」 その時初めて、あたしはイオスから視線を外して、フォルテとリューグ、 マグナを相手にして剣を振るっているルヴァイドの後姿を見た。 ・・・助ける? 「キミにしか出来ないんだ・・キミが対象に加わったと聞いた時、 ルヴァイド様は今日まで一睡もせず、悩んで・・苦しんでいたんだ」 あの人を許すことができた あの人に、生かす力を与えたキミだけが 「・・僕はこれ以上、あの人に・・・悲しい想いをさせたくない 僕では、無理だから ただ側に居る事が出来ても 支えてやれる事が出来ても 救ってやる事は出来ないから ・・癒せるのは 救えるのは “”だけなんだ あたしはイオスの言葉をぼんやりと聞きながら、遠くのルヴァイドを見た。 言われて見れば何だか、さっきからミスばっかりしてる気がする。 何となく、弱ってる気がする。 いつものルヴァイドらしくない。 ・・悩んで、くれたの? 「頼む、このままだと・・」 「・・イオスも、悩んでくれたの?」 あたしはそっとイオスの目元をなぞる。 彼の綺麗な肌がなんとなく荒れているような感触がして、彼も寝ていないと すぐにわかった。(あのスベスベのタマゴ肌が・・!) イオスは目を閉じて、あたしに撫でられるままに身を委ねた。 「・・そっか」 あたしは握られるままになっていた自分の手で、イオスの手を握り返す。 そんな彼の指先は冷たくて、手のひらが温かい。 助けを、求めてくれている イオスが ルヴァイドが こんなあたしに、助けを求めているんだ ならあたしは、それに答えなくては ・・彼らの友人として相応しく 「うん、わかった」 あたしが、出来る事ならば イオスは信じられないような表情で顔を上げ、あたしを見つめた。 ちょっとちょっと、そんな意外そうな顔しなくていいんじゃない?(汗) ふふ、別にいわーよ・・(遠目) 「・・それじゃ、あたしはあんたから逃げる事は出来ないのね?」 「ああ、兵士の目もあるから表上はな・・キミの仲間が助けに来ない限りは・・」 ・・・・・・・・・・・・・・。 あたしの位置は、トリス達の輪の反対方向。 助けが来る→ルヴァイドに勝利した ルヴァイドに負ける→助けが来ない 「ギャー!やばいわよこれは!!っていうかそれじゃ全部終ってからじゃない!」 「・・誰か一人くらいは突破してこないものか(汗)」 「あ、それ無理っぽい!だってルヴァイドが壁のようなディフェンスで遮ってるもし!」 「・・(でぃふぇんす?)」 あたしの言葉にイオスは首を傾げるが、説明するのも面倒くさいのでそれを無視して ルヴァイド達の方へ向くと苦戦している、両者とも。 ああもう!誰か助けに来なさいよ! ”むしろこのまま突撃してあたしが助けに行ってやろうか?!”と、とんでもない考えを 呟くあたしの顔から、イオスがふっと視線を下げた。 そこであたしの服が違うことに気がついたのか、食い入るように見つめて。 「・・服・・・」 「ん?ああ、ロッカとリューグが買ってきてくれたの(本当はミモザ達が買いに行かせた)」 その言葉でイオスはピクリと眉を吊り上げるが、すぐに元の表情に戻って。 何故か頬を染めながら(乙女・・!)、あたしから視線を逸らして言葉を出す。 「・・でも、ぼ、僕の服よりは・・・似合うと思う・・・///」 けれどルヴァイドやマグナ達に熱視線(またの名を応援視線)を向けて集中していたので、 あたしは普通に聞き流してしまい。 「ん?何か言った?」 「・・・・・・・・・・(沈)」 妙に沈んでいるイオスに“?”マークを飛ばすあたし。 ・・何なのさ? その時、高い、子供の声と共に一風の風が吹いた。 「おいニンゲン!邪魔だぁ!」 「?!」 空を仰げば、白刃の刃。 それに一瞬目を奪われながらも見上げていれば、空を舞う小さな悪魔は重力の法則に 従い、ニヤリと顔に笑みを浮かべ槍を振り上げながら、あたしをイオスの間に降り立ち、 見えぬ速さでそれを振るう。(ギャー!!?) それにイオスはあっさりとあたしを手放して数歩後退し、“危険極まりないタイミングだけど チャンスだわ!”と、あたし自身もイオスの手からあっさりと離れてやった。 槍の刃が標的を貫かなかったことに、バルレルは舌を打つ。 「チッ!外したか!おい、怪我はしてねーだろうな?」 「あ、ありがと・・!」 バルレルの背にどうにか隠れることに成功しつつ、一瞬のうちに流れ起きた救出(?)に、 今だ穏やかにならない心臓近くを抑えながら、あたしは返事をする。 ・・あ、あああああ危なかった!っていうか怖かったよー!! だって槍がいきなり頭上から振り下ろされるのよ?死ぬかと思ったわよバルレル!(怒) イオスも応戦しようと素早く槍を構えた。 それにバルレルも槍を構えて、槍VS槍な構図が出来上がる。 うわー、意外な組み合わせよねぇ・・これって。 「ったくよぉ、世話焼かすんじゃねえよニンゲン!」 「ああもうごめんごめん!後で何か奢ってあげるから・・チャラにしてよ、ね?」 「・・その言葉に二言はねえな?(ニヤリ)」 「・・・・・・・・・・・・・・・・(言うんじゃなかったかも)二言はないけど、アメルには秘密よ?」 じゃないとあたしがアメルに怒られちゃうからね! 「お前の給料でどんどん奢らせてやるから覚悟しとけよ!」 「・・(足元見てやがるわね、さすが悪魔・・<怒)程ほどにしてくれないと、シメるからねvvv」 「・・・ぐっ」 拳を固めてバルレルに爽やかな笑顔をプレゼントした後、あたしは身を翻す。 うははははは!あたしって何て優しいのかしら!!(違っ) そんなバルレルの大好物はお酒だ。 けれどトリスとの誓約により、本来の力を強く封じ込められてたせいで子供の外見をしている 彼は、アメルに完全なる子供とみなされているのだ。 そのため、彼は何度もお酒を飲む機会を彼女によって奪われているのである。 本当は大人なんだけどねぇ・・(しかもとびきりの美形!) いつか会えると嬉しいなぁ、っていうか美味しそうよねぇ、などと腐女子的思考展開して しまう自分をどうにか抑えつつ、バルレルはご機嫌な顔で「当たり前だろ!」と答え、 果敢にイオスに立ち向かった。 二人の刃が、何度も互いをはじき返す。 刃と刃が奏でるとても高い、澄んだ金属音が耳を打つ。 ああ、あたしってばこの場合どっちを応援すればいいのかしら! っていうかひとまず場を和ませるため”やめて!あたしのために争わないで!” などとボケてみるのが一番なのだろうか・・って、んなことしてる場合じゃないっつ ーの!(ビシッ!<裏拳ツッコミ) 自らに心の中でツッコミを入れたその瞬間。 あたし達から少し離れたところの草むらに、何かが投げ込まれた音がした。 それに意識を向けた途端、ボンッ!!っと何かが破裂したような音が夜空に響き、 同時に大量の煙があたしたちを包み、空も、草原を包み込んでいく。 け、煙クサーーー!! 「ゲホッ!ゲホッ!!い、一体何が・・!」 耳元で、ひそやかな声。 あんまりにも聞き惚れそうな良い声だったけれど、慌てて首をあちこちにめぐらせても、 誰もいない。(まさか・・!!<汗) が切り開いてくれるでしょう、さ・・早く 声がだんだん、遠のいていく。 遠のいていくそれに、あたしは煙に包まれた空に向かって思わず、 とある人の名前を叫ぼうとする。 「やぁ、大分苦戦しているようだね?」 けれど後ろから爽やかに声がかけられ、あたしは名前を叫ぶことなく振り向いた。 煙の向こうに2つの影が映し出されていて、その影をしっかりと捉えようと目を 細めれば、そこにいたのはやはり、彼らだった。 「貴方達がこうする事を予想はしてたけど、まっさかその通りに動くとは思わなかったわ〜」 ギブソンの綺麗な金色の髪がゆるやかに、ミモザの甘そうな茶色い髪がサラリと、 涼やかな風に乗って流れた。 バルレルはその姿と声を確認すると、嫌そうな顔をする。(特に女の方を見て) あははは、ナイスタイミングー(汗) トリスとマグナも彼らの姿が見えたのか、嬉しそうに彼らを呼んだ。 「ギブソン先輩!ミモザ先輩!」 「はぁーい、トリス♪水臭いじゃない?黙って出て行くなんて・・」 「僕達も手伝おう」 ギブソンの言葉に、よおっしゃぁ!と一発、ガッツポーズをするあたし。 これでどうにかゲーム通り、多少予想外なものがあったけど(何であたしが捕まらなく ちゃならんのよ)、とりあえずこのまま進行していけば、誰かが死ぬなんてことはないはず。 あたしは後方でギブソン達を見据え、槍を構えているイオスを見た。 そしてその次にはリューグ達を相手にしているルヴァイド、ゼルフィルドを見る。 死なせてなんか、やらない もっともっと生かさせる それを条件に、あたしは自分で自分を説得し、納得させて 彼らを許したのだから 「それじゃ、バルレルに彼をまかせて・・僕達は他のやつらを引き受けよう」 「ッケ、仕方がねぇな」 イオスに向かう彼を見送り、ギブソンは杖を掲げ、彼の服の袖が腕を振られてバサッとたなびく。 すっきりとしたその顔立ちからすぅっと感情が消え、ただただ、その唇から静かに、謳うように、 詠唱を始めた。 「我が名はギブソン・ジラール」 名を明かすことから始まった、彼の詠唱。 片手に杖、片手にサモナイト石<霊>を握り締める彼の手のモノのそれぞれが、 彼の言葉に反応したのか、僅かに光をこぼし始める。 詠唱が続く。 それに伴い杖の先端に琥珀色の不思議な光が踊り集まり、それはやがて紫色へ と変化して、その映り色に思わず魅せられる。 とてもとても、惹きつけられる。 石からあふるる薄い紫色の光から、黒い翼を持った女性が現れた。 どこか虚ろな瞳をした、悪魔だ。 身体の線を露にした黒の衣装を身にまとい、細い腕に不釣合いな巨大な剣を手に携える悪魔。 宙に浮く彼女はひたと、ギブソンを見下ろした。 それにギブソンは、彼女の名を呼ぶ。 「魔臣ガルマザリア」 「・・・」 「力を貸してくれ」 悪魔が、答えた。 それは言葉のない応答、言動での答えだった。 彼女の妖艶な唇に笑みが浮かび、細い手が持つ剣がブゥン!っと重苦しい音を立てながら、 挑戦的に黒の旅団の兵士達に向けられる。 が、がががガルマちゃん・・!トッテモやる気満々デスネ!!(ヒー!) ギブソンはそれを満足げに見やれば、彼女と同じように杖を掲げて旅団に向け、 悪魔に行動の指示を下した。 「デヴィルクエイク!」 誓約された行動解放の言霊。 それに嬉々として、魔臣ガルマザリアが動きを見せた。 バサァッ!と翼をはためかせながら空高く飛び上がり、一気に兵士達の真上に降り立って。 己の右手で輝く剣を振りかざし、それを大地に突き立てる。 その瞬間、地面が大きく揺れ動いた。 震度何度だとツッコミたくなるほどの、激しい揺れ。 けれど向こうにいるマグナ達は全然ゆれを感じていないようで、立っていられなく なったあたしは思わず地面の草にしがみつくように座り込むと、底のほうから響いて いるような地響きに”地面が割れる”と、自然に思った。 ・・あわわわ!災害発生ー!! 「、大丈夫か?」 「ギ、ギブソンは平気なの?!」 「私は召喚主だからな、もう少しこっちに来るんだ。そこでは君も召喚範囲に 入ってしまっているからね」 ギブソンがあたしの腕を引っ張って、ギブソンの側に引き寄せる。 召喚師だけどしっかりとした、大きな手に少々ときめきを覚えながら(地震万歳・・!<オイ) あたしは彼の隣に立つ。 それだけで、揺れは少しも感じなかった。 「あ、あれ?」 「巻き込まれては大変だ、しばらくは私の側にいたほうがいい」 「はぁ・・・・・・え?”しばらくの間”・・?」 曖昧な返事を返したあと、すぐに疑問が沸き立った。 しばらくの間、ということはどういうことなのだろうか? デヴィルクエイクの術を終わらせ、旅団に多大なダメージを与えたあとで元の世界へと 戻っていくガルマザリアを見送りながら、ギブソンは笑顔で自分の懐から、いくつもの サモナイト石を取り出した。 「・・・・・・・ギブソン?(滝汗)」 「しばらくの間、だ」 ギブソンの手から、光がいくつも放たれた。 ・・それは素人のあたしから見ても分かるような、とても強力なモノ。 オイオイオイオイ・・ ギブソンさーん? それはちょーっと、キツイものなのでは?!(滝汗) 問い掛けるような視線を投げかけるあたしに、ギブソンはにこやかに笑った。 ミモザは遠い目で、ここではないどこかを見ていた。(ミモザ?!<汗) 「大丈夫、彼らは立派に訓練された兵なんだろう? なら、少しの術を受けても耐えれるだろう」 「・・・・(そういう問題じゃないよ)・・・怒ってるの?」 「いや、私は怒ってないさ」 「ただケーキを一つ食べそこなって、ムシャクシャしてるのよねー?」 ミモザはにっこりと言い放った。 それにギブソンは何かを思い出したのか、”くぅっ!”と涙を堪えるよう天を仰いで、 さらに召喚術を発動させる。 「ああ、・・・・・・・・・・今日は帰ったらヤケ食いだ・・・!!」 何があった、ギブソン・ジラール 杖が再び術を放ち、容赦なく旅団の兵に光をぶっ放す。 ケーキを食うことに全てを捧げてしまっている(もうだめだよこの人)甘味帝王に、 あたしはパチパチと小さく拍手を送った。きゃー、ギブソンさんカッコイイー(滝汗) 「ああミモザ、私の目にはあの兵士がマロンケーキに見えて仕方がないよ・・」 「はいはいはいはい、幻覚見ながらでも夢見ながらでも何でもいいから。 ギブソン、召喚術3号発射ー!」 ちゅどーーーーーーん!と、景気良い音が草原を揺るがす。 ミモザは何故か安全ヘルメット被り、ギブソンに次の術を放つように促す。 それに促されるまま、ギブソンは再び光を放ち、旅団たちを追い払っていく。 あの二人が相棒&パートナーと言うのはわかった気がするわ・・・(遠目) 「ちゃん、ここは私たちに任せて、皆で逃げなさい!」 「ミモザ・・!」 「引き際は心得ているさ、・・ネスティたちを、頼んだよ」 優しい眼差しが、あたしに注がれる。 あたしはそれを受け止めてしっかり頷くと、”ありがとう!”と言いながら、 すっかり離されてしまっているトリス達の元へ戻るため草原を駆け抜けた。 「さぁさぁ、ギブソン。可愛い後輩達のために一肌脱ぐわよvv」 「ああ・・そして食後のケーキだ!」 そんな彼らの呟きと共に、紫色と緑色の光の召喚術が放たれるのであった。 (トリス達は一体どこにいるのよーーーー?!) あちこちで爆発音が響き渡り、それの閃光などで目がチカチカして、皆の姿が良く見えない。 おまけに煙がまだ薄らぎかけているだけで、まったく消えてはいないのだ。 せめて誰か一人でもいいから、合流できればいいんだけど・・! 目を凝らす。 それにようやく、煙がさらに薄まって見えた視界に、アメルの姿を見つけることが出来た。 あたしは迷わず全速力で走り、彼女の元まで駆けつける。 ・・何だか、座り込んでしまっているように見えたのだ。 「アメル!」 「さん?!無事で居てくれたんですね!」 「もち!アメルは大丈夫・・・・・じゃないね」 足を切られたのか、白い肌から血が滴っている。 それが結構深いらしいのかアメルの顔色はいつもより青い。 うわ!ヤバイってこれは・・!(汗) アメルをあちこちに佇んでいる巨石の陰に座らせて、あたしは自分のポケットの 中を探ってハンカチを探し当てると取り出した。 「しっかりしてね、これで血を拭いて、んで足に巻いて出血を防いで・・」 「・・!さん・・」 アメルの緊迫した口調にあたしは首を後ろに傾ける。 それと同時に映ったモノは、またもや月と、風にたなびく黒いマント。 剣を携えた、 「ル 彼は無言で、あたしたちに手を伸ばし来た。 それにアメルを背に庇うように両手を広げて彼に立ちふさがれば、彼は その伸ばした手で、優しくあたしの頬を撫でた。 ドクンっ ( あたしの中に、映像が流れ込んできた。 そこに流れた映像の中には小さな男の子がいた。 その子は以前見たマグナではなく、柔らかな赤紫色の髪をしていて。 雪の中、一人で泣いていた。 ・・・泣いていた 「さん!!」 アメルの声で我に返ると、頬を撫でた手が、あたしの腕を掴んでいた。 振り払おうにもあんまりにも強い力で握られているせいで、振り払えない。 「・・ルヴァイド・・!」 見上げれば、不気味な兜。 その下でルヴァイドがどういう表情をしているか、さっぱりわからない。 あああ!この時ほど透視能力欲しいって思ったことないかも母さん!(何故に母) 「ルヴァイドおおおおおおおおおおおお!!」 「?!」 リューグの声とともに金属が弾けたような音が、草原とあたしの耳に響いた。 それはとても高く、高く、澄んだ音。 同時にルヴァイドの兜が地に落ちて、夜風に煽られる彼の髪があたしの目に、 とても綺麗に映った。 「テメエにはこれ以上何も奪わせねえぞ!も!アメルも!何も奪わせねえぞ!!」 「ッ・・!」 ルヴァイドは、まだ態勢を立て直してないリューグに剣を振り下ろす。 リューグは最悪ともいえる状態のままなので、彼の剣を受ける事は出来ない。 スイカ割りのような形で、頭をカチ割られて終りである。 (わーーーーーー!リューーーーグーーーーーーーー!!!<滝汗) 心の中は大絶叫。 あたしは何も考えずに、咄嗟にリューグと迫る刃の間に身体を割り込ませた。 目の前には血の付いた銀の刃。 (何飛び込んでるのよあたしは・・!) 飛び込んでからの後悔が、一気に沸き立った。 けれどやっぱりリューグをあのままにすることも出来なくて、そう思えることが出来る 自分に少しだけ、ほっと安堵する。 目の前には、銀色の刃と。 ルヴァイドの驚いた表情。 迫り来る死の恐怖に思わず泣き笑いを顔に浮かべて、そっと呟いた。 「助けてあげられなくて、ごめんね」 それはルヴァイドに言ったのか それはイオスに言ったのか 自分でもわからないけれど 何となく、そんな言葉が出た。 「さん!」 「!!」 月明かりが草原を照らす中。 あたしはトリスとマグナの声を耳に入れながら。 斬り付けられ ガキィンッ・・・・! ・・・・・・・・・・・・・・。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・? 何も、衝撃がこない。 ・・・・何で? 「召喚獣・・・・?!」 (今のはルヴァイドの・・驚いた、こえ?) あたしは恐る恐る目を開けると。 目の前には、黒いスベスベとした物体。 いや、装甲。 これは誰の装甲? まさかリューグじゃないよね?(人間だし) ルヴァイドのわけもないし・・(人間だし) ・・それじゃ・・誰の・・・? 「・・・?」 長い三つ編み(?)が目の前でフリフリ揺れて、異様に大きい体格。 月明かりで映し出されたシルエットは、ゼルフィルドに似ているけど、どこか違った。 彼とは少し、違う機体。 まだゼルフィルドのほうが、人間に近い形のように思えた。 この機体は、少し人から遠い機体 「・・誰?」 ようやく、たずねることが出来た。 彼の太い、機械の腕はルヴァイドの剣を掴んで耐えている。 ・・どうやら、助けてくれたらしいけど・・・? 尋ねたあたしに、彼は答えた。 とても無感情な、声。 そこはゼルフィルドとそっくりだなと感じる。 「ゴ無事デスカ?アルジ殿」 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・アルジドノ? 綺麗なボディラインがテカテカして、身長測りたいなーとも思える大きさ。 いかにも“ロボ!”を、その存在全体で示していて。 ロボマニアには最高の一品だろうとまで考えながら、あたしは呆気に口を開いたまま、見上げた。 「な・・」 「貴女ヲオ守リシマス!」 「ぐぅ!」 ルヴァイドの剣を弾き返して、それはあたしを担ぎ上げる。 そしてすぐ後ろにいたリューグも抱え上げて、すぐ様方向転換し、走って逃げる。 ぎゃあああああああああああ!!!振動がああああああああああああ!!!!(瀕死) リューグも振り落とされないように、必死にしがみ付いてあたしに叫んだ。 顔がすっかり、混乱に染まっている。(そりゃそうだ!あたしもだよリューグ!) 「な、なんだよ?!コイツは!!(汗)」 「あたしが知るかあああああああああああ!!!!(乱心)」 レオルドは乱心するあたしとリューグを背負っているのに、ケガをしたアメルまで抱え。 更にスピードを上げた。 ぎょええええええええええ!!!(泣) そんなあたし達の前にゼルフィルドが立ちはだかる。 次から次へと・・あたしの道は限りなく暗い・・・(遠目) 「ゼルフィルド!!?(まさか真正面に出るとわ・・!)」 「目標確認、打・・」 ボフンッ!! 『?!』 煙が、再び吹き上げる。 さっきは名前を呼び損ねたけど、あたしはこの目くらましの煙の持ち主を知っていた。 蕎麦屋<あかなべ>の大将・シオンの煙だろう。 それを機にあたしはレオルドから降りて、彼に言い放った。 「あなた!名前は!?(知ってるけどね!)」 「れおるど、ト申シマス」 「それじゃレオルド!この煙の向こうにあたしの仲間の女の子や、男の人たち がいるから、彼らと合流して逃げて!」 「アルジ殿、貴女ハドウナサルノデスカ?」 「あたしがアルジ殿なの!?・・ま、それについては後で話し合いましょう。 でも今は逃げて」 リューグが、彼に抱えられたままで”おい!”とあたしに叫んだ。 けれどあたしはそれをすっぱり無視をして、レオルドに続ける。 「あたしは大丈夫よ」 「シカシ、召喚主ヲオ守リスル事ガ私ノ役目デス」 ああもうそんなこと言ってる場合じゃないのよ! 思わず、頭を掻きむしりそうになった。 けれどそれをぐっと堪えて、レオルドをひたと見据える。 この煙の中だったらルヴァイドと少しの、話せる時間が作れるのだ。 せっかくの話せる機会を、見逃すわけにもいかないのよーーーーーー!! 「それじゃ、主として命令よ、彼らを連れて逃げて!」 それを言って、あたしはそのまま身を翻した。 煙の中へ一歩踏み込めば、また一度咳き込む。 「お、オイ・・!」 リューグが非難めいた声であたしを呼ぶのが後ろで聴こえた。 が、あたしはそれを無視して駆け出して、ルヴァイドの姿を探す。 「・・どこに、いるの?」 問いかける。 そうすれば、煙に捲かれながらもあたしのすぐ目の前に影が浮かび上がってきた。 「今なら、話せるんじゃない?」 「そうだな」 影は・・ルヴァイドは姿を現わして、あたしの前に立つ。 煙のおかげで周りの視界はまったく効かないけど、距離は結構近いのでわかる。 「・・ルヴァイドは、どうしたいの?」 それは、あたしが一番聞きたかったことだった。 あたしを捕まえるとか、そういうことはどうでもいい。 だってイオスは、ルヴァイドを助けてくれって、言った 何も知らないあたしは、正直・・ルヴァイドに対して何をすればいいのかわからない だからせめて、ルヴァイドの望むことをしてやりたい ルヴァイドは何も答えず、ただただあたしを見下ろして。 「・・俺は・・お前を捕らえたくない」 「・・・」 「お前を捕らえて、悲しむ表情をさせたくない」 「・・ルヴァイド」 「・・だが俺は何も出来ない・・歯向かう事すら出来ないのだ」 操り人形のように、手の平で踊らされて それでルヴァイド達はどうなるんだろうね あたしは 結末がわかるのに、結末がわからない (・・あたしが、邪魔をしてる) それだけはわかった。 あたしがルヴァイドと知り合ってしまったから、助けられてしまったから、 彼は本当は悩まなくてもいいことに、悩んでしまって、苦しんでいる。 ・・あたしなんかの、ために。 「・・ルヴァイド、手」 「・・?」 「手!出す!」 ルヴァイドは困惑の表情を浮かべながら、手を差し出す。 あたしは差し出された両手を握りしめて、包み込んで、抱きしめた。 彼の手は運動(=戦闘)したせいか温かかくて。 「ルヴァイドの馬鹿っ」 「?」 「あたしのことなんて気にかけなくていいのよ」 「だが」 「いいから黙って聞いて!」 「・・・」 あたしはぎゅうっと抱きしめて、泣く事を堪えながら叫ぶ様に言葉を放った。 「・・あたしの事は・・もういいから・・!」 もういいから あたしの事はもういいから 「・・あたしが居た事はもう・・忘れて・・!」 忘れて欲しくなかった 彼等の記憶に残りたかった でも こんなに苦しんで 悩んでしまうなら 忘れてくれた方がいい 「あたしの全部忘れて忘れてくれないと・・ルヴァイド、立ち止まるから・・」 ルヴァイドを救うには、これしかない(多分) あたしは、邪魔なんだよ こんなに苦しめてしまってる こんなに迷わせてしまってる 何も、してやれない 「・・・・」 「ルヴァイドは・・ルヴァイドが目指していた道を進んで欲しい・・」 「!」 「・・本当の事がわかるまで・・全部全部わかるまで・・真っ直ぐに・・」 握っていた手の力を、あたしはスルリと緩めて解放する。 煙ももう、晴れかけていた。 話し合いは、もうおしまい。 「・・俺に・・お前を忘れろと言うのか?・・俺だけじゃない、イオスも ゼルフィルドにも忘れろと・・?!」 ルヴァイドの言葉を聞きながら、あたしは何も言わずに走った。 まるでどこかの映画のシーンみたいだけど、本当に何も言えなかったから。 空を仰げば、もう空が見えるほど煙は薄まっていた。 ・・今のあたしの顔は、きっとすごく情けない。 (こんな顔見られたくないし) 精一杯の強がりくらい隠させてよ。 走って走って。 ずっと走って草原を抜けて。 あたしは石につまずいて派手にこけて。 起き上がって、そこでようやく嗚咽がこぼれた。 「うっ・・・」 誰もいないから、泣いてもいいでしょ? でもルヴァイド ルヴァイド達があたしを忘れても あたしは忘れないから 一緒に過ごしたあの瞬間 「・・っく・・う〜・・ひっく・・」 だから忘れて 進んでほしいよ しばらく泣いて、あたしはフラフラしながら何とか立ち上がった。 擦りむいた膝が痛い、やっぱり泣いて吐き出すというのは効果絶大だ。 それは根本的な解決にならないけど。 「・・行かなくちゃ・・・」 ふと、ポケットにわずかな温もりを感じて、ポケットを押さえた。 手を入れて、ポケットの中に入っているサモナイト石を取り出して見れば、 それはとても淡くて綺麗な緑色の光を放っていた。 魅せる光。 「・・なんで、光ってるの?」 緑色の光。 まるで慰めてくれるような、優しい光をあたしに与えてくれているかのようで。 「・・綺麗・・」 目を閉じて、それを額に当ててみる。 そうすれば柔らかな温かさが額に移って、すごく、優しい気持ちになれる。 「慰めてくれてるみたい」 しばらく眺めていたら、それは急にボンっ!と爆発した。(ヒー!) あたしは思わずそれを放り投げて手放して、後ずさる。 ぎゃー!サモナイト石が爆発したー! そしてもうもうと煙が渦巻く中、泣き声が夜空とあたしの耳に響いた。 「食べないでえーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!(><)」 ・・・・・・・・・・・・・・はい? あたしは呆気に取られながらも、煙が晴れるのを待って。 それを確認しようと目を凝らす。 ってか、あの泣きまくると言う可愛い反応は・・・!!(期待の眼差し) (レシィだーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!(ガッツポーズ!)) あたしは驚き半分、嬉しさ半分に、うずくまってえぐえぐと泣いている彼を見つめた。 愛らしい程に桃色のほっぺに、涙がたまった大きな瞳。 いかにも“お姉さん、攫ってください”と言わんばかりの羊スタイル。(てゆ−か、攫いたいッス) ・・可愛い(ごくり)←生唾を飲み込む音<ヤバイ ・・すっげ可愛いvvメロメロだーーーーーー!!!(邪) お持ち帰りしてあげるわよアンチクショーーーーーーーーー!!!!! ”お母さん!いいお土産ができたよ!”と叫びかけるあたしだったが、 そこでふと、”ん?”と考え込んだ。 (・・それじゃ・・護衛獣カルテットが揃ったって事よね?) またもや、ありえない出来事発生。 ああでもそれだと思う存分愛でられるって事?!(違っ)) あたしが喜んで愛で方を思考錯誤している一方、レシィは泣き続けた。 「うわーーーーん!僕なんか食べてもおいしくないです!不味いです! でもケチャップとマヨネーズを混ぜたソースだと少しは美味しくなるかもしれませんが 不味いです!!だから舐めないで食べないでかじらないで飲み込まないでーーー ーーーーーーーーー!!!!(><)」 「いやー・・食べないけど・・・舐めたいかも(ボソリ)」←ヤバイです 少年・レシィはその発言にビクンッと震えて。 あたしからさらに5m離れてブルブルと震えながら更に泣きまくった。 うわー、苛めたいかも。(鬼) 「ボボボボボボボ僕なんか舐めたら死んじゃいます!それにお腹だって壊しちゃうし!」 「あ・・べ、別に本気ってわけじゃないのよ?冗談だから・・冗談・・・」 「・・ほ、本当ですか・・?(ビクビク)」 「(うわ!可愛過ぎ!)え、ええ・・もちろんよvv」 「・・よ、良かった〜〜vv」 にこぉっとあたしに笑顔を向けるレシィに、あたしもつられて笑ってしまった。 ・・何だか泣いていたのが嘘みたいにまで思える。 「あ、初めまして、僕はレシィって言います。あ、貴女は・・・?」 「あたしは、よろしくレシィ・・・」 レシィのホワホワな笑顔見てたら。 切なくて、悲しい気持ちがあたしの中にまた溢れ出て来て。 「・・っ・・」 座り込んだままあたしはぎゅっとレシィを抱きしめた。 レシィはしばらくポカンと抱きしめられていたけど、状況を理解するとアワワと慌て出した。 あ、何かマグナみたいな反応・・。(2号機か?) 「あああああ、あの・・////」 「・・ごめん・・少しだけ・・少しだけでいいから・・・」 レシィはビクビクしてたけど、しばらくしてから、恐る恐ると、あたしの頭を撫でてくれて。 抱きしめられるままに、そのままでいてくれた。 優しい子 「・・ありがと 優しい子 何で召喚されたとか、彼は聞かない(聞かれても答えられないけど) 自分の身に降りかかった出来事に構わず、あたしの頭を撫で続けてくれている 優しい、子 (・・ルヴァイド、イオス、ゼルフィルド・・・) 哀しいし、苦しいし、切ないけど でも、忘れてね 無理で勝手な注文だけど、たぶん、それが一番いい そのまま、目を閉じた。 瞼の裏には月明かりが、悲しいくらいに綺麗だったのが映る。 忘れてね そして、負けないでね 温かさに包まれながら、あたしの意識は途切れるのだった。 優しい子の、慌てた声を心地よく聴きながら NEXT ----------------------------------------------------------------------------- *後書き* 第23話をお届けさせて頂きました。 やっとファナン編に入れます!!(祝) と、いうか・・長すぎですね・・なんて不親切サイトなのだ自分・・!! レシィとレオルドも登場しました。 彼らがどうして召喚されたか、ということもまた後々に語られるかと・・!(多分!) でも私は思うんです。 レシィくん。 絶対、天然癒し系だと。(真顔) ・・・・・・取り合えず、序盤終了といたします。 それでは皆様!無駄に長いですが中盤もお付き合いくださいませ★ ここまで読んでくださってありがとうございました! 2003.12.19大幅修正 |