第10夜







あたしはイオスに送り届けてもらって、(振動地獄でフラフラしながらも)無事ゼラムに到着した。
別れ際にイオスが言った言葉に、思わず涙ぐんでしまったのは不覚だったり。



“本当に行く所がなくなったら、僕達が面倒を見てやる”



そんな事を言ってくれた彼の頬が赤かったのは、気のせいだったかもしれないが。
誰もあたしを知らなくても、必要としてくれている人がいるんだな、って事がわかって。



本当に嬉しかった




イオスの背を見送ると、あたしは街の城門をくぐった。
それはゼルフィルドと一緒に見た、白亜の城門。
その時、城門の大きさに驚いて思わず開いた口がなかなか塞がらなかったが。

小規模ながらも何だか海外に旅行したような気分になって、あたしは“お土産欲しいなぁ・・”等と呟きながら、イオス達がくれた服で変な所はないか点検して(やっぱり男物)あたしは門を抜けた。



それにしてもイオスって華奢かと思ったら結構肩幅あるし・・意外だわ!!
ってか、儲けモノよね!!(イオスの服ー!)



形はイオスのいつもの服で、違う所と言えば裾の丈が短い。(長くてうっとおしいので切ってもらった)
ついでにリューグから拝借(でも返していない)した黒いズボンを七分丈に切って、簡単な革のブーツを履いていて、動きやすさ重視な服装。
“良い男の服を着るのはファンタジーの醍醐味よね!”と含み笑いをしながら怪しく歩くあたしを、ゼラムの住人が遠巻きに見ていると気付いてマッハでその場を去る。(恥)


世の中には怪しい人間がいると、ゼラムの住人に思い込まれたのではないか?と不安になりながら走ったのは言うまでもなかった・・・。














「・・さて・・と、ギブソン邸はどこなんだろ・・?」


開き直って周りを見渡す。(開き直るな)
どうやら繁華街に来てしまったようで、辺り一面、微妙に酒臭くて。
昨日はほとんど寝てないので、酒の香りが見事強烈な頭痛薬となってあたしはクラリと眩暈を起こす。

(ね、寝てないからキツイわぁぁ)

「うおおお・・」と、うめきながらあたしは早足で街中を歩く。
意識もフラフラしていてヤバイ、本当にヤバイって・・。
しかし嫌な事は素晴らしいくらいに続いて起きるモノで、さっさと商店街を抜けようとするあたしは、走ってきた誰かに思いっきりタックルされてしまった。

「ぅ・・っわ?!」
「ああ!ごめん!大丈夫か?!」

地面に倒れる感覚と共に、誰かが・・この骨格は男であるのか、あたしを抱き起こして謝った。
そんな慌てた声を耳に響かせながら、あたしの意識は限界を超えてしまい視界はシャットアウトする。



・・慰謝料払えこのバカー・・・・(ガクっ)



それは声にならない抗議の思いであった・・・。
















あーなんかあったかい陽の匂いがするー

母さんが干してくれた布団と同じ匂いだ・・・

・・・・皆、元気かな・・・?




そんなまどろみの世界から、あたしは何とか這いずり出て。
パチっと目が覚めた。
起きて目覚めるをこのリィンバウムで繰り返して、初めてパッチリと目を覚ましたような気がする・・。

「・・・・・・・・?」

周りを見渡すと、小さな机が目に入った。
その机にはあたしがイオスから貰ったコート(改造済み)が、綺麗に畳まれてあって。
次に別の方向に目を向けると家具の少ないさっぱりとした、蒼で統一された部屋に居る事を自覚した。


てーか・・ここの光景もすっげぇ見覚えがあるんですけどー・・?


「・・ま、まさかここは・・・」

「蒼の派閥の寮だよ」

「?!」


あたしが口にするよりも早く、入り口から声が放たれた。
水の入った洗面器を持って、青年は人懐っこくニッと笑うとズカズカと部屋に入ってきて、白いタオルに水を漬けてあたしに手渡した。
一方あたしは驚いて開いた口が塞がらぬままそれを受け取って、青年を凝視した。


人懐っこい笑顔


素晴らしい具合でハネた黒と紫の混じった(?)髪の毛


そしてどこかの誰かと似たような服


傍らには青年の背中に隠れてオドオドとあたしを見ている、キツネ耳(ウサギ?)の小さな女の子


青年は呆然としているあたしの手を握り、ブンブンと振りながらまた笑った。


「俺は蒼の派閥の召喚師・マグナ、この子は俺の護身獣・ハサハ。
キミは俺と派手にぶつかったんだけど・・ぶつかっただけで気絶するからかなり慌てちゃったよ」

「ああー、そうだったの・って・・・・・・・・・・・・え゛?」



今、何て名乗ったの?



マグナ?



それにハサハ?



上から読んでも下から読んでもHA・SA・HAな名前ですって?(意味不明)



てゆーか、何てゆーかね・・



マグナぁ?!ハサハぁ?!!


あたしは叫んで起き上がる。
叫ばれた本人達は大して気に障った風もなく、目を丸くしてあたしを見上げていた。


「俺達のこと知っているのか?」


そんなことを聞かれるがあたしの頭の中はそれどころじゃなかった。


(マグナ?!攻受オンリー何でも来い!のあのマグナですって?!ちょっとちょっと!?
どーしてマグナがここにいるのよ?!トリスは!?あたしの(最早所有物宣言)キューティートリスはどこいったのさ!!それとも何?!あたしは夢の中で夢を見ていてあたしの崇高かつグッドな妄想的希望がマグナを登場させたの?!本当のあたしは一体何処で誰を襲っているのさああああああああああああああああ?!???!)←超混乱


取り合えずグルグル回る思考を、固まっていたパズルのピースを一回崩して
新しく組みたてようと試みる。



あたしは何でか知らないけどサモンナイト2の世界に来ていて


そしてアメルやロッカ、リューグやアグラ爺さんにお世話になった


そしてゲームの主人公トリスと護身獣・バルレルやネス達と出会って


惨劇の夜、ルヴァイド・イオス・ゼルフィルドに保護された


おかげで傷は無事治ったから、彼らと別れてギブソンを訪ねて三千里(違っ)で聖王都・ゼラムに来たのだ




・・・それじゃ、あたしの目の前にいるのは??



本物のマグナとハサハなの????



本来なら主人公と護身獣は一人のはずなのに、どうして彼らはここにいる?




「大丈夫か?オレ、そんなに最悪な所に当て身食らわしちゃったのか?」


よほど長い事考え込んでいたのか、マグナがあたしの顔を心配そうに覗き込んで来て、あたしは思わず息を呑んだ。
あんたほんわかーな顔をしてるけど結構端整な顔をしてるじゃないのさ・・(ドキドキ)
それはルヴァイドやイオス、双子達にも引けは取らないだろう。

(・・それに・・)

あたしはじっとマグナを見つめた。
彼のハネている髪の間からはピョコンと耳が出ているような錯覚がして。
思わず目を逸らしてしまった。

(うう、反則だその耳・・!(汗))


子犬みたいで可愛いじゃないの!あああああ!!もう・・かーわーいーいー・・・(愛)


あたしはその愛らしさに、見事スクリューパンチ(威力S)を叩き込まれて(ってか死ぬわよ)。
マグナの頭をよしよしと撫でる。

何か色んな人の頭を撫でてるわね、あたし・・(でも幸福絶頂)
全キャラ目指して見ようかしら?!


一方マグナはわたわたと慌てる。
どうやらこういう事にはあんまり免疫がないらしい。
おおお・・・!初々しい!!(萌え)

「わわ・・!何を・・!」
「優しーね、マグナは・・あたしは。遅れちゃったけど助けてくれてありがとう」
「あ、き、気にしなくていいよ!俺も悪かったから・・!」

あたしに頭を撫でられながらひどく慌てて謝って、弟みたいな気持ちが芽生えた。
恋人でもオッケーかしらね!(サモキャラ美形揃いでまたオッケー!)
マグナの頭を撫でながら、全員をはべらせている妄想にうっとりと酔いしれていると下のほうから視線が刺さって。

「ん?」
「どうした?ハサハ・・」

ハサハは撫でているあたしの手と、撫でられているマグナの頭をじっーと見て、丸くて綺麗な水晶玉を抱えながらあたしの袖をくいくいと引っ張る。

(うっわ、メラ可愛い・・!!)

そしてトドメと言わんばかりに、ハサハは可愛らしくあたしを見上げて


「・・ハサハも・・なでて・・?」



カーンカーンカーンっ!(ゴングの音)



選手ノックアウトオオオオオオオオ!!!!!(喉が涸れるように)



そんな実況中継が聞こえてそうなほどの技を受けてしまって。(完敗だわチクショー!)
あたしは耐え切れなくなってガバァっとハサハに抱き付いて、グリグリと撫でる。

「ハサハ可愛いいいいいいいいいいいい!!!」

しかし心の絶叫はこんなものではなかった。

(あああああああああああああああああああああああああ!!!!
すっげ!すっげぇかわいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!)

これで落ちない人間なんていないんじゃないの?!っとか思えるくらい可愛い!
妹としてお持ち帰りしたい!!(危険)

「・・お、おねえちゃん・・・?」
「んもうー!ハサハはすっごく可愛い!!きゃぁー!ほっぺプニプニ〜」

あたしはプニプニとハサハの頬をつつく。
つつかれる度にハサハはくすぐったそうな顔をして、あたしの手をきゅうっと掴んだ。

「・・おねえちゃんも、いい匂いがする・・・」
「へ?そうなの?」


イオスの香りがくっついたのかしら??(って言っても香りで男に負けたくねえな)


ふんふんと自分の腕の匂いを嗅ぐあたしにハサハは首を横に振って、
(あたしの暴走に)呆然としていたマグナににこりと笑った。


「・・優しくて、おにいちゃんのような温かい匂い・・・・ハサハの・・一番大好きな匂いがする・・・」
「ハサハ・・・・」
「でもね、おにいちゃんとは少し違う匂いがするの・・・」



とっても懐かしい匂い



それだけ言うと、ハサハはこてんと眠り込んでしまって、あたしは苦笑しながらもハサハをそっと撫でてやる。
でも、気になることがあった。



“とっても懐かしい匂い”



そのハサハの言った言葉がわからなかった。
あたしはハサハと(生で)出会った事がないし、ましてやゲームの世界に入るなんて現象は何回もなかった。(さすがに何回もあると困るが)


懐かしい?何が??


うーんとうなって考えていると、マグナが弱々しく謝ってきた。



「ごめんな、ハサハ、最近夢見が悪いから・・」

苦笑して、あたしの膝で眠るハサハをそっと、愛しそうに撫でてやる。
それは家族に向けるような、これに以上ない優しい瞳。

「夢見が悪い・・?」
「ああ、一緒に寝てもうなされているんだ・・起こしてやると涙で濡れた顔で俺にしがみついて・・」



“怖い夢をみたの・・・”



「どんな夢の内容なんだって聞いたらさ、首を横に振って“わからない”って言って、また泣くんだ。
 そして寝てもまたうなされる」

マグナは悔しそうにギリッと唇を噛み締めて、撫でていた拳を固める。
ハサハを助けてやれない自分を不甲斐ないと思っているのだろうか?
だとすればそれは・・

「マグナは本当に優しいね」

あたしの口からは自然とその言葉が出た。
当の本人は目を丸くしてベッドで座っているあたしを見下ろす。
マグナだって、たくさんの悩みを抱えているのに、ハサハをとっても大切にしていて。

「でも、自分を責めるのは間違ってるよ?」

こんなこと、部外者のあたしが口に出すようなことじゃないけどね

「ハサハだって、マグナが自分のせいで苦しんでる、責めてるって知ったら、きっと、もっと泣いてしまう」



マグナの事、本当に大好きだから



あたしはマグナの握られた拳を解いてやって、ぎゅっと両手で包み込んでやった。
大きな、男の子の手で、あたしの両手では収まり切らない大きな手。
それでもどこか小さな手だと思ってしまう。
それはきっと、マグナの不安。


「マグナ、一つ良い事教えてあげる」

「良い事?」

「怖い夢を見たらね、こうやって手を握っててあげながら“大丈夫だよ”って、言ってげるのが
いいよ?そうすれば、すごく安心出来るんだ」



それで母親のような手の温もりを



「それで苦しくない程度に強く抱きしめて、一緒に眠ってあげるの。でもその時に夢の内容を聞いてはだめ、夢の内容なんてどんなに怖くてもうろ覚えなんだから無理に思い出させて怖がらせてしまうから」



そして父親のような強い存在感で包んであげて



「そうすればきっと良く眠れるよ」



怖い夢は、悩みがある証拠
きっとマグナも悩んだろうね
たくさんたくさん泣いただろうね



マグナはぼんやりとあたしを見つめて、俯いた。
あたしが握っていた手をぎゅっと優しく握り返して、力なく呟いた。


「・・ありがとう、・・・」

「どーいたしまして、マグナも少し寝なさいね」



どうせハサハが気になって眠れなかったんでしょう?



あたしはそう言って、マグナの頭をもう一つ開いている膝に押しつけて。
大きな背中をポンポンと叩く。


「おやすみ」



その言葉は、安らかに眠れるようにとの祈りの言葉












(・・どうしてこんなに安心出来るんだろう・・?)



初めて会ったばかりだというのに、ここまで安心出来るのは

”という存在の力なのか

それとも、別の何かなのか



何となく妹が言っていた事が思い出された。



“とても優しい人に会えたんだ”



そんな妹を羨ましく思っていた。
しかし、自分も見付けたのだ。


(俺も会えたよ、トリス・・・)


マグナは安心した気持ちに覆われて、そっと目を閉じた。
すぐ側にある不思議な存在に身を委ねながら・・・。













マグナの寝息が聞こえてきて、あたしはほっとため息を吐いた。
それはとても切ないため息。

(・・・妄想我慢出来るのかな・・・?)






そんな(危うい)思いを胸に、あたしは窓から見える景色を、ぼんやりと眺めるのだった・・・。









NEXT



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*後書き*


第10話をお届けさせて頂きました。
どんどん修正箇所がなくなっていくように感じているのは気のせいではありません。
ただ5,6,7,8が修正する部分が多すぎただけなのです・・・!!(汗)

それにしても、ハサハは可愛いオナゴです。
ハサハが主人公の何を懐かしいと思ったのか・・まだこの時点では秘密です。

そして主人公、服変わりました。
なんか分かりにくいですが上がイオスのコート(?)の裾短いヴァージョン。
下がリューグから拝借(最早返品不可能)した七分丈の黒いズボンです。
少し女の子らしい格好に・・と思ったのですが。

やっぱり全部男物。

ダボダボな服がまた漢の浪漫でござるよ!


それではここまで読んでくださってありがとうございました!


2003.12.7(ちょっと修正)